第16話 飛来する草食獣
思った通り早めに書けました。
「気を付けろ!!飛びかかってくるぞ!」
「気をつけるったってどうするのよ....!」
「た、盾なんてありませんよ....!?」
クエスト報酬でも確かに盾はもらえるが、クエストを受けずにプレイしても盾ぐらいは超序盤で買えるはずなのだ。しかしパーティがあまりにも弱すぎて武器の類いはほとんど何も買えていない。
「そもそも、あんな愛くるしい見た目してるのに飛びかかってくるなんて冗談みたいだわ」
「いやあいつはムーンコアラって言ってれっきとした敵なんだ」
ムーンコアラ。コアラは普通薄明薄暮性らしいが、ムーンコアラは夜に動きが活発になる夜行性だ。また、尻尾は月のような形になっている。ムーン要素はそれくらいで、後は例外もあるが、基本的に普通のコアラの特徴を踏襲している。主な攻撃手段として、ムーンコアラはそこそこ遠い距離で敵を見つけるとそれに飛びかかって攻撃する習性がある。あと一応言っておくとドロップベアではない。あくまでもコアラだ。
「コアラさん恐ろしいんですね....」
「モンスターという分類である以上ほとんどが敵対してくるからね....」
「ほ、ほとんどと言うと友好的なモンスターもいるんですか....?」
「友好的と言うよりかは中立だけど....今はそんなこといいから戦闘に集中してくれ」
「わ、わかりました....!」
とは言ったものの、いつも暗闇の中で動いている夜行性の動物たちにメリッサが放つシャドウの効果は期待できない。メリッサには守りに徹してもらおう。
とりあえず俺はスライムとナメナメクジを召喚する。仮にヒマワリマンがいても人....いや花柱....いややっぱり人か....?でも見た目は向日葵だし花柱....まぁ一回攻撃を受けるだけの存在と化していただろう。
とそんなことを考えている間にコアラは近づいてきて飛びかかり攻撃の範囲内に入る。
「に、にげられるかしら....?」
「いや....わからない、ムーンコアラは見た目に反して意外と素早いんだよね....飛びかかり攻撃とかでわかるように」
「なるほどね....逃げられない相手は厳しいわね....」
「でも一応倒し方はかんg....
話を遮るかのように、突如ムーンコアラが大きく口を開ける。
「来るぞ!」
これは飛びかかりの前兆だ。
「は、はい....!」
誰に飛びかかるかは完全にランダムで、飛びかかる瞬間までそれはわからない。そのため全員が身構える必要がある。スライムとナメナメクジは身構えてるのかどうかわからないが。
ザッ
コアラが飛びかかる。攻撃先は....ナメナメクジだ。
ドシッ
ナメナメクジのお腹(あるのか?)のあたりに勢いよくぶつかる。その後噛み付きをすることもあるが、幸いその攻撃は出してこなかった。そうなると次は噛みつき攻撃を出してくる可能性が高いだろう。
よくニュルニュルしてそうなナメクジに飛びかかったな、とは思う。しかしこれでナメナメクジは手痛いダメージを受けてしまった。
「ナメナメクジ、戻れ」
ナメナメクジは大きなダメージを負っているので当然の判断だ。2人の表情も変わっていない。経験値は入らないことが確定するが倒れるよりはマシだろう。
「あーあとスライムも。あとツンデレちゃんとメリッサも、後ろにひいてて」
「「え?」」
2人の声が重なる。
「いいから、早く」
「いや納得いかないわよ!?」
「そ、そうですよ....!無茶しちゃいけません....!」
スライムも(おそらく)不満げな顔をしている。
「ここは俺に任せて....!」
「....しょうがないわね、信じるわよ」
「ツ、ツンデレちゃん....で、でも私はやっぱり危険だと....」
「ショウにはきっと考えがあるのよ。それに無茶しそうだったとしても私が回復すれば済む話よ。何の問題もないわ!」
ツンデレちゃんは不安を紛らわすかのように強く発言した。
「....わ、わかりました。私はショウさんを、ツンデレちゃんを、信じます。スライムさんも、ね?」
スライムは(多分)仕方ないという表情をしている。
2人を説得して後ろに引かせ、スライムもボックスに戻すことに成功した。そして合図を出したら一斉に近寄って石でも何でもいいからとにかく攻撃してほしいということも話した。これでフィールドは整った。あとは倒すだけだ。
ムーンコアラはある程度の距離があると飛びかかりをしてくる。
「ショウさん、コアラさんから結構離れてますよ....?あれじゃ一方的に攻撃されるだけなんじゃ....?」
しかし俺はある作戦を決行するためにあえて離れて飛びかかり攻撃を待つ。
コアラが大きく口を開く。飛びかかりの合図だ。その瞬間俺はバッグからあるものを取り出し構える。
ザッ
もちろん攻撃対象は俺だ。コアラは俺めがけて飛びかかってくる。
ドシン
「ぐはっ....!」
俺は飛びかかり攻撃をモロに受ける。強い衝撃とともに命が削られるのを感じる。
「ショウさん!?大丈夫ですか....!?」
「ぐっ....お前ら....来い....」
俺は手をあげて2人に合図を送る。
ガジガジ
コアラはトドメをさすように噛みつく。
「あとは頼んだ....」
俺はその場で倒れ臥してしまった。
「ショウ....!?急ぎましょう....!」
「は、はい....!」
2人は急いでショウの元へ駆け寄る。
ツンデレちゃんはヒールを、メリッサは言われた通り枝を持ってコアラと対峙する。
「ショウ....大丈夫....?無茶するなって言われてたのに何してんのよ....!ま、、間に合うわよね....?メリちゃんごめんコアラを頼むわ....!」
若干パニック状態に陥っている様子だ。
「え、ええ。任されたはいいんですが....」
「やっぱりきついわよね....ショウをモンスターに担がせて逃げましょう」
ヒールを唱えながらツンデレちゃんが言う。
「....コアラさん、寝てます」
「....え?」
コアラは寝ていた。
コアラが眠っているところとか絶対可愛いですよね。
次話も早くにあげられるかもしれません。




