7月10日 黒影山廃病院 深山隼人 不測の事態収拾編
過激な性的発言、表現があります。
苦手な方は、読まないことをお奨めします。
※この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。
「状況を説明してくれ。何があった?」
どっと疲れた。声に力が入らず、ため息交じりに訊いた。
「奥の病室から音がしてよ。何かと思って、その病室に行ったんだ。まさか、大輝がいるとは思わなくてよ。分かってたら、近付かせなかったんだけどな」
栄治が、思い出しながらからか、たどたどしく答えた。
「それで?」
「病室を開けて、ライトを当てたら、ガッツリ、全裸の大輝と女が照らされちまったよ」
「はぁ…」
頭が痛い。最悪の状況だ。
「それで、どうして春花ちゃんは気絶してるんだ?」
「大輝の姿を見て、気が動転したんだろうな。病室の電気のスイッチを押したんだ」
「なるほど、それで病室の電気が点いたのか」
人間というのは、無駄と分かっていても、日常でやっている行動を意図せず取ってしまう。
信じられない光景を目の前にし、まるで自分の部屋の明かりを点ける様に、咄嗟に病室のスイッチを押してしまったのだろう。
「俺もパニックになってしまってよ、咄嗟に殴ったら、気絶しちまった」
「おいおい、手荒いな」
「すまない」
だが、気絶してくれたのは幸いだった。殴られた状態で、意識があったら、騒いでいたことは間違いないだろう。それは考えうる、最悪の事態だ。
「それで、大輝と話をしようとしたら、ちょうど電気が消えたんだ」
「なるほどな」
変に動く前に電気が消えたのなら、タイミングとしては良かったのだろう。
「大体想像はつくが、大輝は、何であんな状況だったんだ?」
矛先を大輝に変える。話題が振られることで、大輝の体がビクリと跳ねた。
おいおい、お咎めなしな訳がないだろう。
「いやぁ、あの後遊んだら、スッキリしちまって、そのまま寝ちまったよ」
「だろうな」
さっき予想した通りだった。悪い意味で読みやすい。
いや、読み切れていない。こいつの馬鹿さの度合いを見誤ったことは、俺の見積もりが甘い証拠だ。
肝試しの下見をする際、大輝と連絡が取れなかった時点で、今回のような事態になっていることを予想できていないことは、大輝の行動を読めていないことに繋がる。
しかも、言い訳も利かないような場面も見られてしまっている。
大輝をここで切っておかないと、今後も害を被りかねない。
「お前はもういらないな。足ばかり引っ張る」
「え?」
大輝が呆ける。まさか、ここまでのことをしておいて、今までと同じでいられると思ったのだろうか。おめでたい頭をしている。
「隼人、そりゃないぜ…」
大いに不服そうだ。
「いや、今回ばかりは、擁護できないぜ」
栄治が横から指摘する。
「しかし、大輝のことは後にする。これ以上余計なことはしてくれるなよ」
大輝は返事をせず、バツが悪そうに無言でいる。
「任せとけ」
代わりに栄治が返事をした。
今回、本当に幸いだったのは、春花ちゃんと、大輝が相手をしていた女の意識が共にないことだ。
これなら、変に騒がれることはない。このまま、事が済むまで意識を取り戻さないで貰えると、有り難い。
「この状況、そうだな…神隠しに遭ったことにしよう」
「面白いな」
栄治がニヤリとする。こいつは、本当にこの手の話が好きだな。
「だから、みんなが帰るまで、見つからないでいてくれよ。今ここで決めたことは、史也も知らないから、本当に誰にも見つからないでくれ」
「分かった」
「出てくるタイミングは、俺が教える」
「了解だ。いつでも動けるように準備しておく」
「頼んだぜ。俺はこれから結菜ちゃんの所に行って、帰る形で話を進める」
