小さな禊の代償
『---さてこれからお話ししますのが、これからあなたに起こることの予言です。』
息を呑む。
『この後家に帰る前に、必ずこれからお伝えする禊を行ってください。』
禊とはなんのことだろう、と考えるやいなや老婆は言葉を続ける。
『徒歩で帰るならば、電信柱を一度、足で蹴り、足の裏に付いた土を落とすようにしなさい。電車で帰るならば、きっぷを一度口にくわえなさい。』
『何を言っているのかわからないと思うが、そうしないと必ず悪いことが起こる。』
何を言っているのかわからないのだが、そんなことをしなくても、悪いことなんて起こるわけない。
「そうか、それじゃ」
占い料の2000円を置いてそのまま歩いて家路についた。
こんな寒い夜に道の隅で座って人を占っているなんて、よほどの物好きなのだろう。
そんなのに捕まって2000円を払うなんて俺も馬鹿だなぁ。
歩き携帯で親にメールをする。
「いまから帰る」
寒いしさっさと家に帰って温かい風呂に入って炬燵でみかんを食べたい。
この十字路を曲がったらすぐ家だ。
曲がることができたら、家に帰ることができたのに。
自転車が猛スピードで突っ込んで来た。体が吹っ飛び、急ブレーキの音があたりに響く。
そしてもう意識はない。
---次の日、22歳男性が家の近くの十字路で亡くなったというニュースが小さくローカルニュースで取り上げられた。自転車は、時速30キロ、無灯火で運転しており、もれなく捕まったとのことだ。




