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オメガバースな世界観の乙女ゲームの世界にオメガとして生まれた落ちこぼれのはずの悪役令嬢、転生者として知識チートで同じく落ちこぼれのベータな婚約者を導いたらなんか婚約者がアルファになっちゃいました?

作者: 下菊みこと

オメガバースな世界観の同人乙女ゲーム【アルファな女の子はお嫌いですか?】は一風変わった乙女ゲームだ。


オメガバースにも色々な設定の違いなどはあるだろうが、大体ヒロインはオメガではなかろうか。


しかしこのゲームでは、ヒロインはアルファで攻略対象はベータかオメガ。


ここが特定の層に受けたようで、同人ゲームでありながらかなり売れた作品となった。


さて、この作品におけるオメガバースの基本設定は以下の通りである。


この乙女ゲームの世界の人間には『男性』『女性 』の性別があり、その上でさらに『アルファ』『ベータ』『オメガ』 というもう一つの性別も存在する。


オメガには発情期があり、発情期にはフェロモンを出してアルファを本人の意思に関係なく誘惑してしまう。番を作るか抑制剤を飲むことでフェロモンを抑えられるが、社会的に差別される対象となってしまっている。


アルファは主に貴族に多く、優秀な人材が多いのが特徴。


ベータは主に平民に多く、良くも悪くも普通の人が多い。


オメガは被差別階級…奴隷に多く、能力の劣るものが多いとされる。


アルファとオメガは『番』となることができる。番を得たオメガは発情期に悩まされずに済むようになる。また番を得たアルファは精神的満足…充足感…そのようなものを得ることができる。


番を得るのはアルファとオメガ双方に利益があり、その手段はアルファがオメガの喉元を噛むだけという簡単なものだが…アルファは貴族に多く、オメガは奴隷に多いという性質上『番』になるが結婚はしない…オメガが貴族であるアルファの『妾』『愛人』となることが多い。


貴族同士の結婚は、性別がアルファベータオメガどれに当たるかは重要視されずあくまで家柄や結婚で得られる双方の利益のみで相手を選ぶため『仮面夫婦』が多い。


だが仮面夫婦だとしてもお互いを尊重し、その上でお互いの『妾』『愛人』…つまり番も容認するのが当たり前だ。


あと、男性女性の性別は絶対不変だが…アルファベータオメガの性別は時々変動する。


アルファが性的虐待を受けオメガになってしまうこともあれば、ベータがオメガと交尾しまくる…あるいは人生におけるさまざまな成功体験を重ね続け自分に絶対的な自信をつけることで後天的にアルファとなる、などである。


で、何故こんな乙女ゲームの設定をダラダラ語っていたかというと…。


「わたくし、落ちこぼれ悪役令嬢に転生していますわー!?」


リゼット・マノン・アンベール七歳。


それが今のわたくし。


そんなわたくしは、ある日階段を踏み外し頭を打って前世の記憶を思い出した。


可愛い妹を山から降りてきたらしい野生の猪から守った代わりに、わたくしが重傷となり、気づけばこの世界に…今世の記憶もありまして、今は意識が混ざり合って新しいわたくしになったというわけですわ。


「でもわたくし…どうすればいいのかしら?」


設定上のわたくしの今後は、オメガとして生まれてしまったわたくしを憐れんだお父様とお母様がわたくしに望まない詰め込み教育をしてわたくしが精神的に病む。


そして将来、病み切ったわたくしがヒロインに婚約者をとられて発狂。


座敷牢的なところに閉じ込められるというものですけれど…。


「たしかにわたくし、オメガですから能力的に劣っていた部分はありましたけれど…前世のわたくしの記憶のおかげで多分、もう大丈夫ですわ」


ということで、とりあえずそれを両親に認めさせるところからですわね。


設定上、そろそろ両親がわたくしに詰め込み教育を始める頃合い。


ならばその前に、実力を披露すれば良いのですわ!