「オーケー。連絡待ってるぜ」
俺は頷くと、静かに扉を開け、部屋を出ようとしたが、不安が頭を過ぎり、足を止めて振り返った。
「そうだ、栄治」
「どうした?」
「春花ちゃんのスマホの電源切っとけよ。着信で隠れてるのバレたら、たまったもんじゃないからな」
「おっと、頭になかったぜ。サンキュー」
「また後でな」
今度こそ大丈夫だろう、抜けはないはずだ。
俺は改めて、結菜ちゃんが向かったであろう、先程の病室に向かった。
部屋を覗くと、結菜ちゃんが病室内を見て回っていた。
怪しいものは残してきていないはずだから、物色されたところで、何も出てこないはずだ。
「結菜ちゃん?」
「きゃあああ!」
俺の声で、結菜ちゃんが飛び上がって、そのまま尻餅をついた。驚かすつもりはなかったんだけどな。
「だ、大丈夫?」
俺は手を差し伸べて、結菜ちゃんを立ち上がらせた。
「隼人先輩、先に一人で行っちゃうんですもの」
「ごめん、中に入った二人が心配で、気持ちより先に体が動いてたよ」
我ながら、いい言い訳だ。
「春花は見つかりましたか?」
俺は、できる限りの落ち込んだ表情を作り、首を左右に振った。
「入れるところを全部見てみたけど、二人は見つからなかったよ」
「そんな…」
「結菜ちゃんは、僕よりも後に入ってきたんでしょ?」
「はい…」
「この小さな病院で、時間差で二人入ったのだから、誰かいたら遭遇しているはず。しかも僕の場合、全ての病室を見て回ったしね」
「春花どこに…」
落胆した結菜ちゃんは、力なくベッドに座り込んだ。
――カラン…。
金属音が室内に響く。その音は、俺にとって死刑宣告に近かった。
まさか、こんなところに抜けがあるとは、大輝の奴、証拠となるもの全部回収していかなかったな、ふざけやがって。
「何で手錠が…?」
結菜ちゃんが疑問を口にする。まずいな。
「隼人?」
病室の入り口からライトで照らされる。この声は、史也だな。何という良いタイミング。
話を進めて、手錠の件をうやむやにしよう。
史也の背後には、美香ちゃんと愛美ちゃんの姿もあった。
全員集合か、今なら栄治たちを逃がすことができるが、車の音でばれる。急いてはいけない。
「そうだ、スマホ!」
思い出したように、結菜ちゃんが叫んだ。
そして、直ぐに電話を掛ける。おそらく発信先は春花ちゃんのスマホだろう。
さっき気付いて良かった。おかげで、この行動で支障は発生しない。
当然、電話は繋がらず、結菜ちゃんは落胆の表情を浮かべる。
さて、切り上げるか。
「帰ろう」
「え?」
結菜ちゃんが、絶望にも似た表情で俺を見る。
「春花を置いて帰るんですか?」
手がワナワナと震えている。
「冷静に考えて、結菜ちゃん。今、僕たちにできることは何もないんだよ。病院内に人影はなかった。それだけが事実としてあるだけなんだよ」
諭すように言う。
「でも、見落としが…」
「僕が確実に見て回った。それに、こんな暗い中だよ、残りの人に何か危険が及ぶ可能性がある。それは、部長として見過ごせないよ」
見落としなんてない。そうなっている。
さっさと、この病院から立ち去って欲しい。これ以上、無意味な探索はするな。
「この肝試しは、部の悪い噂を払拭するために僕が企画したもの。だから、責任は僕にある。そして、当然このまま終わらせるわけがないよ」
我ながら、よくもまあ、これだけの嘘がペラペラと出てくるものだ。何だか笑けてくる。
「警察へは、僕が連絡しておく。そして、明日の朝、もう一度探しに来よう」
警察なんかに連絡するわけないんだけどな。
連絡したって噓を吐いておけば、問題ないだろう。
「明るいところで探した方が、見逃しもないでしょ」
俺の言葉に史也が続けた。
フォローを入れてくるなんて、史也の奴、何か感づいたか?
