何者であるか
「君は何者なんだ?フレア?」
その問いに、フレアはうつむく。そうしてゆっくりと口を開いた。
「ただの孤児だよ。出来損ないの。」
「…。」
「なに…いいんだ。少し昔の話をしよう。」
そう言うとフレアは自分の過去を語り出す。
フレアが物心着いたときには、既にスラムに転がる有象無象の1人であった。親の顔も覚えていない。そんな中でフレアが一番始めに覚えたのが、ゴミ箱を漁ることだった。食えないよりかはマシ。そう思っていた。
ある日の事である。その町に来た大道芸人が客を集め金を貰っているのを遠目に見ていた。その日、初めてフレアは生きていくのに金が必要だと知った。そこからは早かった。自分のすべき事を理解した。
盗みの腕前は上達することはなかった。何をやるにも不器用だった。そこで、彼女はそのスラムの中のスリのグループに所属することにした。が、成果は振るわず以前にも増して生活は苦しくなった。そのグループのリーダーは端からフレアの事を疎ましく思い、罵倒していた。「出来損ない」と罵られたとき、意味は完全には理解できないながらも自分は真っ当に人と呼べるものではないのだと直感した。
スリのグループを抜けたのはそれから数日経っての事だった。そこからフレアは、ここに居てはダメだと悟り遠くへ行くことを決意する。宛のない家出だ。
金を稼ぐ手段も知らない少女は3日歩き続け、そして倒れた。
目が覚めたのは奇跡であった。気がつけば河原で横になっていた。「起きたか」と不器用な声が響いた。その声に怯えながらも、そちらを向く。フレアはそのとき、初めて綺麗と呼べるもの見た気がした。白髪の青年。剣を携えた目付きの悪い冒険者。奇跡との出会いであった。
フレアは彼に全てを教わった。言葉遣い、剣の振り方、魔術の使い方。だが、フレアは魔術の適正が全くなかった。代わりに、その飛び抜けた身体能力には白髪の冒険者も目を見張るものがあった。
荒みきって朽ちていくはずだったフレアは彼により救われた。フレアと言う名も彼がつけたものだった。
フレアの年齢がおおよそ12に成る年。白髪の青年はフレアを冒険者にした。そこから数日後、その青年はフレアの元を去ったのだと言う。
「─────これが全部だ。要は自分がなんなのか自分でもわかっちゃいない。」
「…軽率だった。すまない。」
「なに、今こうして生きれてるんだ。何よりネリウムだって私と大差ないだろ?なら仲間だ。」
そうやって笑うフレア。正直、ネリウムには理解できなかった。目の前の少女はなぜそんな仕打ちを経験しておきながらこんな笑顔ができるのか。だから、ぽつりと呟く。
「君は強いな…。」
「まあ、フレアだからな。」
「それ、回答になってないぞ。」
そうやって笑い合う少女2人。そこだけ切り取れば、何ら変哲のない年相応の少女だ。先ほどの殺伐とした空気などどこかへ流れてしまった。そんななか、また2人は歩みを進める。
「そういえば、ケイスケ以外にも組んだことはあるのか?」
「まあそりゃあな。それこそ最初のうちは無理矢理組まされた。4~5人くらいのパーティを転々とな。」
「やっぱり、合わなかったの?」
「まあな。アタッカー募集のところに行ってはいたんだが…私に合わせれる奴がいなかった。」
「そりゃあそうでしょう。君に勝てそうな人間なんて早々思い付かないよ。」
「結局、ギルドも見かねて私のソロの活動を許すようになって気がつけば名前が広まってたな。」
「すごいわね…ほんとに。」
「だからこそ、ケイスケはすげぇ。今まで恩恵を感じたことなかった身体強化を初めて実感した。それにサシで私とやりあえる数少ない人間だ。」
「え…あの人そんなに強いの?」
「うちのギルド、シウっていうBランクの冒険者がいるんだけどそいつ相手に完封勝ち。魔術の打ち合いでだ。相性不利があった訳じゃない。」
「い、今のケイスケの階級は!?」
「Eランク。ギルドも慎重なもんでね。ケイスケは実践不足だから当初はそれで様子見しようってなってたんだが、今は状況が状況だ。一番実力のある私たちは単独行動を許可されたってわけ。」
「まあ…妥当ね。」
「若干不安だけどな。」
「え?」
「いや、なんでもない。ほら、見えてきたぞ?」
そう言うとフレアは前方を指差す。その方向には小さな村が見えていた。
「ともかくは…4人組の冒険者。」
「ああ、それと…赤髪の女剣士…。」
この作品を読んでいただきありがとうございます!
よろしければ、評価、ブックマーク登録していただけると執筆の励みになります!また次回もよろしくお願いします!!




