第18話 王都は続くよどこまでも
完成しました。2-3話は戦闘シーンなしでお送りします。
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「あら、どうしたんだい。喧嘩でもしたのかい?」
その後俺たちは一度も顔を合わせることなく夕食になった。といっても食卓には俺と母親だけ。ツンデレちゃんとメリッサは今忙しいので後で来る、と母親には説明したがどうやらバレているようだ。
「んー、、喧嘩ってほどじゃないけど....ちょっと俺がデリカシーないようなこと言っちゃってさ....」
なんだかこの年にもなって母親に対人関係の悩みをするのはこっぱずかしい。しかし話す相手もいないので仕方がない。
「それは困ったねぇ....私としても同居人同士は仲良くしてもらわないと」
「ご、ごめん....どうすればいいかな?」
「それくらい自分で考えた方がいいんじゃないの?....っと言いたいところだけど、アドバイスぐらいはしてあげるよ」
「ありがとう母親!」
「母親という呼び方はさておき....女の子はね、そういう時何かしらお詫びの印としてプレゼントが欲しいものなのよ(個人の意見です)」
「な、なるほど....!明日王都に行って買いに行ってみるよ!」
「うんうん、ついでにおつかいもよろしくね!」
いやこれが目的じゃねえか。まあおつかいぐらいアドバイスなしでも言われたら行くけどさ。いや待て。この歳になっておつかいってなんだか恥ずかしくないか....?
そんなことを考えているうちに夕食を食べ終わった。そしてその日は昼以降1度もツンデレちゃんと顔を合わせることなく就寝した。
途中メリッサには明日王都に行ってツンデレちゃんへのプレゼントを買うということを伝えた。なんだか少しむすっとしていたが、すぐに『まあ仕方ないか』というような表情をして「わかりました、明日はツンデレちゃんと一緒に家でお留守番してます」と言った。
◯
翌日、俺はツンデレちゃんが起きる前に家を出て王都を目指した。ちょっとはモンスターを倒してお金を得れているのでそれで何かを買おう。
道すがら、何を買おうかと考えていたが、今までに女性にプレゼントをした経験など全くない俺にとっては難儀なことだった。
前回王都に来た時は....確かツンデレちゃんは洋服とかを買っていたよな。しかし本人がいないのに洋服を買うのは果たしてどうなのだろうか....?サイズとか合ってなかったりしたらクーリングオフするしかないし....いやそもそも『M蒐』にクーリングオフ制度なんてないか....
なんだかよくわからない方向に考えが及んでいるうちに王都に到着した。今日も王都は相変わらずの人だかりだ。勘弁してほしい。
ツンデレちゃんへのプレゼントを買う前にとりあえずおつかいを済ませておくことにした俺は青果店に向かっている。
王都はとっっっても広く、さまざまな店が立ち並んでいる。青果店や精肉店、鮮魚店、雑貨屋、アクセサリー店、ケーキ屋、移動屋、雪屋、砂屋、気分屋、....などなど、とにかくたくさんある。『M蒐』ではエモートを買うお店だった気がするが、気分屋に関してはただ単に気分屋なだけだろ、と思う。
◯
青果店に向かおうとしている俺だが、すっかり迷ってしまった。ゲームでは鳥瞰図のように上から見れたが、リアルとなった今、そうはいかない。
しかもゲームでは青果店での売買はできず、NPCが固定メッセージを主人公に言うだけだったので、どこにあるかをよく覚えていなかったのだ。
「こうなったら現地の人に聞くしかないか....近くにアクセサリー店があるしそこに入って情報を得よう。いやしかし果たしてNPCがそんなことを知っているのだろうか....?もし知らないのに聞いたらなんだか恥ずかしいし....そもそも俺声出るかな....」
一人でブツブツ何かを言っている姿は不審者そのものかもしれない。しかし今の俺にそんなことを気にしている暇などない。
「入るしかないか....!」
些か不安ではあるが、もたもたしているとプレゼントを買う時間がなくなってしまいかねないので意を決して店に入ることにした。
カランコロン
「いらっしゃいませぇ」
出迎えた店員さんは若い女の人のようだった。ゲーム通りだ。
「あ、あの、えっと」
「何をお探しですかぁ?」
「あ、違くて....」
「えぇ....じゃあ何の用ですかぁ?うち冷やかし厳禁なんですけどぉ」
なんだか「お前と話すのだるいから早くどっか行けよ」感がひしひしと伝わってくる。俺は人と話すのが苦手だ。況や若い女の人をや。
「その....せ、せい....か、青果店....」
「なんて言ってんのかぜんっぜんわかんないんすけどぉ〜、もし青果店って言ってんならぁ、ここの道をまっすぐ行って2番目の曲がり角を右に行ってぇ、そのあと3番目の角を左に行ってぇ、少し歩けばぁ、着きますよぉ」
めちゃくちゃ詳しく教えてくれた。無下にするような行動を取るかと思っていたのでびっくりだ。
「あ、あr、ありがとう、、ご、ございました....!」
俺はどんどんひどくなっていく言語能力を最大限用いてお礼をした。
「あ、お礼とかいいんでぇ」
いやお礼しないでいいわけがない。こんなにも助けられたというのに。
「その代わりぃ、なんか商品買ってくださぁい」
....まあそんなもんだよね、そりゃあっちも商売だし。うん、わかってた、わかってたよ。
しかし一体アクセサリー屋で何を買うというのだろうか。男がアクセサリー屋で買うものなんてありやしないし....
そうだ!ここでツンデレちゃんへのプレゼントを買えばいいんだ!当初の予定と順番が逆転してしまったが、そんなのは関係ない。
「あ、は、はい、わ....わかりました、ゆ、友人、への....ぷ、プレゼントとして何か、、買います」
「あ、本当ですかぁ!?えーとですねー、今おすすめなのがこのブレスレットで〜、お値段は少しお高めになってるんですけど〜............あ、このブローチとかは最新のモデルで〜............あ、このイヤリングとかも〜............」
商売スイッチが入ったな....いよいよ辛くなってきた。服屋さんで店員さんに話しかけられているみたいだ。お金落とすのだから、プレゼントするアクセサリーぐらいこちらでじっくり決めさせて欲しい。
「あ、このペンダントなんかは〜、すっごい綺麗な石が入ってて〜、おすすめなんですよ〜」
「あ....」
見ると確かに赤くきらびやかな石が嵌め込まれているペンダントがあった。中の石だけでなくペンダント自体の意匠も凝っていて、銀の縁取りとそこからすらっと伸びる2本の紐。一方の端には凹型の、もう一方には凸型の金具がついている。また、裏側には蓋がついており、中の石が取り外し可能となっている。
「そ、それで....」
無駄に長いペンダントの描写はさておき、俺はこれを買うことにした。
「はーい、銅貨50枚となりまーす」
支払いを済ませて俺は店を出る。そして歩みを進ませようとしたその時....
「あれ....どうやっていくんだっけ....」
すっかり道順を忘れてしまった。
服屋さんとかで店員さんに話しかけられる制度は本当に辛いですよね、まあ行ったことないのですが。




