第13話 太陽燦燦
クリスマスに投稿していますが一切クリスマス要素はございません。
スライムを倒してひと段落....つきたいところだが、別に体力が減っているわけではないのでそのまま探索を続ける。
このメリー草原にはモンスターだけでなく薬草などのアイテムも所々に生えていたり落ちていたりするので、それもしっかりと集めて強敵戦に備えておきたい。
「あ、ここにも薬草生えてるわ」
「結構いっぱいあるんですね....」
「確かにここら辺は薬草が多く生えてるな」
ゲームのマップではキラキラしてるだけだったが、こちらの世界ではしっかりと草として生えてて草生える。全く面白くないけどちょっとしたボケを言うために笑わなきゃいけないのって辛いね。
そんなどうでもいいことはさておいて、薬草は多いに越したことはないのでどんどん集めていきたい。万が一ツンデレちゃんの回復等が間に合わなくても薬草などの回復アイテムがあれば自分で食べて回復できる。
いや待てよ、この薬草ってさっきまで土に埋まってたやつだけどこのままで食べられるのだろうか....?土が根っこのところとかについたままだけど水洗いとかしなくていいのかな....?一応帰ったら水洗いしておくか....
薬草なんてすぐに手に入るのになんで道具屋で売ってるんだろうとか思ってたけど水洗いするための手間賃なのだろうか。いやそれにしても銅貨10枚は高いだろう。銅貨1枚でも高いと思うのだが。
全く関係ない道具屋に対して文句たらたらになっているが、探索自体は順調でさっきからスライム2体の討伐とそこそこの量の薬草の入手ができている。
「あ、また薬草あったわ」
「なんか、ツンデレちゃんと薬草って互いに引かれあってるみたいですね....」
悪意は全くなくただ淡々と事実を述べている、ように見える。
「そう言われても全く嬉しくないわね」
少しむすっとしながらもテキトーに話を流すツンデレちゃん。
ちょっとからかってみようか。
「確かに薬草がたくさん取れちゃったらツンデレちゃんの役目がほとんどなくなっちゃうからな」
実際には薬草で回復する時には相応の時間をかけるため僧侶が薬草に仕事を取られるなんてことはほとんどないのだが。
「えっ....?い、嫌だわよ....?まだ私一緒に冒険したいわよ....?」
「んー、でもこんだけ薬草あったらそろそろ自宅待機でもいいかもなぁ」
「そ、そんな....!?じょ、冗談だわよね....?」
なんか目に涙を湛え始めてるし、かわいそうになってきたからさすがにもうやめてあげるか。
「うん、冗談だよ」
パチーン
頬をにツンデレちゃんの掌がすごい勢いで当たって快音が草原中、いや世界中に鳴り響いた。メリッサは口をあんぐり開けている。スライムもナメナメクジもプルプル震えているようだ。
ペッ
ナメナメクジは粘液を飛ばしたかっただけのようだ。
「そ、そんなに冗談にマジにならなくても....今までのより全然痛い....」
まだ頬がピリピリ痛んでいる。
「フンッ、そんなつまらない冗談言う方が悪いのよ」
「悪かったって....」
「つ、ツンデレちゃん、なんで僧侶なんかに....絶対武闘派の役職の方が活躍できそう....」
それには激しく同感できる。というか僧侶のままでいいから回復担当じゃなくて戦闘担当になってほしい。
「なんなのよ!さっきからみんなして!....もういいわ、あの木の陰に行って休憩しましょ」
ビンタするのに体力を使ったのか、休憩を提案してきた。確かにあの木の近くは平坦だし、少しひらけているし、薬草らしき草も生えているし、ひまわりが一本生えてるし....
ん?ひまわり....?
