鬼神
ディファムのギルド。その1室。そこでケイスケは目を覚ますこととなった。奇跡…というわけでもないらしい。担当をしたのは一般の治癒魔術師。フレアにとっては一か八かの賭けであったが、ふたを開けてみればそうでもない。重要な臓器は全て避けられ、傷跡も荒くなく綺麗であった。曰く、普通の冒険者の傷を治療する方が難しい時もあると語った。
「─────ネリウムさん。」
腹の傷をさすりながらケイスケは呟く。
「迂闊だったな。」
両者、久しぶりの敗走。
「…あれだけの魔術…いや、僕と同じ魔法か…。」
「どうやって勝つ…?」
「少し…休みたいですけどね。」
「それもそうだな。」
露になった戦力だけでも五分か不利がつく。まだ何かあるかもしれないとケイスケは予想しながら、魔力を体に馴染ませる。
その時、その部屋の扉が勢いよく開かれた。
「お二方!大丈夫ですか!?」
声の主はアルフだった。
「まあ、なんとかな。」
「アルフさん…あれから状況は?」
「特に変わったことは…。」
「そうですか…ならよかった。」
「いったい…あそこで何があったんです?」
そうして、2人は今回の敗北でわかったことをアルフに共有した。
「できればこっちも兵が欲しいとこだな。」
「少なくとも…僕があの魔法使いとサシでやりあえるぐらい余裕を作れるレベルの…。」
「そんなレベルの兵なんているんです?そもそもお二方が人間の中でも頭1つ抜けた存在って言うのに。」
「「いいや、師匠はもっと強かった。」」
「…この2人の師匠って…いったい…。」
「まあ、現実的に考えても物量が違いすぎます。せめてそれをどうにかできるような─────。」
「………ケイスケ。」
「はい。」
違和感。2人は感じとる。異質な気配。かつて竜神と成ったリオンと対峙したときのような…ツギハギの気配。
「排除しに来たって…そう言うわけだ。」
「フレアさん…動けます?」
「どっちが言ってんだか。足引っ張んなよ?」
直後、2人を襲ったのは斬擊であった。フレアはアルフを庇い、ケイスケは身を翻す。
「マジかよ…結構距離あんだろ…。」
2人とも、その姿を目にいれる。大太刀を振りかざす鬼神のような存在。それはそこに居た。
「ケイスケ!身体強化!!」
その掛け声と共に、フレアは飛び出す。身体強化の乗ったフレアの一撃。それをその鬼神はその太刀で受け止める。よろめきはするが、倒れることはない。あの時のリオン程ではない。
遅れてケイスケが現場に到着する。
「あの感じ…。」
「なんだ?」
「リオンさんと同じだ。」
「…ムスカスってことか。」
「中身は人間で間違いないです。」
「じゃあアレを─────。」
「すみません。アレができるだけの魔力操作はまだ…。」
「じゃあどうすんだよ?」
「創ります。」
「………何分いる?」
「3分で。」
「了解。」
そうしてフレアは駆け出す。あくまでも、武装解除を目的とした一撃。鬼神も鬼神だ、遅れを取ることはない。
「結構…かてぇな。」
「お前こそ…しぶとい。」
「なんだ…しゃべれるのか…。」
「趣味じゃねェがな。」
その声と共に一振。ガードしたフレアは吹き飛ばされる。
『パワータイプ過ぎるだろ。私が押し負けるってどんなやつだよ。』
瓦礫から立ち上がり、再び剣を構えるフレア。直後には巨体は眼前に迫って居た。
『だけど…パワーだけと言えばパワーだけ。まだ隠し球があれば話は別だけど。』
その攻撃は飛んで躱す。そのまま背後に周り攻撃を仕掛ける。拮抗状態を保つことを優先としたフレアにはまだ余力があった。
一方のケイスケだが、複雑に絡み合った魔力に苦戦していた。これをほどくとなると相当時間を有するだろう。悩みあぐねる。創ると啖呵を切ったが、そう簡単な作業ではない。
「ふう…。」
一呼吸。師匠とやって来たことを思い出す。魔法…それは一種の極論だ。そう、見たまま。有るままに扱えばいい。
「極論…。」
鬼神の魔力に手を伸ばす。絡み付いているのなら、邪魔な部分を無視すればいい。残ったものが正しい…彼の本来の魔力だ。そうして目にするのは、彼の現状。
「なんだ…これ…?」
どうやって生きているのかもわからない、ズタボロの存在。無理矢理生かされていると表現して差し支えない魔力回路。
「おい!ケイスケ!!まだか!」
「…フレアさん…作戦変更です…。」
「あ!?」
「彼はもう…。」
「…そうかよ。なら全力で─────!?」
混沌とした状況に打ち込まれた、1つの火球。威力はそれほどでもないが。問題はそれを打った主であった。
「─────どうして…あなたが…?」
「…シウ…なんのつもりだ!!」
冷たく見下ろすシウ。そして、2人に告げた。
「弟を庇って何が悪いの?」
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