決意と復讐
彼らの埋葬を終えたのは、日が傾きかけた頃だった。
「ごめん…僕がもっと早く着いてれば…。」
「あなたのせいじゃない。あなたのせいじゃないよ…。」
そんなことを呟く彼女の瞳は虚ろで、先行きの見えない未来を見ていた。
「私に…もっと力があればあいつを…あの魔族を…!!」
憎しみに拳を握りしめる。
ケイスケも魔族には覚えがあった。師匠の下で修行していたとき、魔族に関する資料を見たのだ。
魔族の特徴として2点あげられるのはまず、魔力内包量が多く多彩な魔術を扱う点。そしてもう1つの特徴として目尻に結晶が現れている点がある。
確かに彼女の目尻には結晶があった。魔族であることに間違いはなさそうである。
「今、非力を悔やんでも仕方ないです…彼らをきちんと弔う。報いる…それが僕たちのやることだと、僕は思います…。」
淡々とそう告げる。平静を装うも、その拳はしっかりと握られ震えていた。
「ケイスケさん…。」
「少なくとも、顔は割れた。そして奴とも繋がっているのも証明された…絶対に…僕が仇を討ちます…。」
「…。」
「リオンさん…?」
「私も…戦いたいです。ケイスケさんやフレアさんみたく強くないけどそれでも…あいつを…あいつらを…。」
「…リオンさん。」
憎しみを握りしめた彼女は、その瞳に涙を浮かべる。なにもできない無力さに腹が立つ。どうにもできなかった自分に腹が立つ。
「ケイスケさん!私は………私はどうしたらもっと…強くなれますか…!!」
嗚咽混じりの懇願であった。ケイスケにしがみつき、崩れそうな心を無理矢理奮い立たせ彼女は可能性に縋る。今、この場にいるなかで最も強い存在に。
「………師匠に言われたんです。死ぬほど努力をしてみろって。努力の方向性は師匠が説いてくれました。それで僕は、ここにいる。」
「死ぬほどの…努力…?」
「僕はその道の専門家でもないので方向性を説くことはできませんが…その道の専門家は知ってます。」
「そ、それはいったい…。」
「…行きましょうか、リオンさん。レイスに。」
「…はい!」
そうして、リオンとケイスケはレイスのギルドへと戻ってきていた。
「あら、お二人とも…どうかしたんです?」
エリファがそう話しかけてきた。
「赤髪の女剣士と会った…彼らの集落は既に襲撃された後で生き残りは…もう…。」
「そ、そんな…じゃあリオンさんは…。」
そこまでエリファが言うと、うつむいていたリオンは顔を上げた。真剣な表情で、エリファを見つめ、そして口を開いた。
「私…冒険者になりたいです!」
「り、リオンさん!?」
困惑するエリファ。それに対し、リオンは続ける。
「私は…あまりにも弱かった。みんなを守れなかった。それが悔しいんです!一矢報いたいんです!!お願いです!冒険者になりたいんです!!」
そうして頭を下げるリオン。
「だ、大丈夫です!登録自体はすぐできますから頭を上げてください!」
そうして、リオンは冒険者となる決意を固めた。
書類の簡単な手続きを済ませ、実力を図るための試験に移る。リオンの現在の性質上、彼女に向いた役割はシーフである。静音、そして透明化の能力を持つ彼女の才能は素晴らしいものである。だが、やはり実力不足である。能力を使うと言うより、能力に使われている。それでも、伸び代は十分である。
リオンが試験を受けている最中のこと。
「さてと、エリファさん。」
「はい。ギルドマスターへの連絡はしておきますよ。それで、何を見たんです?」
「あそこに立っていたのは魔族でした。」
「魔族…ですか。穏やかじゃないですね。」
「顔も割れたのであとは時間の問題でしょう。」
「わかりました。後日詳しい話し合いの場をもうけます。まだフレアさん達も帰ってきていませんからね。」
「ありがとうございます。」
リオンの冒険者としての登録が完了したのはそれから間もなくのことであった。クラスはEランク。実力も加味して当然のランクだ。
「これから…よろしくお願いしますね。ケイスケさん。」
あどけない少女の顔はそこにはなかった。決意と復讐。確かに彼女の瞳にはその炎が灯っていた。
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