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魔法世界の剣術士 中  作者: 相會応
登場人物 用語 上巻各章あらすじ 
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上巻あらすじ ~ウルの呼び声~ ☆

 ヒガシ魔女マジョが消えた

 

 昏睡状態から数日ぶりに目覚めた天瀬誠次あませせいじであったが、待っていたのは光安こうあんと呼ばれる組織からの拷問まがいの取り調べであった。なずなの仲裁により、暴力は止められたが、新たな脅威を感じずにはいられない事となった。

 共に日本科学技術革新連合本部へ向かっていた八ノ夜はちのやにより、誠次は数年ぶりに山梨県の家へと向かう事になる。その車には、レ―ヴネメシスで凶星の部分とされていた少女が乗っていた。科連本部での戦いの後、八ノ夜が引き取っていたのだ。

 懐かしい思い出を蘇らせながら、新たにレヴァテインと少女と共に山梨の家へと、療養のために帰って来る誠次。人として生き、話すことを止められていた少女を不憫ふびんに思った誠次は、少女に心羽ここはと言う名前を付けてやり、山梨県で共に過ごすようになる。

 心羽も誠次に心を開いて懐き、本来の女の子らしい感情を取り戻していく。

 一方その頃、誠次がいないヴィザリウス魔法学園に、ロシアから二人の転校生がやって来る。ルーナ・ヴィクトリア・ラスヴィエイト。クリシュティナ・ラン・ヴェーチェル。魔法世界となって作られた、旧国際連合に代わる新たな組織、国際魔法教会の命を受けた二人の少女は訳合って、剣術士と呼ばれる天瀬誠次に接触しようとしていたのだ。

 ところが誠次は現在山梨県におり、ヴィザリウス魔法学園を長期で休んでいる。すぐに終わると思っていた二人の任務は、思わぬ足止めを喰らう事になったのだ。早々に任務を終わらせようとしていた二人の意向に反し、日本の魔法学園での学園生活は、なぜか充実していくのであった――。



 贖罪の山羊スケープゴート~メーデイア Fallen 解放戦カイホウセン Snow...


 山梨県にいる誠次と八ノ夜と心羽は、心羽の為と日常生活に必要な物の買い足しの為に、大雨の予報の中、山梨県に新しく建てられていたショッピングモールへと向かう。僅かばかりに芽生え始めている心羽の思春期の感情にたじたじとなりながらも、誠次と心羽は八ノ夜と一旦別れて買い物を楽しむ。

 そこへ、襲い掛かって来たのは、外国人の傭兵部隊であった。裏切者を探していると言う言葉を受けながらも、まだ薬物の影響の残る誠次はレヴァテインを抜き、エンチャントもない中で立ち向かう。途中何度も復活するダルコと言う男に苦戦するが、偶然にも戦場に居合わせた兵頭の援護もあり、どうにか撃退に成功する。

 しかし戦闘の結果、自身の過去への贖罪しょくざいの為にも、誠次と人々を必死に守っていた心羽が深手を負い、意識不明の重体となってしまう。心羽を命の瀬戸際で救ったのは、かつて心羽によって大勢の仲間が傷つけられる現場を見知っている、特殊魔法治安維持組織シィスティム専属の医師、草鹿智鶴くさかちづると言う女性と、同組織第五分隊の隊長、松風柚子まつかぜゆずであった。

 実はレ―ヴネメシス壊滅と同時期頃から、特殊魔法治安維持組織シィスティム本部を光安が占拠する事態となっており、隊員たちはほぼ監禁状態となっているのだった。

 そんな現状を打破しようと、台場の特殊魔法治安維持組織シィスティム本部では一人の男が行動を開始した。第七分隊隊長の、佐伯剛さえきつよしである。

 光安の行動に不信感を抱いていた佐伯は、局長である志藤康大しどうこうだいの元へ、光安に連れられる日向蓮ひゅうがれんの後を追い、単身で向かう。局長室にいたのは、度重なる幻影魔法で衰弱しきった状態の、志藤康大だった。この事態に佐伯は激昂し、咄嗟に魔法を使用して志藤康大を庇う行動を起こす。その行為を逆手に取られ、また日向からも敵と見なされ、佐伯は本部内で反逆者として、志藤康大と共に追われる身となってしまう。四面楚歌の状況の中、奮戦し、第七分隊と第五分隊の僅かな仲間の決死の協力もあり、どうにか影塚広かげつかこうと共に本部からの脱出に成功する佐伯であったが、上空より監視する鷹の目イーグルアイが、佐伯に引導を渡す。

