1
一年ぶりの再会は、思っていたようなものではなかったように、思う。
遥々海を越え、天瀬誠次の目の前には今、人であったヴァレエフ・アレクサンドルの姿が、あった。
「ヴァレエフ、さん……」
この世界で唯一残された家族の面影を感じる人物に、誠次は顔を綻ばせ、その名を呼んだ。
「久しぶりだね、天瀬誠次くん。また君に会えて、嬉しいよ」
ヴァレエフは軽く微笑んで、次には誠次の後ろに立つマルコスを見て、なにか目配せのような事をする。
マルコスは無言で頭を下げると、踵を返して、部屋の奥の方へと消えていった。
彼の足音が遠ざかっていくのを背中越しに確認した誠次は、改めてヴァレエフを見つめた。
「多くの無礼を御詫び致します。それでも俺は、貴方に直接お会いしたかった」
「そうか。では、場所を移そうか。私も君とは、話をしたかったのだよ」
ヴァレエフは青い瞳を誠次へ向けてから、振り向いた。
誠次はヴァレエフの後を追い、車椅子を押す。
前を歩く偉大な魔術師の背中をじっと見つめる傍ら、誠次は、その背に声をかけた。
「杖はもう、使わないのですか?」
昨年に出会った時は、杖をついてでしか歩く事が出来なかったはずの身体であったが、今は力強く、前へと歩き続けているように見える。
前を歩くヴァレエフは、正面方向を見据えたまま、答える。
「ああ。具合は良くなったのだよ」
まだ、この魔法世界にはこの人は必要だ。良い悪いに関係なく、人々が希望の象徴として、すがるべき心の拠り所としてでも。
「元気にしていたかね?」
「? は、はい……」
静寂に包まれる通路の中で、前を歩くヴァレエフの声が響き、誠次は腕を止めかけながら、答える。
この身体を見て、元気にしていたかと訊かれるのは、いささか辻褄が合わないように感じる。目も、合わせてはくれていなかった。それに一抹の虚しや、不安を感じたが、ヴァレエフは前を歩き続ける。
「あの……」
「話をしたいのだろう? 私もそうであった。さあ、中へ」
やがてヴァレエフがとある部屋の前で立ち止まり、ドアを開ける。
中は、縦に長い机と、豪勢な造りの椅子が二つだけあると言う、どこか異質な雰囲気を感じるものであった。壁には調度品はおろか、汚れもシミも何もない、真っ白な壁紙と床の部屋だ。
「ここは……」
「親しい者しか通さない、私の部屋だ。食事でもしながら、話をしたいと思っていてね。座りたまえ」
ヴァレエフはそう言いながらすでに、奥の席に座り込んでいた。今のところ、その動作に辛そうな瞬間は見受けられず、本当に容態は良好なのだろう。
(ヴァレエフさんの部屋……。こんな、なにもないようなところが……)
椅子は机を挟んで一つしかなく、必然的に、誠次はヴァレエフと向かい合って座る。
視線を向ければ、いつの間に、目の前には高級そうな食器が並んでおり、いくつかの西洋の料理が。そして、食材で彩られた机の向こうに座るヴァレエフは、赤い魔法式を手早く組み立てると、机の上に置かれているろうそくに魔法で火を灯していった。
「食事をしながらの旧知の仲との会話は良いものだ。腹が満たされ、気分は高揚し、会話も自然と弾んでいく」
ヴァレエフは手元にすでに用意されていた赤いワインが入ったワイングラスを片手に持つと、誠次に向けて掲げてみせる。
それを見た誠次もすぐに、手元に入ったワインらしきものが入ったワイングラスを、手に持って掲げた。
「それはグレープジュースだ。安心して飲んでほしい」
白い髭を蓄えた口元まで、ヴァレエフは自身のワインが入ったワイングラスを持っていき、香りを嗅いでから、それを嗜んだ。
ジュースならばと、誠次もワイングラスに入った紫色の液体を口に含み、喉に流した。
浮き足立ち、逸っていた心はいくらか落ち着いていき、誠次は深く息を吸う。
ヴァレエフは誠次の様子をじっと見つめた後、手元の食事に、ナイフとフォークで手をつけ初めた。
