呪い
竜。ケイスケにとってははじめての相手だった。
「話には聞いていましたけど、存在感が凄まじいですね。」
「だろ?そのくせ血にあたると弱体とかどうかしてるぜ。」
妙に冷静な二人に怯えているのはアルフだった。街も混乱状態であるにも関わらず、慣れたように2人は竜の前に立つ。
「ま、邪竜よりはましだろ。」
「そうなんです?」
「あれには手こずっちまったけど普通の竜はそれほどでもない。それにおまえが居るだろ?」
そう言って、フレアはケイスケを見た。
「そうですね。」
少し微笑んでそれだけ返す。竜と対面する2人の姿は英雄にも見えただろう。フレアは剣を抜き、ケイスケはフレアに身体強化を施す。
一太刀、閃光が走ればそのつぎの瞬間には竜の首を跳ねていた。竜は死んだことに気づけたのだろうか?その死骸は呆気なく堕ちていく。血を吹き出しながら堕ちていく。
「あっ…。」
呟いたのはフレアである。
「あっ。」
呟いたのはケイスケである。普段なら障壁を張ることもできただろう。ケイスケならその程度容易い。だが、ケイスケの目には写ってしまった。竜の背に乗る人影。それが2つ。その1つはフードこそ被っているがシウの物であると断定できた。
判断が遅れた。ケイスケは頭からその血を被る。ついでにアルフも一緒だ。膝から崩れ落ちるアルフ。どうやら彼は既に呪いに掛かってしまったようで立ち上がるのも困難なようだ。一方のケイスケだが、なぜか何事もなく立っている。
「シウ…さん…?」
2人の影は竜がやられたことに気がつくといつぞやの魔族のように霧に包まれて消えてしまった。
呆気にとられているケイスケに、フレアは話しかける。
「ケイスケ!なんともないのか!?」
「え?あ、あぁ…そういえば………それより、フレアさん!竜の背中に居たのって………。」
「あぁ、私もよく見えなかったが…確かにチラッと見た。シウだった…。」
「あれはいったい…。」
「ったく…何がなんだかわかったもんじゃねぇよ。こいつも使い物になら無くなるしよ。」
そう言ってフレアはアルフのほうを見る。
「す、すみません…あの…ケイスケさんはどうして立っていられるのですか…?」
「…さあ?」
ケイスケにとってもこの状況は全く理解できない状況だった。とりあえず、自身と、アルフが被った血を魔法で洗い流す。それでも、アルフは立ち上がれないままだ。
「結局…どちらにせよギルドに行かなきゃな。」
フレアがそう言った。
「そうですね。この人とあとは…。」
「あぁ、シウの事について聞かなきゃならねぇ。」
そうして、フレアはへばったアルフを抱えその足でギルドへと向かうのだった。
「─────と、言うわけでだ。ベオル、聞きたいことがいくつかある。」
2人はギルドに付くと早々にアルフに解呪薬を飲ませベオルのもとへと向かった。
「わ、わかった。なんでも答えよう。だから…その殺気どうにかなら無いか?」
現状のフレアにとっては無理な申し出であった。それを遠目にケイスケは眺めている。
「いいから、質問に答えろ。まず、あの男はなんだ?信頼できるのか?この前あんなことがあったばかりだっていうのに。」
「ま、まあ、おまえ達2人なら大丈夫だろうと…。」
「こっち任せもいい加減にしろよ?まあいい…どちらにせよアイツには着いていかなくちゃならねぇかもしれないからな。2つ目だシウはどこだ?」
「し、シウ?いやぁ、所在までは知らないが…そういえばあの一件以降見てないな。」
「シウにも何か押し付けたのか?」
「い、いやぁ…いや、そんなことは…そんなことはない。無いと思う。」
「歯切れ悪すぎんだろ。」
「と、言うか、なぜシウなんだ?」
「…さっきの話だ。竜がでたのは知ってるか?」
「ああ、話にはな。おまえ達が討伐したって報告も届いてる。」
「あれは竜の使徒が召喚したやつで…なんでかは知らねぇけどシウが一緒にいた。」
「シウが!?」
「その様子だとベオルもなにも知らねぇか…。」
「いったいどうして…。」
「そんなことこっちが聞きてぇよ。まあいい…なにも情報がねぇって言うなら、突っ込むだけだ。悪かったな邪魔して。」
そう言うと静かにフレアはその場を去る。ケイスケもそれに続く。結局その場に居ただけとなったケイスケだが、いくつか推察を立てることができた。
1つ目、シウが竜の使徒と関わりをもったのはここ1週間の話である。2つ目、それほど緊急性を要する退っ引きならない事情がある。3つ目、以上の事から衝突は避けられないだろう。
『あの人は、芯の強い人だ。』
関わった時間こそ少なくとも、ケイスケはそれを知っていた。ロビーへと向かうと、まだアルフは伸びていた。
「いつまで寝てんだ。行くぞ。」
「え、えぇ…。」
そうして、3人のディファム王国に向けた旅が始まるのだった。




