ゲームとお風呂
このところ、珍しく急ぎの仕事が入っていた。
ただ問題なのは仕事量でなく内容で、要調査の項目について作業外の時間で調べていたもんだから、久々に睡眠時間を削る事になってしまった。
え?仕事持ち帰り?
といっても仕事じゃないんだよなー……要するにこれは仕事のための事前の調査ってやつだ。
たとえばさ、株式で使うデータチャートを作ってくれと言われたとするだろ?
パソコンやスマホでグラフや表を表示する方法はいくつかあるけど、たとえば株式関係で使うロウソク足チャートあたりになると、それこそ株式関係をやらなきゃまず知らないと思う。
すると事前に知識として株価のことや、ロウソク足チャートの仕組みと使い方を最低限知らないと、求められたものを作るのは難しいと思うんだよね。
で、この部分の学習は……その部分を仕事とは言い難いんだよなぁ。
いや、それも仕事と言い切るのは簡単だけど、そこでそれをやると当然、株式の知識のある別の人に仕事を持って行かれる事になるんだよ。
もちろん急ぎの仕事なら、それでいい。ためらわずに自分より詳しい人を推薦する。
けど急ぎでないものなら、どうせなら概要だけでも知っておきたいじゃないか?
どこまでが仕事で、どこからが単なるお勉強タイムなのか、俺も微妙ではあるけどね。
まぁいい、一段落した仕事の事は忘れ、頭を休める事にする。
この間買った、メイドさんで遊ぶパソコンソフトを起動。
このソフト面白いんだよなぁ。
元々はまぁ、ぶっちゃけるとエッチなゲームなんだけど、実のところゲーム本編は正直どうでもいいというか、まあ一回見たら、うんそうだねって感じのものだったりする。
このソフトが面白いのはそこじゃなくて、キャラクタメイキングなんだよね。
つまり、ストーリーに欠かせない登場人物も含めた全員の姿をユーザーが自由に変更できて、さらに新しい関係者を作成・追加できる点にある……さすがにメインストーリーに絡ませるのには条件があるようだけど。
また撮影モードがあり、これらの人物をゲームの舞台である場所に好みに配置して撮影することもできるし、有志が作成した容姿や衣装のデータを組み合わせて遊ぶこともてきる。
結果、このソフトが好きな人たちはゲームストーリーを楽しみたい人でなく、3Dの箱庭で遊びたい人たちらしい。
みんなゲーム本編なんぞ置いてけぼりで、自分好みのメイドさんを作り、動かして楽しんでいるわけだ。
え、なんじゃそりゃって?
うん、俺もそう思ってたよ……このソフト買うまではね。
最初、メイドさんの髪をなんとなくサワナさん風にしていたんだけど、実際に見て触って揉んでみた体験を生かして、おっぱいのサイズや形なんかもサワナさんにあわせてみた。驚くほどの再現率で、ぽよんと元気にたわむデジタルのおっぱいを見ていて、俺は確信を深めた。
「こりゃあウケるわけだよ……」
3D系フレームワークによるゲームってあまり縁がないもので、勉強がてらと買ってみたけどさ。
これは楽しい、予想以上だ。人気が出るのもうなずけるわ。
何より、自分が作った人物がホイホイしゃべり、動き回るのが楽しすぎる。
すっかりサワナさん風になったメイドさんをさらにいじくり、髪型ってこんな感じかな、伸ばしても似合うんじゃね?束ねたら?なんてやっていると、そんな俺に飽きたのか好きにそのへんの本を読んでいたノルンたちが一斉にピクッと反応した。
「む?」
「きたよー」
「おっと」
急いでパソコンをセーブして閉じていると、ひょっこりと現れたのはサーナ。
「まこー……まんま?」
しまった、消える直前の一瞬の画面を見ちまったか。
「サーナ、お母さんはどうした?」
「まんま?」
「まんまじゃないだろ……ははぁん、また逃げてきたんだな?こら!」
「きゃー!」
笑顔でキャーキャーいって逃げ出すサーナをおいまわし、これでもかと撫でくりまわす。
くすぐったそうにケラケラ笑い、さらに駆け回るサーナ。
はぁ、はぁ。
よし、ごまかせたかな?
