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第29話 きのこのこのこ

久しぶりの更新です。

ヘビと戯れた後も俺たちは周囲への警戒を怠らず、森の中の道を歩いていく。道なき道というほどではないが、それでも整備は草原エリアほどされておらず、足元が悪い。


『M蒐』をやっていた時は道が整備されているかどうかなどとるに足らぬ問題だったが、これが現実になると地味に厄介だ。敵に近づく時も逃げようとして遠ざかる時も、足元がおぼつかないと不覚をとる原因になりかねない。


戦闘のための場所としてはコンディションが少し悪い。しかしこの道を外れて、それこそ道なき道を進むのは、あまりにもリスクが高すぎる。迷う可能性も存分に出てくるし、モンスターの奇襲にも気づきようがない。


「やっぱり、森の方がいいアイテム落ちてますね」


そんな俺の心配などつゆ知らず、メリッサとツンデレちゃんは薬草などの採集を行なっている。草原エリアではあまり見かけなかった毒消し草や麻痺消し草なども採集できているようだ。


「目新しいアイテムがあるとやっぱりテンション上がるわね....!」


何だか俺の収集癖が移っていっているような気がする。モンスターを収集する主人公とアイテムを収集するパーティメンバー....見たことないぞこんな構図。


「まぁ、下手なことされるよりアイテム集めてもらってた方がいいか....」


「何よ?何か言ったかしら?」


「いえ、なんでも....」


独り言を呟くのは危険だな。


「次からは心のうちに留めておこう」


「やっぱり何か言ってるわよね??」


まずい。何だか思ったことをつい口に出してしまっている。きっと悪いモンスターのせいだ。絶対そうだ。うんうん。


「あ、こっちにキノコもありますよ....!」


「本当だわ!キノコって料理に使うと美味しいのよね〜」


料理できないくせに何をほざいているのだ....ってちょっと待てよ、森に生えているキノコは当たり外れが....


「ちょ、ちょっと待っ....」


俺はいつものように後手に回ってキノコへの接近を止めようとする。


しかし、いつものように2人は歩みを止めず、キノコに接近していく。


そしていつものように、キノコのふりをしたモンスターに....


「わ、これ、美味しいそうです....!」


「あんたもこっち来て採集の手伝いしなさいよ!」


襲われなかった。


「あれ....?いつもの悪運ならここで大体モンスターを引くんだけど....」


モンスターに襲われなかったこと自体は良かったのだが、どこかでモンスターに襲われなかったことを悲しんでいる自分がいる。


って、いかんいかん。俺はいつからこんな「先陣切っていった女子群がモンスターに襲われる」ことを望み始めたのだろう。決してそういう趣味はない(どういう趣味?)が、思考が凝り固まるのは良くないことだ。いつも紋切り型とは限らない。



「そういえばさっき言ってたモンスターってなんの話よ?」


キノコの採集中にツンデレちゃんが質問してきた。


「あーさっきの聞こえてたのか、地獄耳かよ....」


ボソッと言ったことも聞き逃さない、さすがツッコミ担当。


「なんか今余計なこと言ったわよね」


「いやいや、なんでもないなんでもない」


俺はわざとらしく首を横に振る。


「も、もしかしてキノコみたいなモンスターがいるってことですか....!?」


「あぁ、そういうこと。名前はマタンゴって言うんだけど、こいつが結構厄介でね....」



「それってこいつのことかしら?」


採集中のツンデレちゃんが近くに生えているキノコを指さす。


なるほど確かに周辺に生えていたキノコよりも一回り大きく、うっすらと目や口のような模様が見える。これは間違いない、マタンゴだ!


「ああ、そうそう!そいつだよ!....ってちょっと待って!?」


その瞬間、キノコだったものは目を開け、戦闘態勢に入った。


「きゃああああああ!!」


ツンデレちゃんの耳をつんざくような悲鳴。結局いつものパターンだ。


モンスターだと思って指さしたなら今更目を開けたぐらいで悲鳴をあげないでくれない!?というか、何でモンスターだって気づいてたのになんで呑気に採集なんかしてたの!?


「キノコさん....私たちがキノコ集めてた時もじっとしてたんですね、、」


確かに、ずっと捕食(?)の機会を窺っていたのかと考えるとかなりしたたかなキノコだ。


何度も言うようにこいつの名前はマタンゴ。キノコに顔と手足がついたようなモンスターで、そこらへんに生えているキノコに擬態して森エリアの森林ゾーンに生息している。素早さはノロノロとした見た目そのままで遅く、攻撃力もそれほど強くないので弱い敵....と思いきや、こいつにはある特徴があるのだ。それは何かというと....


「いや!来ないで!」


ツンデレちゃんが先程採集していたキノコをマタンゴめがけて投げつける。


「だめだツンデレちゃん!不用意に攻撃しないで!」


「え?」


ツンデレちゃんは俺の言葉で投擲を辞めるが、もう既にマタンゴめがけてキノコは宙を舞っている。


ぽとっ


そのうち一個が不運にもマタンゴに直撃してしまった。


「くっ....!スライム、ナメナメクジ、出てきてツンデレちゃんを守れ!」


俺は咄嗟の判断でツンデレちゃん-マタンゴ間の射線を遮るようにモンスターたちを召喚する。


次の瞬間....


バフッ!!


マタンゴの体から粉のようなものが発せられた。


「な、なに!?」


そう、このマタンゴ、攻撃を受けたら胞子をばら撒くという特徴を持っているのだ。さらに言うと、攻撃を受けた時だけでなく自分が倒れる時にも胞子を撒く。倒した後でさえも気を抜けない敵だ。


そしてこの胞子を食らってしまうとダメージを受けるのはもちろんのこと、状態異常にも侵されてしまう。


「....!スライムさんたち、毒になってます!!早く治してあげないと....!」


先ほどツンデレちゃんを守るために召喚したモンスターたちは手痛いダメージと状態異常をくらっている。


「そ、それよりも回復よね!?今ヒールかけるわ....!」


「いや、でもまずは毒を消さないと....!」


緊急事態で2人ともパニックになっているようだ。戦闘で焦ることは命取りだから落ち着かせたいのだが、この方法を取るとまともに戦える奴が....いや、待てよ。ちょうどいい奴がいるじゃないか!



「スライム、ナメナメクジ、戻れ!」



俺は2体をボックスに戻す。これで俺たちは丸腰だ。


「ちょ、ちょっと!何してんのよ!このままじゃ相手の攻撃もろにくらっちゃうじゃない!それにスライムとナメクジは体力減ってるからヒールをかけないと....!」


落ち着きを取り戻すどころか取り乱しているようにも見えるが、知ったこっちゃない。


「大丈夫だよ。こっちには対マタンゴ用と言っても過言ではないぐらい相性のいいモンスターがいるんだから!」


「え、えと、それってもしかして....?」


「そう、こいつだよ」


ザザッ


俺はボックスの中から残りの一体、ムーンコアラを召喚した。



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