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「激しい運動前の準備体操は忘れずにな。怪我をしてからでは遅いぞ」
るーな
ヴィザリウス魔法学園と、アルゲイル魔法学園の合同体育祭当日。決戦の地であるスタジアムには、早朝から多くの人が押し寄せていた。
競技を行う魔法生たちが、ジャージと体操着姿でスタジアム入りする。万単位の人数を収容できる大きな楕円形のドーム型スタジアムは、白と黒の人の集団でいっぱいとなっていた。
しかし、それでも観客席の空席は目立つ。観客や保護者も全員が見に来ているというわけではなく、満杯ではない。
そんな時に使用されるのは、スタジアム備え付けの、ホログラム技術によるダミー観客、サクラのようなものである。応援の歓声などがインプットされており、それが絶妙なタイミングで響いている。
『さあいよいよ始まる因縁の対決! 血塗られた歴史に新たな一ページが刻まれることだろうなッ! 野郎共、気合を入れやがれッ! 実況はこのオレ、ミシェル・山本と、解説はダニエル・岡崎がお送りするぜ!』
『怪我のないように頑張ってほしいッ! しかし、それでも怪我をしてしまったら、迷わず我輩の所まで来るようにッ! 来たら来たでやむを得ない……歓迎するぞッ!』
スタジアム内では、二校の養護教諭による大きな声が響き渡っている。本大会の実況解説を務めるコンビらしく、良くも悪くも盛り上がること間違いなしだろう。歓声がそこかしこで沸き起こり、これから争いを繰り広げる二つの魔法学園の、体育祭の開催を、宙を舞う紙吹雪が彩りを加えて、祝福していた。
「宣誓。私たちは、スポーツマンシップに乗っ取り――」
「正々堂々と戦うことを、ここに誓います!」
波沢香織と荒井大地。両校の生徒会長が手を挙げて、整列する魔法生たちの前で宣誓をする。
この瞬間ばかりは、彼女と彼の後ろに整列する魔法生たちも、気をつけの姿勢で静かに整列をし、二人の背を見つめていた。
そして鳴り響く、楽器の演奏音。快晴の青空の下、鳥の巣のようなスタジアムで、一年越しの魔法学園体育祭は、熱狂を呼んで開幕した。
スタジアム内部に一歩足を踏み入れれば、思わず耳を覆ってしまうような、大声援が響き渡る。
第一種目は、一〇〇メートル徒競走だ。レーンとそれの使用人数の関係もあり、最終種目までは長い戦いとなりそうだった。
観客席の頭上には、浮かび上がったホログラム画像に、競技の映像が流れている。そこには決戦に備え、ストレッチを行う、体操着姿に白と黒のハチマキを巻いた魔法生たちが映っていた。
誠次はドームの扇状に広がっている観客席に向かう。交代で応援しているチア部や吹奏楽部とは別に、その他委員や係ではない魔法生は、基本的にどこで何をしようとも自由だ。求められるのは当然、自学園の応援だろうが、他にはない他校及び他学年との交流の機会と、魔法学園外での課外活動の一環である。大人しくしていろというのが無理な話である。
誠次もまた、そのうちの一人であった。
「売店もやっているのか」
親しい友人の参加競技はもちろん応援する。一〇〇メートル競走出場者である真の出番までは、まだ時間があるようだ。上空に浮かぶホログラム画像にて、選手名簿を確認した誠次は、スタジアム観客席脇にある売店の列を歩いて通り過ぎる。
なにか食べてみたかったが、昼を一緒に食べるという約束をしていたので、ここは我慢する。
スタジアムの方で何か、太鼓やラッパの音が響き出す。どうやら、競技が始まったらしい。
「しまった。散策をしていたらもう時間だ」
振り向き、スタジアム二階部である自分たちの座席へと戻ろうとしたところであった。
「――よお、ライバル高のエース君」
聞き覚えのある男の声に、誠次は立ち止まる。
笑いながら、後ろからやって来ていたのは、白い髪を赤いバンダナで上げたヘアスタイルの、南雲ユエであった。彼はアルゲイル魔法学園の旧生徒。即ち、ライバル校のOBである。
