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キャンプでトラブル

 神様との遭遇イベントなんて事件があり、さらに旅は続く。

 続いていたのだけど。

「あー……やっぱ、このペースで行くと札幌近郊で時間切れになるな」

 飛ばすつもりもないし、そもそも昨夜は徹夜だった。

 やはり、早々に切り上げて休むのがいいだろう。

 適当なコンビニで休みつつスマホで地図をチェックする。

「この近郊だと……安全をとるなら洞爺湖畔だな」

 昔愛用した洞爺村の無料テントサイトみたいなところは、もうないっぽい。

 代わりに有料のキャンプ場がいくつかあり、これらは今もおそらく生きている可能性が高い。

 もうニセコも過ぎているし、ここからだと、少し戻る事になる。

 だけど疲れてるし、知らないところは避けるべきだ。

 俺はそのままUターンして、洞爺湖畔を目指した。

 

 

 最寄りのセイコーマートで軽く買い物。

 で、それから、目についた1つ目のキャンプ場に行ってみた。

 現地について見ると、そこは基本的にオートキャンプ場……なのはいいんだけど、明らかに単車のキャンパーは歓迎してない雰囲気だった。

 遠回しに「オートバイの人はよそへ行って」と言う案内のおばさんに笑顔で「ええ、よそがよさそうですね」と笑顔で答え去った。

「ん」

「ああ、ありがとな」

 俺が沈んでいるのを察したんだろう。ノルンが頭をなでてくれた。

「まだ時間はある、歓迎してないところに無理に入る事はないさ」

 

 次に行ったキャンプ場は、雰囲気はいいし単車もいたけど、駐車場に単車を置いて荷物運びする必要があった。

 それに……なんとなく空気が肌寒い気がした。

「悪くはないんだけどなぁ」

 また時間はある。

 もうひとつ候補があったので、そこと比べてみる事にした。

 

 最後に行ったところは、最初のと同じキラキラのオートキャンプ場だった。

 一瞬、こりゃダメかなと思った。

 けど窓口の人がこっちを見てイヤな反応をしなかったので、ダメ元で声をかけてみる事にした。

「バイク一台ですか?」

「はい、泊まれますか?」

「ええ、今日は大丈夫です」

 どうやら普通に応対してくれるっぽい。

 単車の区画は決まっているが、代わりに単車をテントのすぐそばまで入れてよくて、しかも転倒防止の板まで貸してくれた。

 いたれりつくせりじゃねーか。

 しかもシャワーなどもあり、さらに売店やってる時間なら酒も買えると。

 うん、ここにしよう。

 単車一泊と管理費で800円するが、環境とサービスの対価と思えば悪くないだろ。

 指定の通路を単車で通り、指定のテントサイトに乗り込んだ。

「おぉ」

 めちゃめちゃ綺麗な芝生じゃないか。すばらしい。

 単車は俺が最初らしい……まぁ夕刻までには一人、ふたりくらいは来るだろうけど。

 サイドスタンドの下に借りた板を敷き、単車を停める。

 そしてテントの設営に入ったんだけど。

 

 ───ビリッ。

「あ」

 

 謎の中華製テントだし、ちゃんと家でテストも防水シールもしてきた。

 なのに。

 

 一泊目でフライシートが破れちまった……。

 うおぉぉぉいいいいいっ!?

 

 と、とりあえず破れた部分をダクトテープで塞いだ。

 いくらなんでも今から、あてもなく大きな街にいってテント探しをするつもりはないし、宿に逃げるほどの悪天候でもないだろう。

 やれやれ。

 今夜はこのまま夜を過ごすことにしよう。

 

 はぁ……なんか疲れちまった。

 しかし、キャンプ開始前にひとつ、やることができた。

「えーと……検索検索」

 中華製テントの修理なんて引き受けてくれるところは少ないだろうし、あっても即日なんて無理。

 すると代わりのテントを現地購入する必要があるが、単車用のツーリングテントなんて、現役の地元民でもない人間がいきなり北海道内でゲットするのは難易度高すぎる。

 だが手はある。

 山岳テントを登山用品店で買えばいい。

 