ということでわたくしはさっそく両親に、学力テストを行ってもらいましたわ。


結果は、なんとびっくり。


オメガで、しかもまだ七歳なのにわたくし貴族学院の卒業生レベルの成績を叩き出しましたの。


これには両親も大喜び&ほぼほぼ勉強免除!!!


やりましたわ!!!


これでわたくしが病むことはないでしょう。


さらに副次的な効果として、オメガなのに七歳にして才覚ある娘として被差別どころか貴族からも平民からも一目置かれる存在となりましたわ。


グッジョブ前世のわたくし!!!


ということで後の問題は婚約者との関係。


わたくしの婚約者はベータ。


貴族にはアルファが多く、アルファには優秀なものが多い。


なのにベータに生まれた婚約者は、わたくしと同じく両親から勝手に憐れまれて勝手に詰め込み教育を受ける…許せませんわ!


教育虐待、断固反対!!!!!


ということで、わたくし婚約者の親に直談判しまして、わたくしが婚約者の教育係になりましたわ。


「お初にお目にかかります、リゼット・マノン・アンベールですわ。婚約者様、よろしくお願いしますわ」


「…お初にお目にかかります、ジェイド・ランス・マルスランです」


「今日から婚約者として、そして教育係としてよろしくお願い致しますわ」


「………」


「あら、オメガであるわたくしが教育係を務めることがご不満かしら?」


小首をわざとらしく傾げる。


彼は不満を隠さない。


「そう、だな。確かに俺はベータだが…オメガなんかに、教わることなどない」


「では、チェスや乗馬、狩りなどで競争しません?」


「は?」


「それでわたくしが勝てれば、少なくとも今の時点ではわたくしの方が優秀ということでしょう?オメガであるわたくしがベータである貴方に勝てるなら、そんなわたくしが教育係になればいずれ貴方はアルファに勝てるベータになれる…そうは思いません?」


「…」


彼は勝負に乗った。


そしてわたくしは、チェスでも乗馬でも狩りでも勝った。


だってわたくし、前世では普通の女子高生ではありましたけれど…ナーロッパの世界観に憧れてチェスも乗馬も狩りも嗜んでましたもの!!!


お金?バイトで稼いでましたわ!!!前世の親の脛は齧ってませんことよ!!!


…今世はせっかくの貴族ですもの、今世の親の脛は齧りますけれどね?


「…負けました」


「ええ。では大人しくわたくしの教育を受けてくださるかしら?」


「わかった。だが、本当に俺はアルファにも負けないベータになれるだろうか」


「負けない、ではなく勝つのですわ。圧勝させて差し上げます」


ということで、婚約者の教育が始まった。


といってもただの勉強では面白くないので、ゲーム形式の授業やら寸劇も交えた授業やら色々工夫して楽しい授業を行えば…詰め込み教育には違いないが、婚約者本人が楽しんで行うことができたためスルスルと内容を吸収して優秀な成績を叩き出すに至った。


乙女ゲームの舞台である貴族学院に入学するのは十六歳から、そして卒業は十八歳。


だがわたくしの自慢の婚約者は、十五歳にして貴族学院卒業生レベルの知識を兼ね備えた最高のベータとなった!!!


のだが。


「は?ジェイド様がアルファ性になった?」


「そうだ。お前のおかげで俺も自信がついた上に周りから一目置かれる存在になったからな。それで俺もアルファに変わったんだろう」


理屈はわかる。


この世界のオメガバースはそういう設定だ。


だがまずくないか。


ヒロインの攻略対象が一人減ってしまう。


ヒロインがジェイド様を選ぶなら潔く身を引くつもりだったのに。


「い、いやでも…」


もしかしたら問題ないかも?


