前編
人を殺すのは簡単だった。
何度も何度も刺して刺して刺して…。それは快感にもなりつつあった。
殺すたびに手に入るのは快感と金。依頼があれば殺し、依頼がなければ、自分の好きなように殺しに殺しまくった。
俺に、朝も昼も夜も、それがいつだろうが関係がなかった。俺は、眠るのが好きではなかった。起きた時に感じる虚無感。自分の生きる価値の無さを死ぬほど感じて、反吐が出た。起きる時間の朝が大嫌いだった。
殺す以外にすることのない俺は、ただ外にいることを望んだ。家にいても自分がゴミにしか思えないので、自分でも忘れるぐらい昔に、家を売ったような気がする。
フラフラとした足取りで、何の目的もなく、ただ歩く。
視界の端に写ったニュースに、少女の自殺について書かれていた。くだらない。死にたいのなら殺してやるのに。そして、次に見える「いじめ」の文字。
いじめ…?
俺は足を止めた。
そういえば、俺もいじめられていた。
殴られ蹴られ、トイレの水に頭を沈められたりもした。数人がかりで持ち上げられ、ゴミ捨て場に投げ捨てられたこともあった。
ああ、思い出してきたら、イライラしてきた。
殺しを始めたのも、いじめがあったからだったか。
そうだ。
ならば殺しに行こう。
俺をいじめた奴共を殺せばいいんだ。
嫌な思い出を、快感で消してしまえばいいんだ。
ああ、なんて簡単だったんだろう。
時間なんていくらでもある。
殺してやる。
ああ、誰からやってやろうか。
またフラフラと俺は歩き出す。
復讐という名の殺しをしに行くために。