第32話 それぞれの休暇2
なんとか年内にもう一度更新できました。
「魔王が復活するって....それ本当ですか....?」
『M蒐』内での魔王は過去に封印されただけの存在であった。いわゆるラスボスとしては出てこなかったし、掲示板などでも魔王と戦えるといった情報は一切出回っていなかった。
「信頼できる筋からの情報だから信憑性は高いが....まだ確定したわけじゃねえから鵜呑みにはするなよ」
この「信頼できる筋」の方がよっぽど情報屋より情報屋しているのでは....と思うが、そんなこと気にしてられないほど気になる情報だ。もっと深く聞いてみたい。
「えっと、その、どうして魔王、が復活すると?」
「んーその辺はよくわからねえけど、ダンジョン内のモンスターたちの一部で異変が見られてるって聞いた気がすんな」
「異変、って....?」
「あぁ、それは....」
ジリリリリリリリリ
「時間なので終了。2度と来んなと言いたいとこだが、もし聞きたかったらまたたんまり金払えよ。お前みたいな雑魚は金払ってようやく価値が生まれるんだからな」
「....」
大事なところを聞けなかったのと最後にしっかりと毒を吐かれたことによる二重の悲しみが頭の中で渦巻いている。この店の裏の顔は罵られたい人向けの場所なのではないかとさえ疑いたくなる。
「ただいま....」
暗い気持ちで家まで帰ってきた。精神的にボコボコにされてかなり辛い。
「はい、おかえり」
台所にいる母親が挨拶を返してくれたが、若干2名が見当たらない。何だか嫌な予感がする。
「あれ、あの2人は?」
「ああ、あの2人なら....」
「2人なら?」
「草原で倒れてたから拾ってきたわ」
「え?」
「今は部屋で休んでると思うわ」
「え?」
嫌な予感は的中していた。
◯
ツンデレちゃんの過ごし方
わたし、ツンデレちゃ....じゃなくて、マドリン!わたしの名前は定期的に推していかないと忘れられそうだから今回は一人称マドリンでいかせてもらうわ!
昨日嫌なことがあったばっかりだから、今日は一日お休みしてファッション系の小物を色々見に行くわよ!お金は....心もとないけど買えるだけ買ってやるわ!
てくてくてくてく とことことことこ どたばたどたばた ぎったんばったんぎったんばったん....
「おっうっとー!」
なんだかかなり時間がかかってしまったけれど、何とか王都についたわ!まあ結果さえ出れば過程なんてどうでもいいのよ!
あと道に迷うかもしれないからと地図を持ってきておいてよかったわ!もちろん、世界地図を間違って持ってきている可能性もあるから、2枚余分に持ってきておいたわ!ふっふっふ、これぞ「憂いあれば備えなし」ね!ふっふっふ!ふっふっふっふ!!
「迷子になってしまったわ....」
まさか王都内で迷子になるなんて....!私としたことが、詰めが甘かったわ....!あ、爪と言えば今日のネイルは甘い香りがするやつにしたのよね!爪も甘かったわ!
いまなんか賢い気がするわ!今のが「うぃっちに富んだ」ってやつよね!マドリン、やればできるじゃない!
「すみませんそこのお姉さん。もしかして、迷子ですか?」
眼鏡でスーツ姿の男性から声をかけられたわ!これもしかして「ナンパ」ってやつかしら!?
「そうよ!よくわかったわね!」
「よろしければ道案内しましょうか?」
「本当に!?じゃあファッション屋までお願いしようかしら!」
急に話しかけられて少し驚いたけど、いい人そうでよかったわ!
「かしこまりました。では、案内しますね。少し遠くなりますが....」
ん?遠く?
「えっと....近くじゃないのかしら?」
「いや、今いる場所から相当遠いですよ?」
「....え!?」
まさかの展開よ!ファッション屋はこのすぐ近くにあるはずなのに嘘をつかれているわ!
「そんなわけないわよ!この近くにあるに決まってるわ!」
「いえいえ、かなり遠くにありますよ?」
「嘘よ!絶対この近くにあるはずよ!」
「いえ、ですから....」
「もういいわ!他の人に聞くわ!」
「あぁ、ちょっと!」
全く、嘘を教えるなんてひどい人もいるもんだわ!
