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星の降る日

 魔女にケイスケが拾われて1ヶ月の時間が過ぎた。その間、魔女は世界の仕組み、魔術の扱いについてケイスケに教え込んでいた。対するケイスケも要領がよく、教えられたことはすぐに吸収し自分の知識に変えていった。


「私の見込んだ通りだね。坊や。」


「師匠の教え方がうまいからですよ。」


 そんな会話を交わす師弟。


「さてと、それじゃそろそろ本格的な修行に移ろうか。」


「本格的な修行…ですか?」


「ああ。今まで坊やに教えたのは基礎知識でしかないからね。いよいよ基礎訓練といこうか。」


 基礎訓練。その言葉に緊張を覚える。思い返せば、魔力を扱った訓練というのは初めて空を飛んで以来はやってない。


「まずは坊やにどんな適正があるのか見てあげよう。来なさい。」


 そういって、魔女は自室へとケイスケを連れ込む。その空間はとびきり異質だった。並んだ魔法陣の図面。薬の調合に使われたと思われる試験管やフラスコ。いかにも魔女の部屋というのがよくわかる。


「魔術というのはどういうものだった?」


「ま、魔力を介して人間が扱える範囲の体系化された事象…でしたね?」


「そうだ。体系化されたのだから派生があってな。それを属性という。今回はまず、坊やの属性を調べるところからだ。」


「僕の属性…。」


「ほら、これだ。」


 そう言って魔女が取り出したのはひとつの水晶であった。


「これは…?」


「まあ、触れてみたらわかる。」


 いわれるがまま、その水晶に触れた。


「何が見える?」


「な、何がって言われても…。」


 普段通りの変わらない景色。そのはずだ。妙なところは何もない。


「水晶にも変化無し…か…やはりな。」


 わかっていたように魔女は言った。


「本来ならその水晶はその者の持つ潜在的な属性を引き出すのだが…それが見えず現れなかったとなると…坊や、おまえは魔力は持てど属性は持たぬらしい。髄分と稀有な人間だ。」


「そ、そんな…。」


「まあ気を落とさなくていい。私についてこようとしたら、その方が楽だからな。さ、外に行くぞ。」


 そんな風に諭された。普通に考えて体系化された者にどれひとつ当てはまらないということは、まともに魔術が使えないという現れでもある。

 いわれるがままに外に連れ出され、魔女は言った。


「いいかい坊や。見たまま、そのままを捉えるんだ。坊やはそれでいい。」


「見たまま…?」


「坊やの目には何が見える?」


 その目に映るのは一面の草原。


「広い...大地…。」


「それだけかい?」


「え?」


「風、陽光、草花の香り…五感で得たもの全てを目に写すんだ。それが魔術を使う上で一番大事なんだよ。」


「五感で得たもの全て…。」


 その言葉に従い、その世界を意識的に捉える。日の光に溢れ、心地いい風が吹き抜け、それにつられ草花の香りが頬を撫でる。そんな豊かでのんびりとした大地。


「感じるかい?」


「はい…なんとなく。」


「花をひとつ、摘んでごらん?」


 その言葉を素直に受け取った。目の前に手を伸ばし、その目に感じる花をひとつ、摘んだ。第三者からしてみれば、急に目の前に花が現れたように見えただろう。その手には確かに一輪の花が存在した。


「よくできたね。坊や。」


「…え?」


「坊やは今、何もないところから一輪の花を取り出したんだよ?」


「な、何もないって花は確かに…そこにあったはず…。」


「それが魔術だよ。こればかりは人間の頭では理解しきれないだろう。理屈じゃないんだ。だけど確かに法則には従っている。」


「これが...魔術。」


「では時に坊や、魔法とは何か。わかるかい?」


「魔法は、魔術も含め体系化されていない魔力がこの世界に及ぼす影響のこと…ですね。」


「そうだ。そして、坊やが扱うものでもある。」


「そ、それは…?」


「坊やはさっきのテストでなにも変わらなかったと答えた。そして今も、その手に花を持ってくることに成功した。体系化されていない純粋な魔力による事象。それをするには、ありのままを捉えるのが必須なんだよ。」


「む、難しいですね。」


「わかってしまえば簡単さ。それに、私は星の魔法使いだからね。」


「星の魔法使い…。」


「その由縁、少しだけ見せてあげよう。これが魔法だよ、坊や。」


 そう言うと、その魔女は天を右手で指差し大地に振り下ろした。次の瞬間。流星が一条、空を駆けた。流れ星というには些か大きい。昼でも明るいと感じる光を放ちそれは大地に向けて落ちたのだった。


「え…。」


 直後である。地響きが大地を馳せる。爆風と共に轟音が耳に届く。


「うっ…。」


 涼しい顔で魔女はその様を眺めていた。


「これが、坊やの至るべき魔法の極致さ。」


「星を…落としたんですか…?」


「そうさ。これが星の魔法使いの名の由来だ。」


 規格外の出来事に絶句する。無理だ。こんなのどうやったって追い付けるはずがない。明白に力の差を思い知らされたようだった。


「そんな難しいことじゃないよ。それに、どちらかというと坊やのためにもこのくらいはできておいた方がいいと思ってね。」


「僕のため…?」


「魔力回路については…まだそこまで話していなかったね。」


「は、はい。」


「坊やの魔力回路は体内ですごく発達しているんだ。それこそ運動神経を圧迫しているくらいにね。何時からかはわからないけれど妙に体が重いと感じているならそれは坊やの魔力回路のせいだ。」


「つ、つまり…僕は運動機能が普通の人よりも明らかに弱い…と。」


「そう言うことだよ。だからこそ、それを補うのが魔法、魔術なんだ。あ、だけど坊や自身に身体強化は向かないね。その体なら体の神経が焼き切れて死んじゃうから。」


「ええ!?」


「坊やは少しだけ特殊な体質なんだと思うよ。ここまで生き残って来たのが不思議なくらいにね。」


「特殊な体質ですか…。」


「まあ、だからこそだ。私は坊やの才能を極限まで引き出したい。そう思ってるんだ。」


「師匠…ありがとうございます。でも僕は…出来損ないだから。」


 そんなことを呟く。昔から何をしてもダメだった。今だってそうなのだ。当然のことをやってばかり。このままじゃダメなのだ。


「出来損ないと思うのであれば…一度、死ぬほど努力をしてみてくれないか?」


「死ぬほど努力…ですか?」


「出来損ない…私は坊やのその評価を信じよう。坊やはそれを覆してくれるだけでいい。死ぬほどの努力をもってな。」


「そ、そんな簡単に…。」


「出来損ないらしく、あがいてみなよ、坊や。」


 魔女は初めにあったときのような敵意を剥き出した目でケイスケを睨み付けたのだった。

どんどんアクセル踏んでいきます。とりま毎日投稿目標に!一章くらいは書き終わりたい(てかそこ目標で頑張ります)!!

 というわけでこの作品を読んでいただきありがとうございます!

 よろしければ、評価、ブックマーク登録していただけると幸いです!また次回!!

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