え?
変な画面見られたから誤魔化すとか最低の父親?
いやいや、衣装選択だから!ただのメイド服だから!
そこは誤解しないでほしい!
……え?ゲーム自体がいけない?あー……すみません。
「はぁ、はぁ……わ、わかったか。お母さんに黙ってきちゃダメなんだぞ?」
「うん!」
「……全然わかってないな?」
「うん!」
だめだこりゃ。
落ち着いてきたところで目線をあわせてそう言うと、満面の笑みで元気なお返事。
返事はいつだって元気なんだけどなぁ。
頭をかいていたら、背後からノルンたちのツッコミがきた。
「しかってる?」
「いみないー」
「ぎゃくこうか?」
やかましい。
……ああうん、わかってるんだけどさ、全然お叱りになってないよねコレ。むしろ喜ばせてる。
けどまぁ。
サワナさんの話によると最近、遊びに行く先が俺のとこ固定に近くなってるようで、助かりますとか笑顔で言われちまってるんだよなぁ。
うーん。
サーナが男の子なら個人的には、もっとよそにも遊びにいけって言うんだけど、女の子だしなぁ。こういう時は、どういう指導をするのが正しいんだろう。
あいにく子育ての経験がなく周囲に質問できる人もいない俺には、さっぱりわからない。
ちなみにサワナさんもサーナがはじめての子供らしく、これまた不明。
「サーナ」
「おやつまだ!」
「……ホントかぁ?」
「ホント!」
「……お母さんに確認していいか?」
「う」
「で、ほんとは?」
「……ちょっとだけ」
「そうかそうか。では、ちょっとだけな」
「うう……」
「おやおやぁ?悪い子には、おやつをあげないぞぅ?いいのかな?」
「やだ!」
「だったらウソはいけないな?」
「うー……たべた」
「よし、いい子だ。ではちょっとだけだが、美味しいのをあげよう」
「!」
ごめんなサーナ、実はウチにあるのもおやつの一部なんだ。
おまえの母ちゃん、しっかりと、俺が結局あげちゃう事まで織り込み済みなんだよ。
……ごめんな?
さて、遊び呆けてて気づいたんだけど、サーナの服はちょっと汚れているようだ。
まぁ子供だし、駆け回って汚れちゃったんだろうと思えば別にかまわない。
汚れたら着替えればいいし、洗えばいいだけだ。
とはいえ。
さすがに着替えとなると、お母様に確認が必要だろう。メッセージを飛ばしておく。
『飴ちゃんあげた。服汚れてるけど、着替えは?お風呂は?』
ちょっと待つと返答きた。
『一時間後に着替えもって行きます。お風呂頼んでいい?』
『わかった、今からお湯張る』
だんだん遠慮なくなってきたな、よしよし。
うちはお湯をはるタイプなので、スイッチ操作して給湯開始しておく。
部屋に戻ると、いつものようにノルンたちがサーナの相手をしている。
人ではないとはいえ、精神年齢的に近いのがいいようで、遊びは盛り上がっているようだ。
「……って、何やってんだか」
なんか懐かしい音がすると思ったら、モニターに昔のゲーム機つないでやがる。
うちはテレビがないんだけど、コンポジット・HDMIコンバータという道具経由して古いゲーム機で遊べるようになってる。
個人的にはただの技術的興味で、つまりコンバータをたまたま入手したので構築してみた環境にすぎないんだけど、ちびっこたちにはいい遊び道具らしい。サーナの年代的に謎解きなどはできない事もわかっていて、ちゃんと楽しめるゲームをセレクトしている。
よしよし。
しばらくのんびり見ていたら、お湯はりが終わったアラームが鳴り出したので停止し、サーナに声をかけた。
「サーナ、お風呂入るぞー」
「おふろ!」
やっぱりそこは女の子なのか、お風呂はわりと好きらしい。




