喧嘩するほど
ケイスケがフレアに合流したのはその日のうちの話だった。
「ふ、フレア…さん?その、隣の人は…?」
ケイスケからすれば状況は最悪であった。フレアからしてみてもそうだ。一番会いたくない奴と会ってしまったのだから。
「ネリウム・ストロファントスだ。訳あって竜退治を共にすることになった。君がケイスケだね。話は聞いている。」
動揺はした。が、フレアが生きていて、尚且つそこまで敵対しているようにも見えないと言うことはそういうことなのだろう。ひとまず、胸を撫で下ろす。
「と、ともかく何事も無くてよかったです。」
「あるよ…。」
冷たく返した。そして言葉を続けるフレア。
「なんで来たんだ。」
「そりゃ、なんとなく心配だったので…。」
「私はフレアだぞ。お前なんかいなくたってやっていける。」
「そうは言っても…フレアさん、なにも考えずに突っ切る節あるじゃないですか。」
「それでどうにかなるんだ。別にいいだろ!」
「どうにかなってからじゃ遅いでしょ。」
「それでもお前に心配される筋合いはないね!今回はネリウムだっているし!」
「いや、2人とも近接戦闘なのはバランス悪いだろ。」
ネリウムから妥当な意見が飛ぶ。
「ともかく!心配性は黙って帰ってな。私に身体強化の1つもかけれやしない貧弱メンタルの魔術師が!!」
「お、おいそこまで言うこと─────。」
「人が心配してるんですからとやかく言わないでください!」
「だから要らねぇ心配だっつってんだろ!!黙って身体強化付与してみろよ!!」
「ああそうですか、やってやりますよ!!どうなっても知りませんからね!?」
「オラ!バッチ来い!!」
何を見させられているんだと言う瞳のネリウムをそっちのけに、ケイスケはフレアへと身体強化を付与する。フレアの四肢には見慣れた魔法陣が浮かび、そしてその身に宿る。
「…今の身体強化魔術か?」
ネリウムの全うな疑問。それに一言、ケイスケは返す。
「いえ、身体強化魔法です。」
「はい!?」
「んだよ。やっぱりなんも変わんねぇな。普段のお前の身体強化だ。」
「痛みとか無いですか!?」
「ねぇよ。身構えて損したくらいだ。」
そんな2人の会話を尻目にネリウムは引いていた。
『身体強化魔法ってそれ…そんな雑に会得できるものでもないでしょ?てか、そんな魔法に軽々耐えてるこのフレアって何者?え、私の刃とかこれ通ってた?』
割りとちゃんとドン引いていた。
「ほら、これでどうってこと無いって証明されたろ?」
「まあ、フレアさんが大丈夫ならいいんです。」
「もうちょい私のこと、信頼してくれたっていいんだからな。」
「…わかりましたよ。」
「さて、これならこの日のうちにたどり着けそうだな。行くか。」
「わかりました…。」
ケイスケはしぶしぶ了承する。
「え、行くって竜退治にか?」
「そうだが?」
「いやいや、まだ進むにしたってここからあの山までどのくらいあると思ってるんだ?あと丸1日はかかるぞ?」
「ああ普通そうなるよな…ケイスケ、ネリウムにも身体強化を─────。」
「いや、それは遠慮する。それを耐えれるのはどういうわけかフレアだけだ。私にはとてもじゃないが耐えきれない。」
ネリウム自身、あの魔法陣を見て即座に気がついた。人に耐えれる代物ではないことは明白だ。
「そうか…なら、抱えて飛べるか?」
「できなくはないでしょうけど…フレアさんがおぶった方が速いんじゃないです?」
「それもそうか…ならネリウム、ちょっと失礼するぞ?」
「え?ええ!?」
「なんだ、軽いな。んじゃあ行くぞ。」
次の瞬間、フレアは常人ではあり得ないほどのスタートダッシュを切った。踏み込んだ大地はひび割れ、瞬きの間にはその姿は消えていた。
「…速いな…フレアさん。」
そうして、ケイスケもその後を追うように飛んで行くのだった。
─────数分後。
「あ、あり得ないにも程があるでしょ…。」
「いやぁいい運動になった。」
「フレアさんちょっと速すぎません?」
3人は早くも目的の場所へとたどり着いていた。
「壁の山の頂上…まさかあの崖を走るとは思ってなかった…。」
「まあ、ギリ道だろ。」
「壁だろ…あんなの。」
「まあ、いいんだよ。細かいことは。それよりも…見つけたか?ケイスケ?」
「いいや、何処にもそれっぽい影は見当たりません。」
「うーん、まあ、きな臭い情報ではあったからな。壁の山なんて誰が来るんだって話だし。」
「そうなんですか?」
その問いにフレアが答える。
「ああ。そもそもここは国境を隔てるようにそびえてる山だ。山頂付近に用事のある奴なんて滅多にいない。まあ、あわよくばその依頼の出所までわかればよかったんだが…こりゃ完全に骨折り損か?」
続けてネリウムも賛同した。
「確かに、話に聞いたときは違和感があったな。わざわざ壁の山の頂上付近に…それも竜の影だけだ。そんなの依頼として提出するものなのか…なにか一枚噛んでいるようにも思うな。」
「なんか…僕らって面倒ごとに巻き込まれてません?」
「まあ、冒険者やってたらそんなもんだ。さて、どうする?この通りなにもいないが…。」
「もう少し探索を続けてみようなにか手がかりがあるかもしれない。」
「手がかりねぇ…竜が本当にいるのであれば、そんなの気配でわかるっての。」
そんなことをぼやきながら3人は周囲の探索をする。壁の山の頂上は気流の影響で常に曇っており、現在の視界は明瞭とは言い難い。そんな中を探索するが、やはりそれらしきものは何もない。
「…ふ、フレアさん!ネリウムさん!!」
なにかを見つけたのはケイスケだった。
「あまり大きな声を出すのは感心しないな。もし竜がいたら─────これは…。」
「どうした…よ………。」
3人はその光景を見て絶句した。目線の先にあったのは竜であった。
竜の無惨な死体であった。
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