 名だたる名山があり、シーズンには縦走するような山男も昔からいる土地には、必ずといっていいほど登山用品店が、場合によってはメーカーすらもある。

 北海道内には言うまでもないが名山がたくさんあり、もちろん、登山用品店だって確実にあるわけだよ。

 ただ問題は、このお休みにやっているかどうかだな。

 できれば旭川が希望なんだが。

 もしもダメなら札幌に行くしか無いが……さて、どうかな?

「おー、あった!」

 懐かしい名前がヒットした瞬間、懐かしい記憶がほどけた。

 そうそう、あったよそんな店……内地暮らしですっかり忘れてた。

 北海道といえば秀岳荘。

 札幌と旭川に店舗をもつ、北海道の山関係では超有名な登山用品店だ。

 よかった、元気に続いてたんだな。

 

 さて、やってるかな?

 番号をタップし、旭川店にかけてみると普通に電話は出た。

 さっそく営業状態と、在庫しているテントの種類について確認してみた。

『ツーリング用でなく山用になりますが、よろしいですか?』

「もちろんかまいません」

『登山用としては多少重くなりますが……』

「いいですね、詳しく伺っても?」

 ある程度のお金は仕方ないが、限度がある。

 山岳用のテント、それもダブルウォールのドーム型は設営の速さと耐候性は確かだけど、大抵は狭いし夏の平地は暑い。

 俺は戻ってからもキャンプはする予定だけど、あくまでキャンプ場を使うつもりだ。当然、買い替えや買い足しの可能性があるわけで、高額テントは勘弁してほしい。

『それでしたら、このあたりでいかがでしょう』

「ああ、よさげですね。旭川店で在庫ありますか」

『はい、あります』

「では買いに行きますが、場所は旭川の商店街でいいですか?」

『は?』

 ん?何かあったかな?

「あ、もしかして移転しましたか?その、前に行ったのはずいぶん昔なんで」

 少し当時の説明すると、電話の向こうの人が「ああ」という反応になった。

『はい、今は移転しています』

「そりゃ失礼しました、今の場所をお聞きしても?」

『はい』

 だいたいの場所を聞き、スマホで調べる……行けそうだ。

「わかりました、では明日伺います、よろしくお願いします」

 そういうと電話を切った。

「はぁ、やれやれ……とりあえずなんか食うか」

 

 景色のいいところで食べようとして食べ損ねたおにぎりが数個あるので、まずはこれを食う事にする。

 あとはお茶でも入れるか。

 水場にいって、1リッターのボトルに水を満たして戻ってきた。

 荷物をまさぐり、ストームクッカーを取り出し組み立てた。

 ストームクッカーセットの中にはミニケトルがある。

 これはせいぜい、カップラ1杯分しか沸かせない小さなものだけど、もちろんソロの俺は全然問題ない。

 ケトルにお茶1杯分の水をいれる。

 前室のところに置いて、バーナーにメタノールを注ぎこんで火をつけ、ケトルを乗せる。

 アルコールコンロは燃焼音が皆無とはいわないが、非常に小さい。空気が対流しながら燃える際に多少の音を出すのだけど、ガスやガソリン、灯油などに比べると冗談のような小さな音でしかない。

 その静けさが好きだ。

 まぁそのかわりに火力が低いわ、コントロールも面倒くさいわという代物なのだけど、今回は炊飯も炒めものも考えていないので問題ない。メタノールなら家に余りまくってたしな。

 ラーメンや軽い蒸し物くらいなら、こいつで事足りるし。

 そんなこんなをしていたら、ノルンがピクッと反応した。

「どうした?」

「……見回りしてくる」

「わかった、迷子になるなよ?」

「ういっす」

 そういうと、ノルンはスーッと飛んでテントを出ていった。

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