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魔法世界の剣術士 中  作者: 相會応
鴉を墜つ鷲 特殊魔法治安維持組織本部解放戦 
134/189

4

「開けろ! ヴィザリウス市警だ!」

         せいじ

 特殊魔法治安維持組織シィスティム本部最上階に君臨する局長室に来るのは、これで二度目であった。いずれも、自分がもう少し大人となり、黒いスーツを着こなした後に来るものとばかり思っていたあの頃は、今はもう遠いものだった。

 破った強化窓ガラスの破片を踏みしだき、中へ侵入した誠次せいじは立ち止まる。


「新崎……っ!」

「感心しないな。――古来より剣を持つ勇者様と言うのは、お行儀よく城の一階から順に攻めてくるものではないのかな?」


 そんな新崎しんざきの声は、誠次の正面、黒革の椅子に座り背を向けた状態より、聞こえた。

 抑揚のない声は、こちらが一気に本丸まで()()()()()()来たと言う事実にも、大して動じていないようだった。

 新崎和真しんざきかずま。昨年秋の特殊魔法治安維持組織シィスティム本部で起きた事件の際に、光安と結託しての元志藤局長の排除。そして波沢茜なみさわあかねを始めとした、自身への非協力的な人員への不当な処遇、処罰等。恐ろしむべきは、それらは全て、国民のもとに白日の下に晒されないよう、根回しすらも全て完璧であったと言うこと。

 だからこその、今日のフレースヴェルグの作戦こそが、打倒新崎の唯一の方法となり得る手段であった。それすらも、この目の前の黒革の椅子に座る男には、見破られていたのだが。


「もっとも、君は勇者でも正義の味方でもなんでもない、ただの武装テロリストであるわけだが?」


 窓を突き破って最上階に侵入したこちらに背を向けたまま、新崎は背中越しに尋ねる。

 対する誠次は、付加魔法エンチャントを千尋のものへ切り替え、一切の魔法の発動を許さぬ構えで、新崎の座る椅子の背もたれにレヴァテイン・ウルの剣先を向けた。


「戯言を言い合うつもりはない、新崎! 今すぐにテレビ局への攻撃を中止させ、特殊魔法治安維持組織シィスティム局長の権限を手放してもらう!」

「断ると言ったら、どうするつもりだい?」

「……貴様を斬る!」


 誠次は怒りを滾らせて、怒鳴りつける。

 多くの罪なき人が傷つき、痛めつけられ、虐げられてきた。それを引き起こしていたのが他でもない、かつて自分が憧れていた組織であること。

 複雑すぎる思いは憎しみを生み、そして今、目の前でこちらに背を向けて座る男に向けられる。この男のせいで、多くの人が傷つき、虐げられてきた。争わなくてもいい争いが行われ、悲しみも、嘆きも、多くの負の連鎖が生まれてきた。

 それを今日、この場で断ち切らなければなるまい。

 誠次の怒声を聞いた新崎は、肩を揺らしてくつくつと、笑っていた。


「笑うな! 何がおかしい!?」

「全てだよ、まったく……。私のもとまで来たかと思えば、私を斬る、だと?」


 新崎はかすかに顔を上げ、背後に立つ誠次へ問いかける。


「仮に君が私を斬ったとしよう。それでいったい何が変わると言うんだ? 明日のニュースに載るものと言えば、一介の学生が特殊魔法治安維持組織シィスティムのトップを斬り、国内に再びの混乱をもたらしたと言う一文だ」

「貴様の歪んだ支配が続くよりは遥かにマシだ! この支配は、一刻も早く止めなければならない!」

「君は実に強欲だな天瀬誠次。学生は学生らしく、校舎の中で勉学に励んでいればいいものを。これ以上君は一体何を望むつもりだ? 魔法は使えないが、それ以上の力を授かり今、君はまたしても多くのものを手に入れようとしている。多くの幸運に囲まれている君は今、愚かにもそれ以上のものを持とうとしている」

「確かに、俺は周りの人々には恵まれている。苦しい時も辛いときも、仲間がいるから乗り越えられた」


 誠次は瞳を瞑り、小さく息を吸い、そして、顔を上げた。


「そんな人々の笑顔を守る為であれば、俺は貴様と刺し違えてでも、貴様を倒す!」

「哀れ剣術士……君の言うその正義とやらは、果たして誰が決める? 君の両親は今の君の姿を見て、果たしてどう思うかな?」


 急に両親と言われ、誠次はやや動揺しかけるが、首を横に振りきり、改めて新崎を睨む。


「俺の両親のことを、貴様などが語るな!」

「ではこちらも言わせてもらおうか。何もわからない子供の分際で……正義を語るな」


 その言葉の終わりと共に、新崎が急に振り返り、誠次へ向け拳を突き出す。

 それに反応した誠次が、咄嗟にレヴァテイン・ウルを振るい上げ、新崎の右手を斬り裂く。血をまき散らし、吹き飛んだかと思った新崎の右手であったが、その手は繋がったまま、彼は不敵な笑みを浮かべたまま、半透明となって、消え失せていく。


