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その二十五

長いので中途半端で切りました。すみません。


 どうやらこっちも厄介だった。


 バイクに乗っているヤツは、ぼくとの距離を一定に保ち絶対に近づいてこないし、ぼくを囲もうとするヤツらは、鹿にも負けないスピードで移動するのだ。


 もちろん、それで囲まれるぼくではないのだが、一旦、その囲いが破られると、蜘蛛の子を散らしたように分散し、ぼくが諦めるとまた囲もうとするのだ。


 しかも、囲いを抜けて1人を捕まえようと、その1人を餌にして囲もうとする。ならば気配を殺して待ち伏せすると、全員がその場から動かないのだから嫌になる。


 ……こーゆーのを"周りは全て敵"っていうのかね……


 まあ、なんにせよだ。どんな敵だろうが、どんな人数だろうが、狙われた以上逃げる選択はない。これは勘だが、どうも敵はぼくの位置を把握する術を持っている感じがする。


 なぜぼくの位置を把握できるかは謎だし、はっきりとわかっている感じではないが、群れで狩りをするヤツらに位置を知られるなどそれだけで敗北である。なによりぼくの誇りを汚された。


 ───しかたがない。るか。


 食べられないものを狩るなど狂犬にも劣る行為だが、このまま侮辱されるくらいなら嫌悪に陥るほうが何倍もマシである。


 手加減なしの殺気を全開にして放った。


 ぼくを追う連中だ、この殺気がわからない訳がない。これは宣戦布告。しっかり受け取れ!


 ナイフを放ち、1番近いヤツへと駆け出した───とたん、夜空に光の玉が幾つも上がった。


 慌て茂みに隠れ、殺気を消した。


 辺りの気配を探っていると、どこからか『シュンシュン』という謎の音が流れてきた。


 その音は空から。徐々にこちらへと近づいてくる。


 ……ヘリコプター、か……?


 いやでもあれは騒音機といってもいいくらいうるさい乗り物だし……こんなに静かに飛んだりはしないだろう……?


 シュンシュンという音がどんどん近づいてくる。


 こんな状況ではあるが、好奇心のヤツが疼き始め、誘われるがままに木に登った。


 枝葉の隙間から顔を出すと、なにか黒いものが飛んでいるものが見えた。


 闇に紛れてはっきりはわからないが、そのシルエットはヘリコプター。それも内に危ないものを秘めている感じがするヘリコプターであった。


 ……今度はどこの軍隊が攻めてきたんだ……?


 茫然として見ていると、そのヘリコプターが100メートル手前で止まった。もちろん、空中にだ。


 10秒20秒と時間が過ぎるが、ヘリコプターは動かない。いったいなにしてるんだ?


 と、また『シュンシュン』という音が流れてきた。


 辺りに眼を走らせる───と、左側の山の頂上からこちらに向かってくるヘリコプターを発見した。


 そこに浮かび続けるヘリコプターとは形が違う。そこに浮かんでいるのを軍馬とするならこちらに向かってくるのは馬車馬といった感じだった。


 馬車馬ヘリコプターが軍馬ヘリコプターの横につけると、双方がライトを灯し、辺りを照らした。


『───夕太郎くんっ!』


 その突然の叫びに、恥ずかしくも木から落ちてしまった。


 ……な、なんで、神崎さんが出てくるのさ……!?


 草むらに頭を突っ込ませて驚いていると、いつの間にかぼくに挑んできたヤツらに囲まれていた。


 ───クソっ! 油断したっ!


『───待ってっ! なにもしないでっ! その人たちは敵じゃないからっ!』


 その叫びに抜き放ったナイフがピタリと止まった。


 気配を探ると、神崎さんがいうようにぼくを囲んでいる連中に殺気はない。一定の距離を保ったまま静かに停止していた。


『お願いだからどこにもいかないで! 今、降りるからっ!』


 そういうと、馬車馬のほうの扉が開き、中からロープが下ろされた。


 木々が邪魔でよく見えないが、気配からして神崎さんと眼帯おばさん、そして、2人の男女が降りてくるのがわかった。


 その場で待っていると、軍馬がこちらへとゆっくり近づき、ライトでぼくを照らした。


「……夕太郎くん……」


 しばらくして迷彩服を着た神崎さんが現れた。


 その顔は今も泣きそうで、まるで迷子になった子供が母親を見つけたように幼い姿だった。


 どうしていいかわからず佇んでいると、神崎さんが涙を長しながら駆け寄ってきた。






読んでくださりありがとうございます。

時間の無駄になってなければ幸いです。

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