「この歳にもなると、もう食べることが出来るものも数少なくなってしまう。食事が人生に残された最後の娯楽と言う者もいるが、なるほど、その気持ちもよくわかるよ」
ビーフだろうか、器用にナイフとフォークを使って、手元のミディアムレアのステーキを切り分け、ヴァレエフはそれを口に運ぶ。
誠次は彼が食事をする姿を、じっと見つめていた。
「美味しいな。やはり食事は良いものだ。生きていくことに必要不可欠である、ないに関わらず、このような行為を楽しめることは、人が生まれながらに与えられた最高の贅沢だ」
ヴァレエフは口元を布巾で軽く拭うと、どうかな? と誠次に問いかけるような視線を送ってくる。
「食事は俺も好きです。美味しいものを食べるときは、なおのさらのことです」
しかし目の前の食事には手をつけず、誠次は真っ直ぐ前を見る。
ヴァレエフは誠次の黒い瞳をじっと見据えた後、満足そうに微笑む。
「そうか。人間以外にも、食事は、この世界に住まう生命全てに与えられた共通の快楽だと思うのだ」
ヴァレエフはそう言うと、誠次の手元に視線を送る。
「遠慮することはない。君も食べてくれ。なによりもこの食事は、君のために用意したんだ」
ヴァレエフが誠次にも食事を促す。
なぜだか、今日初めて、ヴァレエフにお願いをされたような気がして、誠次は殆ど無意識で、手元のフォークとナイフを手に取っていた。
「いただきます」
目の前には否応なしに食欲をそそられるほど、美味しそうに焼けたステーキや付け合わせの数々が。
一つ、唾液を飲み込んだ誠次は、目の前のステーキにナイフを通し、滴る肉汁ごと、そのひと切れを口に入れた。
ステーキを食べ、咀嚼する誠次の姿を、ヴァレエフは満足そうに見守っていた。
「良い食べっぷりだ」
「美味しいです」
満足そうな表情を見せるヴァレエフと、一旦ナイフとフォークを皿に戻す誠次。
ヴァレエフもまた、ステーキをひと切れ、口に運んでいた。
「あの……ヴァレエフさん」
久し振りに会うことが出来た恩師との積もる話が、ないわけではない。自分のことや、相手のこと。今までの学園の話や、両親の思いで話。話したいことや聞きたいことは十二分にある。
だが、会話は思いの外、続かないものだった。こうやって食事を嗜む前にも、しなければならないことで、頭がいっぱいであったのだ。
「どうしたのかね?」
「せっかくの食事の機会を頂き、光栄なのですが、申し訳ございません。俺は大至急、貴方に伝えなくてはいけない事があるのです」
「……そうか」
やや悲しそうな表情をされると、こちらも少し、心が痛む。だが、自分がここに来た真の理由とは、食事や、世間話をしに来たのではない。
燭台に灯る火が、何処からともなく吹いた風によって揺れ動き、赤い炎が全て、誠次の方を向く。
ヴァレエフはステーキを食べながら、誠次を見つめる。
「それで、君がはるばる海を越えて、多くのものを振り切ってまで、私の元に来た理由を、教えてくれるのだろうか」
ヴァレエフのそんな言葉に、誠次は驚いていた。
「知って、いたのですか……? 俺が、魔法学園を退学したことを……」
「勿論だ。君のことならば、何でも知っているつもりだ。君がここに来るまでに何をしてきたか、全てな」
「そうであるのならば、俺が伝えたいことは、貴方にならばわかってくれるものだと思います」
誠次がナイフを握る手に力を込め、ヴァレエフに向けて言う。今更ながら、こんなところで、悠長に食事をしている場合ではないと言う感情が沸き起こっていた。
しかし、ヴァレエフはまたしても、ひと切れのステーキを頬張っていた。
「君のご両親や、友人、君を育てた八ノ夜は、さぞ悲しむことだろうな。彼ら彼女らにとって君がいなくなった喪失感は、そう易々と消えるものではなかろう」
「それでも俺は、貴方にどうしても会い、伝えなければならないことがありました」
「"捕食者"か」
――っ!?
