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カーニバル  作者: キキカサラ
七月八日
21/21

7月10日 黒影山廃病院 深山隼人 不測の事態収拾編

 過激な性的発言、表現があります。

 苦手な方は、読まないことをお奨めします。



 ※この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。

「状況を説明してくれ。何があった?」


 どっと疲れた。声に力が入らず、ため息交じりに訊いた。


「奥の病室から音がしてよ。何かと思って、その病室に行ったんだ。まさか、大輝がいるとは思わなくてよ。分かってたら、近付かせなかったんだけどな」


 栄治が、思い出しながらからか、たどたどしく答えた。


「それで?」

「病室を開けて、ライトを当てたら、ガッツリ、全裸の大輝と女が照らされちまったよ」

「はぁ…」


 頭が痛い。最悪の状況だ。


「それで、どうして春花ちゃんは気絶してるんだ?」

「大輝の姿を見て、気が動転したんだろうな。病室の電気のスイッチを押したんだ」

「なるほど、それで病室の電気が点いたのか」


 人間というのは、無駄と分かっていても、日常でやっている行動を意図せず取ってしまう。

 信じられない光景を目の前にし、まるで自分の部屋の明かりを点ける様に、咄嗟に病室のスイッチを押してしまったのだろう。


「俺もパニックになってしまってよ、咄嗟に殴ったら、気絶しちまった」

「おいおい、手荒いな」

「すまない」


 だが、気絶してくれたのは幸いだった。殴られた状態で、意識があったら、騒いでいたことは間違いないだろう。それは考えうる、最悪の事態だ。


「それで、大輝と話をしようとしたら、ちょうど電気が消えたんだ」

「なるほどな」


 変に動く前に電気が消えたのなら、タイミングとしては良かったのだろう。


「大体想像はつくが、大輝は、何であんな状況だったんだ?」

 矛先を大輝に変える。話題が振られることで、大輝の体がビクリと跳ねた。

 おいおい、お咎めなしな訳がないだろう。


「いやぁ、あの後遊んだら、スッキリしちまって、そのまま寝ちまったよ」

「だろうな」


 さっき予想した通りだった。悪い意味で読みやすい。

 いや、読み切れていない。こいつの馬鹿さの度合いを見誤ったことは、俺の見積もりが甘い証拠だ。

 肝試しの下見をする際、大輝と連絡が取れなかった時点で、今回のような事態になっていることを予想できていないことは、大輝の行動を読めていないことに繋がる。

 しかも、言い訳も利かないような場面も見られてしまっている。

 大輝をここで切っておかないと、今後も害を被りかねない。


「お前はもういらないな。足ばかり引っ張る」

「え?」


 大輝が呆ける。まさか、ここまでのことをしておいて、今までと同じでいられると思ったのだろうか。おめでたい頭をしている。


「隼人、そりゃないぜ…」


 大いに不服そうだ。


「いや、今回ばかりは、擁護できないぜ」


 栄治が横から指摘する。


「しかし、大輝のことは後にする。これ以上余計なことはしてくれるなよ」


 大輝は返事をせず、バツが悪そうに無言でいる。


「任せとけ」


 代わりに栄治が返事をした。

 今回、本当に幸いだったのは、春花ちゃんと、大輝が相手をしていた女の意識が共にないことだ。

 これなら、変に騒がれることはない。このまま、事が済むまで意識を取り戻さないで貰えると、有り難い。


「この状況、そうだな…神隠しに遭ったことにしよう」

「面白いな」


 栄治がニヤリとする。こいつは、本当にこの手の話が好きだな。


「だから、みんなが帰るまで、見つからないでいてくれよ。今ここで決めたことは、史也も知らないから、本当に誰にも見つからないでくれ」

「分かった」

「出てくるタイミングは、俺が教える」

「了解だ。いつでも動けるように準備しておく」