『さあ証明しよう。君たちがいかに愚かで、矮小であるか。思い知らせてあげるよ』

「新崎……俺たちは必ず、貴様を倒し、一刻も早くこの歪んだ支配を終わらせる! 貴様の野望もここまでだ!」


 ホログラムであった新崎が消え失せていく中、誠次は彼の幻影へ向けて、叫んでいた。

 局長室から新崎が消え失せ、誠次は電子タブレットを起動し、すぐさま仲間に連絡を送る。


「こちら天瀬誠次。局長室に新崎はいなかった。奇襲も読まれていたようだ」

『わかった。俺たちは正面からエントランスに突入したところだ』


 志藤からの応答に、誠次は足元を見る。


「他に新崎がいそうなところ、もしくは防衛に向いていそうなところはどこか、検討はつきますか?」

『上にいないのなら、地下が、怪しい』


 岩井の言葉を聞き、確かにと誠次も頷いた。前情報では、特殊魔法治安維持組織シィスティムの本部地下も、魔法学園同様広大な地下施設が広がっているとのこと。


『地下施設って、いったいどんな感じなんです?』


 悠平が訊く。


『主に隊員用の宿舎や、練習施設。シュミレーションルームと、多岐にわたる。新派からの情報によると、私たちがいなくなった後、新崎はここらへんの拡張を行っていたようだから、私たちのナビは古いものだと考えてくれ』


 戸村が説明する。


『何があるかはもう、行ってみなければわからないと言うことですか』


 真がそう言えば、元特殊魔法治安維持組織シィスティムの二人は揃って頷いていた。


『俺たちも突入する。お前は早くこっちへ戻ってこい』


 聡也がそんなことを言ってくれば、誠次も頷くしかなかった。


「わかった。急いでそちらに向か――」


 返事をしかけた誠次は、ふと、顔を上げる。


「来たか、特殊魔法治安維持組織シィスティム!」


 誠次は緑色のレヴァテイン・ウルを構え、こちらを迎撃しに来た特殊魔法治安維持組織シィスティムらを迎え撃つ。


「志藤、みんな! やはり多くの敵は最上階にまで引き付けられているようだ! 俺はこのまま敵を制圧しつつ、下層を目指す!」

『気をつけろよ天瀬! 必ず合流するぞ!』

「ああ、必ず!」


 最後に志藤とやり取りを交わしてから、誠次はレヴァテイン・ウルを構えた。


 誠次が最上階で敵を引き付けている間、エントランスに入った魔法生たちと元特殊魔法治安維持組織シィスティムの二人が、早速違和感を発見する。


「荒れてるな……」


 環奈が周辺を見渡して言う。

 静まり返ったエントランスに、人の気配はない。受付にも、それらしい人はおらず、大画面のホロスクリーンに、エンブレムが虚しく浮かび上がっているのみだ。かつて国民の期待を背負い、この魔法世界の一部となった日本の秩序を司る組織としての威厳は、まだ失墜してはいないと示すばかりに。

 

「あれ、は……」


 岩井が何かを発見し、そこへ近づく。

 

「第三分隊の、みんな……?」


 エントランスの隅で倒れていた人々。周りには血の跡がこびりつき、そこらに負傷したかつての仲間たちがいた。


「その声……岩井、さんですか……」


 駆け寄る岩井に気が付いたのは、特殊魔法治安維持組織シィスティム第三分隊に所属している、真田さなだと言う青年であった。


「なにが、あったの?」

「実は、第三分隊も、今の特殊魔法治安維持組織シィスティムに不満を持っていたんです。警察の捜査官たちが来たタイミングで、俺たちも、フレースヴェルグに同調して組織を離反し、内部から攻めようとしましたが、失敗、しまして……情けないです……」

「失敗?」

「なにもかも、新崎に読まれていました……ですが、捜査官の皆さんは、ご無事です……俺たちも、自分の身は自分で守れます……」


 よく見ると、第三分隊たちの周りには、同じように負傷した捜査官たちが、治癒魔法を浴びせられている。まるで野戦病院の様相を見せていたエントランスでも、激しい戦闘が行われていたのだろう。窮地に追い込まれた捜査官たちを、第三分隊が身を挺して守ったおかげで、どうにか壊滅は避けられていた。


「悪りぃなフレーズヴェルグ……。どういうわけか、上が土壇場で家宅捜索を中止せえって言ってきやがってな……。俺たちは一度、本部へ帰投せなあかんくなったんや……」

「わかり、ました。では、動ける第三分隊のみんなで、捜査官たちの援護を。僕たちは、最深部を、目指すよ。今のうちに新崎を捕まえないと、もっと、状況が悪くなると、思うから」