 満身創痍の身になりながらも、影塚と志藤康大の身の安全を優先させた佐伯は、降りしきる雨の中、かつての仲間であった日向蓮によって処刑される。

 佐伯の死は多くの悲しみを呼び、命に代えても父親を守ってくれた者の存在に、子である志藤颯介しどうそうすけも大きな衝撃を受ける。

 遠回しに本部の現在情報を察知した誠次たち山梨県の面々は、詳しい状況を確かめるために台場へ向かう。下手に動けない八ノ夜を差し置いた誠次が本部潜入を行い、サポートとしてクラスメイトの夕島聡也ゆうじまそうやの兄である、夕島信也ゆうじましんやが共に行動する。

 潜入の最中、何も知らずに本部に来たヴィザリウス魔法学園の生徒会長、波沢香織なみさわかおりが光安の男に襲われそうになっている現場を、誠次はレヴァテインを振るって救出する。多くの戦闘を乗り越え、また兵頭との特訓により、誠次も着実に力をつけていた。

 香織を連れて本部撤退の際、新局長に就任していた新崎和真しんざきかずまと遭遇した誠次は、例え立場が違えど人を守る事が出来るのに変わりはないと、自身の決意を告げていた。

 特殊魔法治安維持組織シィスティム本部から誠次と伸也が持ち帰った情報には、衝撃的な事実があった。それはクリスマスイブ当日、香織の姉である波沢茜なみさわあかねが裏切者の魔術師の牢獄、メーデイアで処刑されるとの事であった。茜の無実を信じる一同は、茜の救出作戦を決定。

 誠次もまた、自分が憧れていた組織の現状に憤りを感じながらも、自分の信じる道を進み続ける為に、この作戦の必要性を訴えていた。

 雪が降るクリスマスイブ当日。誠次と香織は゛捕食者イーター゛に捕食寸前の状態となっている茜を前に、八ノ夜の制止を振り切り、解放戦に臨む。

 メーデイア側も犯罪者を開放すまいと、新崎が予め与えていた剣術士の情報を元に、完全な対策を講じていた。人を喰おうとする゛捕食者イーター゛を前に、尚も争い合う人と人。香織の悲しみと、誠次の怒りが頂点に達した時、待ち侘びた援軍がメーデイアに現れる。そこには、かつて誠次と敵対した者もいた。

 三つ巴の激戦に勝利し、茜を開放することに成功した誠次であったが、最後の最後で力尽き、光安に捕らえられる。その場で処刑されかける誠次であったが、助けに現れたのは月を背に、銀世界で羽ばたく一体の竜であった――。



 リュウ揺蕩タユタい、トラける~二人フタリだけの王国オウコク


 一か月ぶりにヴィザリウス魔法学園に復帰した天瀬誠次。メーデイアで激戦を繰り広げたが、誠次のことはそこまで表沙汰になっておらず、八ノ夜の言葉通り、復帰に支障はなかった。

 友との再会を喜び、久しぶりの学園生活を穏やかに過ごそうとする誠次であったが、二人の少女が現われる。ロシアのガンダルヴル魔法学園から転校してきた、ルーナとクリシュティナであった。

 ルーナとクリシュティナは、元々オルティギュア王国の生まれの姫とメイドと言う身分だった。オルティギュアとは、かつてロシアよりさらに北の果てにかつてあった小国であり、二人の少女は祖国の復活の為に、天瀬誠次の身柄を要求してきたのだった。国際魔法教会の命令に従うしかない二人の境遇を不憫に思うのであったが、さすがにヴィザリウス魔法学園を離れる気はなく、ロシアまで来てほしいという二人の要求を誠次は断る。

 だが、ようやく舞い込んだ獲物を、二人が早々に手放すことはなかった。取り分けクリシュティナは、国を失った姫と言う身分のルーナ以上の強固な意志を感じさせるものであった。

