表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
出来損ないは無自覚に異世界を無双する  作者: 烏の人
出来損ない共
31/43

伝説

─────針葉樹林のダンジョン。第60階層。


「…まあ及第点でしょう。」


 そう言ったのはムスカスであった。失った右腕を押さえながら吊るされた被験体を眺める。その少し開けた空間には他に2人、魔族がいた。赤髪の方は未だに目を覚まさない。


「お嬢もまだ起きちゃいねぇ…その上ムスカス様もその腕だ。ここなら大丈夫なんだろうな?正直、俺はあいつら相手に戦える自信なんて無いぞ?」


「安心しろ。私も同じくだ。その上ここはあの魔法使いに利のある地形…まず間違いなく今の私たちの戦力では足りない。」


「じゃあどうするってんだ?このままおとなしくしておくのか?」


「いいや、いずれあの方にとっても害になるような存在だ。出来ることなら私たちで処理した方がいいだろう。幸いにも竜の使途らの先導は完璧だった。」


「竜の使途ねぇ…使えるのか?」


「実際、竜を召喚してくれたのは確かなんだ。お陰で材料は集まった。」


 赤髪の看病をしていた魔族の男は転がっている本を手に取り、ページをめくる。


「竜人…そんなもの本当にできるのか?」


「さあ?こればかりはやってみないとわからない。伝承にしか載っていない幻の亜人だからな。だけど、仮に成功すれば完璧な存在を作る足掛かりになるのは間違いない。」


「昔から熱心だねぇ。魔族の中でも突出した魔力をもつ研究者…噂されてただけはあるよ。そこまでして、復讐したいのか?」


「君は違うのかい?虐げられてきた恨み、辛み、晴らそうとは思わないのかい?」


「まあ、思うけどよぉ。俺はアンタほど熱心にはなれなかったかも知れねぇな。」


「そうか…。」


「しかし…お嬢が居るのにこれ以上を求めるってのもなんだな…。」


「彼女だとまだ未熟な部分が多い。それに…力も種族も弱いだろう。」


「俺からしてみりゃ十分だよ。」


「現に、今回たった1人の人間に負けた。それはどうにも出来ない事実だ。」


「まあ…負けて怒り心頭なのはわかるが、あまり焦らないでくれよ。」


「わかっているさ…。」


「頼むぜ、俺たち魔族組の最高戦力はアンタなんだ。ムスカス様。」


「ああ。」


 吊るされた被験体。リオンへとムスカスの視線は移った。透明化、そして戦闘技術。どちらも洗練されていた。思い浮かんだのはあの白髪の亜人。


「人間の何がいいんだか…。」


 そう言うと、ムスカスは魔術回路を組んでいく。それはリオンの身体に刻み込む新たな鎧であり、肉体である。


「透明化はそのままに…竜の力そのものを組み込んで…血を馴染ませるには…。」


 ぶつぶつと独り言をいいながらそれを作っていく。


「後は…うまく馴染むことを願うだけだな。」


「にしても、ソイツも難儀な奴だよなぁ。」


「この人間が?」


「親に売られて、復讐の道具にされて…。」


「まあ、自業自得だろう。それに、憂さ晴らしならこれからいくらでも出来る。」


「人間の抹殺…か。」


「同じ過ちを繰り返さないためだ。全ては虐げてきた人間の自業自得だろう。」


「人か、魔族か、亜人か…どうにもこうしてムスカス様の研究を見てると、時々わかんなくなるよ。」


「何がだ?」


「人がどうとかって話だ。はっきり、人知を越した者の前ではそんなもの無意味に過ぎねぇだろ。」


「そうだな。」


「そこまで取り憑かれる必要もないんじゃないのか?」


「これはあくまで、私なりの恩返しだよ。復讐も兼ねたね。あの方は私を救ってくれた。そしてこの先のあるべき道筋を示してくれた。ならば、私はそれに答えるだけだ。さて、仕上げと行こう。」


 そう言うと、リオンの身体に魔術回路が現れる。それにともない、魔法陣が幾重にも重なる。もともと発現していた、は虫類の鱗はより強固に、そして額には1対の角が現れる。尾が生え、翼が生える。それはまさしく伝説に見た竜人の姿とそっくりであった。魔法陣を背に神々しく、造られたそれは目を開ける。その瞳は、金色にそして縦に黒目の走ったまさしく竜眼。


「…ぉお…。」


 目を輝かせるムスカスを横目に、男は赤髪の看病を続けるのだった。

 この作品を読んでいただきありがとうございます!

 よろしければ、評価、ブックマーク登録していただけると執筆の励みになります!また次回もよろしくお願いします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