1 謎の男と謎の少女
お父さん(俺のではない)の車の中。
「どういうことなんですかいったいどうなっているんですかだいたいあの娘はむすめさんじゃないんですか」などと矢継ぎ早に質問していく俺にお父さんはうっとうしそうにしている。
「わかったわかった。順番にな。まあ…、取り敢えずあの娘は俺の娘ではない。」
お父さんー改め男はそのまま車を発進させた。
「じゃあ、何であんなところに…」
「うーん、それはあれだ…あの……囮だ」
「お、囮!?」
ますます分からなくなってきた。この人達は一体何に巻き込まれているというのだろう。俺が頭を抱えていると男が微妙に優しい顔になって、
「心配しなくてもあいつなら大丈夫だよ。つーか、逆にさらってった奴らが心配だわ」
などと呑気に運転している。
「ああ、そういえばあいつ回収したら、ラボまで来てもらうぞ。」
「えっ!?ら、ラボって何処です?」
「んー、俺らの秘密基地みたいなもんだな…っと。着いたな。」
そういうので俺は辺りを見渡した。いつの間にか、ドラマでよく見るような埠頭の倉庫にいる。
「そういえば…、どうしてあの娘がここにいるって…?」
「これだよ」
そういって見せられたのはGPS受信機。ああ、なるほど。これで理解したわ。1割ぐらいは。
「ここにいる?それともついてくる?」
「いきます」
俺は即答した。ここでついていけば何か分かると思ったから。
「いーよ。」
男の返答はあくまで軽い。そして、俺と男が倉庫に向かって歩き出した……その時。
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!
「な、なんだなんだ!?」
俺は驚いて立ち止まった。男はというと、ニヤニヤしながら歩き続けている。
「なんなんですか、今の!?」
「行けばわかるよ」
そう言われてしまうと、ついていくしかない。慌てて男の後を追った。そして、倉庫の前に立つと、男は何の躊躇いもなく扉を開けた。
「危ないですよ!」
「大丈夫だって。俺このくらいじゃ死なないから。」
扉を開けた男はそのまま中へと入らず、その場でずっと笑っている。俺も恐る恐る中を覗くと…煙が立ち込めていた。正直何も見えない。だが、見ているうちに、それも段々はれてきた。俺はそこで見たのは。黒焦げになった先程の男たち。そして、そのうち1人の胸ぐらを掴んでいるあの女の子の姿だった。