 クリシュティナの提案により、誠次とルーナは恋人のようなデートをすることに。行く前は緊張こそしていたルーナであったが、誠次と一日を過ごすうちに、次第に笑顔も見せていく。誠次もまた、王国のお姫様と言っても、普通の女の子と変わらないようなルーナの姿に、心から同情するようになっていく。

 最終的はお互いの価値観の違いもあり、微妙な空気で終わってしまったデート。

 クリシュティナもまた、隠していた本心を女子の友だちに打ち明けた際の反応に、心の中では苦悩するようになる。二人とも日本で長く過ごすうちに、次第に感化されていったのだ。

 一方、誠次と香月こうづきは話し合い、ルーナとクリシュティナを為に協力することは出来ないか、道を模索し始める。香月も、せっかく出来た友だちを大切にしたかったのだ。

 誠次は二人の為にとクリシュティナに踏み込んだ話を持ち掛けるが、国際魔法教会を深く信じるクリシュティナにその声は届かず。クリシュティナには兄がおり、その兄は祖国を゛捕食者イーター゛に滅ぼされた際に救援に来てくれた国際魔法教会の幹部をしていたのだ。

 問題は国際魔法教会にあると、クリシュティナに拒絶された誠次は自分が国際魔法教会と交渉することは出来ないかと、ルーナに持ちかける。

 ルーナもより良い解決法を望み、誠次たちと力を合わせることを約束する。

 年を跨ぎ、初詣の日。自らの行いの過ちを謝罪しようとしていたクリシュティナであったが、痺れを切らした国際魔法教会が、ベルナルト・パステルナークと言う傭兵を二人の元へ向かわせていた。互いの信頼関係を巧みに利用したベルナルトの魔の手に二人はち、行方を暗ませてしまう。

 誠次たちはルーナとクリシュティナの捜索を開始するが、その過程で志藤颯介が、エレーナと名乗るロシア人の女性に捕まってしまう。ベルナルトとエレーナ。二人はかつて、共に誠次たちを山梨県で襲撃した外国人傭兵部隊の仲間であり、今は敵同士の関係であった。

 ベルナルトに復讐の機会を窺うエレーナから持ち掛けられた協力の話だったが、かつて心羽を傷つけられた事を思い出した誠次はその手を握る事を渋る。結局、他に方法はないとの事で、志藤がエレーナと契約を交わす。

 向かった先は都内某所の博物館、その地下。ベルナルトがよく利用する場所だとの事であったが、ベルナルトは狡猾だった。証拠を人もろとも隠滅しようと、博物館の地下に広がっていたダンスホールに部下を使って火を放つ。窮地を迎える志藤とエレーナであったが、志藤の咄嗟の行動により、どうにか難を乗り越える。

 一方、博物館内では、誠次と香月がベルナルトの部下との戦闘を行っていた。エンチャントも使わずベルナルトの部下を圧倒する誠次と香月であったが、あと一歩のところで取り逃がしてしまう。しかし誠次が取っていた部下の電子タブレットには、ベルナルトへの連絡先が。そして、ベルナルトの方も誠次への山梨県での任務失敗の因縁を晴らそうと言う思いがあり、会話の後、場所を指定する。二人がベルナルトに誘拐された現場の神社であった。

 やがて、指定された神社にやって来たのはベルナルトと、グングニールと呼ばれる槍を持ったルーナであった。ルーナはクリシュティナを人質に捕られ、苦悩の末、ヴィザリウス魔法学園の友との敵対の道を選んだのである。

 僅かな迷いを覗かせながらも、ルーナは誠次たちへの攻撃を開始。ベルナルトをエレーナと志藤が追いかけ、誠次と香月はルーナを止めようと戦うが、空中を自在に飛び回るルーナの戦い方と、この戦いに対する迷いから、苦戦を強いられる。

 一方でベルナルトを追いかけていたエレーナも、ベルナルトの魔法に敗れ、倒れてしまう。志藤はありあわせの知識と戦術で単身ベルナルトに挑むが、戦闘を生業なりわいとするプロの傭兵に敵うはずもなく、あえなく瀕死の状態まで追いつめられる。

 誠次と負傷した香月の元へ駆けつけたのは、桜庭さくらば篠上しのかみ千尋ちひろの三人の少女だった。誠次は篠上の魔法チカラを借り、ルーナへ空中戦を挑むが、慣れない空中戦での劣勢は変わらず。ついにはルーナの使い魔であるファフニールが召喚され、かつて自分を救ってくれた竜をも相手をすることになる誠次。得意な空中戦でルーナは誠次を翻弄し、ついには誠次の握るレヴァテインを破壊し、彼を地上へ叩き落す。