「チッ....カモだと思ったけど意外と用心深かったな....まぁいい、王都にはわんさか人がいるんだ。1人ぐらいなら警戒されたって変わりゃしないさ」
「あぁ、ここにあったのね!」
結局他の人に聞いてファッション屋にたどり着いたわ。
さっきいたところからはかなり遠い場所に位置していて10-20分ぐらいは歩いたわ。....さっきの眼鏡スーツの人には悪いことしちゃったわね。
「いらっしゃいませー!あ!いつもありがとうございますー」
店員さんに覚えられてる!前に独特な色の香水を買って店員さんに「あはは....この香水の匂いが好きな方も、いるかもしれませんね、あはは....」と言われたから、きっとセンスがある人だと思って認知してくれたのね!
「本日は何をお探しですか?」
「えーとそうねー。なんか新しい商品とかってあるかしら?」
「新商品....ですと、こちらなんていかがでしょうか?」
そう言って店員さんがなんか機械みたいなものを取り出してきたわ。一体何なのかしら?
「こちらですね、最新式のドライヤーでございます!」
ドライヤー!確かにショウの家に1個しかないから、メリちゃんやショウのお母さんと使うタイミングをずらすのが面倒だと思っていたのよね!
「こちらの商品、普通のドライヤーと違う点が2点ございまして!1つ目がですね、なんとこのドライヤー、ワイヤレスなんです!これで片づけの時にかさばったり、使ってる途中でコードが他の人の邪魔になる、なんてことが少なくなります!」
「おー!」
あんまりコードで困った経験はないけれど、便利そうね!
「そしてもう1つの特徴なんですが、実際に試してもらったほうが早いかもしれないですね」
そう言って店員さんは「準備があるので少々お待ちください」と言ってスタッフルームの方に行ってしまったわ!
このまま待っていてもいいけれど、てもちぶたさん....ぶたん....ぶっささった....まあいいわなんでも!になってしまったし、ちょっとお店を見て回ろうかしら!
久しぶりに来たはずだけど、ラインナップはそこまで大きく変わってなさそうねー。リップに口紅、手鏡にくし....あ、このメイク一式セットなんてむかーしに親に買ってもらったのとまったく同じじゃない!それに、このどくろマークがついてるまがまがしい指輪なんてまだ売れ残っていたのね!確かにこれを試着させてもらったときはなんだか体の元気がなくなった気がしたし、売れ残りも納得だわ....!
「おきゃくさーん!準備できたので来てもらえますかー?」
あら、そんなこんなで店を回っている間に準備ができたみたいだわ!
「このマットレスにですね、ここにあるコップの水をぶちまけてちゃってください!」
「わかったわ」
ばっしゃー---ん
ストレス解消のためにも思いっきりぶちまけてやったわ!
「な、なかなかの勢いですね....え、ええと、それではこのビッショビショになったマットレスにこのドライヤーを10秒だけ当ててみてください!」
「わかったわ!」
ゴオーーーーーーーーーーー
すごい火力よ!みるみるうちにマットレスが乾いていくのがわかるわ!
ゴオオーーーーーーーーーーー
すごい!もう水をこぼしたのがウソみたいに乾いてるわ!
「あ、もうストップ!ストップしてください!」
ゴオオオオオーーーーーーー-
「何かしら!聞こえないわ!」
「ストップ!ストーーーップ!!」
店員さんに無理やりドライヤーを取られて、電源を切られたわ。
「もう少しやっていたかったわ!」
「あ、いや、それは困ります....これ、超速乾性でどんなものでも10秒あれば乾かせるってキャッチコピーの商品なんですけど....いかんせんバッテリーの消耗が激しくて....10秒経った後も使い続けると危険なんですよ....」
「そうだったのね、申し訳ないことをしたわ....」
結構危険なドライヤーなのね....
「えーと、それでお客様!こちら銅貨75枚になりますが、お買い上げになりますか?今ならお店の商品1つお付けいたしますよ!」
何でもすぐ乾くこの商品が銅貨75枚!?しかもお店の商品を1つつけられるなんて!破格すぎよ!
「もちろん、買うわ!」
「お買い上げありがとうございます!」
いい買い物ができてホクホクよ!さて、次はどこに行こうかしら....ってあれ、あそこに見えるのって!
「メリちゃーん!」
「ん....?あ、ツンデレちゃん....!」
休暇中の2人が王都で邂逅した。
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