やはり、向こうは俺のことを知っている。
自分が言うよりも早く、ヴァレエフはその話題を切り出し、誠次はハッとなる。
「全人類の敵であり、君の両親の仇。夜に現れ、人を喰らう怪物」
そう呟きながらヴァレエフは、もう一度、ステーキを口に入れ、もぐもぐと、口を動かす。
「……っ」
白い髭が口の動きに合わせて動くたび、口の中に収まった肉の塊が、歯によって潰され、咀嚼され、木っ端微塵になっていく。
その光景に、誠次はひどく既視感を感じた。これは、トラウマの光景……肉を……家族を喰らいつくす、"捕食者"の食事だ。
「食事とは、良いものだ」
ヴァレエフが二度、そう呟く。
誠次は咄嗟に、自身の手元にある、食べかけの肉に視線を落とす。
「うぷ……」
感じたこともないような吐き気が急に押し寄せ、誠次は口を抑えて、席から立ち上がる。
「……」
ヴァレエフは誠次に構わずに、食事を続けていた。
「お前は……誰だ……っ!?」
違う。あれはヴァレエフ・アレクサンドルではない!
尋常ではない量の汗を流し、誠次は口元を手で抑えながら、目の前にいる人を睨む。
「怖い顔だ。まるで、家族の仇を見ているような目をしている」
ヴァレエフは着席したまま、立ち尽くす誠次を見ていた。
「本当のヴァレエフ・アレクサンドルさんは何処だ!? 貴様は誰だ!?」
焦り、畳み掛けた誠次の言葉に、ヴァレエフ(?)は、肩を動かし、落胆しているようだった。
「何を言っているのか、わけが分からないな。私はヴァレエフだよ。君が望み求めた、この世の魔術師のトップに立つ、老人さ」
「違う! 貴様はヴァレエフではない!」
そうと断言できるほどの強烈な違和感は、誠次に正体不明の危機感を与え、心臓の鼓動を果てしなく加速させる。
「変わらないさ。"捕食者"同様、他者の命を喰らい、そして生き続けるこの世の生命の一員であり、魔法が使える老人だよ」
「ヴァレエフさんはどこだ!?」
それでも、目の前に座る老人がヴァレエフだとは一切認めようとはしない誠次に、ヴァレエフ(?)は、大きく落胆していた。
ヴァレエフは口の中の感触を確かめるようにして、口元を動かすと、ふっと微笑む。
「美味しいステーキであった。"捕食者"にも味覚があるのであれば、人間の肉を、美味しく貪っているのだろうか」
「貴様っ!」
堪えきれず、誠次は右肩から伸びるレヴァテイン・弐の鞘を右手で握り、抜刀し――ようとした。
がしかし、レヴァテイン・弐はその背にはない。
そんな誠次の一連の行動を目の当たりにしたヴァレエフは、肩を竦める。
「君がその手に握るのはナイフではないだろう。魔剣は、テーブルの下だ」
言われ、はっとなった誠次は、咄嗟に屈んでテーブルの下を覗く。
確かに彼の言うとおり、そこには鞘を失ったレヴァテイン・弐が、無造作にテーブルの足に立て掛けてあった。
誠次はその剣の柄を握り、持ち上げていた。
老体に向けられた刃が、誠次の怒りを現すように、銀色の光を放つ。それが小刻みに震えているのは、誠次が抱くもう一方面の感情、不安や恐怖によるものである。
「やはり君はその方が似合うよ。もっと自信をもちたまえ」
刃を向けられたヴァレエフ(?)は、誠次の全てを見透かしているように、椅子の背もたれに手を添えたまま、こちらをじっと見つめている。
「もう、私との食事は楽しめそうにないかね?」
「正体を現せ!」
「そうか……」
ヴァレエフ(?)は、背もたれに添えた手で、握り拳を作っていた。
