生徒会襲来
廊下に出る。
「よお、裏切り者」
出た先にいたのは知らない三人組だった。話しかけてきたのはツンツンした髪型をしたイケメン。
「何の用ですか?早谷さん」
「分かってるだろ?次の武活動相手に挨拶さ」
「随分と律儀になったんですね。生徒会は」
「お前らがいなくなったからな。それより、猫かぶりを辞めろよ。小梅」
二人は睨み合う。どうやら小梅の口ぶりからしてこいつらは生徒会っぽいな。そんなことを思っていると、
「花吉くん。久しぶりだね」
真面目そうな黒髪の女の子が話しかけてきた。
「えっと、」
「記憶喪失なんだったね。私は、琴原 富海。生徒会長だよ」
「はぁ。ど、どうも」
「この人があの花吉なの?なんか、イメージと違うかも」
会話に入ってきたのは金髪のギャル。この人も生徒会なのか?
「わざわざ挨拶なんてしなくてもいいのに。私達の仲じゃないですか」
「一応ね。元生徒会と戦うわけだし。それに、花吉くんは記憶喪失なんだから」
「あの、花吉って僕のことですか?」
「ええ。名前に入ってるでしょう?私はそう呼んでいたんですよ」
「は、はあ」
滝ケ花吉備斗の真ん中を取ったのか。悪くないネーミングだが、呼び慣れた感じはしないな。
「あ、私は二人とは初めましてなんで。土佐綱 裕子です~。生徒会書記してます!」
「一年生だよね?可愛いー」
「えっ!本当ですか!嬉しいです!」
小梅の作ったようなキャラがどうにも可笑しくて笑いそうになったが、それに気づいたのだろう。すかさず肘打ちをされた。
「では、私達はこれで」
「待って」
「何ですか?会長さん」
「小梅、次の武活動、私達は負けてもいいと思ってる。だから、その次にある合同武活動で私達に協力してくれない?」
「……そんなことしなくても、勝てるよ。今の生徒会なら」
小梅は作り声ではなく、冷たい声でそう言う。
「行きましょう。吉備斗くん」
「ああ」
そうして僕らはその三人から離れた。
「怖い人ですね。会長が言ってた通り」
「ええ。でも、味方ならとても心強いんですよ。なんせ、通り名が孔明ですから」
「……あんな奴に軍師の名前は合わないと俺は思いますけどね」
一階の西側、食堂内にそれは会った。購買武、もちろん食べ物が売られているわけではない。怖そうな店主に話しかける。
「えっと、武器を買いたいんですけど」
「あっ。おまえ!」
「えっ!?」
いヤクザのような顔がこちらへと近づいてきた。僕をまじまじと見ると
「戻ってきたんだな。おかえり。劉備」
「りゅ、りゅうび?」
「気にしないでください。彼はそう言う言葉遊びは好きなんですよ」
「いや、僕の名前にリュウは入ってないけど」
「滝ケ花は他の書き方で、龍ヶ花とも書きますから」
「あ、ああ。そういう」
「それで?武器は何を買うんだ?」
「な、ナイフです」
「おう。ほら、500ptだ」
「えっと」
「そこにある機械に電子生徒手帳をかざしてください。それで支払いが終わります」
「あ、うん」
電子生徒手帳を機械にかざす。「へいわ~」という何とも奇妙な音が鳴った。これで支払いは終わったのか?あんまり実感がない中、ナイフをおっさんから受け取る。
「壊れたらまた来いよ」
「は、はい」
図書室前、生徒会の三人はもういなくなっていた。安心して図書室に入る。
戻るとすぐに小梅は椅子に深く腰掛けた。
「なあ、気になったことがいくつかあるから聞いていいか?」
「何だ?」
「復学試験の時、お前は銃とナイフを持っていたよな?あれは特殊能力か?」
「いや、あれは復学試験のみで許されていた」
「そうか。じゃあ、次。僕は元生徒会なのか?」
「……ああ。私と君は生徒会だったよ」
「なら最後。どうして生徒会を小梅は辞めたんだ?」
「黙秘する」
「……じゃあ、質問を別のに変える。次の武活動までの期限は?」
「1週間」
「そうか……。え?」
流れ的に余裕ぶろうと思ったが無理だった。
「い、一週間しかないのかよ!?せ、戦闘出来る気がしないんだけど!」
「大丈夫だ。落ち着け」
「いや、落ち着けって……。戦闘不能になったらポイント失うんだろ?それって何ポイントなんだよ」
「今回の武活動なら……。900ポイントだろう」
「……。おい、どうするんだよ。僕は戦闘なんて覚えてないぞ。前の僕と同列に扱おうとしてるなら無理だからな!」
「大丈夫と言っただろう?君には師匠が付くんだから」
「師匠?誰だよ」
「深夜1時、寮を抜け出してここに来い。多少遠いが、走れば20分で着く」
「おい、質問の回答になってないだろ、それ」
「来れば正体が分かるんだ。回答にはなっている」
小梅はそう言うと立ち上がった。
「どこ行くんだよ」
「……。
今日の武活動準備は終わりです。帰りましょうか、吉備斗くん」
「……」
このモードになると会話になりそうにない。仕方ないので僕は寮へと帰ることにした。