人でなし
「やはり、なにか知っているようで。」
「そっちこそ…何を知っている?」
「いえとくには。ただ飼っていた物を逃がされた身ですので…。」
「飼っていたもの…だと?」
「ええ、丹誠込めて作ったと言うのに。」
「作った…あのキメラを作ったって言うのか?」
「ああ、やはり知っていますか。そうですよ。半分人間、半分爬虫類…主にはカメレオンですが…あれを作ったのは私です。」
「下道…。」
「人間には言われたくない言葉ですね。」
「ならお前は…人間でないとでも?」
「まあ、もう人間じゃないでしょうな。」
軽く言ってのけた。
「…なんで僕に話しかけた?」
「まあ、率直に聞こうと思ってね。あれらを逃がしたのは君か?」
「いや、僕は彼らについてなにも知らない。」
「そうか…そうか…そう言うのならそうなのだろうね。ならいいんだ。」
そう言って、何処かに消えようとするそれに向かいケイスケは話しかける。
「待てよ。そっちばかり質問するのはアンフェアだろ。」
「まあ、それもそうだね。何が知りたい?」
「あの人たちは…お前が連れ去ったのか?」
「私が連れ去った訳じゃない。ただ腕のたつ者に依頼しただけだ。おかげでいい研究ができた…もっとも逃げられてしまったがね。」
「あの人たちをもとに戻す方法は?」
「さあね。興味が回らなかったからそこまでは知らない。」
「…人を…なんだと思ってる?」
「さあ?実験道具?みたいな?あ、でも君には興味ありますよ。飛行魔法…すごくそそられるじゃないですか。」
「ああ…そうかい。」
「私も1つくらいは魔法を覚えたかったものです。そしたらもっと、もっと彼に貢献できると言うのに。」
「魔法なんて誰でもできるだろ。」
「なに言っちゃってるんです?冗談キツいですよ。」
ただ静かに、ケイスケは前方に腕をつき出す。
「本の一言でいいんです。ただ、堕ちろ─────。」
その一撃は、かつてケイスケがギルド裏の訓練場に落とそうとしたあの光の槍であった。まっすぐに、そのローブの男を捉える。倫理など問う気は更々無かった。人でなしに道徳を説くことこそ、一番の無駄である。
「あ、危ないな!君!!正気か!?」
「正気を疑うのはテメェの性根だ。相容れないなら肉体言語で語れと…僕は師匠からそう教わっている。」
「君は私のことを野蛮人かなにかだと思っているのか?」
「いいや、それは違う。人だとは思ってない。」
「それはそれで酷いな。まあ、ともかくわかったよ。気に触れたのなら私が引こう。こんなところで油を売っている場合じゃないからね。」
そう言うと、そのローブの男は黒い霧に包まれ消えてしまった。
「待て!まだ話は─────消えたか…。」
落胆する。人攫いの足取りをつかめそうではあったが、ケイスケの気配探知を持ってしてもその姿は何処にもなかった。
「だけど…掴んだぞ…。」
静かに呟いた。
「と、こんなことしてる場合じゃないんだった…出会ってないといいんだけどな…。」
そうして、ケイスケはフレアのもとを目指すのだった。
─────前方、2キロ先。
「ほう、ソロでの活動が主だとは聞いていたが…。」
「まあ、場合によっては2人もありかなって思っただけだ。」
「それで、結局はそのメンバーとも喧嘩中と。」
「そりゃ、あいつがナヨナヨしたことばっかり言ってるのが悪いんだよ!」
「でも、聞いた感じそいつ、随分とあんたのことを気にかけてるように思うが?」
「要らない気遣いだね。現に私はあいつの身体強化ってのを受けたけどなんもダメージなんて無かった。あいつは心配性が過ぎるんだよ。」
「私からしてみれば、あんたは思いきりがよすぎるんだよ。」
「大事だろ。思いきりは。」
「思いきりも大事だが、少し立ち止まることもまた重要だ。ただ動くだけなら馬鹿になっちまうし、考え込むと動けなくなる。そういう点では、あんたら2人はお似合いなのかもな。」
「冗談ならよしてくれ。今は顔もみたくないんだ。」
「ああ、すまなかったな。だけど、ソロで竜退治っていうのもなかなかどうかと思うぞ?」
「それ、あんたが言うかよ。」
「まあ、言われてみればそうだな。」
「…あんた、仲間が欲しいとかは思わなかったのか?」
「ずっと独りだったからな。別に今更、なにも思わないさ。」
「そうか…。」
「別に気にしてない。私が呪い子ってこともここら辺じゃ周知の事実だ。気にするな。」
「別に気にはしてないが…。」
「何て言うかあれだな。お前も意外と情に厚いのな。」
「意外って…いや、そうかもな。」
「まあ、その仲間の意図って言うのも汲み取ってやりな。」
「仲間の意図…。」
「あんたは私と違って独りじゃないんだからさ。」
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