「察しの通り、私はヴァレエフ・アレクサンドルではない。君と同じ、旧魔法世界にいた者さ」
口調や声音、それが全て、老人のものではなく、青年によるものに変わり、誠次は息を呑む。
「久し振りに二人きりで会えたと言うのに、つれない態度をするなんて……君は相変わらず性格の悪い男だ」
「久し振り、だと……」
「もっとも、君は君が守るべき人々を見捨ててまで、僕に会いに来たわけだ……。その点では嬉しいよ、剣術士。幾億万の時を越えても、僕たちの愛は不滅なんだね」
「なにを、言っている……!」
詩を奏でるような口調で、つらつらと語りだす謎の男を、誠次は睨み付ける。
「まだ思い出してはくれないのかい? ……僕たちが愛しあったあの素晴らしき日々を……」
「愛しあってなどいない! 俺は――っ!」
ヴィザリウス魔法学園所属の……と続けようとした声は、途中で止まり、最後まで出ることはなかった。
「元ヴィザリウス魔法学園の魔法生、天瀬誠次。僕は君を最期まで愛し続けると約束しよう。あの女神たちの偽りの愛ではなく、僕こそが、君を愛せる唯一無二の存在なんだよ」
「……戯れ言もそこまでにしろ!」
今すぐこの部屋から逃げ出さなければ、取り返しのつかぬ事になるだろう。
全身がそうと警笛を鳴らすが、足は床にくっついているかのように、動かなくなってしまう。
「さあおいで、天瀬誠次。僕の元へ、完全に」
「――ふざけるなっ!」
なみなみと汗を流す顔から出たのは、めいいっぱいの拒絶の咆哮であった。
ハアハア、と息を荒げる誠次の前で、謎の男は、口を結び、そして、冷たい表情をしていた。
「……そうか。君もまた、あの老いぼれと同じく、僕の願いを聞き届けないのか」
「ヴァレエフさんの事か……!」
「――だったら、地獄を見るといいよ」
急激に態度が変わった謎の男に、得たいの知れぬ恐怖を感じ、それでも引き下がることはせず、できず、誠次はレヴァテイン・弐の柄をぎゅっと握り締める。
刹那、謎の男が魔法式を展開し、誠次にその照準を向ける。
ピクリとも動かない足に、どうにか命令をだし、誠次は咄嗟に横にローリングして、迫る魔法の攻撃を回避する。
『へえ、君の肉体はすでに限界を迎えていると言うのに、まだ動けるのか』
すぐに顔を上げると、謎の男は目の前から、跡形もなく消え去っていた。
『僕たちの絆を取り戻す為に、一つゲームをしよう、天瀬誠次』
どこからともなく、一人となった部屋の中で男の声が響き、誠次は天井を見る。
立ち上がろうとしたが、うまく足に治からが入りきらず、よろめいてしまう。それでも、動かなければ、なるまい。
「ゲームだと!? 遊びのつもりか!」
『このゲームにクリアすることが出来れば、ヴァレエフ・アレクサンドルの居場所が分かるよ。あの人はすぐ近くにいて、君を待っている。救えるのは、君だけだ』
付き合う気はないと言いかけた誠次の心臓が、どくんと鳴る。
「本当、だろうな……?」
『本当だとも。僕は君を悲しませるつもりはないんだよ。ただ君に、全てを知ってもらい、その上で僕の元へ来てほしいんだ』
完全に敵の手のひらの上で踊らされている状況なのだが、背に腹は変えることが出来ず、誠次はぐっと、逸る気持ちを落ち着かせる。
向こうも、誠次が握る刃の先がやや下を向いたのを見て、誠次の同行を察したようだ。
声音はどこか、満足そうなものに変わる。
『決まりだね。ゲームのルールはただ一つ、生きてヴァレエフの元へ辿り着くんだ。以上さ』