「それに、消えたのは、春花ちゃんだけじゃないんだよ」
史也が加わってくれたんだ、話を大きくして、一気に畳みかけていこう。
「今回の件が、怪談的なものなのか、事件的なものなのかは、まだ分からないけど、もし、栄治と春花ちゃんが一緒に消えているとしたら、まだ栄治がいるだけ安心だと思う」
まあ、既に彼女は栄治と一緒にいて、危険な事件に巻き込まれてるんだけどな。
笑みがこぼれそうになるのを、必死に抑える。
さあ、もう一押しだ。
「それにね…僕だって、冷静を装っているけど、内心穏やかではないんだよ」
「ごめんなさい」
結菜ちゃんが申し訳なさそうに言った。そんな顔をしなくても大丈夫だよ、いずれ君も、春花ちゃんと同じ目に遭わせてあげるからさ。
「冷静になってもらえて良かったよ」
さて、話はまとまったな。
「じゃあ、明日、捜索しよう。みんなは、どうする?」
「春花さんが心配なんで、勿論来ます!」
美香ちゃんが元気に答えた。彼女たちも、僕の話を信じてくれたようだ。
「じゃあ、みんな、明日の朝八時に、病院前に集合だよ」
みんなが頷く。よかった、これで、後は全員を帰せば、栄治たちと合流できる。
「結菜ちゃんは、史也に送らせるよ。こんな状況なんだ、疲れたでしょ。ゆっくり休んで明日に備えて」
俺の言葉を受けて、結菜ちゃんが病室の入口へと向かう。
「史也、後は頼んだよ」
「うん、任せといて」
史也は頷き、結菜ちゃんと一緒に出て行った。
さて、後はこの二人か。俺が車で送れば、無事解決だな。送り届けてから、栄治たちと合流して、今後について話し合えばいいか。
「じゃあ二人は、僕が送って……え?」
病室を出ようとすると、愛美ちゃんが俺を通せんぼし、後ろ手に扉を閉めた。
何だ、一体どういうつもりだ?
「隼人せんぱーい」
「うわっ」
突然背後から抱き付かれた。愛美ちゃんに気が向いていた俺は、その不意打ちに、つい声を上げてしまった。
「この前の続きしましょ。この前の続き」
体を密着させながら言ってくる。
この前の続きって、もしかして、新歓コンパのキスの続きだろうか?
それって、今からセックスがしたいってことなのか?
「隼人先輩、美香ちゃん、もう、我慢が効かなくなっちゃったんですって。相手してあげてくれませんか?」
愛美ちゃんが隠すことなく言ってきた。
新歓コンパの時から感じていたことだが、やはり愛美ちゃんは、美香ちゃんと俺をくっ付けたいのだろう。
「でも、その前に」
言葉を止めて、勿体ぶる。何かあるのか?
「栄治先輩たちを帰らせてくれませんか?」
「なっ」
愛美ちゃんの言葉に驚いて、つい声を上げてしまった。失敗した。
このリアクションは、明らかに肯定を意味している。つまり俺は、栄治が消えていないと、態度で示してしまったのだ。
「今回の失踪って、ドッキリですよね?」
愛美ちゃんが意外な言葉を吐いた。つまり彼女は、今回の失踪事件は、俺が仕掛けた出し物だと思っているようだ。
この勘違いは有り難い。乗らない手はないだろう。
「そ、そうなんだよ~。何で分かったの?」
純粋に気になった。バレるようなボロはしていないはずだが。いや、大輝がやらかした時点で、そうは言えないか。
「ここに来る途中、病室で話し声が聞こえたので」
あいつら、何やってるんだ。
つまり、美香ちゃんも、史也も分かっていたってことか。だから、俺の話に素直に乗ってきてくれたのか。
「そっか~、失敗失敗」
おどけて言ったが、内心、栄治たちに腹を立てていた。
「それで、何で栄治たちに帰ってもらいたいんだい?」
素朴な疑問だった。別に彼らがいてもいいじゃないか。
「え?それを女の子に言わせます?」
愛美ちゃんは含んだ笑いをしながら、俺に近付いてきた。
そして、顔を近づけてくる。
「声を聞かれたら、恥ずかしいじゃないですか」
耳元で呟かれた。
俺は今までの行為で麻痺をしていた。確かに、そういう行為の声を聞かれることは、恥ずかしいものだろう。
美香ちゃんがその気とはいえ、この条件を拒んだら、退いて行ってしまう可能性は高い。ここは従うべきだろう。
「分かったよ、栄治たちには連絡するよ」
その時、病院から車が去っていく音が聞こえた。タイミングも丁度良いようだ。
これから美香ちゃんとセックスするため、栄治たちは直ぐに帰ること。そして、春花ちゃんの今後については、追って連絡することを、メッセージで伝える。
「これでいいかな?」
「ええ、ありがとうございます」
愛美ちゃんが笑顔で応えた。
「やっとこの日が来ました~。私、ずっと待ち遠しくて、食べたくて食べたくて、しょうがなかったんですよ」
美香ちゃんが、本当に嬉しそうに言う。
「女の子が、食べるって表現を使うなんて、なかなか荒々しいね」
「そうですか?」
美香ちゃんは不思議そうに返すが、一般的にその言葉は、男が女を襲う時に使うものだ。女性が使うのは聞いたことがない。
それとも、俺が知らないだけで、性欲の強い女性は使うのだろうか?
