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出来損ないは無自覚に異世界を無双する  作者: 烏の人
出来損ない共
25/43

時間稼ぎ

「はあ…魔族って面倒くせぇな。」


「なんなんだ…テメェはいったい…なんなんだ!!」


「ただのフレアだ。以上でも以下でもない。」


「クソがァァああァあ!!!」


 叫びながら襲いかかってくる。だが、それは走っていると言うよりも、疲労に耐え兼ね自暴自棄になっているようにしか見えない。本能の赴くままに身体を動かしているだけ。先程よりも鈍重でその上パワーがあるわけでもない。フレアにとって制圧は容易かった。

 たったの一撃だった。覚束ない足取りのそいつを簡単に避け剣の柄をその首に叩き込んだ。


「まあ…拘束は難しいんだけどな。」


 フレアがそれだけ言うと。魔族は完全に倒れる。そうして身体ももとに戻っていた。一息ついていると、ギルドの2階から声が聞こえる。


「フレア、そっちはどうだ?」


「制圧完了だ。これからケイスケの方に向かう。」


「了解した。こっちも制圧はできてる。色々と尋問させてもらうよ。」


 そう言うと、ネリウムは再度ギルドへと入っていった。


『しかし…この魔族が起きられても困るんだよな…いや、使えるか。』


 そうしてフレアは魔族の体を持ち上げケイスケのもとへと向かう。

 ケイスケの姿を見たフレアは絶句した。特段、ケイスケがやられていたわけではない。あそこまで殺気立ったケイスケを初めて目にしたのだ。何より、ムスカスの右腕は切り落とされていた。


「あー…やっぱり微調整が難しかったな。」


 そんなことをケイスケは呟いた。


「私の…腕…?これは…私の腕?」


 一方のムスカスはそれを受け止めきれないでいた。


「まあお返しだ…お仲間も1人やられたようだしな。」


 フレアに視線を向けた。ムスカスもそちらを見る。


「なっ…。」


 明らかに動揺した。今まで何があろうと動じなかったその目が大きく開いた。


「いや…いやいやいや…いや…十分…もう十分でしょう…時間は取りました…あの2人は残念ですが…。」


 独りぼやくムスカス。そこからは誰よりも速かった。それはいつかシウが使ったような魔術による身体強化。一瞬にしてフレアとの距離をつめる。だが、対応できないほどフレアも遅くは無い。


「そんなにこれが欲しいかよ…。」


 一瞬にして身を翻し避けるが、そこに待っていたのは黒い刃。一瞬、油断していた。それさえも、フレアは避ける。だが、隙は生じてしまった。その一瞬を突き、ムスカスは魔族に触れ黒い霧と共に姿を消したのだった。


「チッ…。」


 舌打ちをするケイスケ。


「け、ケイスケ?」


「どうかしました?フレアさん。」


 その声はいつもと違い、怒りに満ちていた。その声音には、フレアさえおののくほどの殺気が乗せられていた。


「いやぁ、その…大丈夫か?」


「問題はないです。それよりも…今は考えなきゃならないことがあります。」


 いつもよりも冷徹かつ無表情なケイスケ。


「考えなきゃならないこと?」


「ムスカスが真っ先にこの場を離脱した理由ですよ。」


「そりゃリオンを連れ去るためじゃ。」


「なら、賢いあいつは魔族を置いて離脱します。あいつにとってリオンよりかはあの魔族の方が上。或いは─────あぁ、そう言うことか。」


「け、ケイスケ?」


「少し、気になってたんたんですよ。何で潜入は5人じゃなかったのか。」


「5人?」


「仮面の4人組プラス、ムスカス…5人になるはずです。僕はてっきりこの4人組の中にはムスカスが含まれていないと考えていました。前回リオンさんがさらわれた時と同様のメンバーだと。だけど、フタを開けてみれば襲撃してきた1番手はムスカスだった。」


「つ、つまりそれは…。」


「だいぶ前から居たんでしょうね。仮面の4人組の1人がこの街に。これは時間稼ぎだったんです。あと1人がリオンさんを連れ去るまでの時間稼ぎ。」


「だけど1対1ならリオンでも十分立ち回れるんじゃないか?」


「だといいんですけどね…僕の見立てだと、ムスカス含め、今回の襲撃は全員魔族だと思ってます。」


「で、でもあの赤髪が特別だって言ったのはお前だろ!?」


「そう…赤髪が特別だったんです。魔族はまだ人間のくくりです。」


「なんだよ…それ…それじゃあ。」


「ええ、あの赤髪は人間のくくりですらない何か…僕にはその正体はわかりませんけど。」


「…。」


「ともかく…僕はリオンさんの方へ行きます。今の彼女を見つけれるのは僕だけですから。」


「それなら私も。」


「そうですね…あと1人。仮面をつけた1人がいるはずです。フレアさんはそっちを。」


「わかった。」


「絶対に…逃がさねェ…。」


 ケイスケの目が鋭いものに変わる。今までに見たこともないような、獲物を屠る目へと変わる。

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