「すみません……。後を、頼みます……。警察の方は俺たちに、任せてください……」


 真田が悔しそうにして、岩井を見送っていた。


「私たちの治癒魔法を、使った方が……」


 傷ついた人々を見て香織がそう進言するが、戸村が制していた。


「やめとけ波沢。私たちはこれからもっと危険なところへ行かなきゃいけないんだ。それにお前らには、例の剣術士への付加魔法エンチャント分の魔素マナは残しておいた方がいい。アイツらなら、大丈夫だよ」


 戸村はそう言う。


「いつもサボろうとしている私なんかよりは、こんなくそったれな組織にいつまでもの残って出し抜く機会を窺っていた根性は、ある」

「戸村さん……」

「……アンタの姉貴の仇はうつさ。必ずね」


 戸村はそう言って、香織の横を歩いていく。


「波沢さんって、あの波沢さんの妹さんですか……。ははは。影塚かげつかさん同様、俺の憧れでした……」


 真田が力なく笑いながら、言っていた。


「あの、まだ死んではいませんよ……? それどころか、テレビ局で戦っていますよ……? 私のお姉ちゃん、結構頑丈なんで」


 香織が困惑した様子で、告げている。


「下の階へは、いろんなところから行けるっぽいですね」


 一方では志藤が、電子タブレットから出力した本部マップを見ながら言う。


「天瀬はともかく、俺たちはわざわざバラバラになる必要もねーな。いくら特訓を重ねたとは言え、相手は特殊魔法治安維持組織シィスティムだ。なるべく集団で行動するぞ」

「「「了解」」」


 エントランス脇の通路を直進し、すぐ横にあった近行きの階段を、集団で降りていく。最前線には戸村や男子陣、間に女子陣が入り、最後尾を岩井がカバーする。

 

「第三分隊も俺たちの味方についてくれたのは、かなりの朗報では?」


 最前線を歩く志藤と戸村が、会話をしながら歩く。


「ああ。これで特殊魔法治安維持組織シィスティム内の奇数組は全部離反したって事になるな。おおよそ半分が、新崎に敵対してる」

「つまり、半分と半分に分かれたんなら、そこにフレースヴェルグの俺たちがプラスで加わってるってことは、俺たちが有利ってことですね!」


 すぐ後ろを歩いていた悠平ゆうへいが、笑顔で明るくそんなことを言ってくる。


「単純計算もはなはだしいな……」


 そんな悠平の言葉に、戸村は苦笑して肩を竦めていた。


「前方、来ています」


 空間魔法を発動していたまことの警戒を促す言葉の終わり、目の前から数名の特殊魔法治安維持組織シィスティム隊員が、一行の前に出現する。


「止まれ! 貴様ら、ここで殺す!」


 問答無用で右腕を掲げ、破壊魔法を繰り出す特殊魔法治安維持組織シィスティムたち。

 戸村が咄嗟に防御魔法を前面に発動し、破壊魔法を受けきり、消滅させる。


「戸村環奈……。元第五分隊のお前が、今では子供の見守りか?」

「おたくらこそ、仕える相手は選んだほうがいいよ。それに私はもとから――働きたくなかった」


 戸村は含み笑いをこぼし、反撃に攻撃魔法を発動。目の前に立ちふさがるかつての仲間たちを、一網打尽にしていた。


「さっすが! ユエさんも言ってましたよ。本気出せば環奈は俺と同じレベルでつえーっつーの! ってね」


 悠平がはっはっはと笑いながら言えば、戸村はぴくりと反応し、明後日の方を向いてしまう。


「……笑っていられるだけマシか」


 そうぼそりと呟いた傍ら、後ろの方で義雄が叫び声をあげる。


「みんな! 後ろから、たくさん、来てる!」


 空間魔法で索敵をしていたのか、義雄が背後からの気配を察知している。

 