「ユエさん、来ていたのですか?」
「ああ。一応、可愛い後輩たちの晴れ舞台だからな」
スタイルの良さが如実に見えるロングTシャツ姿でユエは、蒼い目の視線を、熱狂で包まれるスタジアムの方へ向けながら言う。
「もっとも、お前は敵高の生徒なわけだが」
「負けるわけにはいきませんから」
微笑むを向けてくるユエに、誠次も不敵な笑みで返す。
「お一人ですか?」
「俺の嫁が駐車場で車を止めて来てくれる。混んでてさ。俺は先に座席確保しに来てたっつーわけ」
どこを見ても人だらけのスタジアムの中を、ユエは面倒臭そうにして髪をかきながら、見渡していた。
「ま、後輩たちが汗水流して頑張ってる姿を見るってのもいいもんだ。俺も、しまっていかねーとって思うもんだんっつーの」
あとは、とユエは思い出したかのように、誠次を見る。
「敵高とは言え、悠平は個人的に応援しなきゃな?」
フレースヴェルグの指導相手である悠平の事を、面倒見の良いユエは応援してくれるようだ。
「でも、敵高ですよ?」
「それはそれ、これはこれだっつーの。要領よくいこうぜ、誠次?」
「は、はい」
人生の先輩にそれらしいことを言われ、誠次は頷く他なかった。
ユエはそのまま、こちらとはグラウンドを挟んで向かいの二階側、アルゲイル魔法学園側の応援席へと向かうようだ。
去り際、そう言えばとユエは、くるりと振り向く。
「そうだ。霧崎せんぱ……霧崎さんは来ることは分かってるんだけど、影塚と日向は見たか?」
「お二人ですか? いえ、見ていません」
「そっか。どっかでばったり鉢合わせをして、喧嘩でもしていないと良いけどなー」
ユエは空を見上げながら、そんなことを言う。
「ははは。まさか、そんなことあるわけないじゃないですか」
誠次も笑顔で、運動日和の空を見上げていた。
※
「……」
「……」
魔法生の保護者や、学園関係者、果てには教育委員会等の観覧の為に、メインスタジアム三階席にも大勢の観客席が用意されている。全方位からグラウンドを見下ろすことが出来る、遥か昔に建てられた優れたスタジアムだ。
その座席に隣同士で座る二人の男からは、ただならぬ雰囲気を感じる。
「……なぜ」
「……なんだ」
太陽が傾き、二人の姿を日差しと、ちょうどドームの屋根で生まれた影で区切る。そこでは私服姿の影塚と日向が、隣同士で座っているのだった。
「ふざけるな影塚! なぜ貴様が俺の隣に座る!?」
「日向こそ、どうして僕の隣に……」
辺りを見れば、他にも空いている席はある。しかし、先にこの見晴らしのいい場所を確保したのはこちらだと、互いに譲り合う気はない。
「僕は小野寺くんの競技を見に来ただけだ。本人が見られていると思うと緊張してしまうから、こうやって離れたところから見守ろうとしていたんだ」
「そう言う考えのお前と会わないために、わざわざ三階の席にまで移動したというのに、よりにもよってお前が座っているとは……」
日向が頭痛を感じるように、頭に手を添える。
「先に座っていたのは僕の方なんだけどな……」
状況的には、先日の美容院と同じような感じだ。
そんなことを呟いた影塚だったが、ふと、思い至った事がある。
それは、長髪の彼が、今日も忙しなく髪を触ったりしていることであった。今日も彼が隣に座ってきたときには、その長い髪のせいで、女性だと勘違いをしてしまった。
せっかくの良い機会だ。たまには世間話もしていいだろう。影塚は、日向へこんなことを訊いていた。
「なあ日向。一つ訊いておきたいんだ」
「なんだ?」
日向は隣の席で腕を組み、動こうとはしないようだ。
「なんで君は、そこまで髪を伸ばしているんだい?」
のほほんとした表情で、影塚が気晴らしに問えば、当人はそれはそれは、面食らったような表情をしていた。
ありえない。ふざけているのか! 今にもそんなことを言いたげな表情で、こちらを睨んでいる。
