01話 革命の決意
さぁ、革命の支度は整った。開戦だ。
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「蕾」それは政府直属の養育機関であり、俺、纐纈 皓がこれから3年間「戦う場所」だ。
蕾は世間でいう高校のようなものであるが、異質な高校だ。
ここは現首相:厚木 亘が強力な「人間兵器」を製造するために生み出した、いわば軍事力の工場だ。
そんなことを考えていると、この蕾の教員らしき人に促され、俺は奥のほうの教室に入った。
すると、見知らぬ顔が30人ほどが一斉に俺の方を凝視してきたのだ。俺、何かやらかしたかな…。
少し待って茶髪ロングのギャルみたいな、教員らしき人が息を切らして駆け込んできた。
「遅れてごめんね。私が3年間この1-1クラスの担任の宇佐美 紗奈よ。それでこれか…」
「ちょっといいかァ?」
声の出どころには髪を赤に染め上げた三白眼で大柄の男がいた。体には筋肉が浮き彫りにされており、いかにもヤクザなやつだ。
そいつは視線を気にせず話を続ける。
「3年間オメェが担任ってどーゆーコトだよ」
息が整ったのか、宇佐美はニコニコして答えた。
「あなたは確か…そうそう神田 世羅ね。
そのままの意味ね。この『蕾』にはクラス替えとかいうお楽しみイベントはない。この機関は弱肉強食。力がない者は強制退団をくらうのよ」
「はァ!? ふざけてンの…」
「文句があるのかしら?」
神田と呼ばれた男の言葉を遮った宇佐美は笑っていた。
神田は、宇佐美の笑みの奥に何か見たのか、その後は何も言わなかった。いや、言えなかった。
そんな様子を見て満足したのか、話を始めた。
「話を続けるわね。さっきも言ったけど、実力が足りない人には蕾から消えてもらうことになっているの。でも、首席で蕾を出るとその後の社会的地位が絶対に保証される」
全員の顔が引き攣って絶望したように見える。ただひとり、俺を除いて。
「じゃあ話を続けるわね。みんなにはこれから100ライフポイントが支給されるの。これがなくなると強制退団だから気をつけてね。
実技とか筆記とかなんでもいいけど、とにかくテストの平均点より高い分だけライフポイントが増えたり、低い分だけ減ったりするから。
あと、他人のライフポイントを他人にあげたり、貰ったりはできないから。わかったかしら?」
皆、この制度に絶望し、頷くこともままならないようだ。
「あと、そこの纐纈くん、理事長がお呼びよ。あとで面会室に行ってね。はいじゃあ解散!!」
そういうとともに他の生徒は我に返り、あたふたしている。何をしたらいいのか、どうしたら良いのか、そんな声が皆心から漏れていた。
「纐纈くん、行くわよ」
宇佐美に呼びかけられ、面会室に向かった。
「着いたわ。くれぐれも粗相のないようにね」
「わかっています」
重たい扉を開けるとそこには蕾の理事長、またの名を現首相:厚木亘がいた。
そいつの秘書と思わしき人に座ることを促され、厚木亘の前のソファに座った。
何時間経っただろうか。いや1分も経っていないかもしれない。重たい沈黙が続いた。
永遠のような一瞬を破るかのように厚木亘が口を開いた。
「久しぶりだな、皓」
「そうですね」
再び重たい沈黙が続く。
「戻ってこいと言いたいのですか?」
俺が口を開いた。
「その通りだ。こんなところにいてもお前は何も変われん。擦り切れた心は癒やされない」
「誰のせいで心がこんなに捻じ曲がってしまったんでしょうね。私のことよりも、最近はあなたの圧政で不満が溜まっている人が多く見受けられますよ」
俺は皮肉たっぷりに返した。
「実の父の言うことも聞けないのか」
そう、厚木亘は俺の実の父だ。
「子供のちょっとした反抗期ですよ」
「何か言いたげな表情だな」
脳裏に焼きついた、返り血を浴びた厚木亘の姿がフラッシュバックする。
俺は“父”に訴え、罵ったのにあいつは罪悪感を感じるどころか、喜びを感じているようにすら見えた。
「もうお前を父親だとは微塵も思っていない。8年前にお前が裏で母さんを殺した罪は重いぞ。今となっては証拠こそないが、復讐ならいくらでもやりようがある。
俺はこの蕾を壊し、お前の政権を崩壊させる。待ってろ。革命を起こしてやる」
俺は8年間心に溜めていた言葉をぶちまけた。
厚木亘はその後、一言も語らずに部屋を出ていった。
ここからが革命の始まりだ。
どうも、蕣です。これが一話目です。一話目にして内容が濃かったのではないかと思います。あまり多くは語れませんが、今後は仲間を増やして戦争が始まるといった流れになっていきそうです。今後もよろしくお願いします。