「ちょ、ちょっと待って....」
俺はツンデレちゃんに声をかけて制止しようとする。
「ん、何よー....ってえぇ!?ひまわりが....!ひまわりが....!」
しかし時すでに遅し。
「ひまわりが動き出したわ....!?!?」
「ほ、ほんとだ....!」
ツンデレちゃんとメリッサは動くひまわりに驚いている。
「間に合わなかったか....っていうかデジャヴすぎるだろ....」
こいつはヒマワリマン。マンとついているがNPCだとか仲間だとかではなくただ単に人型モンスターなだけだ。茶色い顔の周りにひまわりの花弁のような黄色いものがついており、胴体も緑色で、葉っぱのようなものが左右に交互に付いている。基本的に太陽の方向を向いて静止しているので、遠くから見ると向日葵にしか見えない。しかし近くに敵が来ると急に動きが活発になり攻撃を開始するという特徴を持ったモンスターだ。
『M蒐』ゲームプレイヤーからしたらあからさまに向日葵が一本だけ生えているおかしな状況なので、仮に本物の向日葵だとしても警戒する場面だが、ツンデレちゃん等のなにも知らないNPCからしたらただの向日葵だと思うに決まっている。
事前に教えておけばよかったと後悔するが、近くに行ってしまったツンデレちゃんに指示を出す。
「それ以上は近づくな!」
「分かったわ!」
驚き立ち止まった状態からさっと後退し始める。
いやそのレスポンスは早いな。だったらさっきのちょっと待てって指示もさっと聞いてくれよ。こっちにも戦う相手によって色々作戦を考えなきゃいけないんだから。
ツンデレちゃんの素早い回避は功を奏し、なんとかヒマワリマンの葉っぱによる切り裂き攻撃を間一髪躱した。
「ヒマワリマンは序盤にしては強いんだ、特に遠距離への火の魔法が強力で付加効果として火傷を負う可能性もあるからそれだけは当たらないように!」
やけどになると一定時間おきに体力がどんどん減らされていくという悪魔のような効果が付与される。毒よりも効果が強く、治すための手段も少ないので対ヒマワリマンは序盤の鬼門とされている。しっかりと対策をしないで生半可な状態ではこちらがやられてしまう。
「わ、わかった....!」
「あとツンデレちゃんは俺らの回復を頼む!」
「わかったわよ!無理はしないでよね!」
ツンデレちゃんが回復魔法の詠唱を始める。
直後、ヒマワリマンが魔法の詠唱をしだす。
「まずい....!」
詠唱から発動まで少し時間がかかるが、回復魔法の詠唱の方が攻撃魔法よりも詠唱時間が長いため、ツンデレちゃんが狙われたら避けることができない。
どうすれば....詠唱の急な中断がNPCにできるかどうか怪しい....
ヒマワリマンの詠唱はもうすぐ終わりそうで、おそらくツンデレちゃんに飛んでくるだろう。ここは身を挺して守るべきか....いやしかし火傷の付加効果を治せる薬などは持っていない....
くそっ....クエストを受注できればやけどを治せる薬が何個かもらえているはずなのに....
待て、もしかしたらこれで行けるかもしれない....
「スライム!水鉄砲だ!」
スライムは意図を理解したのか、ツンデレちゃん目掛けて飛んでくる炎に水鉄砲を当てた。すると、放たれた炎は水により消化され、消えていった。
「よし....!うまくいったぞ....!」
炎系のモンスターの弱点は水なので、炎の魔法に水をうまく当てれば打ち消せるのではないかと思ったが、思惑通りに行ったようだ。
というかさっきのスライムのエイム力高かったな....飛んでくる魔法にピンポイントで当ててたぞ....
なんとか危機を乗り切り、ツンデレちゃんからヒールの魔法が入る。
「さて....どう倒すか....」
このヒマワリ、水が弱点なのは間違い無いのだが、スライムをいざというときの火消しに残しておかなければいけないため、攻撃は他に任せるしか無いのだ。
うまい具合に物事が運んだせいで忘れていたが、こいつ誰で倒そう。やっぱり高火力な剣士が欲しいよ....
思ったより長くなったので決着がつくのは次話に持ち越しとさせていただきます。