なにか、気に触ることを言ってしまったのかと、影塚はきょとんとしていた。
「ひ、日向? 一体どうしたんだい?」
「舐めているのか、貴様はーっ! 誰のせいでこうなったと思っている!?」
「ええ!?」
それはそれは、周りの人が驚くほどの絶叫が、日向からは発生していた。
※
その他スタジアム外でも、自分の出場する競技に合わせて、最終調整をしている魔法生が多くいた。
運動をするにあたって、事前に栄養を蓄えておくことは重要だ。車と同じで、燃料がなければ動くことは出来ない。よって、ガソリンを入れることは重要なことであり、間違ったことではない。
「はい。チュロスとポップコーンに、紅茶ね! ありがとうございましたー!」
……間違ってはいない……断じて。
両手いっぱいに、売店から購入した応援グッズを持ち、香月は自分の応援席へと戻ろうと、スタジアム外周通路を歩いていた。多い人混みの中、彼女の銀色の髪がひょこひょこと、彼女の今の心情を表しているかのように、上下している。
「きゃっ」
「あ、ごめんなさい!」
戻る途中のことだった。人混みの中を無邪気に走ってきた子供とぶつかってしまい、香月は手に持っていた応援グッズ――改め、お菓子の袋を手放してしまう。
彼女の手を離れたお菓子のが床に落ちる寸前、真横からかけられた汎用魔法が、お菓子の袋を宙に浮かばせる。
「――ここで走っちゃだめよ。ほら、早くお母さんとお父さんのところに行きなさい」
香月のお菓子を救い、兄妹らしき子どもたちへ注意をしていたのは、黒いジャージに身を包んだアルゲイル魔法学園の女子生徒、小野寺理であった。
「はーい」「ごめんなさい」
魔法学園の誰かの兄妹だったのだろうか、子どもたちは頭をペコリと下げると、先へ行っていた両親の元へと歩いて向かっていく。
理は二人の子供を見送ると、続いて魔法を操作し、両手が塞がっている香月の手元にお菓子の袋を落としてやる。
「余計な真似だったかしら。魔法が得意らしい香月さん?」
白いジャージ姿で香月は、首を左右に振る。
「いいえ。両手が塞がってたし、助かったわ、小野寺さん。ありがとう」
「それにしても正気? まだこれからだって言うのに、そんな大量のお菓子を食べるなんて」
「……別腹だから」
「別腹ってそう言う意味で使わないわよね……」
橙色の髪を左右で束ねた理は、呆気にとられてツッコむ。
「小野寺真くん、もうそろそろ競技の時間よ。近くに見に来たの?」
「ば、ば、べつにそんなのじゃない!」
香月が無表情で首を傾げながら問えば、理はやや顔を赤く染めて、そっぽを向いていた。
しかし、すぐ横にあった手すりに何気なく手を添えて、グラウンドの方を見る。
「大阪で出会ったときからアイツも変だけど、アンタもアンタね……」
「変って……」
香月がやや不満そうに眉を寄せるが、理の言葉は続いていた。
「そう。あんまり仲良くもなかったはずなのに、はるかを助けてくれて……本当にありがとうね」
理はぽつりと、呟くようにして言っていた。
確かに、大阪での出会いは良好な関係とは言えなかったことだろう。それに、昔の自分のままであったら、あの距離感から変わろうとも思うまい。
それでも今は、一歩、また一歩と歩み寄り、香月は理の隣に立って、同じ方を見つめていた。
「そうしなければいけないと、思っただけよ。私も、天瀬くんも。剣を使う彼と、魔法を使う私が、困っている人を、救える人を救う。きっと、間違っていないと、思うから」
「……そう。優しいのね、二人とも。ありがとう。貴女にもきちんとお礼は言っておくわ」
「私はべつに。するのならば、天瀬くんに」
「もう言ったわ。そうしたらアイツ、本気か嘘か一々キザな台詞言うのよね」
「……天瀬くんらしいわ」
香月は微笑むと、思い出したかのように、お菓子でいっぱいの手元をごそごそと動かしだす。
