プロローグ
生き物の一生は一度だけだ。
一度のみだからこそ、一瞬一瞬を楽しみ生きる。
人だってそうだ。人生の中で失敗しても全てやり直す事はできない。
幾多の人々が「二度目の人生があるなら…」と悔やむ事は多いだろう。
人々は二度目の人生なら今よりもいい人生になると考えている、かもしれない。
ただ、それは一度目でも努力できた人の場合、または環境に恵まれただけと気付いたのは、実際に体験して十数年経過した頃だった。
ーーーなんて、深い話のように語ったが、特に何もない。ほら、地球でも転生前の記憶があるとかそう言う話があったでしょ?そういう人が世間に紛れてるみたいな感じ。
「ーーー天瀬、アイちゃん見たか?」
「ニュースになってたやつ?」
「そうそう!遂に全米でも英語版が一位を獲ったらしい!」
「凄いなぁ、数年で海外進出するなんて」
「流石我らのアイちゃん、来年は世界ツアーが決定してるらしい!」
「へぇ〜」
「護衛とかの依頼ないかな〜」
「第二級からじゃない?」
「………ワンチャン!」
「来年まで頑張れ」
「くそ!!!」
「次の講義行くぞ〜」
「……そうだな」
東京の狩人専門学科がある大学に在籍している。中々有名な大学で、著名な狩人やその卵も多くいる。必要とされる学力や実績も高めに必要だったが、なんとか突破して入学した。
学歴厨にわかりやすく説明すると、前世の東大と同レベル。どうだ、凄かろう(小並感)。
これも二度目の人生の賜物、と言われたら言い淀む。前世の偏差値低めの大学に通ってた頃に比較すると差はある。が、今生は驚く程環境がよかった事が要因にある。
科学的にも証明されてるけど、人が環境に受ける影響は高い。小学生からスタートダッシュを決めてたら、本当の頭いい人たちが周りに居て引きずられる形で学力が伸びた。
スタートダッシュはどうしたかって?中学生終わりに抜かされたわ(涙)。背景はどうであれやっぱり転生前の記憶があった事や、周りに恵まれたお陰だとはっきり言える。
人生は運次第の言葉の意味をこれほど理解できたことはない。
そうそう、前世の動画で見た頭の良い連中の顔は年々良くなると聞いたが、本当にその通りでした。毎日目の保養です。
「今週は東京湾にあるダンジョン行かない?」
「ん〜、よし、大丈夫そう。特に忘れてる依頼もないし」
「よし!ついでにナンパでもしようぜ!」
「顔を見てから言え」
「オシャレは気持ちさ」
「そう言ってない」
「一人でもやってやる」
こんな馬鹿な友人が同じ学科の最上位成績者とは納得いかない。世の中理不尽だ。
「ーーーえ〜、メリット教が最初に始めたのが狩人と言われています。私の研究している狩人の歴史では、職業という記録に残る正式な職業となったのがこの時とされ、発掘された武具からもっと昔から似た役割の人々は存在したとされています。ここはテストでは出ないですが狩人組合の本部が二箇所、スイスとサウジアラビアに存在する理由として、え〜宗教戦争で勝利ときにナーフス教が総本山と別の場所を宣言したのが原因とされています。え〜、この問題は今も残っており、信者の人と話す時には注意しましょう」
「やっぱ俺は仏教派かな」
「緩いから?」
え、本当に転生の概念があったから。言わないけど。
「それしかないだろ。今は神を心の拠り所にする程絶望的じゃないしな」
「英雄アルテミスのお陰だよな」
「本当、実際に存在したか確かではないけどね」
「時間になりましたのでこれで講義は終了します」
「今日カラオケ行かない?」
「また?いいよ」
「よし!アイちゃんメドレー聴かせてやるよ!」
平日の帰りにカラオケに誘われるのは初めてなので、ワクワクしながら行った。想像よりも友人の歌が上手くて笑った。
その日の帰り道、実家住みの友人と駅まで会話した後自宅に帰る途中、突発ダンジョンに巻き込まれた。