襲撃
フレアとネリウムはその村へと到着した。一見、なんの変哲もない静かな村。
「まあ、わかってはいたがな…。」
ネリウムはそう呟く。異変とまでは言わずとも、確かな違和感。静かすぎるのだ。
「まあ警戒はされるだろうな。」
楽観的にフレアは答えた。
「取り合えず、情報収集にしたってギルドに行こう。」
「この村にもあるんだな。ギルド。」
「まあ、形だけな。」
そう言ってネリウムはその村のギルドへとフレアを案内した。
ギルドの中は多少騒がしいくらい。レイスのギルドの比べて随分と静かでこぢんまりとしている。受付の人数も少ない。ただでさえ静かなそのギルド。2人の姿を見かけたとたん、その空気は静寂へと変わった。
「ネリウム。こんな警戒されるもんなのか?」
「まあ、そうだろうよ。」
実際、ネリウムは傭兵として旅をし、その過程で実力と名前を知らしめているわけだし、フレアは冒険者の間で知らないものは居ないほどの知名度を誇っている。その2人が揃って小さな村のギルドに立ち寄っているわけだ。空気は張り詰める。緊張だけがその場を支配する。ただの一介の冒険者にとってはたまったものではない。
「まあ、いいか。」
フレアはそう言うと、続けて声を張り上げる。
「いいか、お前ら!私たちは今人探しをしている!!」
フレアの声がギルド中に響く。
「なっ、フレア!?」
「この方が手っ取り早いだろ?」
「そうだが…。」
「探してる奴は4人!いずれも顔は割れてない!だが、1人の特徴については聞いた!赤髪の女剣士って話だ!知ってる奴は居ないか!!」
そう聞いても、ギルドには静寂が募るばかり。だが、1人が口を開いた。初老の冒険者。この集まりの中では随分と肝が座っているように思える。
「赤髪の女剣士…覚えがある。」
「本当か!?」
フレアがそう聞き返した。
「あぁ、だが随分と前のことだ。あんたの探してる奴じゃないかも知れねぇけどよ。」
「どのくらい前なんだ?」
「あれは…そう、半年くらい前だ。」
その情報に顔を見合わせるネリウムとフレア。探している人物で間違いはないだろう。
「そいつの名前とか素性…わかるか?」
「いやぁ...さすがに。だけどそうだなぁ女にしちゃ身長が高かったからすぐわかりそうなもんだぜ?」
その後も、その村での情報収集を行ったネリウムとフレアだったが如何せん行動が遅かった。誘拐からは半年が経ち、当時のことを覚えているものも少ない。だが、赤髪の女剣士についてはよほど目立っていたのか情報が集まってきた。
まず、高身長である点。そして一日中仮面を着けていた点。単独行動をしていた点。
以上の情報が集まった。
「まあ、無難に考えるなら4人組のリーダーはこいつだろうな。」
「そうね。でも、足取りはつかめなかった…。」
「より詳しい特徴がわかっただけでも御の字ってとこか…。」
「だな。そろそろ引き上げるとしよう。」
「ああ、ケイスケの方も上手くやってるだろ。」
─────ケイスケの目の前に広がっていたのは血の海である。本来そこには、彼らの集落があった。だが、そんなものはもうない。あるのは血生臭い肉の塊。
案内された彼らの集落。そこには生きている彼らは1人として残っていなかった。あるのは、切り刻まれた四肢。そして、邪悪にそびえるしなやかな体躯。その赤髪はどこか知り合いを彷彿とさせた。噂通りの仮面を着けていた彼女はこちらを向いた。
「あ?あぁ、居たか。出来損ない。」
ケイスケ達を、正確にはリオンを見てそう言った。
「殺すのは楽なんだがな。」
その剣を引きずり、こちらに向かう。リオンは殺意にまみれていた。だが、それ以上に怖じ気づいていた。目の前の邪悪にではない。守ってくれるはずのケイスケという存在に。
「てめぇ、死にたくなけりゃ─────。」
「死ね。」
低く呟く。直後、その邪悪の纏っていた仮面は真っ二つに切れる。
「は?」
すっとんきょうに顔を晒したのもつかの間、眉間から胸部にかけてバッサリと斬撃が入る。その傷は深く、赤い雨をその場に降らせる。
「てめぇ…今何しやがった…!」
だと言うのに、そいつはいたがる素振りを見せずそう聞き返してくる。
「あ、あの顔…。」
目の前の惨状に怖じ気づくリオンだったが、そう言葉を発した。彼女の言葉に目をやると、目元に特徴的な結晶がある。どこか泣いているような、綺麗とさえ思える、そんな結晶。だが、今のケイスケには関係のない話だ。
「今の…致命傷は避けたのはそうだけど…いや、いいか。君はそう言う奴ってことにしよう。」
「な、なに言ってんだ?てめぇ。」
ケイスケの異常さも際立つが、それでいても、奴も異質だった。先ほど与えた傷は既に塞がっている。
「逃がすと思うなよ。」
その言葉で鈍い音が響く。力なく、彼女はその場に倒れこんだ。その足はあらぬ方向に曲がっている。
「お、折ったのか!?私の骨を!?」
「どうにも…君の束縛は一筋縄じゃ行かないみたいだ。だから…。」
前面に手を着き出すケイスケ。呼応する魔法陣。
「や、やめ─────。」
「堕ちろ─────。」
その槍は彼女めがけて落とされる。何もかもを消し飛ばしかねないその爆風。その力の前、直撃していれば死は必然。だが、ケイスケは感じ取っていた。
「また外したか…。」
思えば、この攻撃をまともに当てた回数はそれ程ない。そこまで乱用する技でもないが、メインウェポンな分精度に難があるのはいささか不安が残る。が、それよりもケイスケはあの仮面の男が脳内をよぎった。あの槍が当たる直前、奴の声が確かに聞こえた。『あれは相手にしては行けませんよ。』
「羽虫が…。」
その惨状を目の前に、そう呟くしかなかった。
─────例の集落の襲撃現場から数キロメートル離れた地点にその黒い霧は出現した。そして、現れたのはムスカスと先ほどまでケイスケと戦っていた彼女であった。
「お、おい…ありゃなんなんだ…?」
「さあ?地震か何かとでも思っていてください。まあ彼の攻撃が魔法なのが功を奏しましたね。」
「ま、魔法…だと!?」
「ええ、あなたに魔族の血が入ってなければ危なかったですよ。それでも…あれは直撃したら死にますね。」
「なぜ…殺しておけば楽だっただろうに。」
「だってあなた、立場わかってます?あの方の奥さんでしょう?傷つけるなんてそんなそんな。」
「はあ…弁が立つようで何よりだ。やっぱりお前のことは好きになれん。が、しかし…今回は礼を言おう…奴はどうにかしなくてはな。」
「どうにかできたらいいんですけどねぇ。あれ。」
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