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カーニバル  作者: キキカサラ
七月八日
9/21

秘められた過去1 深山隼人

 過激な性的発言、表現があります。

 苦手な方は、読まないことをお奨めします。



 ※この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。

「君、理事長の息子だよね?一度話してみたかったんだ」


 また来た。理事長の息子である俺に、媚びを売ろうとしている人間だ。


「俺は山本史也。友達になろうよ」


 ぐいぐい来るな、こいつ。面倒だ。


「人違いです」

「何?論文?損益計算書見てんの?」


 何だ、人の話を聞かないタイプか?一番嫌いなタイプだな。

 身を乗り出して、机の上に広げたものを見てくる。本当にデリカシーもパーソナルゾーンも無視してくる奴だな。


「へぇ~、この学校のやつじゃん、良く貸してくれたね。でもこれ…」

「え?」

「ここの数字、おかしくない?」


 史也のこの一言で、俺は親父の悪事に気付くことができた。俺だけでは、気付かなかっただろう。

 そして俺は、親父の抑圧から自由になることができた。史也には借りができたわけだ。

 自由になって初めにしたことは、友達作りだった。今まで、理事長の息子ということで、媚びを売ろうと近づいてくる人間はたくさんいたが、親父の言いつけで、関わることは許されていなかった。

 しかしやっと、このおいしい立場が活用できる機会が来たのだ。

 俺は寄ってくる人間を値踏みし、利用価値のある人間を取り込んでいった。悪いことをやるのが楽しくて、色々やった。

悪事をしていると、ふと思う。もしかしたら、親父も悪事が楽しくて、黒いことに手を染めたのだろうか?だとしたら、結局俺は親父に似ているんだろうな。


 女もたくさん寄ってきた。自分で言うのも何だが、容姿はいい。表向きの性格もいい。これでモテないわけがない。

 そのうち、取り巻きの一人が、女をとっかえひっかえで羨ましいと、俺に直接愚痴ってきた。「じゃあ、譲ろうか?」と、当時付きまとってきていた女を一人くれてやった。そいつは手を上げて喜んだ。


 次の日、俺は譲った女に非難された。意味が分からない。俺の所有物なんだから、人にあげるのだって自由じゃないのか?

 めんどくさくなった俺は、女を、より消耗品と考えるようになった。

 自らが優秀だから、アクセサリーとしての女は必要ない。じゃあ、何に使う?そう、性欲処理の道具だ。人間三大欲求である性欲を自由に解消できるのだ、健康的じゃないか。

 そして仲間とも、そのシステムを共有した。俺一人で複数人を相手したり、一人の女を複数人で犯したり、無理やりなんてのもざらだった。

 当たり前だが、問題は頻繁に起きた。その度に、親父に後処理をお願いした。

 しかし、人の口に戸は立てられぬとは、よく言ったもので、悪い噂がぽつりぽつりと出てきた。それに合わせて、被害者の関係者まで首を突っ込んできたことがあった。

 俺は、漏らした人間と、歯向かってきた関係者には制裁を加えた。親父も、自分のことをばらされるのが怖いのか、自らの威厳のためか、それらの人間を徹底的に叩き潰した。

 そもため、俺が悪事をして上手くいかないと、大学から、いつの間にか人が消えていった。


「最近、お前の悪い噂が流れてるだろ?」

「あぁ、親父が後処理を失敗してるみたいだな」

「それでさ、面白いこと思いついたんだけど」

「なんだ?」


 栄治が雑誌を取り出した。かなり古く、ボロボロで汚れている。


「何だよそのゴミは」

「ひでぇ!」


 栄治は結構ショックを受けたようで、肩を落とした。


「それで、そのゴミがどうしたんだ?」

「まだ言うかよ~。これは、俺の子供の頃の宝物なんだぜ」


 そう言って、雑誌をめくる。どうやら心霊系の雑誌のようだ。幽霊の噂とか、体験談が書かれている。子供向けの雑誌なのだろうか、平仮名とカタカナが多い。


「これ」


 栄治の指した記事を見る。


「旧校舎のミズホさん」

「そうそれ」

「これが何?」

「この怪談って、俺が昔住んでた村のやつなんだよ」

「へぇ」


 だから何だ。言いたいことが分からない。


「いなくなった奴ら、神隠しにしない?」

「え?お前何言ってんの?」

「この旧校舎のミズホさんって、ただの怪談じゃなくて、実際に何人も失踪してるんだ。十人くらいだったかな。当時は結構な騒ぎだったよ」

「もしかしてお前、その事件の時に村にいたのか?」

「そう。神隠しだ神隠しだって大騒ぎだったぜ」


 言いたいことが分かってきた。つまり、新たに怪談話を広めることによって、いなくなった生徒を神隠しのせいにしてしまおうという算段だ。面白いことを考えたものだ。


「幽霊が出そうな場所で、あの山にある廃病院なんてどうだ?」

「いいね。採用」


 名前はそうだな…。

 俺は、これから後始末をしてもらおうとしていた人物の学生証のコピーを見た。

 多田加奈子。これでいいや。


「廃病院のカナコさん、ってのはどうだ?」

「それっぽくていいじゃねぇか」


 早速、仲間たちに広めてもらうことにした。そして、失踪者が説得力になり、噂は広まっていった。

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