 ベルナルトの命令では殺害を命じられていたルーナであったが、使い魔のファフニールにはその揺れる心中を察しされており、ルーナの目の前で瀕死の状態の誠次を食い、ファフニールは涙を流すルーナの前から羽ばたいて行ってしまう。

 志藤の方には、帳悠平とばりゆうへい小野寺真おのでらまこと、夕島聡也の三人の男子が、救援に駆けつけていた。

 それでもベルナルトは圧倒的な力で、三人の魔法生を相手にするが、立ち上がった志藤の指示を受け、ついにはその戦闘に対する適応力の高さを覗かせ、逆にベルナルトを追いつめていく。

 しかし、肝心のベルナルトの捕縛には、あと一歩のところでクリシュティナの使い魔である白虎パイフーに攻撃を阻まれ、失敗してしまう。四人とも限界まで戦っており、どちらにせよこれ以上の戦闘は不可能であった。

 ファフニールにまたしても命を救われた誠次は、ファフニールから衝撃の話を聞かされる。それは、かつてはこの地球には、恐竜や微生物の時代より前に、すでに一つの人間の時代があったという事であった。その時代には魔法があり、人々は魔法を基にした魔法文明を築いていたとも言う。長年に渡り、人と神とが争い合っていたと言う戦乱の時代でもあったが、最終的にその時代はスルトと呼ばれる人の王が放った炎により、文明の消滅という形で幕を閉じたと言う。

 そして今。レヴァテインは折れたが、まだ自分の信念や意思は完全に死んではいないと言い切る誠次に、ファフニールは厳しい言葉を浴びせる。それでも立ち上がろうとする誠次に、ファフニールも力を貸すことを決める。ファフニールは使い魔として、今は操られているルーナを救おうとしていたのだ。メーデイアで誠次を助けたのもその一環だったと言う。

 そして、休息も少々に、誠次は夜明け前にファフニールにまたがり、半壊したレヴァテインを握り、ルーナとクリシュティナの解放へ向かう。

 身体から血反吐を吐きながらも囚われのクリシュティナを救おうと戦う誠次に、ルーナの心も大きく揺れ動く。

 八ノ夜の命で二人の調査をしていたために、現場に駆けつけた教師の星野百合ほしのゆりと共に、誠次はルーナを説得しようとするが、ルーナが選んだ方法はベルナルトを必死の覚悟で討ち取る事であった。だが、ベルナルトはルーナの行動を予期しており、ルーナへ向け破壊魔法を放つ。

 激昂する誠次に、国際魔法教会の男が味方となり、共に戦う中、誠次はルーナのグングニールと壊れたレヴァテインを合わせる。

 生きていたルーナの付加魔法エンチャントを受けた誠次の手元には、再誕した新たなレヴァテインの姿があった。

 その名は、レヴァテイン・ウル。誠次の呼びかけに対しレヴァテイン・ウルは、まるでこの世に生まれたばかりの赤子のような大きな鳴き声で、その無邪気さと傲慢さを、誠次の全身に伝えて来るのであった――。



 エーギルの温泉館オンセンヤカタにて~レンタルバイ、バレンタイン


 ベルナルトを倒し、晴れてルーナとクリシュティナは日本で穏やかな夜明けを迎える。新たな力であるレヴァテイン・ウルを授かった誠次もまた、激戦続きだった日々を終え、しばし平穏な日常を過ごしていた。

 ルーナとクリシュティナは、それぞれ誠次を始めとしたヴィザリウス魔法学園の友だちに対し、何か恩返しが出来ないかと考える。ルーナは誠次を傍で守ると決め、クリシュティナは財産をはたいて誠次へ大量のお茶を購入する。しかし、国際魔法教会の保護から外れたために貯蓄も底を尽きかけ、クリシュティナはルーナへ不便をかけさせたくない思いから、アルバイトをすることに決める。香月と桜庭も、クリシュティナと同じ駅前の喫茶店で働くことに。南野千枝みなみのちえと言う女子大生の先輩の存在もあり、クリシュティナは初日のアルバイトを無事に終える。ルーナと自分を救ってくれた誠次に対する、甘くて、複雑な感情を抱いたまま。

