第26話 気になる倉庫
久々に投稿です。
「いてて....」
ただ早くこのにおいから逃れたかっただけなのになんて酷い仕打ちだ。と、思ったが冷静になって自分の言動を客観的に考察してみるとどう考えても変態行為である。通報されたら警察....はいないので自警団や王都の兵士などに捕まる。危なかった。
そんな両頬が未だにヒリヒリしている俺は現在、代わりの服を探しにクローゼットの前にいる。
「まぁこれでいいか....」
ミスリル装備の下で押しつぶされていたであろう緑色のローブを着る。
「うわこれ....着心地そんなによくないな....」
ぺちゃんこになってたからか、着心地はいとわろし。この緑色でおそらくふわふわしていたであろうローブは魔封じのローブと言って、着用可能になるレベルは確か5だ。
このローブはかなり特殊な性能を秘めていて、着用した者の魔法攻撃(回復も)と魔法防御の能力値がそこそこ上昇する代わりに、(なぜかよくわからないが)魔法が撃てなくなるというものだ。
当然「魔法攻撃の能力値が上がってるのに魔法撃てないんじゃ意味ないのでは?」というツッコミが放たれるのは容易に想像できる。俺もゲットした当初はそう思っていた。「なんだ。この職人さんが手間暇かけて作ったであろう無意味な布きれは」と心の中でつぶやいていた。
しかしそんな無意味な効果を持った装備を運営側が作るはずもなく、実際には魔法を放つことが出来るアイテムを使う際に大変役に立つ装備なのだ。魔石やら魔剣やら聖水やら魔水晶やらがその類いだ。
魔法を撃つことはできなくても、魔力(という表現でいいのかモンスターテイマーである自分にはよくわからないが)を溜め込んだアイテムを使用することはできる。そして薬草などとは違いこれらの魔法アイテムは剣などと同じように自分の能力値を反映させて攻撃できるのだ。
その強力な効果の分、魔法アイテムに属するアイテム全てが消耗品なので、何回か使うと壊れてしまう。仮に敵に当たらなくても回数にカウントされてしまう。儚い。
そんな魔法アイテムを使う時に重宝するこのローブ。しかし、やはりいつものがフィットしていたからか、着心地がとても悪い。体がむずむずしてくる。もっといいのはないだろうか。
「うーん....母親のお下がりとかはさすがに嫌だし、ツンデレちゃんやメリッサの服は....女装趣味あるみたいになっちゃうし、、あ、そうだ!倉庫にならなんかあるかも!」
前々から倉庫の中は見てみたかったので、ちょうどいいタイミングかもしれない。まだ女子陣はお風呂に入っているだろうし、その間だけでも見てみよう。
てくてくと歩いて2階の奥の方に行くと、扉に【倉庫】と書かれた張り紙が張られている部屋を見つけた。こう言っちゃなんだが、さすがに家の中に張り紙はみすぼらしい。
「ここっぽいな。普通の部屋に見えるけど....いい服があるといいなぁ....」
期待に胸を膨らませ、扉を開け中に入ると、まず驚いた。物が床に散らかっているのだ。倉庫というよりも汚部屋と表現した方が適切だろう。
「うわ....なんだこの倉庫は....もっと整然と物が並んでいる様子を思い浮かべていたんだけど、、これ掃除してないのか?それともツンデレちゃんが懐中電灯を探す時にやっちゃったのか?」
どちらにせよ、ゴミ屋敷レベルで足の踏み場がほとんどない。「汚い部屋ですがどうぞ上がってください」と言われてこの部屋だったら絶望しかしない。謙遜であってくれよと思う。
幸いカメムシのような異臭はしなかったが、空気がどんよりと澱んでいる気がする。換気のための窓はあるにはあるのだろうが、壁一面棚や物で埋め尽くされているためその姿が見えない。
そのため日も差し込まず、まだ日が出ている時間帯だというのに暗いままだ。ここからツンデレちゃんは懐中電灯を発見できたというのだろうか。嗅覚が鋭すぎる。犬か。いや犬なら従順にもっと俺の作戦に従ってくれるはずだ。
暗く足元も悪い中、俺は代わりとなる服探しに専念する。物が散らかっている部屋でガサゴソと服を探す様子はさながら盗っ人のようだっただろう。
「ショウー!お風呂空いたわよー!」
母親から声がかかるまでの時間ずっとガサゴソしていたが、代わりになりそうな服は見つからなかった。全てを見れたわけではないが、見渡す限りガラクタのように思える物の山。倉庫=ゴミ箱の方程式が成り立っているのだろうか。
ゴミ箱....もとい倉庫には、先の折れた箒やひどく錆びたミラーシールド、先の折れた釘に、ぺちゃんこになっているクッション、そして先の折れた万年筆や先は折れていないが針が一本しかない大時計、先が折れかけている画鋲に電池が切れている宝箱レーダー、さらに先の折れたごついアンテナに糞除去剤に先の折れたなんの変哲もない木の枝などなどがあった。棚の中にも先の折れたメトロノームや黄色く燻んだ石などが見える。いやさすがに先が折れすぎだろう。この家では先折り同好会でも結成されているのだろうか。俺のメンタルも先で折られた気がする。
今度倉庫に行ったらさすがに片付けをしておこうと心に決めながら浴室に向かう。誰もいない廊下は静けさに包まれている。途中、台所にいる母親に「あらあんたそんなみすぼらしい服しかないの?」と言われつつもめげずに向かう。魔封じのローブかっこいいだろ!!....ほんとにこの親、我が子に向かって吐く言葉に躊躇がない。
ようやく(?)浴室前まで来た。脱衣所で服を脱ぎ、湯船につかれば、このにおいからおさらばだ。あまり身体自体は汚れていないが。
ドアノブに手をかけ開こうとした瞬間、違和感を覚える。それもとても強烈な....
「「「は....?」」」
脱衣所の中にいる3人は同時に素っ頓狂な声を出す。そして....
「「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!!」」
ばっっっっちーん
女子2人からダブルで叩かれた。
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