「頼んだぜ。俺はこれから結菜ちゃんの所に行って、帰る形で話を進める」

「オーケー。連絡待ってるぜ」


 俺は頷くと、静かに扉を開け、部屋を出ようとしたが、不安が頭を過ぎり、足を止めて振り返った。


「そうだ、栄治」

「どうした?」

「春花ちゃんのスマホの電源切っとけよ。着信で隠れてるのバレたら、たまったもんじゃないからな」

「おっと、頭になかったぜ。サンキュー」

「また後でな」


 今度こそ大丈夫だろう、抜けはないはずだ。

 俺は改めて、結菜ちゃんが向かったであろう、先程の病室に向かった。



 部屋を覗くと、結菜ちゃんが病室内を見て回っていた。

 怪しいものは残してきていないはずだから、物色されたところで、何も出てこないはずだ。


「結菜ちゃん?」

「きゃあああ!」


 俺の声で、結菜ちゃんが飛び上がって、そのまま尻餅をついた。驚かすつもりはなかったんだけどな。


「だ、大丈夫?」


 俺は手を差し伸べて、結菜ちゃんを立ち上がらせた。


「隼人先輩、先に一人で行っちゃうんですもの」

「ごめん、中に入った二人が心配で、気持ちより先に体が動いてたよ」


 我ながら、いい言い訳だ。


「春花は見つかりましたか?」


 俺は、できる限りの落ち込んだ表情を作り、首を左右に振った。


「入れるところを全部見てみたけど、二人は見つからなかったよ」

「そんな…」

「結菜ちゃんは、僕よりも後に入ってきたんでしょ?」

「はい…」

「この小さな病院で、時間差で二人入ったのだから、誰かいたら遭遇しているはず。しかも僕の場合、全ての病室を見て回ったしね」

「春花どこに…」


 落胆した結菜ちゃんは、力なくベッドに座り込んだ。


 ――カラン…。


 金属音が室内に響く。その音は、俺にとって死刑宣告に近かった。

 まさか、こんなところに抜けがあるとは、大輝の奴、証拠となるもの全部回収していかなかったな、ふざけやがって。


「何で手錠が…?」


 結菜ちゃんが疑問を口にする。まずいな。


「隼人?」


 病室の入り口からライトで照らされる。この声は、史也だな。何という良いタイミング。

 話を進めて、手錠の件をうやむやにしよう。

 史也の背後には、美香ちゃんと愛美ちゃんの姿もあった。

 全員集合か、今なら栄治たちを逃がすことができるが、車の音でばれる。急いてはいけない。


「そうだ、スマホ!」


 思い出したように、結菜ちゃんが叫んだ。

 そして、直ぐに電話を掛ける。おそらく発信先は春花ちゃんのスマホだろう。

 さっき気付いて良かった。おかげで、この行動で支障は発生しない。

 当然、電話は繋がらず、結菜ちゃんは落胆の表情を浮かべる。

 さて、切り上げるか。


「帰ろう」

「え?」


 結菜ちゃんが、絶望にも似た表情で俺を見る。


「春花を置いて帰るんですか?」


 手がワナワナと震えている。


「冷静に考えて、結菜ちゃん。今、僕たちにできることは何もないんだよ。病院内に人影はなかった。それだけが事実としてあるだけなんだよ」


 諭すように言う。


「でも、見落としが…」

「僕が確実に見て回った。それに、こんな暗い中だよ、残りの人に何か危険が及ぶ可能性がある。それは、部長として見過ごせないよ」


 見落としなんてない。そうなっている。

 さっさと、この病院から立ち去って欲しい。これ以上、無意味な探索はするな。


「この肝試しは、部の悪い噂を払拭するために僕が企画したもの。だから、責任は僕にある。そして、当然このまま終わらせるわけがないよ」


 我ながら、よくもまあ、これだけの嘘がペラペラと出てくるものだ。何だか笑けてくる。


「警察へは、僕が連絡しておく。そして、明日の朝、もう一度探しに来よう」


 警察なんかに連絡するわけないんだけどな。

 連絡したって噓を吐いておけば、問題ないだろう。


「明るいところで探した方が、見逃しもないでしょ」


 俺の言葉に史也が続けた。

 フォローを入れてくるなんて、史也の奴、何か感づいたか?