 同じころ、ヴィザリウス魔法学園の女子寮棟では、千尋がお茶に貼られたシールより、懸賞の当たりを次々と当てていた。当たりシールの使い道に迷う千尋であったが、篠上が賞品を見て、思いつく。

 懸賞の使い道は、箱根への温泉旅行だった。誠次たちは現地でスキーを楽しみ、束の間の休息のひと時を過ごす。

 誠次に対する気持ちを隠そうとするクリシュティナに対し、香月もまた、素直な自分の気持ちと思いをクリシュティナに伝える。

 思い悩んでいたクリシュティナであったが、風呂の場で意を決し、ルーナに自分の気持ちを伝える。その歳にはあるはずだった、異性への恋と言う、当たり前の感情の話だ。ルーナも様子がどこかおかしいと感じていたクリシュティナの思いを聞き、内心こそ悩みながらも、これからも良き友でいられるようにする。他でもなく誠次が、変わらない関係でいてくれるようにしてくれたのだから。

 その頃、誠次も男友だちたちと憩いと楽しみのひと時を過ごしていた。それは、所々でおかしな身体の不調を感じつつも、もう寝ようかと寝室へ向かっていたところであった。ふと急に、初めて香月と出会った場面のような錯覚を味わう。誠次の前に確かに表れた、香月に似た、しかし目の色から光を失っている少女。誠次は無意識のうちに、悲し気な顔をする少女を追いかけていた。

 しかし辿り着いた先に待っていたのは、トリックスターと名乗る奇妙な存在であった。かつて愛し合っていた、もう一度世界を作り直そう、などと、甘く誘惑するかのような物言いに、誠次は引き込まれかける。誘い込まれる誠次を救ったのは、香月であった。

 かつて文明一つを滅ぼした魔剣を扱う者としての自覚を誠次は深め、それでも変わらずに仲間の為に破滅の剣を振るう事を、誠次は改めて香月に約束する。

 季節は穏やかに巡り、徐々に近づくバレンタインデー。

 誠次に思いを寄せる少女たちは、それぞれチョコレート作りを行ったり、用意をしたりする。そして誠次もまた、知り合いの先輩のチョコレート作りを手伝う事になっていた。チョコレートに悪戦苦闘しながらも、それぞれの思いの形は出来上がっていく。

 今日に至るまでの様々な障害を乗り越え、当日には無事に大量のチョコレートを受け取り、喜んでいた誠次であったが、最後に八ノ夜から送られたプレゼントは、素直には喜べないものであった。

 アメリカ合衆国マンハッタンにある国際魔法教会本部への召集状。王が待つ場へと、誠次は向かわなければならなくなったのである。

 それまでにレヴァテイン・ウルを扱いこなす特訓を、多くの少女と重ねていく誠次。迎えた卒業式の日では、一つの目標であった元生徒会長、兵頭賢吾を倒すことに成功し、着実に力を伸ばしていく。

 全ては、みんなを守る為。そして、再びみんなの元へ帰る為に――。


 

 オウアユミチ~Can I come back to your side?


 国際魔法教会の召集命令を受け、誠次とルーナ、クリシュティナと百合は、進学を目前の春休みにマンハッタンへ向かう。そこで誠次が目にしたのは魔法大国への変革を急いだ、進化の代償とも呼ぶべき存在だった。

 隔離された人々アイソレーションズ。魔法が使えない人たちの存在である。魔術師ヴィザード隔離された人々アイソレーションズを忌み嫌い、隔離された人々アイソレーションズ魔術師ウィザードを憎む。魔法大国と呼ばれるまでに成長した国家の進化の代償は、国家を支えた国民の分裂というものだった。

 不穏な空気が流れたまま、誠次たちは審問会へ向かう。国際魔法教会は、初めから狙いを誠次とレヴァテイン・ウルに定めていた。一方的な答弁に追いつめられるルーナとクリシュティナと誠次であったが、その場に現れたのは国際魔法教会の最高指導者、ヴァレエフ・アレクサンドルであった。

