僕の生命事情。
3月28日火曜日
けたたましいアラームに、僕は目を覚ます。無造作に置かれた服の山、閉め切ったカーテン、たくさんの積み重ねられた本。いつもの景色に溜息がもれる。どこか懐かしいという気持ちにかられたのは何故だろう。そして、なにか違和感があるのは何故だろう。
温かいベットに別れを惜しみながら洗面所へ向かう。朝はとても冷える。顔を洗うのにも勇気がいるものだ。歯ブラシに残り少ない歯磨き粉をのせながら、カレンダーに目をとおす。僕はふと違和感に気がついた。見ていたカレンダーはもう3月を指していて、自分で書き込みもしているのだ。
慌ててスマホの電源を入れる。明るい画面に映し出されたのは『3月28日火曜日 6:47』という無機質な文字。確か僕の記憶ではまだ1月で、もうすぐ2月だったはずだ。だからコンビニにはチョコレートが並び話題はバレンタインで持ちきりだったはずだ。
つまり僕の記憶が間違っているか、僕の記憶がないことになる。
急いで歯磨きを終わらせ、テレビを付ける。
『3月28日火曜日の天気予報をお伝えします。まず、関東ち…』
これで今日が3月28日であることに間違えはないことがわかった。
僕の記憶が無くなっている。違和感はこのせいだったのだ。付けたテレビがひとりでにうるさく喋っている。ふと、机に置かれた白い紙に気がついた。
『契約書』
と書かれた紙に見覚えはなかった。その紙に目を通す。
『貴女の命が助かる代わりに貴女の時間を使わせて頂きます。』
細々と書かれた文字を読み進めていく。僕の命が助かるとはどういうことなのか。
『貴女にしてもらうことはたった二つ。人の願いを叶えること。人の死を見届けること。』
人の死とは何のことだろうか。頭が痛い。冷や汗が止まらない。頭では理解できでいない。けど体が知ってるのだ。
僕の記憶が戻った。
僕は1度死んでいる。
この話を読んで下さりありがとうございました。
初めての作品なのでわからない事も多いいですが、よろしくお願いします。