「隼人先輩、美香ちゃんは本当に今日までずっと我慢してたんですよ。褒めてあげてください。そして、逃げることなく、ちゃんと相手してあげてくださいね」
「何か、言い方が怖いなぁ」
何という物々しい言い方だろう。男が逃げ出すほど、美香ちゃんの性欲は強いというのだろうか?相手にするのが大変そうだ。でも、そんな女性も臨むところだ。
「ありがとうね、愛美ちゃん。こんな舞台を設定してくれて」
計画的に、俺に近付いてきたってことなのか?こんな美人に好かれていたなんて、嬉しいことじゃないか。
「やっぱり、僕は初めから美香ちゃんに狙われていたのかな?」
「ええ、そうです。一目見た時から、隼人先輩を狙っていました。部活動に参加したのも、そのためですよ」
「あははは、モテる男は辛いね」
俺の冗談に、美香ちゃんがキョトンとする。あれ?スベったかな?
「美香ちゃんとの経験は、一生に一度のものだと思うので、しっかりと楽しんでくださいね」
一生に一度?つまり俺は、美香ちゃんとのセックスは、一度しかできないってことなのか?
そんな雑談を続けていたら、再び車が走り出す音が聞こえた。おそらく、栄治たちが帰って行ったのだろう。
「さて、人もいなくなったことですし、お邪魔になるので、私も出ますね」
「あ、ああ」
「じゃあね美香ちゃん。車で待ってるわね」
「うん、分かった」
愛美ちゃんは美香ちゃんに手を振ると、静かに部屋を出て行った。
さて、いよいよ二人きりだ。柄にもなく、ドキドキする。
すると、後ろから衣擦れの音が聞こえてきた。もう脱いでいるのか、気が早いな。
「先輩も早く脱いでくださいよ~」
振り向くと、既に美香ちゃんは全裸だった。
「ああ、ごめん。女性に先に脱いでもらうなんて、男性として良くなかったね」
俺はそう言うと、直ぐに服を脱いだ。
「わぁ~」
俺の裸を目の前にして、美香ちゃんが歓喜の声を上げる。
「隼人先輩、全身脱毛してるんですか?ツルツル~」
飛び跳ねるんじゃないかと思うくらい、テンション高めに言ってきた。
「女性の相手をすることが多いからね、清潔のためにやってるんだよ」
「体毛がない人、初めて会いました~。食べ応えありそう!」
「君は本当に肉食系なんだね」
美香ちゃんの視線が、俺の股間に向く。
「そこもツルツルなんですね」
「うん、珍しいだろうけどね」
「いいえ、嬉しいです。これは夢にまで見た、踊り食いが出来そう」
「踊り食い?」
初めて聞く文言だ。今は、そういうものが流行っているのだろうか?
「待ちきれない!」
美香ちゃんは、俺をベッドに押し倒した。華奢なくせに、結構力が強いな。
「面白いもの、み~っけ」
言うなり、手錠でベッドに括りつけられた。
これは、さっきの大輝が回収し忘れた手錠だ。
「これで逃げられませんよ、先輩」
涎を垂らしながら、俺のことを見定めている。
「参ったな、こういう趣味はないんだけどな」
優しく言ってあげるが、俺は責められるより、責める方が好きだ。油断したとはいえ、何という醜態か。
「明かりは消さなくていいのかい?」
「ええ、明るい方が、良く見えるじゃないですか」
愛美ちゃんの置いて行ったランタン型ライトが、部屋を煌々と照らす。
彼女は本当に肉食系なのだろう。全てを楽しみたいという感情が伝わってくる。
美香ちゃんはしゃがみ、俺の股間に顔を近づける。
「じゃあ、いただきま~す」
舌が睾丸に触れ、続けて唇が触れた。
「う…あぁ……ああ!」
その意識の飛びそうな激しい刺激に、俺の体は跳ね上がった。




