見下すもの
「てめぇ…何をした…?」
殺気だったのはケイスケだった。
「魔族…そして亜人…この2種族、どちらもただの人よりも優っているとは思いませんか?」
「は…?」
「だってそうでしょう?力に秀でた亜人、魔力に秀でた魔族…人には何が残ってます?そのくせして私たちを迫害する。そんな道理も権限も持ち合わせていないくせに私たちを嫌悪する。可笑しいでしょう?この大地の支配者は少なくともそんな愚行をすべきではない。否、愚かなら喰われ淘汰されて必然…そうじゃないですか?」
「随分と狂ってやがるじゃねぇか…。」
悠々と語ったムスカスに飛びかかるフレア。その刃がムスカスに届くことはない。今度はケイスケたちの背後から声は聞こえる。
「まあ、流石に分が悪いんで引かさせていただくんですけどね。あなた形の相手は彼女がしてくれますよ。」
そうしてムスカスは視線を移す。その先には多重に魔法陣を展開した竜人の姿があった。
「フレアさん!!」
「了解!」
ダメージを与えようと羽に向けて放たれた斬撃。それは見事に弾かれる。
「!?」
「硬い…。」
正面には竜人と化したリオン。後方にはムスカス。だが、あくまでもムスカスは逃げるスタンスを崩さない。
「では、私はこれで。」
「ネリウムさん。ムスカスを任せます…。」
「ケイスケは!?」
「僕はこっちで何とかします。お願いします。」
「…わかった。武運を…。」
そうして、その姿を消そうとするムスカスにネリウムの刃は伸びた。その一撃は弾かれてしまうも、ムスカスの注意を引くことはできた。
「あなた…亜人なんですか?」
次の瞬間、リオンの魔法陣が作動したのか爆発がそのダンジョンに響き渡る。ネリウムが視線を向けるとケイスケが障壁を張っている。
「亜人だったらなんだって─────。」
「何故です?」
「?」
「何故人間と一緒に居るのですか?」
その問いに、ネリウムは言葉を詰まらせた。
一方、リオンの攻撃を防いだケイスケは思考を巡らせていた。フレアの一撃が通らなかった。これは非常にまずい事態であった。はじめのうちは後方支援に徹する気でもあったがこうなってしまえばそうも言っていられない。
幸い、奴は動けない。なら外す道理はない。
「フレアさん!撃ちます!」
「チッ…。」
その声で、フレアはその身を引く。手早い構築によりその槍は生成される。
「外すなよ?」
「動けない相手に外すわけ無いでしょ…堕ちろ!!」
その一撃は、やはり凄まじいものだった。ダンジョンの地面すら抉り、貫通したその槍。脳天からまともに受けたのだ。あれで立っているようであればそれ以上の火力が必要となる。だが、そんなもの今は持ち合わせていない。
結論から述べると、立ってさえいなかった。鎖が解かれ、その巨大な翼で飛んでいる。61階層からこちらを見上げている。
「嘘だろ…。」
「あれでも駄目………。」
「これ、流石に不味いんじゃないのか?」
「めちゃくちゃまずいです。でもだからと言って…もはや野放しにしていい相手でもなくなった…。」
こちらを見るその目に生気は無く、静かに手をこちらに向ける。瞬間的に生成される火球はこちらに放たれる。だが、直撃することはない。今、ケイスケたちが居る真下辺りに当たった。いや、当てたのだ。足場は崩れ、ケイスケたちはリオンと同じ階層へと落ちる。
「あれだけの火球なのに…。」
「なんつう威力だよ…。」
フレアは持ち前のフィジカルで、ケイスケは魔法で衝撃を緩和し着地する。
「んで、あれ以上の火力は?」
「難しいですね。いや出来なくは無いんですけど成功したことはないです。或いは…いや、なんでもないです。」
「歯切れ悪いな。なんだよ、付与魔法の類いか?」
「まあ、そんなとこですよ。」
ふと、その存在を見上げる。どこか笑みを溢したような表情にも思えるその存在はケイスケたちを見下す。
「ったく、どうしろって言うんだよ…。」
「同感です。」




