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武活動のルール

 廊下に立たされてその時を待っていた。未知子先生がこちらへと顔を覗かせれば、僕は全く覚えていないクラスメイトに挨拶をしなければならない。馴染めた未来が想像出来ないな。彼らにとっては2ヶ月程会っていない友達が帰還したように見えるだろうが、僕からすれば初めましてなのだから。

「滝ケ花くん、出番だよ」

来てしまったか。

「はい」

緊張しながら教室に入る。周りは静かに僕を見つめていた。

「滝ケ花 吉備斗です。記憶がないので皆さんのことは覚えていないのですが、よろしくお願いします」

「……」

空気が苦しい。これで終わりなんだが……。

パチパチ。気まずい雰囲気を壊すように拍手の音が鳴る。鳴らしていたのは小梅であった。

周りが合わせて拍手をし出す。

「ど、どうも」

そう言ってお辞儀をする。歓迎ムードがない。もしかしてだが、前の僕ってそんな友達がいなかった感じなのか?

「じゃあ、滝ケ花くん。小梅さんの隣に座って」

「……はい」

横の席が空いているのは気になっていたがやはりこいつの隣か。窓際の奥、そこの一つ隣に座る。

「よろしくお願いしますね」

「あ、うん」

小梅の挨拶をなあなあで流す。この作り声の彼女にはどうにも違和感があった。記憶の奥底でのイメージに合っているということなのだろうか?いや、ただ戦闘中の彼女が僕にとって印象が大きいだけの可能性が高いもある。

「それじゃあ今日も授業頑張ってください。それと、あとちょっとで武活動も始まるからそっちの準備もするようにね」

未知子先生はそう言って教室を後にした。武活動……、よく分かってないから聞いた方がいいな、これは。


 授業が終わり、放課後になった。授業内容は普通だったな。そう思っていると頭に声が響く。

「放課後になりました。武活動準備プログラムを起動します」

プログラムが作動したからだろうか?気づけば周りは畳の空間になっていた。

「なっ!」

「どうしましたか?」

「うわ、お前っ」

「お前とは酷いですね。小梅と呼んでください」

「……、部室はどこなんだ?」

「あのこじんまりとした図書室ですよ。向かいましょう」

「分かった」


 4階の図書室、たどり着くと彼女は椅子に腰をかける。

「座らないのか?」

二人きりと確認したのだろう。彼女は冷たい声で僕にそう言った。

「昨日はここに椅子はなかったが……」

「復学試験だったからな。別の部屋に移動させられていたんだ」

「なるほど」

出入口が一つで済むほど小さい部屋。平和な状態で見るとどこか懐かしい気がする。そんなことを考えながら、彼女と机を挟み向かい合う席へと座った。

「他の部員はいないのか?」

「いないよ。今学期になってから立ち上げたから」

「え?」

「疑問は沢山あるだろう。今から説明する」

そう言うと彼女は僕に説明を始めた。


 要約をすると、この平和学園では武活同士の戦闘訓練、すなわち“武活動”が行われている。この武活動は月に一度行われて、そこで武活ごとの序列が決まるらしい。

「ここまでは分かった?」

「大丈夫」

「では、次に戦闘訓練においてのルールを説明する」

「ルール?」

「昨日の復学試験でHPに関しては確認したな?」

「ああ」

「一人のHPは通常10だ。そして0になれば戦闘不能という扱いになる。戦闘不能になったものは自身のポイントと武活動のポイントを奪われる」

「ポイント?」

「ここで使えるお金のようなものだと思ってくれ。電子生徒手帳は貰っただろう?そこから現在のポイントが見れるはずだ」

彼女に言われて、昨日復学試験が終わった後未知子先生から貰った電子生徒手帳を確認する。

「1000ポイントあるな。武活動ポイントは100ポイント」

「初期ポイントだな。武活動ポイントで支払いはするなよ」

「ああ、うん。えっと、このポイントが0になるとどうなるんだ?」

「普通課に入ることになるな」

「普通課?」

「ここの島で働くことになる人を育成する棟さ。普通課の連中はこの島から出ることが出来なくなる」

「え?」

「まあ、もしもの話は別にいいだろう。それより、そのポイントで武器を購入した方がいい」

小梅はそう言って昨日の銃、ハンドガンを取り出した。

「あ、それってポイントで買えるのか?」

サラッと凄いことを言った気がするが、話の腰を折らないように話題にあった疑問をぶつける。

「君は買えないよ。女性は銃の購入が出来るが、男性は出来ない」

「……あー、なんとなく予測が出来てきた」

僕はノートを取り出して書き出す。それを見て小梅は僕の意図を察したのだろう。ペンを取り出して僕のノートに付け足しを始めた。


・女性武器

銃 ダメージ1 500ptで購入可

・男女兼用武器

ナイフ ダメージ1 500ptで購入可 ※即死攻撃あり

刀 ダメージ2 1000ptで購入可

槍 ダメージ2 1000ptで購入可

・男性武器

斧 ダメージ3 800ptで購入可 ※攻撃速度が遅いので使っている生徒は少ない

・その他

特殊武器 ダメージ? 10000武活動ポイントでのみで購入可 

※武活動ポイントでオリジナル武器を作成出来る、固有能力がつくので注意


「特殊武器ってのは?」

「書いてある通りだ。その他にも一部の生徒は特殊能力を持っている」

「特殊能力?」

「ただの戦闘にはならないということだ。例えば、相手に命令通り動かしたり、HP1で復活したり……。そういうのさ」

「思ったより情報戦になりそうだな。えーと、武器は複数持ち込みできるのか?」

「それは無理だな。大抵が一つだ。まあ、特殊能力で持ち込める数を増やすことが出来る」

「その説明があるってことは複数持ち込むやつが敵にいるんだな?」

「そうだ。さて、大体の説明は終わったが……。君はどの武器を使うんだ?」

「選択肢はナイフか斧になるのか……。じゃあ、ナイフだろう」

「そうか。前の君とは真逆の選択だな」

「どういうことだ?」

「前の君はナイフ以外の武器を変わり代わり使っていたからな。唯一選んでなかった武器になる」

「……随分とポイントに余裕があったんだな、前の僕は」

「ああ、学年一位だったわけだからな」

「その学年一位ってのはどうやって決まるんだ?」

「学期ごとのサドンデス型の戦闘訓練で決まる。最後まで生き残ったやつが学年一位になるのさ。それで……」

「それで?」

「いや、なんでもない。さて……」

小梅は含みがあるような物言いをして、椅子から立ち上がる。そして、

「では武器を買いに行きましょうか。吉備斗くん」

そう作り声で言った。


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