この世界のヒロインはアルファだが、ベータであったはずのジェイド様とも恋に落ちるルートはあったわけで。


アルファとベータで攻略対象になるなら、アルファとアルファで攻略対象にもなるだろうか。


「…おい、おい!!!」


「は、はいジェイド様っ」


「どうした?なんか様子がおかしいぞ?」


「いえいえこちらの話です」


「…そうか?」


不審者を見る目で見ないでくださいジェイド様。


「でだな、俺たち番にならないか」


「え」


「婚約者同士だからなんの障害もないし、お前は抑制剤を飲まなくても発情期を抑えられるようになる。俺は充足感を得られる。あとお前となら番になっても良いと思うし」


「え…」


…正直、ありがたい申し出だ。


抑制剤は美味しくなくて、飲むたび苦痛だし。


ジェイド様となら、たとえヒロインがジェイド様ルートを選ばなかった場合そのまま結婚しても良いとさえ思っていたし。


だから、そんなジェイド様と番になれるならこの上なく幸せ…でもいいんだろうか。


「なんだ、どうしてそんな不安そうな顔をする?」


「ジェイド様の幸せを、邪魔してしまうんじゃないかと思いまして」


「は?」


だって、ヒロインと恋に堕ちれば幸せ間違いなしなのに。


わたくしと結婚しても、番になっても、幸せは確定しない。


「…お前が何を考えているかはわからないがな」


ジェイド様がわたくしを抱きしめる。


わたくしは突然のことに当然困惑するが、ジェイド様は構う様子はない。


「俺はお前が好きだ。愛してる。だから番になりたい。それじゃダメか?」


「え、え、愛って…!」


「お前のおかげでここまで成長できたんだ。そりゃあ感謝くらいするし、その相手が可愛い可愛い婚約者とくれば恋だってするだろ」


「なっ…」


「お前はどうなんだ」


わたくしは…。


わたくしは、ジェイド様が努力する姿を見て尊敬しているし、結婚しても良いと思うくらいには好き。


むしろ、ヒロインがジェイド様ルートを選ばないことを祈る程度には…惹かれている。


ならば。


「わたくし…わたくしは………わたくしも、ジェイド様が好きです」


「なら、決まりだな」


喉元を噛まれる。


これでわたくしとジェイド様は番になった。


多幸感が溢れる。


これが、番になるということ…!


「より、お前への愛おしさが増した」


「わたくしもですわ、ジェイド様」


「リゼット…」


額にキスをされる。


それだけで幸せが溢れ出す。


「大切にする」


「もうしてもらっていますわ」


こうしてわたくしたちは、幸せな番となった。
















なお、貴族学院に入学したらヒロインは攻略対象である別のオメガと幸せになっていたので許されると思いたい。

ということで如何でしたでしょうか。


独自解釈の御都合主義なオメガバースですみません…でも書いてて楽しかったです!


オメガバースってNLでも多いんでしょうか?


なんかNLだとあんまり見ない気がして手を出してみたのですが…見ないだけで結構あるのかな。


なおヒロインは別のオメガと幸せになりましたし、そのオメガのルートの悪役令嬢もリゼットの手引きで救われるでしょうからご安心ください。


ちなみにリゼット>>>>> <<<<<<<<<<ジェイドくらいの愛の熱量です。


少しでも楽しんでいただけていれば幸いです。


ここからは宣伝になりますが、


『悪役令嬢として捨てられる予定ですが、それまで人生楽しみます!』


というお話が電子書籍として発売されています。


よろしければご覧ください!

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― 新着の感想 ―
女性αと男性Ωのマンガを読んだことありますね。 小説もあったな。 オメガバースの異性カップルものだと、この組み合わせが多い気がします。 男性α女性Ωだと、普通のノーマルカップルとほとんど変わらないせい…
どこだったか覚えていませんが、女性αの話を呼んだことありましたよ。 後天性αっておいしいですよね。期待されていなかったのに急にいろんな人が集まってきてという展開とかで
まぁ、アルファはオメガに惹かれやすい。が性質なので、元々選ばれる確率は高くなかったでしょうね。 これがプレイヤーの意思が介在すれば、顔やキャラクター性の好みが反映されたでしょうが、本人たちは本能的好み…
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