「走りますか!?」


 真が訊くが、その前に立ったのは、幻影魔法の魔法式を展開した聡也そうやだった。


「俺が幻影魔法で連中を足止めする。みなさんは先へ」

「聡也? 一人でここに残る気か!?」


 志藤が驚いて詰め寄る。


「志藤。目的を履き違えるな。俺たちの目標は新崎を討ち、この特殊魔法治安維持組織シィスティムを変えることのはずだ」


 聡也が横目を向けながら、志藤に言う。

 思わず立ち止まった志藤の元へに、無数の足音は近づいてくる。


「ならば命令をしてくれ、志藤。俺をここに残して、足止めをするのが最善の策のはずだ。全員がここに留まり、悪戯に時間を失うわけにはいかないはずだ」


 一つの巨大な組織を変えるものとしての覚悟と矜持。志藤はそれを一瞬で悟り、頷く。


「……わかった。夕島はここで足止めを頼む。ただし、一人では残さない」


 志藤はそうして、戸村に視線を送る。


「戸村さん。ここで夕島と一緒に、足止めを頼めませんか? アンタだったら、安心ス」

「……」


 戸村はなにか言いたげに志藤を見ていたが、やがて納得したように、聡也と横並びで立つ。


「夕島、サンキュな。絶対にくたばるんじゃねえぞ」

「早く帰ってテスト勉強がしたい。帳と誠次の勉強も見てやらないといけないしな」


 微かに口角を上げた聡也に、前進する一同は頷いていた。

 すると、微かに恥ずかしさも覚えたのか聡也は、踵を返していた。


「ま、よろしく頼むよインテリボーイ。アンタはまだまだ若いんだ。こんなところで私と一緒に死にたくはないだろ?」

「当然です。未来の為に戦っている以上、ここで負けるわけにはいきません。《ビジョン》」


 眼鏡を光らせ、聡也は幻影魔法を発動する。

 迫ってきた特殊魔法治安維持組織シィスティムたちの目の前には、幻影魔法により生み出された歪な空間が、広がりを見せる。


「な、なんだ!?」

「通路が、ねじ曲がって見える!?」


 あっという間に平衡感覚を失った特殊魔法治安維持組織シィスティムたちは、立っていられなくなり、その場に膝をつき始める。

 聡也が見せる幻影魔法に晒された以上、自力では抗う術はなかった。


「《ライトニング》!」


 そこへ戸村が雷属性の攻撃魔法を注ぎ込み、感電した者の意識をふき飛ばす。

 

「やるな、夕島聡也」

「貴女こそ、さすがは元特殊魔法治安維持組織シィスティムです」


 互いの魔法を褒め称えあっていた直後の事であった。

 突如として、地震のような直接的な揺れが、地下施設に襲いかかった。


「なに!?」

「気をつけろ夕島!」


 あまりの激しい揺れと振動に、聡也と戸村も、立っていられなくなり、共に壁に全身を強く叩きつけられる。


「ぐあっ!?」

「一体なんだ!?」


 悲鳴をあげる聡也と、驚いて周辺を見渡す戸村。

 電光が全てシャットダウンを開始し、通路の彼方から巻き起こった白煙が、突風と共に二人に襲いかかった。


「志藤! 応答しろ! 聞こえるか志藤! 志藤!?」


 すぐに電子タブレットで味方の同級生男子に連絡を入れようとする聡也であったが、浮かび上がるホログラム画面には、ノイズが奔っているだけだった。


「なんだ……?」

「電波が遮断されている。ネットにも繋がらない。新崎が、なにかしやがったんだ……!」


 戸村が忌まわしげに、光を失った天井を睨み上げる。

 足止めを引き受けた二人は完全に、味方と分断されてしまっていた。


        ※


「みんな無事か!?」


 聡也と環奈と別行動をとっていた志藤たちの元にも、その衝撃と暗闇は襲いかかっていた。


「いま明かりを発動します! 《グィン》!」


 真が汎用魔法で周囲に光をもたらせば、集団の後ろの方で、うめき声を上げる男がいた。


「岩井さんが、私とクリシュティナさんを庇って怪我を!」


 そこでは、切羽詰まった様子で治癒魔法を発動している香月と、背中に天井から落ちてきたと思わしき鉄製のパイプが突き刺さっている義雄がいた。


「おい、誰か来るぞ!」


 悠平が進行方向上を睨む。

 その方には確かに、薄暗闇の中、歩いてくる特殊魔法治安維持組織シィスティムの敵がいた。その落ち着きようを見るに、この衝撃も全て分かっていたような風であった。


「新崎局長の為に、特殊魔法治安維持組織シィスティムの為に。あなたたちを討伐します」


 混乱する一員の前に立ちはだかるのは、特殊魔法治安維持組織シィスティムの女性隊長であった。ネズミの群れは首尾よく本部内に集結した。地下施設を()()し、戦力を分断させ、混乱したところを一気に叩く。

 相手が学生であろうが関係ない。向こうが相応の覚悟と力を宿して攻めてきたのであれば、こちらも誠意をもってもてなさなかれば。油断も隙もそこにはない。例え相手が学生であろうが、徹底的に潰す。

