足枷
立ち上がったケイスケは目の前で悶える男に目もくれず2人に声をかけた。
「行きますよ。針葉樹林のダンジョン。」
「ちょ、ケイスケ!相手方の目的は!?」
焦ったのはネリウムだった。
「ああ、そう言えば聞いたんでしたね。」
「ケイスケ、おまえちょっと焦りすぎだぞ?」
フレアもネリウムに続きケイスケをなだめる。
「焦る気持ちはわかるが、相手の情報を探るのも大事だ。違うか?」
「…冷静じゃなかったのは認めます…。」
「はぁ、らしくないな。おまえ、そんな目することないだろ?」
恨みか、怒りか、何もかもを殺すような目をしたケイスケを見る2人。
「少し、1人になってもいいですか?」
「まあ、構わねぇよ尋問は…あ、いや、こいつはできそうにないな…。」
見ると、2人とも気絶している。拷問を受けていた男は辛うじて治癒魔法により身体は無事であった。だが、そのショックからピクリとも動かなくなっていた。
「まあ、居場所は割れたからな…とりあえず、成果はありと考えてもいいだろうな。」
ケイスケはただ1人、その場をあとにする。フレアとネリウムはその後ろ姿を眺めることしかできなかった。
「ケイスケ…あいつはいったい何を抱えてるんだろうな?」
「さぁな。私が知ったことじゃねぇよ。ただ、あそこまで怒ったケイスケは初めて見た…やつらに恨みがあるのは間違いないだろうな。」
「因縁があるとか?」
「いやぁ、あいつ自身師匠のもとを離れたのはここ最近の話だ。因縁らしいもんなねぇだろうよ。」
「ってことは…リオンが好きとか?」
「もっとねぇな。」
「言いきれるのか?」
「ああ、言いきれる。」
「ならあいつは…何があいつをここまで…。」
「まぁ、概ね自分で着けた足枷みたいなもんだろ。」
「足枷?」
「いんだよ。たまにそう言う奴が。」
「さてと、私らはこいつが起き次第目的の方を聞かなきゃならねぇ。場所は割れてるから突っ込んでもいいがな…。」
「…フレアも大概、血の気が多いな。」
─────ケイスケは現在、城壁の上から針葉樹林のダンジョンの方を見ていた。
「はぁ…。」
「悩みでもあるのか?」
そう声をかけてきたのは、Bランクの冒険者。シウであった。
「シウさんですか。久しぶりですね。」
「ここのところ、ケイスケも忙しかったろう。」
「ええ、まぁ。」
「それで、どうした。そんなに殺気立って。」
「………シウさん。僕はでき損ないなんでしょうか?」
「どうしたよ。いきなり。」
「何となくです…聞いてみた。それだけです。」
「そうだな…まあ、個人的にはでき損ないではないだろうとは思うぞ。人としてしっかりとした芯があって強さがある。」
「そうですか…。」
「まあ、それを認めてやれるのは君自身な訳だが…どうしてここまで焦るんだ?」
「思うんですよ…あの時もっと速く動けていればリオンさんは拐われることなんてなかったって。」
「それは…言ってしまえばそれは結果論だ。だれもこんな形になるなんて予想できなかった。違うか?」
「…まあ、そうですね。結果論です。でも、思うんですよ。結局その結果を呼び寄せたことが事実として残る。過程なんて見てはくれないんです。だから…。」
拳を握りしめる。
「だから自分が許せないのか?」
「…。」
「稚拙だな。君も。言っておくが、今回の件、君の事を責めている人間はだれ1人としていないぞ?いや、正確には君1人を除いてか。他は皆、前を見ている。そして、君たちならリオンを連れ帰れると信じている。それでも君は、まだ彼ら彼女らの足を引っ張るような真似をするのかい?」
「足を…引っ張る?」
「ああ、少し君は自分の事を理解した方がいい。随分と他人と自分の差に気がついていないようだしね。」
「それは…どういう事でしょうか。僕は…どうするのが…。」
「それは君自身が見つけ出すべきものだよ。私から言うようなことでは、決してないさ。」
「僕は…。」
「まあ、しっかり悩むといいさ。邪魔して済まなかったな。」
「…いえ…ありがとうございます…。」
そうして、シウは去っていった。
相変わらず針葉樹林のダンジョンの方を眺めるケイスケを背に考える。
『しかしギルドマスターの勘もよく当たることだな。』
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