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32 ボルグハルト辺境伯夫人について



 ボルグハルト辺境伯家のヘンリエッテ様は活動的で正義感が強い。何か問題があれば率先して解決に動いている。


 困っている人を放っておけず、誰にでも優しく声をかける。その優しい人柄を慕っている人も多い。


 金の髪を綺麗に結い上げていて、エメラルドの瞳は意思が強そうだ。美しい外見が見る者の目を奪い、まっすぐな為人が好ましい。


 あのようにしっかりとした人を妻にした辺境伯が羨ましい。人妻だとわかっていても声をかけたいと考えている男性も多い。しかし不用意に近付くとヘンリエッテの夫アルバートに威嚇される。


 ヘンリエッテ様の今後の活躍から目が離せない。


 趣味は乗馬と剣術。最近では狩りにも行くらしい……って、なぜこんなに話が盛られているんですか!


 私は自分の噂がどんどん実物とかけ離れていくことに驚きを隠せない。



「バート様、私についての噂が恐ろしいです」

「間違っていないように思うが、何か問題でもあるのか?」

「ありますよ! 私が正義の味方みたいではないですか!」

「でも、ヘンリエッテは優しくて人を助けようとするだろ? 正義の味方みたいじゃないか」


 ソファにいるバートさんの隣にピッタリとくっ付いて座っている。バートさんは私の肩に回した手で、私の髪の毛を自分の指先に巻きつけたりして遊んでいた。


「この間、兄様から来た手紙を読んだときに嫌な予感がしたんです」

「ああ、王都での噂話か」


 そう! 私が辺境に来てから、王都では私の噂がたくさん語られていたらしい。そして、その噂話が辺境にも届いてきている……。


『平民に変装して囮になっていた』

『殺されかけていた平民を、自分が殴られてでも守っていた』

『あの大人しかったご令嬢が、愛する男性のために勇気を出したらしい』

『実は勇敢な女性だったんじゃないか?』


 どうもハンスとエリックが、私のことを命の恩人だ、ヘンリエッテ様がいなければ俺たちは殺されていた、とまわりに熱く語っていたようだ……。二人の記憶が改竄されていて、私はとても素晴らしい人間のように庶民たちに噂されている。


 貴族たちの間では、ドーレ侯爵の犯罪を暴いたことが話題になっており、危うく冤罪をかけられるところだったロスナー侯爵に大変感謝されているようだ。


 リベライアとマディクラのことは、国が色々と動いてくれている。外交のことになると私にはわからないが、バートさんたちに任せていれば大丈夫だろう。


 結婚式も無事に済み、夫婦になって一カ月。最近ようやく落ち着いて二人で過ごすことが出来ている。


「……バート様、この一年半くらいは本当に波瀾万丈でした」

「そうだったな。なんだか密度が濃かったな……」


 バートさんが私のほうを向き、もう片方の手が私の頬に添えられる。


「無事に結婚出来て良かったよ」


 そう言ってバートさんが私に軽く口付けた。本当に無事結婚出来て良かった。大好きな人と夫婦になれて良かった。


「バート様、大好きです」


 今度は私からキスをする。


 バートさんは嬉しそうに、そして蕩けるような瞳で私のことを見つめた。




ありがとうございました


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