 それこそが、新崎が隊員たちへ下した、命令であった。


「学生一人と戸村環奈とむらかんなが分断された模様」

「もう一つの方には、岩井義雄いわいよしおがついているようですが、こちらは爆発の衝撃で負傷した模様です」


 生かされている監視カメラ映像から入った情報を、女性隊員たちが逐一報告している。


「また、上層階には第二分隊の隊長が制圧へ向かっています」


             ※


 その時、大きな衝撃が、頑丈なはずの特殊魔法治安維持組織シィスティム本部ビルを揺らしていた。

 上層階にいた誠次は、迫り来ていた特殊魔法治安維持組織シィスティム斥候せっこうらを無力化していた最中であった。


「この揺れは……!?」

「一体なんだ!?」


 敵となって立ちはだかる特殊魔法治安維持組織シィスティムも、突如として発生した揺れに、驚き戸惑っているようだ。


「頭上に注意しろ! ビルが崩れて瓦礫が落ちてくるぞ!」

「なんだと!?」


 今まさに、自身が負傷させた特殊魔法治安維持組織シィスティムの隊員の頭上に落ちてきた大きな瓦礫を、誠次は桃華の付加魔法エンチャントを使用して、衝撃波で破壊する。


「き、貴様……!?」

「大人しくしていてくれ! 俺たちが倒すべきは、今の歪んだ国家実力組織の体制を生み出している新崎和真だ!」

「学生如きが……国家実力組織のあり方を変えるだと!? 笑わせるな!」


 揺れ動くビルの通路にて、彼方から攻撃魔法の攻撃が、そんな叫び声と共に飛来する。

 誠次は冷静に、右手に握ったレヴァテイン・ウルを手元で回転させ、身体に直撃するコースで迫ってきた魔法を全て斬り弾く。


「目を覚ましてくれ! 今の新崎がトップに立つ特殊魔法治安維持組織シィスティムなど、それは正しいものではないはずだ!」


 叫びながら誠次は、右腰にあるレヴァテイン・ウルを引き抜き、即座に桃華の付加魔法エンチャントを纏わりつかせ、放つ。

 緑色をした衝撃波は通路の床に牽制となって直撃し、特殊魔法治安維持組織シィスティムの足を止めた。


「志藤! 応答してくれ! 志藤!」


 地震のような揺れの直後から、下層にいるはずの味方と連絡が取れなくなっており、誠次は胸ポケットにある電子タブレットに先ほどから何度も声をかけていた。


「繋がらない……。下層で何かが起きたのか?」


 思わず焦りそうになる胸を、しかし一つ深呼吸をした誠次は、落ち着かせる。

 大丈夫だ。足元には、信頼できる仲間たちが多くいる。今の彼ら彼女らならば、窮地も乗り越えてくれるはずだ。

 ――おれは、おれの任務を果たさなければなるまい。

 目を開けた誠次の前に、特殊魔法治安維持組織シィスティム第六分隊の隊長が、立ち塞がっていた。


「剣術士。特殊魔法治安維持組織シィスティム第二分隊隊長、大道寺知憲だいどうじともあきが相手をする」


 大柄な、厳つい顔立ちをした特殊魔法治安維持組織シィスティムの隊長であった。


「時間が惜しい――」


 対する誠次は、腰からもレヴァテイン・ウルを抜刀し、それを連結させ、桃華とうか付加魔法エンチャント能力である緑色の光を宿し、両手で握り締め、構える。


「速攻で終わらせる!」


         ※


「ここから先へは行かせません!」


 崩落した地下施設の中で、特殊魔法治安維持組織シィスティム第六分隊隊長の紗幸さゆきと名乗った女性を前に、立ち向かうのは志藤颯介しどうそうすけ帳悠平とばりゆうへいであった。


