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寮脱出

 一人部屋の寮内で考え込む。どうやってここを抜け出すのだろうか。電子生徒手帳を見る限り、夜の学校に入るのは禁止だし、そもそも22時以降に寮外に出ることも禁止だ。

「まあ、でも……。行くしかないよな」

僕にとっては小梅以外の情報源がない。これは恐らくだが、記憶喪失に関して学校は何かを隠している。僕に関して前の記憶を保管するような活動がされてないのも不思議だ。小梅が味方かどうか別として、会いに行く。これは確定だ。

さて、改めて考えるか。抜け出す方法がおそらくあるには違いない。何故ならこの校則は小梅と師匠?も同じだからな。抜け出すネックになるのは二つ、一つしかない玄関には監視カメラがあること、そして電子生徒手帳で部屋が22時にはロックされること。22時以前に外に出ることを考えたが、それは悪手だろう。監視カメラで顔を確認されて、戻って来てないことがバレる。だから、そう、22時以降に部屋から出るのは確定だ。

「……」

部屋にある時計を確認する。時刻はもう少しで22時。部屋の扉前に立つ。秒針の位置から4秒くらいか。4、3、2、1のタイミングで、扉を開く。ガガッと、少し削れた音がしたが、上手くいったようだ。方法としては単純で、ロックがかかる前に扉を開けておくというもの。ただ、ロックするためのバーが出きっている状態であり、かつバーが入る穴に何かを詰めておく必要があった。そうしないと恐らくシステム側で感知される。

「後は0時までに玄関から出る方法を考えないと……」

ドアに関してはシステムがしっかりしてないのは、玄関から出るのが困難過ぎることから予測していた。さて、どうしようか。出入口は一つだが、出口としては窓がある。しかし、ここは6階、飛び降りるには勇気がいる。まあしかし、2~5階だったら柵がついていて出れなかったから、ある意味運がいい。

「高さだけ、確認するか」

そう思い窓を開けて下を見る。

「……!」

声を出しそうになったが、口元に人差し指を置くジェスチャーをしているのが暗闇でもなんとなくわかった。小梅だ、間違いなく小梅だろう。しかし、どうやって抜け出して来たんだ?向かい側にある女子寮は同じ造りに見えたのに……。そう思っていると、彼女は何かを取り出して、こちらへと投げてきた。

パシッ。

響くほどではないが、いい音が鳴った。往年のバッテリーのようにその何かは僕の右手にすっぽりとハマっている。室内の方を向いて、何かの正体を確認した。野球ボールを紙で上から覆ったみたいだな……。紙を取り外し、書いてある内容を見る。

「耳元に手をやれ 『code 2085 pass escape』」

「はぁ」

ため息が出た。どう考えても情報量を少なく書いてある。知能を計りたいのか知らないがこういうのは分かりやすくあるべきだろ。文句を考えながらも耳元へ手をやる。

「コード2085」

声に出してそう言う。

「セキュリティロックがかかっています。パスワードを言ってください」

頭に機械音声が流れる。

「エスケープ」

「……認証確認。β版のテストプログラムを起動します」

「……」

起動したのか?何も変わっていないように感じるが……。

「おい、聞こえるか」

「うわっ!」

頭に突然小梅の声が聞こえた。

「な、何だよこれ」

「このプログラムを起動している間は監視カメラに映らない。安心して外に出ろ。戻ってきたらプログラム終了をしろ」

「え?」

「質問は後……。分かるな?」

「……」


 寮外に出る。何も起こらない。どうなっているんだろうか。

「……出れたみたいだな」

小梅が冷たい声でそう言う。

「深夜一時じゃなかったのかよ」

「出る方法を教えていなかったからな。今日だけだよ」

「わざとだろ?」

「いや、忘れていた。んんっ」

咳払いをすると

「本当、ごめんね?」

作り声でそう言った。手が危うく出そうになったが、どうにかこらえる。

「……学校行くんだろ?」

「はい。行きましょうか」

「辞めろ、それ」

「……君の真似なんだけど」

「え?」

「いや、なんでもない。行こうか」

「おう……」

僕の真似って言った気が……。でも、こんなことした覚えないし。

やはり、前の記憶と小梅には何か関連性があるのだろうか。そんなことを考えながら僕らは学校へと向かった。

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