「……アンタって、ずっと無表情だと思ってたら、アイツの話をすると笑うのね」
理がその横顔をじっと見つめてると、その視線を隠すかのように、香月は半分(?)に折ったチュロスを差し出す。
「流石に多すぎたから、これをあげるわ。半分に折ったつもりだけど……バランスが崩れて……短いほうだけど……」
「あ、ありがとう……」
理は素直にそれを受け取ると、口に入れる。
「うん、美味しい。お菓子選びのセンスあるわね、貴女」
「一応アルバイトで、そういう所で働いているから」
「アンタもアルバイトしてるの!? 無愛想そうだけど大丈夫!?」
「接客はあまり得意じゃないから、基本的には裏方だけど……」
香月もまた、理の隣でチュロスを食べながら、そんな会話をしていた。
二人共この場から動こうにも、動けなかった。グラウンドではいよいよ、小野寺真の出番があるからであった。
※
誠次はヴィザリウス魔法学園側の応援席スペースへと戻ると、自分の席である座席の方へと駆け下りる。
スポーツ観戦をするのであれば、スリルと興奮を一挙に味わう事ができる特等席とも呼ぶべき、二階最前列であったそこではすでに、志藤を含めルームメイトたちが、横並びで座っていた。
「待たせた。戦況はどうなっている!?」
「アルゲイル魔法学園が若干リードしている状態だ」
売店で買ったと思わしきドリンクを飲みながら、悠平が説明してくる。
「一〇〇メートル走は、順位に関係なく、それぞれのタイムがポイントになって加算されていく。一位だからと気は抜けず、逆にビリだからと最後まで諦めてはいけない」
聡也が腕を組み、そんな説明をしてくれる。
察しの通り、実況と解説のミシェルとダニエルのコンビでは、必要な情報が頭に入ってこず、両者ともに実況者という状況に陥っている。つい先程まではマイクの取り合いを腕相撲で決めていたようだ。
――あの二人に負けるわけにはいかない。
観客席に座る今の自分たちができること。それはつまり、競技出場者への心からの応援であり、腹から出す大声援であった。敵は強敵だが、諦めるわけにはいかないのだ。
「よし……。みんな、準備は良いか?」
悠平が手すりに両手を添えれば、誠次や志藤、聡也も頷いて、そっと立ち上がる。
そして、上空のホロ画像に、緊張した面持ちでレーンに立つ真と、彼の紹介情報が載せられた瞬間、彼のルームメイトの男子たちは、大声を出していた。
「「「頑張れーっ! 小野寺真ーっ!」」」
周囲の人がグラウンドではなく、観客席の方へ注目してしまいそうなほどの、大きな声での応援。
それはきっと、真の方にも届いていることだろう。事実として彼はこちらを見つめ、嬉しそうに顔を真っ赤に染めているではないか。
「真のやつ、喜んでくれているな」
「ああ……やったかいがあったみたいだな」
「俺たちの応援が、彼の力になることだろう」
「はっはっは。違いないな」
誠次と志藤と聡也と悠平がうんうんと頷いているが、別のブロックに座るその他の魔法生たちからは、白い目を向けられていた。
※
レーンの上に立つ真に、その声は確かに届いていた。
(なんであんな大声……!? は、恥ずかしいんですけど!?)
悪い意味で、目立ってしまっていた。
隣のレーンに立つアルゲイル魔法学園の生徒が、頭を抱える真の姿を見て、どうしたのかと微妙な表情を浮かべている。
「それでは位置について――」
気を取り直した真は、周囲の面子を確認する。同じ組で走るのは、いずれも陸上部や運動が得意そうな男子ばかり。そんな中に紛れ込んだ真は、それだけでもよく目立ってはいた。
様になるクラウチングスタートの姿勢で、真は両手をレンガ色のトラックの上へと添える。
競技の開始に合わせて、幻想の観客達の声援も大きくなる。しかし、それに負けじと耳に届くのが、聞き慣れたルームメイトたちの声援であった。
(良いですよ。……でしたら、しっかりと自分の後をついてきてくださいね……?)