「邪魔するんだったら、突破するしかねえ!」


 意気込む志藤の隣で、悠平が一歩前へと進み出る。


「ちょっと待ってくれ志藤」

「なんだよ、帳」


 前へ出た悠平に、志藤が問う。


「相手は女性だ。男が二人で戦うってのも、なんか違わねえか?」


 至極真面目な顔でそんなことを言いだす悠平に、


「おいおい……。こんなところでもお前は天然タラシを発動するのかよ……」

「ん? なんのことだ?」


 呆気にとられる志藤に、きょとんとする悠平である。


「ま、ここは俺一人に任せてほしい。まあ危なくなったりヤバそうだったら、援護頼むけど」


 悠平はそう言って、待ちぼうけを食らっていた紗幸を見る。


「悪い、待たせたな。俺たちが用があるのは、新崎って奴なんだ。だからできれば、戦いたくないから、道を開けてくれるとありがたいんだけど」


 悠平が至って真面目な顔立ちで、そんな提案を紗幸にする。

 対する紗幸は、小奇麗な顔立ちを歪ませる勢いで、怒りの声をあげる。


「舐めているのか……! あまつさえたった一人でこの私を相手にして、私に勧告するだと!? 貴様……!」

「い、いや、舐めてはいませんって。怪我してほしくはないんだ。じゃんけんで決めるとか、無理ですかね?」

「ふ、ふざけるな! 本部に侵攻しておいて、じゃんけんで勝ち負けを決めるだと!? なにがなんでも逮捕してやる!」

「そうした方がお互いのためって思って……って、もう戦うしかないですよね」


 わかった、と納得した悠平は片手を上げ、紗幸を睨む。


「だったらこっちにも退けない理由はある。悪いけど、アンタを倒すぜ!」

「新崎局長の為にも、貴様たちはここで倒す!」


 両者の手元に一瞬で、攻撃魔法の光が集う。

 先にその円形の魔法式を完成に導いたのは、紗幸の方であった。やはり、構築速度は現役特殊魔法治安維持組織シィスティムの隊長に分があるか。


「《フェルド》!」


 火炎放射を生み出す魔法が、紗幸の手元から悠平へ向けて放たれる。


「《フェルド!》」


 やや遅れ、悠平が後出しながら同じ炎属性攻撃魔法を繰り出す。

 両者の攻撃魔法が衝突し、小規模な爆発を引き起こし、風を生む。

 立ったままであった紗幸であるが、微かな違和感を、感じていた。


「相殺、された……?」


 ただの学生が繰り出した攻撃魔法が、特殊魔法治安維持組織シィスティムの隊長である自分のものと、同じ威力だったと言うのか。

 

「いくら威力が同じとはいえ、構築速度は私が上だった。……ならば、手数で攻める」


 紗幸は立て続けに無属性攻撃魔法を発動。


「貫け、《フォトンアロー》!」


 白い矢のような光の弾を、悠平へ向けて放つ。

 対する悠平は、またしても後出しで、同じ攻撃魔法を発動する。

 両者の《フォトンアロー》が再びぶつかり、爆発を起こす。


「なんの真似だ!? 先程から私と同じ魔法を使って……!」

「いや、ただ、見極めているんだ」


 悠平は大きく走り出しながら、答える。

 紗幸はそんな悠平を目線で追いかけながら、油断なく攻撃魔法の魔法式を展開し、照準を悠平の進行方向上に合わせる。


「女だからって甘く見るな!」

「そう言うつもりじゃねえけど!」


 きゅっ、と靴底の音を鳴らし、悠平は方向転換を行う。

 向かってきた攻撃魔法が背中を流れ、悠平は前転した後に姿勢を整え、膝立ちの姿勢から腕を伸ばす。


「《エクス》!」


 悠平が攻撃魔法を放つ。

 無属性攻撃魔法が紗幸の方へ向かっていくが、これを相手は難なく防御魔法で防ぎきる。

 悠平の攻撃を難なく防いだ紗幸は、反撃に同じ攻撃魔法《エクス》を、手本でも見せつけるかのように、悠平へ向けて放つ。

 彼女が白い円形の魔法式を完成させた途端、その光の先で、なにか不敵に微笑んでいる少年の顔立ちがあったことに、気がつく。一体何が、おかしい――?


「貰ったぜ一撃必殺! 《エクス》!」


 悠平が放ったのもまた、こちらと同じ攻撃魔法。今度もまた、相殺されるものになるはずだろうと、紗幸はタカをくくり、棒立ちのままでいた。

 しかし、それこそが、勝敗の分かれ道であった。

 悠平の放った攻撃魔法が、紗幸の攻撃魔法をほふり、直進する。


「なに……!?」


 驚く紗幸の右肩まで、悠平の攻撃魔法が直撃するまでに、そこまでの時間はかからなかった。

 白い魔法の弾が、紗幸の右肩を貫き、彼女は右肩を抑えて蹲る。


「おっと。悪いけどこれ以上するつもりなら、その前にアンタを潰さなきゃいけなくなる。そこまでしたくないから、出来ればもう退いてくれ」


 悠平は油断なく攻撃魔法の照準を、紗幸に向けていた。


「っく……覚えていろ。貴様ら学生ごときがいくら足掻いたところで、新崎局長は負けない!」

「俺たちだって、負けるつもりはねえ。仲間の為にも、俺たちは勝つ」

「戯言を……っ|」


 紗幸はそう言い残すと、瓦礫が残る地下通路を、引き返すようにして去っていく。

 悠平はその後ろ姿を見届けると、軽いガッツポーズとともに、振り返っていた。


「よっしゃ! 特殊魔法治安維持組織シィスティムの隊長に勝ったぜ!」

「やったな、帳!」


 志藤が帳を迎え、女性陣も駆け寄る。


「凄いわね、帳くん。どういう戦術だったのかしら?」


 香月が悠平に問いかける。確かに悠平の戦い方は、一般的な授業で習うような、普通の魔法戦とは大きく異なったものであった。その戦術とはやはり、彼の特訓相手である南雲なぐもユエの賜物だろう。


「後出しジャンケンだ。俺は属性魔法がそこまで得意じゃないぶん、純粋な魔法のパワーはあった。問題はそれをどうやって相手に当てるかだったけど、その答えが、後出しジャンケン。相手と同じ魔法使ったら、純粋な撃ち合いになるだろ?」


