2 紋章
俺は何がなんだかわからなくて、その場に立ち尽くしてしまった。女の子もこちらを見て明らかに慌てているようだった。
「あ、あんたはっ!?何でここに!?」
「あ、…はあ…あの…」
「俺が連れてきたんだよ」
男は、平然と女の子に話しかける。
「はあ!?あんたはバカなの!?」
「しょーがないだろ。さっきの見られちゃったし。このあとラボに連れていくから」
「ああ…、なるほどね。」
女の子は納得したようでこちらに向き直った。
「びっくりしたでしょ。ごめんね~。私の紋章派手だからね~」
「何がなんだか…って、んっ?紋章って…?」
「聞いてないの?まあ、聞いてもあまり意味はないけど」
そういって女の子は話し始めた。
「これ見て」
んっ?ちょっと待て!服を脱ぎ始めた!
「わっ!ちょっ、ちょっと!」
「うるさいわねー、これぐらいで。お腹の所よ。」
薄目で恐る恐る見てみると腹のところに変わった形のタトゥーが。
「これは紋章っていって、これを体に宿した人は普通の人はできない色々なことができるのよ」
「えっと………はっ?」
何を言っているのだろう。それは超能力みたいなものなんだろうか…。
「流石に口でいっても信じてもらえないわよね。ねー、亘。石持ってきてよ。」
「ったく…。面倒くせーなー。」
そういいつつも先程の男は少し大きめの石を持ってきた。
「よーく見ててよ。一回だけだからね。」
そういうと女の子は目をつむり、意識を集中し始めた。すると、腹のさっきのタトゥーの辺りが光り始めた。
「いいわよ!」
そういうと男は抱えていた石を女の子に向かって思い切り投げた。石は物凄いスピードで飛んでいく。人間が投げたとは思えない。
「危ない!」
咄嗟に俺は叫んだ。しかし、女の子は目をかっと見開くと、
「はっ!」
っと叫んだ。すると、風船のように粉々に破裂し、辺りに飛び散った。
「すご…。」
俺は思わず呟いていた。すると、女の子は得意気に
「えっへん!凄いでしょ!これが、紋章の凄さよ!」
「うん。とっても凄いね‼」
そう答えると、ジト目を頂戴した。
「ねぇ。さっきから何でタメ口なの?見たとこ大学生だよね。」
「えっと…ごめんなさい?」
「うん!それでよし!」
何故か上からこられた。すると男が俺の耳元でぼそっと
「彼女は、ああ見えて28だよ。」
「っ!?し、失礼しました!!」
「亘。あんた後で処刑」
「いっ!?そ、それはないぜ~」
話がそれそうなので俺は口を挟む。
「あのー…、ラボっていうのは?」
「あ、ごめーん。んじゃいこっか。」
そういうと女の子は、すたすたと倉庫を出ていった。
「すまんね。」
男は、それだけいうと俺を連れて倉庫を出た。