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出来損ないは無自覚に異世界を無双する  作者: 烏の人
出来損ない共
29/43

拷問

「リオンさん!!」


 ケイスケのその声も虚しく、リオンの姿は闇に消えた。気配探知ももはや届かない。


『どこに消えた?奴らはリオンさんを使って何をしようとしている?いや、どちらにせよやることは…。』


 グッと拳を握った。


 ─────翌日のことである。ネリウムと対峙した仮面の男2人は捕虜として捕えられた。ケイスケの読み通り、2人は魔族であった。


「ムスカスのように転移はできないと…。」


 ケイスケは考え事をしながら呟く。

 ギルドは現在、補修工事に移っている為、捕虜の2人はレイスを取り囲む城壁の牢屋へと繋がれている。ケイスケ、ネリウム、フレアもその場所にいた。


「しかし、魔族か…おまえ達の目的はなんなんだ?」


 ネリウムがそう聞いた。


「「…。」」


 しかし、2人は沈黙を貫き通すだけだった。


「質問を変える。リオンはどこだ?」


「「…。」」


「駄目ですよネリウムさん。コイツらがまともに話をするわけ無いじゃないですか。」


「とは言え、どうやって………ケイスケ?」


 さも当然のように、ケイスケは牢屋の扉を魔法でぶち破り中に入る。


「け、ケイスケ!?」


「大丈夫ですよ。あとで直すしそもそも逃がしませんから。」


 そう言うと、ケイスケは壊した鉄格子を手に取り続ける。


「これからだいたい30秒に一回、一滴づつ溶かした鉄を君の手に垂らします。あ、治療はしますんで安心してください。とりあえず、情報吐くまでは続けます。」


「え…え?」


「ケイスケ?」


 ネリウムもフレアも困惑している。


「僕が聞くのはリオンさんの所在と、拐ったその目的です。教えてくれますね?」


 ケイスケが目を付けた方の男はそれでも無言である。


「…うーん、まあ吐くまでは続けますしいいんですけどね。」


 その瞬間、最初の一滴がこぼれた。その部屋には悲痛な叫びが響く。


「まだ始まったばっかりですよ?そんなに痛いなら最初から言えばよかったじゃないですか。」


 笑顔のケイスケはそれだけ述べた。


「て、てめぇ…。」


「お、言う気になりました?」


 その光景をただ見ていたもう1人の男は鋭い瞳をケイスケに向ける。


「誰がてめぇなんかに…!」


 その瞬間、二滴目が落ちる。


「があぁぁあぁあ!!!」


 その苦しみから逃れようと踠くも、身体は自由に動けない。拷問を受けている側はおおよそまともな声が発せられる状態ではない。


「は、早いだろうが!まだ30秒も経ってねぇ!!」


「知りませんよ。そんなの。僕だってだいたい30秒って言っただけですし。んで、吐くんですか?」


「…。」


 沈黙をする両者。だが、その空間が延々続くと考えたとき怖じ気づく。


「堪え性がないですね。ムスカスは腕が落ちても悲鳴のひとつも上げなかったのに。」


「なっ!?ムスカス様の腕を…!?」


「そうそう、あんな町中であんなもん落とせるわけ無いのにねぇ…随分とノータリンみたいだね。君たちの上司。」


 拷問の様子を見ていた男は啖呵を切って立ち上がる。


「てめぇ…!!」


「ああ、君は好きにしなよ。どうせ、ここにいる人達には勝てないだろうから。」


 魔術を使おうとしたのか、その男の胸部には魔法陣が出現する。


「いいよ。来な?」


 ケイスケは余裕そうにそう答えた。


「殺す…【ダーク─────】」


 その詠唱は、完遂されることがなかった。ケイスケはいつかのように、指で空間をなぞった。その瞬間、男は脱力し膝から崩れ落ちた。


「なっ…。」


「君は自分の心配をしなよ。彼は眠ってるだけなんだからさ。」


 また一滴、鉄が溶けた。また叫び声が響く。


「うるさいなぁ。次はこの鉄飲ませますよ?」


 そんなことを言うケイスケの様子を伺うフレアとネリウム。


「な、なあフレア…ケイスケって。」


「ありゃ完全に怒ってるな。」


「怒ってるとかで済むのか…?」


「まあ死人は出んだろ。ケイスケは人殺しは嫌いだ。」


「いや、あれどちらかと言うと死んだ方がまだ…。」


 また一滴、鉄が垂れたらしい。絶叫はその砦に響く。


「はぁ…言葉通じてます?ま、いいや。んじゃ飲ませるわ。」


 そう言うと、魔法で男の首を固定し無理矢理上を向かせるケイスケ。


「がっ…あぁっ…!!」


 苦しむその男にも容赦なく、溶けかけた鉄格子を近づける。


「わ、わがっだ…!!言う…!!」


「おう、言えよ。」


「言うから…はなじで…!!」


「言ったろ?吐くまでは続けるって。吐けよ。」


「ムスカスは………針葉樹林のダンジョンにいる…!!」


 男がそう言いはなったあと、鉄が一滴、また溶けた。


「ん、わかった。」


 ケイスケはそれだけ言うと立ち上がる。悲鳴とも取れないような音がまた響くのだった。

 この作品を読んでいただきありがとうございます!

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