集る蝿
そうして、次の日。ケイスケとフレア、そしてネリウムは壁の山を後にした。ケイスケの身体強化を付与されたフレアの馬力は凄まじく、彼女はネリウムを抱えた状態で壁の山を跳んで降りた。おかげでネリウムは失神状態。後に「生きてきた中で何よりの恐怖だった」と溢している。
全快のフレアにケイスケの身体強化が乗った結果、3人は日も高く上らないうちにレイスの町へとたどり着いた。
「ふぃー…ついたぞ、ネリウム。」
「まだ失神してますよ。だいたい、出発して10分も経ってないじゃないですか。」
「まあ、これが全力の私の力よ。」
ニッと笑うフレア。改めてその凄まじさを実感する。
そうして、3人はそのままギルドへと向かったのであった。
─────ギルドにて。2人はベオルに今回の竜討伐の件、そして例のキメラの件を話していた。
「─────なるほど…少々面倒事が増えたな。まあいい…竜の使徒はこちらでもマークしておく。それでだ…またなにか拾ってきたな。」
「ああ、ちょっと気絶してるだけだ。もう少ししたら起きると思う。」
「その姿…噂のネリウム・ストロファントスだろう?大丈夫なんだろうな。」
「そこまで警戒することはないですよ。ネリウムさんはいい人です。それに、彼女も今回のキメラの件に関わってますから。」
「まあ…お前達がそう言うのなら信頼しよう。と、そうだった。こっちにも動きがあったんだ。ケイスケ、あいつが目を覚ました。ついて来てくれるか。」
「はい!すぐ行きます!」
そうして、ケイスケはベオルにつれられギルドの2階へと急いだ。
「赤髪の女剣士ねぇ…。」
取り残されたフレアはそれだけ溢した。
ベオルに案内された部屋の扉を開けると、その少女は起き上がり窓の外を眺めていた。どうやら、あの時は興奮状態であったらしい。現在は落ち着いてこちらを振り返った。
「あなたは…。」
彼女はそう口にする。どうやら、彼らより声帯への負担は少なかったらしく普通にしゃべることができている。
「僕のこと、覚えてますか?」
「…あの時…あの赤髪と一緒に居た…。」
「そうです。」
「そ、その…あの時は本当にごめんなさい...私…。」
「いえ、大丈夫です…事情は色々と聞きました。何があったのか、何をされていたのか…。」
「そうですか…。」
「ともかく、誤解が晴れてよかったです。あなたの仲間のところまで送りましょう。」
「あ、あの人達と会ったんですか?」
「はい。その時に、目が覚めたなら送り届けると約束しましたので。」
「そうでしたか…。」
そこまで話すと、ベオルが会話に入ってくる。
「まあ、そこまでは個人の約束だが…ここからはギルドとしてのお願いだ。現状、君たちを連れ去った仮面の4人組パーティというのは見つかっていない。今回の件…ギルドとしても早急に対処したい案件だ。そこで、できる限りの情報を提供して欲しい。」
「ええ、わかりました。」
そうして、その少女はことの詳細を語り始めた。
発端は、現在より半年ほど前まで遡る。彼女はここ、レイスより国境に位置する村の出身であり、4人組による襲撃時にもその村に居たと言う。前触れはなにもなかった。人攫いなどの噂も立っては居なかった。だが、ある夜、突然彼女の家は襲撃された。他の物や両親には目もくれず真っ先に彼女を誘拐したと言う。事は5分程度で終わった。その間、家族で気がついたものも居なかったと。
つれてこられた場所には、既に20人ほどが居た。そこで彼女は人体実験を受けた。そこを1人で管理していたのが、ケイスケの出会ったフードを被った仮面の男だった。
彼が行っていたのは、亜人を強制的に作り出す研究だった。なぜそんなことをしていたのかまではわからない。だが、それでも彼が亜人に対して異常な執着を抱いていたのは確かだった。
「─────それで…その男の名前はわかるのか?」
ベオルがそう聞いた。
「1度だけ、彼の部下らしき人が来たことはありましたね。確かそのときに読んだ名前が………ムスカス…。」
「…ムスカス…。」
静かに、ケイスケはその名を反芻した。
─────針葉樹林のダンジョン。北部。その場所には竜の死骸が転がっていた。数日前フレアが屠った竜であった。腐敗が進み、少し蝿が集っている。それでもそいつは、さも当然かのようにそこに居た。
「うへぇ…物の見事に正面から真っ二つって…意味わかんないねぇ…。」
フードを被り、仮面をつけたその男。ムスカスはそこに居た。
「これ身体強化もなくただただ剣を振っただけでしょ?全く…この国化物多すぎやしないかい?」
一通りその死骸を見たあと「ま、鱗が取れればそれでいいけど」と、呟き素材の回収へと移るムスカス。
「いやぁ…竜の使途の連中も案外使えるねぇ。まあ、頭の冴えるのも居るみたいだけど…しばらく素材に困ることはないだろう。」
一通り、素材を回収すると彼はまた黒い霧に身を包みその姿を消したのだった。
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