等と、極めて短い説明の直後、誠次のいる部屋の後方ドアが勢いよく開き、国際魔法教会の幹部が押し入ってくる。
それらは全て、こちらを狙う敵意に満ちた人々であった。
「剣術士……貴様、ヴァレエフ様に何をした!?」
等と、英語で誠次に罵声を浴びせる幹部たちの先頭で、マルコスは冷酷な目を、誠次へと向ける。
咄嗟に振り向いた誠次は、レヴァテイン・弐を構えたまま、叫んだ。
「待て! ヴァレエフ・アレクサンドルは偽物であった! 本物のヴァレエフを探さなければなるまい!」
誠次が必死に日本語でそう叫ぶが、相手側に伝わる素振りはない。
異国の地からやって来て、剣を握り、ヴァレエフは行方不明。そんな状況が、誠次に味方をするわけもなく、誠次目掛け、国際魔法教会の幹部たちは次々と、攻撃を攻撃魔法を発動し始める。
「マルコス! 貴方にならば日本語は伝わるはずだ! ヴァレエフは偽物であった!」
誠次が尚も叫ぶが、マルコスはどこか、確信に満ちた表情をして、誠次を見る。
その表情、また仕草で、誠次はすぐに察知した。
「――知って、いたのか……?」
「撃て」
マルコスが英語で呟けば、彼の後方で構えていた魔術師たちが、いっせいに誠次を狙い、魔法を放った。
誠次は抜刀していたレヴァテイン・弐を振るい、自身の身体に直撃コースで迫る魔法を纏めて切り裂く。
(マルコスはヴァレエフが入れ替わっていたことを知っていた……。こうなれば、一刻も早く本物のヴァレエフを見つけ出し、真実を他の国際魔法教会の幹部に伝えなければ!)
この身体の状態で、国際魔法教会の幹部クラスを多数に相手取るのは無謀だ。完全に敵陣の真っ只中の状況の中から、活路を見出だそうとする。
魔法の攻撃を剣で防ぎつつ、身体を後退させた誠次は、食べかけの料理が残っている長机の上をローリングしながら飛び越え、机を倒し、自身はその影に身を潜める。
誠次を追い、何発かの攻撃魔法が、誠次の身体を掠めていった。
「机もろとも吹き飛ばせ」
マルコスの指示通り、幹部の男が高威力の魔法を発動し、誠次が隠れている机を粉々に粉砕する。
木材の破片が舞い散る中、白煙立ち込める室内で、煙を裂き、黒い影が高速で、マルコス目掛けて放たれた。
マルコスが冷静にその黒い影を躱すと、すぐ後ろにいた国際魔法教会幹部の男の腹部に、その影は突き刺さった。
「ぐはっ!?」
煙の中から飛んできたのは、レヴァテイン・弐であった。
「こんなところでやられるわけにはいかない!」
煙の中からレヴァテインを投げつけた誠次は、自身も飛び出し、魔法の光弾の雨あられを掻い潜り、マルコスの眼前にまで接近する。
「……哀れな羊飼いの財布め、帰る場所などもうないと言うのに」
「なに……?」
ぼそりと、直立不動のマルコスが呟いた直後、誠次の真横から攻撃魔法が飛来し、それが誠次の腹部に着弾する。
「ぐっ!」
誠次はマルコスの背後で踞る男からレヴァテインを回収すると、自身は腹部を抑えながら、ずるずると後退していく。
しかしこの部屋に逃げ場はない。出入り口はすでに多数の国際魔法教会幹部によって、制圧されている。
「まだ、死ねない……!」
その場で呼吸を整えた誠次は、レヴァテイン・弐を連結させ、決死の覚悟で突撃をする。
「道を開けろ!」
容赦なく迫り来る魔法の弾を切り裂き、誠次は国際魔法教会幹部たちへ刃を振るった。
「逃がすな、追え!」
この魔法世界に唯一残された実の家族の肖像、ヴァレエフの元に行くために。