 悠平が得意げに説明する。

 

「構築が下手くそでも、相手と同じ魔法だったら少なくとも競り負けることはない。だから粘って粘って、いつか自分が得意な無属性の攻撃魔法を相手が撃ってくるのを待っていた。狙い通り、油断した相手に純粋な魔法のパワーで勝って、命中させる。上手く行ったぜ」

「よし。天瀬と夕島が粘ってくれてるぶん、俺たちも頑張らねーと。行こうぜみんな」


 戦いを終えた悠平を後ろへ下がらせ、志藤が再び先頭を歩こうとしたときであった。再び、下層にて大きな揺れが起きる。

 全員が一斉に防御魔法を展開し、頭上からの瓦礫の崩落を防ぐが、足元を見ている余裕はなかった。


「なに!?」


 先頭を歩いていた志藤と、その後ろの人との間の床に、大きな亀裂が奔る。


「志藤!」


 咄嗟に悠平が走り出し、志藤を助けようとするが、二人共に、天井から落ちてきた瓦礫によって退路を塞がれてしまう。


「そんな、志藤さん、帳さん!? 大丈夫ですか!?」


 女性陣と共に分断された真が、防御魔法を展開させたまま、両者を別けた大きな瓦礫のもとまで近づく。


「ああ! こっちは平気だ!」


 志藤と悠平も、瓦礫には巻き込まれずに無事であったようだ。


「瓦礫を魔法で吹き飛ばせば、合流できるかもしれない!」


 香織がそう言うが、それを制したのは、治癒魔法での治療を終えた岩井であった。


「待って、波沢さん。この瓦礫を破壊すると、ここ全体が崩れかねない」


 未だ苦しそうな顔立ちで、顔に汗を浮かばせながら、岩井が言う。


「そんな……」


 香織は手を引っ込めて、通路を塞いだ瓦礫を悔しそうに見る。


「志藤君。そっちは、進めそうかい?」


 岩井が大きな声で、瓦礫の向こうにいる二人の男子に訊く。


「ええ、道はあります! 俺と帳は、こっから先に進みます!」


 瓦礫越しに、志藤が叫び返す。


「わかった。僕たちは、環奈たちと剣術士くんと、合流を図ってみる。くれぐれも、無理をしないでくれ」

「「了解!」」


 志藤と悠平とも別行動になった一行、真、岩井、香月、香織、ルーナ、クリシュティナ組は、封鎖された通路を背に、抜け道がないかを探し出す。


「さっきの、紗幸と言った隊長……」


 岩井が歩きながら、何か考え事をしている。


「どうしたのですか、岩井さん?」


 この場では、数少ない男の一人となった真が横を歩き、尋ねる。


「僕がいた頃いなかった、新人の隊長だった。第六分隊は比較的、新崎にも協力的な人たちが多かったはず。それにも関わらず、隊長が変わっていた」

「つまり、どういうことでしょうか……」

「考えられるとしたら、やはり、自分の命令に従順な人ばかりを、選んでいた、とか」

「そんな……。それこそ独裁者の手法じゃないですか……」

「ある意味、指導者としては、正しいことなのかも、しれない。事実、前の局長の志藤局長は、そうして、危ない目に合ったわけだから。だから、新崎は、本当に信頼できる人しか、側にはおかない」

「確かに、そうかもしれませんね……」


 真が悲しげに視線を落とすのを、岩井は横目で見ていた。


「でも、それは正しいことではあるかもしれないけれど、いいことじゃないかも、しれない……。ごめんね、上手く、伝えられなくて」


 岩井が申し訳なさそうに言ったのに、真はくすりと微笑む。

 

「いいえ。言いたいことは分かります。正しいことではあるかもしれないけれど、それは同時に、間違ったことでもあるはず。自分たちだって、それは同じことが言えるはずですから」


 真はそう言って、胸に手を添える。


「どちらが正しいか、決めるために、自分たちはここに来ているのです」

 

