星の綺麗な夜
「竜って、案外旨いんだな。」
「あ、あんた食べたこと無いのに食べようとか言ってたの!?ま、まあ美味しいのは確かだけど。」
「フレアさんが見切り発車なのはいつものことですよ…。」
「大変ね…。」
「あぁあ、にしてもギルドになんて報告すっかな…倒されてました!つってもなぁ…。」
「まあ、ここ最近色々ありましたからね。」
「そうだな…そう言えば、あいつの意識って戻ったのか?」
「いえ、まだらしいです。」
「ん?あいつって言うのは?」
「ああ、何日か前に薬草を取りに行ったときに襲ってきた奴だ。変な奴でさ、体の所々が…何て言うのかな…爬虫類っぽいっだよな。」
「なんだと!?」
急に取り乱すネリウム。
「な、なんだよ。なんか知ってるのか?」
「い、いや、すまない。だが…そうか、なるほどな。」
「ネリウムさん、なにか知ってるんですか?」
「………少し前の話だ。賊の討伐依頼を受けてな。指示された場所は普通の洞窟だったんだが…中には人間が捕らわれていた。それが彼ら…さっきフレアが言っていたような特徴を持った人間だった…。」
「え、他にもあんなのが!?」
「…あの人達を逃がしたのはネリウムさんだったんですね。」
「ケイスケもあってんのかよ!」
「彼らと接触したのか?」
「はい。なんとか意志疎通は取れるようでしたので…襲ってきた子は現在ギルドで隔離していますが、目覚めしだい彼らのもとへ送る予定です。」
「そうか…なら、よかった。」
『ネリウムさんが彼らのことを知っているのなら…この話をしておかないと。』
「それと、この際なのでもう1つ…彼らを拐っただろう主犯格と接触しました…。」
「な、それは本当か!?」
「はい、フレアさん達と合流する少し前くらいです。その時は戦闘になって結局取り逃してしまいましたが…。」
「どんな特徴だった!?」
「顔は仮面を被っていてわかりませんでした…。」
「仮面…か…だが、なにもないよりも有益な情報だ。感謝する。」
「なあ、ネリウムはなんでそいつを追ってるんだ?」
「…単純に許せないからよ。」
その目は復讐に満ちていた。全てのものを殺すほどの勢い。この世界での亜人族の扱いは酷いものである。人として扱われることはまず無い。だからこその怒り。今まで虐げられてきたからこその復讐心であった。
「ま、まあ…こっちのギルドでも捜索は入るだろうな。」
「そうか…。」
「もしかしたら、しばらくは協力関係が続くかもしれませんね。」
「君らが一緒なら心強いさ。」
その日はその場でキャンプをすることとなった。順番に見張りすることとなり、そうして夜は更けていく。
深夜帯。ケイスケが見張りに入った。その中でふと思い出す師匠の言葉。
「死ぬほどの努力…か…。」
呟き、その場に腰を下ろす。大地に手を当て魔力を流す。
「努力…今、僕にできる努力…できてはいるつもりだけど…できてないのかもしれない。」
考えながらも、魔力を流していく。次第に体が温まる。
「魔法の特訓でもしようかな。」
目を瞑り、音に、風に想いを馳せる。遠くのことまでよくわかる。何が起こっているのか。以前に比べても随分と精度が増している。だが、師匠のようには行かない。彼女はあの空間で起こることをリアルタイムで全て把握していた。そして何より、星を落とした。
目を開けて、夜空を眺める。いつかの彼女の真似事で、ケイスケも空を指でなぞってみる。下に堕ちるように。だけど、星が堕ちることはない。
「まあ、できるわけ無いよね。」
そんな風に呟き、再びケイスケは周囲を確認する。すると、背後に気配を感じ取った。
「ん?ネリウムさん?」
「な、なんでわかったんだ?」
「そりゃ見張りしてるんですから。」
「いやいや、こっち見てないだろ。」
「あ、そうでしたね。て、言うかどうしたんです?交代の時間って訳じゃないですよね?」
「あぁ、少し寝付けなくてな。」
「さっきまで見張りでしたからね。でも、しっかり休まないと。」
「そうは思っているんだが…やはり気になってな。」
「仮面の男…ですね。」
「あぁ…。」
「あいつも…竜の使徒となにか関係があるんでしょうか…?」
「さあ…わからないがどっちも要注意ってことは確かだな。」
「そうですね…。」
少しの沈黙が流れた。
「…ケイスケ、これからこの世界はどうなると思う?」
「これから…。」
「亜人族…果ては魔族が…日の下を自由に歩ける日は来ると思うか?」
「…どうなんでしょうか…僕にはなにもわかりません。この世界の一般的な倫理、道徳、常識…でも僕からしてみれば、少なくともネリウムさんはいい人ですよ。」
「…そうか…ありがとう。」
ネリウムは顔を伏せ、それだけ呟いた。
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