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付与魔法

 ケイスケたちがレイスの街に帰ってきたのは昼前ごろの話だった。薬草も無事納品したところで、ギルドの受け付けにことの顛末を話した。それと同時に、件の爬虫類女の身柄も引き渡す。


「…な、なるほど。まあお2人とも無事でよかったです。」


 そうして、「少し待っていてください」とつづけ、彼女はギルドの奥へと向かっていった。


「いやぁー、一仕事終えたなぁー。」


 そう言って背伸びをするフレア。


「まあ、色々ありましたからね。」


「あとはギルドのお偉いさん方に任せりゃいいだろ。」


 そんな風に談笑を交わす。暫くすると、奥から受け付けの子が大男と共に戻って来た。それだけに、表情は真剣だ。


「げっ…ギルドマスター…。」


 フレアが呟く。


「ギルドマスター…?」


「ここのギルドの一番上だよ。ちょっと面倒ごとになるかもな。」


 戻ってきたその子は「すみません、お待たせしました。」と始め、それに続いてギルドマスターが話し始める。


「さてと…まずは自己紹介が先かな。君がケイスケ君だね。受け付けのエリファから大体話は聞いているよ。俺はここのギルドマスター、ベオルだ。よろしく。」


「よ、よろしくお願いします。」


「早速だが本題に入ろう。先に捕えた彼女はまだ目を覚ましていないが、覚醒次第、尋問をする予定だ。その前にお前たちにもいくつか聞かなきゃならないことがあってな。まず、報告だと姿を消していたと言っていたが、本当か?」


「ああ、視覚での認識はできなかった。」


「そうか…透明になる魔術…いや、魔法か?」


「そこまでは定かじゃねぇし、私は魔法には疎い。それならこっちに聞いた方が早いぞ?」


 そう言って、フレアはケイスケを指差す。


「い、いや、僕なんかは全然…。」


 そういうケイスケだったが、話は進んでいく。


「それもそうだったな。率直に聞こう。透明化の魔術なんてものは存在するのか?」


「え、えぇと…師匠がくれた本の中にはそう言うのは無かったですね。」


「うーむ…未知の魔術か。」


「ただ、魔法なんてコツさえわかれば誰だって作れますよ。僕でも出来るんですから。」


「は…?」


「え?」


「今、誰でも作れると言ったか?」


「え、ええ。」


「お、お前さんの師匠ってのはいったい…。」


「名前は教えてくれませんでしたね。」


「ふむ…そうか。いや、ならいいんだが。誰でも作れるなんてことはないと思うが…いや、まて。あの捕縛の魔術は君が作ったのか?」


「え、あ、はい…?」


「ああ…な、なるほどな…いや、わかった。そのことも念頭に調査を進めよう…。」


 そう言ってベオルは頭を抱えながらギルドの奥へと消えるのだった。


「さてと…とりあえず報告はこんなもんだな。エリファ、特効薬はいつ出来る予定だ?」


「そうですね、明日には出来ていると思いますよ。」


「了解。ならまた明日取りに来よう。」


 そう言って、フレアはギルドを後にする。取り残されたケイスケ。これからどうするかと頭を捻る。だが、何をしようにも先の報酬の宿代程度しかない。


「ケイスケ君…だったかしら?」


 その声は背後から聞こえてきた。


「うわ!?し、シウさん!?」


「あら、驚かせちゃったかしら。」


 そんな風にシウは笑う。


「今日1日、もしかして暇かしら?」


「ええ、そうですね。」


「なら少し付き合ってもらってもいいかしら?」


「僕…ですか?」


 そう言ってシウに連れてこられた場所はギルド裏手の訓練場。以前、試験を行った場所であった。


「な、何をするんです?」


「何ってまあ…ちょっと稽古をつけてもらおうと思ってね。」


「そ、そんなこと言われても…僕、Eランクですよ?」


「いいのよ。あなたの魔法…正直もっと見てみたかったの。」


「そ、そこまでいうなら…。」


 正直、勝てる未来が浮かばなかった。それでも今日1日なにもないよりかはマシであろう。


「あなたのタイミングで始めていいわ。」


「わ、わかりました…なら、いきます!」


 そう言うとケイスケは意識を集中させる。何処からどう攻めるのが正解なのか、それを感じとる。

 やがて、答えが決まったのか腕を前につき出す。


「貫け。」


 その声と共に地面から出現したのは岩の剣。


「…これが、あなたの魔法…。」


 当たり前だがそんなものは難なく飛び上がり、躱される。しかし、それは承知の上。


「吹きすさべ。」


 今度は風の刃がシウを襲う。


「最低限の詠唱でここまでの速度…流石としか言いようがないわね。でも…それじゃ私は捉えられないわよ。」


 それでも、様子を見るようにケイスケは攻撃を続ける。


「落ちろ。」


 次にシウを襲ったのは逃れられない重力であった。


「!?」


 地面へと叩きつけられるシウ。


「まだ、こんなもんじゃくたばんないわよ!!【ヘルフレイム】!!」


 魔術。それを見るのは始めてであった。火球がケイスケをめがけて襲いにかかる。チラリとそれを視認し「消えろ。」と呟く。とたん、猛火は嘘のように消えてなくなる。


「う、嘘…ま、まだまだ…【身体強化】!」


 そうしてシウは自分の体に身体強化を施すと体に紫色の炎を纏い重力に打ち勝つ。そのままこちらに歩いてくる様を見て、ケイスケは重力による攻撃を解いた。


「ふふ、流石だけど…これは防げるかしらね?【炎刀】!」


 走り出したシウの手には炎の剣。速い。速いがその速度は─────。


「フレアさんよりも遅い…。」


 次の瞬間、空気が爆ぜた。その一撃はシウの体を後方に大きく吹き飛ばす。


「くっ…。」


「あの、少しいいですか?」


「え?ええ、いいわよ。」


「シウさんの身体強化…ちょっと無駄があるように思えて。」


「そ、それはどういう?」


「え、えぇと…言葉にするのはあれですけど………そうだ!」


 そうして、ケイスケはシウの体に身体強化を施した。魔法陣が体の要所に現れる。すると、フレアとは違いシウは絶叫した。


「ぐ、ああぁぁぁああぁぁぁぁああ!!!!!」


「し、シウさん!?」


「や、やめろぉぉおおぉ!!!」


 その絶叫に、ケイスケは身体強化を解いた。


「あぁ、あぁ…。」


「し、シウさん…どうしたんですか…?」


「身体中が…引きちぎれるみたいに痛い…。」


 その感想を聞いたとたん、師匠との修行の日々を思い出した。付与魔法が苦手であった。たとえばケイスケが何かを浮遊させようとしたとき、地面から浮き上がる前にその物質は爆散したのだ。


「す、すみません…。」


「い、いや…こちらこそすまなかった…。」


『なんてことしてしまったんだ…今度からは身体強化も使わないようにしよう。』


 そう決めたのだった。

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