彼らの声援には、プレーで答えるのみ。
だらりと垂れた橙色の髪の底にある、橙色の瞳の視線を研ぎ澄まし、遥か先へ見えるゴール地点を確認する。追い風、コンディションは良好。そして、視線はもう手元へと映し、あとは耳を済まして、スタートの音を聞くだけ。
「――ッ!」
施設備え付けの、カウントダウン式サイレンの音を背に、真は最高のスタートダッシュを切った。
正直、スタートから視界の左右に隣のレーンの選手が見えなくなったところで、勝利は確信していた。あとはどれだけ、自分のタイムを伸ばせるか。
ゴール地点にいち早く到達した真は、息を切らしながら勢いを削り、少し先の方でタイムを確認する。
「ハアハア……凄い、自己ベスト……っ?」
顎先から垂れる汗を拭いながら、真は感動を味わうように、深く息を呑む。
会場に浮かぶ全てのハイライト映像は当然、真の姿を映したものであり、真は一瞬だけ恥ずかしさから俯いてしまいそうになってしまうが、声援に応えるように、遠慮がちに手を挙げていた。
『うおぉぉぉぉっ! 良くぞやってくれた、小野寺真クンッ!』
『っち。次はアルゲイルが勝つ!』
すでに解説実況の体をなしていない二人の養護教諭の声が響く中、ルームメイトたちの前までやって来る。
「やったな真!」
「アルゲイルに並んだぞ!」
「さらにフェアプレイ――通称良い子ポイントが点けば、ポイント五十点追加だ! ヴィザリウスに五十点!」
「なんですかそのどこかで聞いたことあるようなシステム!?」
誠次、悠平、聡也の小ボケに、競技終わりたての真はきちんとツッコんでくれていた。
「ですがありがとうございました。皆さんの応援は心強かったです」
しかし、と真はぷんすかと、次には頬を膨らませていた。
「それでも、あれは大袈裟すぎます! もう少し節度を持って応援してください! 男子の悪ノリは、周囲に引かれてしまうこともあるんですからね!?」
「「「はーい……」」」
こうした真のお説教を喰らうのも、寮室ではわりとありふれた光景だったりもする。
「おっと。もうそろそろ俺たちも準備しないとな、夕島」
「障害物競争か。正直、なにが出てくるのかさっぱりだ」
「ぶっつけ本番を楽しむもんだろ? 何が起こるかわからねえけど、それはそれで面白い」
志藤がそう言いながらベンチから立ち上がり、聡也へ向けて手を差し伸ばす。
聡也は、意地でも外そうとしない眼鏡の奥の瞳で、志藤の手をじっと見つめる。
「……セオリー通りにはいかない、か。確かに、教科書通りにはいかないことばかりかもな。だからこそ、楽しめる」
誰かの話だろうか。ぼそりと呟いた聡也は、しかしやる気に満ちた表情で志藤の手を取り、立ち上がっていた。
「んじゃ、行ってくるぜ。なーに、さくっとトップになって帰ってくるぜ。リーダーが微妙な順位ってのも、味気ないだろ?」
志藤と聡也はそう言って、競技会場である一階控室へと向かっていった。
……盛大なフラグでないことだけは、祈ろう。
~情熱は色に込めて~
「体育祭と言えば、クラスで作った応援ボードも目玉だよな」
ゆうへい
「まあもっとも、俺たちは白系のキャラクターしか使えないんだけどさ」
ゆうへい
「アルゲイルは黒色のキャラクターばかりね」
しおん
「そんな中で、俺たちのクラスのキャラクターは」
ゆうへい
「名誉なことにユキダニャンだ!」
ゆうへい
「敵の戦意を削げそうな見た目はしてるわよね……」
しおん
「はっはっは! 可愛いしな!」
ゆうへい
「やっぱり、どう頑張っても……好きになれそうにないのだけれど……」
しおん
「強いて言うのであれば」
しおん
「ぶよぶよのお腹、かしら……」
しおん
「俺、もう少し太った方がいいのかな……」
せいじ
「急にどうした誠次!?」
そうや




