心温まる童話:ちいさな庭師と「おしゃべりな花びら」
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心温まる童話:ちいさな庭師と「おしゃべりな花びら」
あるところに、とっても腕のいい、ちいさな庭師の男の子がいました。
男の子がハサミをパチンと鳴らして優しく土をなでると、どんな枯れ木もパッと緑の葉を広げます。
ある日、男の子は街で一番大きな屋敷の、広くて寂しいお庭をお手入れすることになりました。
そのお庭には、大きな池と、一本の古くて立派な桜の木がありました。
でも、お庭の主である旦那さんは、いつも難しい顔をしてイライラしています。
「おい、庭師。この桜の木はもう何年も花を咲かせんのだ。切ってしまおうと思うのだが、お前なら咲かせられるか?」
男の子は、古い桜の木の幹にそっと手を当てました。
木の心臓が、トクトクと静かに、でも一生懸命に動いているのが分かりました。
「旦那さん、この木は今、一生懸命に力を溜めているところです。僕に少しだけ時間をください」
男の子はそう言うと、毎日まいにち、木に向かって優しく声をかけながら、根元の土をふかふかに耕しました。
「今日はいい天気だね」
「そよ風が気持ちいいよ。無理しなくていいからね」
男の子の優しい言葉を聞くたびに、桜の木は嬉しくて、土の底からおいしいお水をゴクゴクと飲み干しました。
そして、ある晴れた朝のことです。
パチン! と男の子がハサミを鳴らすと、古い桜の木から、ピンク色の小さな花びらが一枚、ひらひらと風に舞いました。
その花びらは、ちょうどお庭を散歩していた旦那さんの、難しい顔をしたおでこに「ペタッ」とくっつき
ました。
「おや、なんだこれは?」
旦那さんが花びらをつまむと、頭の中に、優しくてあたたかい声が響いたのです。
『旦那さん、いつもお仕事お疲れさま。お庭をずっと守ってくれてありがとう』
それは、桜の木がずっと旦那さんに伝えたかった、感謝の気持ちでした。
言葉を喋れない木は、男の子の優しさをもらって、自分の気持ちを「花びらのメッセージ」にして届けたのです。
旦那さんはびっくりして、それから、胸の奥がじんわりと温かくなりました。
いつもトゲトゲしていた心が、春の太陽みたいにぽかぽかと溶けていきます。
ふと見上げると、さっきまで枯れ木のようだった桜の木が、枝いっぱいに満開のピンク色の花を咲かせていました。風が吹くたびに、何千枚もの花びらがひらひらと舞い踊ります。
「ありがとう、ちいさな庭師。私の一番大切な宝物に気づかせてくれた」
旦那さんは、生まれて初めて、心からの優しい笑顔を見せました。
男の子はにっこり笑って、満開の桜を見上げました。
お庭には、旦那さんと男の子の、温かい笑い声がいつまでも響き渡っていました。
(おしまい)
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