 真の言葉に、岩井は細かった目をやや大きくして、頷いていた。


本部ここでこんなことが言えるのであれば、君は立派な、男の子だ」

「そ、そんな大層なことを言ったつもりでは、ありません……」


 真は首を軽く横に振っていた。


「気がかりなのは、第二分隊の行方だ」

「第二分隊?」

「うん。流石に、テレビ局の方に向かったはずだけど。第二は今や、特殊魔法治安維持組織シィスティムのエース部隊だから」

「そこの、隊長は……」

堂上敦也どのうえあつや。新崎の腹心の男。彼がおそらく、新崎を除いた、今の特殊魔法治安維持組織シィスティムの№2だと、思う」


        ※


 崩落してきた瓦礫によって後続と分断された志藤と悠平は、細長く薄暗い通路を二人で歩いて進む。

 水道パイプが破裂したのか、床は水びだしとなっており、くるぶしほどの高さまで冠水している。

 頭上ではときより火花が舞っており、何かの回線も断線したのだろう。もしもそれが足元の水に浸かれば、人体にも影響を及ぼしかねない。


「っち。相変わらずみんなと連絡がとれねえ」

「それでも、地下に向けて一番近づいているのは俺たちってことだろ?」


 悠平が尋ねれば、電子タブレットでの通信を試みていた志藤は頷く。


「だな。ま、上にラスボスがいなかったってことは、下の一番最後にいるのが定石だろ?」

「はっはっは! 間違いないな!」


 そんな二人は、とある区画にたどり着く。魔法学園の地下演習場を彷彿とさせるここは、比較的崩落の影響を受けていないようで、綺麗なタイル床と壁面が広がっていた。


「ここは……」

「地下シュミレーション施設、みたいだな」


 昔からあった施設で、提供された地図にも記載されているのを、志藤は周囲を見渡す悠平にも説明していた。

 

特殊魔法治安維持組織シィスティムが訓練に使う施設で、下手な魔法じゃ壊れない壁なんだろうな」


 志藤が無機質な周囲を何気なく見渡しながら言っていると、ふと、何かの違和感に気がついたかのように、黄色の瞳を大きくする。


「帳っ!」


 次の瞬間には、咄嗟に走り出した志藤が、悠平の身体を床に押し倒していた。


「痛っ!? なんだ、志藤!?」

「伏せろ!」

「っ!」


 志藤の切羽詰まった表情を見た悠平は、志藤のすぐ背中に、破壊魔法が通過していく光景も視界に捉えた。

 あと少しでも反応が遅れていたら、即死のものであった。


「危なかった……。助かった、志藤」

「いや、それよりもだな……!」


 志藤はすぐに立ち上がり、体勢を立て直す。

 見えたのは、赤髪に歪んだ笑顔を向けてくる、特殊魔法治安維持組織シィスティムの男であった。


「いやあ、今のをかわすなんて。やるねー」

「お前は……」


 志藤が眉を寄せて、対峙する男を睨む。

 

特殊魔法治安維持組織シィスティム第二分隊隊長、堂上敦也」


 堂上は一人、この場で志藤と悠平を待ち構えていた。


「その顔を殺したくなるのは……二度目かな」


 志藤颯介を細めた目で睨み、堂上はそう言った。


          ※


 一方で、散り散りとなった各メンバーとの合流を急ぐ真と岩井と女性陣たちの前にも、敵は立ちはだかっていた。

 崩壊した屋根から瓦礫が降り注いでいる、ブリーフィングルームであったというかつての場。爆心地に近い場所だったのだろう、損壊が激しく、今もまた、新たな瓦礫が落ちてきたところだ。

 それら破片を踏みしだきながら、部屋の奥の方から、人影が近づいてくる。


「――っ! みなさん、下がっていてください」


 それをいち早く察知した真が、手を横に向けて全員を後ろに下がらせる。

 唯一隣まで歩み寄ってきたのは、同じ男である、義雄であった。


「どうした、の?」

「敵がいます。数は一人で、それでも手強い。男です」

「空間魔法の索敵能力、高い」


 岩井が褒めながらも、真正面を睨む。


「――なんだ、お前ら……」


 粗暴であり、刺々しい声音。

 それは周囲に巻き起こった、埃をまき、立ち止まる。


「女が……俺の前に出てくるとはいい度胸だ……!」


 白銀の髪と、三白眼の目。そして筋肉質な身体に抱いていたのは、身の丈ほどはある大剣であった。


戸賀彰とがあきら……元レーヴネメシスの構成員で、新崎のところで、預かっていたはずの、少年」


 岩井が彼の姿を見て、驚いている。

 真も、見覚えのある彼の姿を見つめていた。記憶の糸を辿れば、昨年秋の文化祭で一瞬だけ遭遇していた、口の悪い男だ。

 そして、向こうもまた、こちらの顔を覚えていたようだ。――女性として。


「自分は女ではありません。いい機会ですから――ぶっ飛ばします」

「……くれぐれも、落ち着いてね、真、くん」

 

 一年間も間違われ続けたままで憤慨する真と、彼を宥める岩井が連携して、戸賀彰を迎え討つ。

~栄光の勝利の暁には!~


「林先生!」

せいじ

     「どったの剣術士?」

         まさとし

「俺、林先生の元で」

せいじ

「魔法を学べて良かったと」

せいじ

「心から思っています」

せいじ

     (急にゴマ擦ってきやがったな……)

          まさとし

     「……何が狙いだ?」

          まさとし

「つきましては、此度の戦の勝利の暁には」

せいじ

「どうか、翌日に迫るテストの徳量寛大な措置を!」

せいじ

     「無理」

          まさとし

「作戦失敗!」

せいじ

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