 かつて誠次の両親とも親交があったヴァレエフは、誠次の為にもと、レヴァテイン・ウルを渡すことを要求する。

 しかし剣術士として仲間を守る覚悟を決めていた誠次は、これを断わる。互いに進む道は違えど、目的地は同じはず。誠次はヴァレエフにそう伝え、ヴァレエフもまた、最後まで王と一人の人としての感情の狭間で揺れ動きながら、誠次の答えを聞いていた。

 誠次が国際魔法教会で証人尋問を受けていた頃、忘れ去られた旧米軍の地下研究所より、かつて国土と国民を守るよう、願いが込められた番犬が、トリックスターの手により蘇る。

 マンハッタン全土に広がる、隔離された人々アイソレーションズの憎悪。かつての主兵器であった銃を手に、大勢の暴徒たちが、マンハッタン各地で魔術師を襲い始める。その標的には国際魔法教会本部と、多くの学生がいるキルケー魔法大学が定められていた。

 預けたはずのレヴァテイン・ウルの行方も分からぬまま、誠次は戦いに赴こうとするヴァレエフを止める為に奔走する。このまま魔術師の王が隔離された人々アイソレーションズと戦ってしまえば、その映像は世界中に拡散され、更なる混乱を招きかねない。それは、平和な日本にも戦火を広げるものであったのだ。日本で帰りを待つ人の為、自分たちが帰る場所の為、誠次はルーナとクリシュティナにクリシュティナの兄であるミハイルの捜索を任せ、自らはミハイルによって運ばれたレヴァテイン・ウルを携え、真夜中の王の通り道キングス・ミッドナイト・トンネルの防衛へ向かう。

 通過されれば全世界で混乱の危機が訪れる最後の防衛線には、先に百合が向かっていた。押し寄せる多数の暴徒を相手に、百合は魔法で足止めをするが、敵にも魔術師の味方がいた。黒い装甲を全身に纏った、ガルムと呼ばれるパワードスーツであった。

 キングス・ミッドナイト・トンネルへ駆けつけた誠次は、知略を尽くして暴徒を追い払い、ガルムと一騎打ちを行う。アメリカの真夜中の王の通り道で繰り広げられる番人せいじ番犬ガルムの戦いは、日本人と日本人同士の戦いと言う事態になっていた。ガルムの中にいたのは、キルケー魔法大学に通う若き学生、一ノ瀬隼人いちのせはやとだった。

 一ノ瀬の彼女である南野千枝は、平和な日本の喫茶店で懸命に働きながら、今日も彼の帰りを待ち続けていた。そんな彼女の元へ、香月が捨て犬を拾ってやって来る。人間に暴力を振るわれ、すっかり人間不信に陥っている捨て犬をどうにか救ってやろうと、難儀する香月と南野であった。

 王は最後に、自身を守った番人を見捨てた……。キングス・ミッドナイト・トンネルで互角の戦いを繰り広げていた誠次であったが、戦場は番人に牙を向く。誠次はガルムに敗れ、冷たい水の中へ倒れてしまう。

 香月と南野がアルバイトとして働く喫茶店へ、二人の魔術師がやって来る。南雲ユエと、彼と結婚した南雲澄佳であった。大学の友だちの心無い言葉に涙していた南野であったが、香月のフォローもあり立ち直り、更には南雲夫妻が捨て犬の面倒を見てくれると、引き取ってもらう事に。問題は晴れて解決。あとは、二人がそれぞれ待ち侘びる人が、遠く海を渡った異国の地から帰って来てくれるだけであった。

 二人の思いが、王の通り道にて、人として戦う誠次の元へ届いたのか。レヴァテイン・ウルと共に誠次は立ち上がる。自分にあるのは世界を破滅に導くような、大それたものではなく、ただただ身近な守りたい物を守る力だけ。それは何も、国際魔法教会を守る為でもない。

 誠次は再び立ち上がり、隠していたレヴァテイン・ウルの力を解き放つ。ただ、待っている人の元へ帰る為。破滅ではなく、守る為。駆け付けた、クリシュティナと共に。

 戦いが終わり、それぞれが帰るべき場所へ向かう。ミハイルを救う事に成功したルーナとクリシュティナと、教師としての役目を遂行した百合と共に、片目を負傷した誠次は日本に戻る。そして、番犬として戦った一ノ瀬もまた、大切な人の元へ戻る。

 激闘の一年間が終わり、新学期が始まる――。


挿絵(By みてみん)

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