「それに、消えたのは、春花ちゃんだけじゃないんだよ」


 史也が加わってくれたんだ、話を大きくして、一気に畳みかけていこう。


「今回の件が、怪談的なものなのか、事件的なものなのかは、まだ分からないけど、もし、栄治と春花ちゃんが一緒に消えているとしたら、まだ栄治がいるだけ安心だと思う」


 まあ、既に彼女は栄治と一緒にいて、危険な事件に巻き込まれてるんだけどな。

 笑みがこぼれそうになるのを、必死に抑える。

 さあ、もう一押しだ。


「それにね…僕だって、冷静を装っているけど、内心穏やかではないんだよ」

「ごめんなさい」


 結菜ちゃんが申し訳なさそうに言った。そんな顔をしなくても大丈夫だよ、いずれ君も、春花ちゃんと同じ目に遭わせてあげるからさ。


「冷静になってもらえて良かったよ」


 さて、話はまとまったな。


「じゃあ、明日、捜索しよう。みんなは、どうする?」

「春花さんが心配なんで、勿論来ます!」


 美香ちゃんが元気に答えた。彼女たちも、僕の話を信じてくれたようだ。


「じゃあ、みんな、明日の朝八時に、病院前に集合だよ」


 みんなが頷く。よかった、これで、後は全員を帰せば、栄治たちと合流できる。


「結菜ちゃんは、史也に送らせるよ。こんな状況なんだ、疲れたでしょ。ゆっくり休んで明日に備えて」


 俺の言葉を受けて、結菜ちゃんが病室の入口へと向かう。


「史也、後は頼んだよ」

「うん、任せといて」


 史也は頷き、結菜ちゃんと一緒に出て行った。

 さて、後はこの二人か。俺が車で送れば、無事解決だな。送り届けてから、栄治たちと合流して、今後について話し合えばいいか。


「じゃあ二人は、僕が送って……え?」


 病室を出ようとすると、愛美ちゃんが俺を通せんぼし、後ろ手に扉を閉めた。

 何だ、一体どういうつもりだ?


「隼人せんぱーい」

「うわっ」


 突然背後から抱き付かれた。愛美ちゃんに気が向いていた俺は、その不意打ちに、つい声を上げてしまった。


「この前の続きしましょ。この前の続き」


 体を密着させながら言ってくる。

 この前の続きって、もしかして、新歓コンパのキスの続きだろうか?

 それって、今からセックスがしたいってことなのか?


「隼人先輩、美香ちゃん、もう、我慢が効かなくなっちゃったんですって。相手してあげてくれませんか?」


 愛美ちゃんが隠すことなく言ってきた。

 新歓コンパの時から感じていたことだが、やはり愛美ちゃんは、美香ちゃんと俺をくっ付けたいのだろう。


「でも、その前に」


 言葉を止めて、勿体ぶる。何かあるのか?


「栄治先輩たちを帰らせてくれませんか?」

「なっ」


 愛美ちゃんの言葉に驚いて、つい声を上げてしまった。失敗した。

 このリアクションは、明らかに肯定を意味している。つまり俺は、栄治が消えていないと、態度で示してしまったのだ。


「今回の失踪って、ドッキリですよね?」


 愛美ちゃんが意外な言葉を吐いた。つまり彼女は、今回の失踪事件は、俺が仕掛けた出し物だと思っているようだ。

 この勘違いは有り難い。乗らない手はないだろう。


「そ、そうなんだよ~。何で分かったの?」


 純粋に気になった。バレるようなボロはしていないはずだが。いや、大輝がやらかした時点で、そうは言えないか。


「ここに来る途中、病室で話し声が聞こえたので」


 あいつら、何やってるんだ。

 つまり、美香ちゃんも、史也も分かっていたってことか。だから、俺の話に素直に乗ってきてくれたのか。


「そっか~、失敗失敗」


 おどけて言ったが、内心、栄治たちに腹を立てていた。


「それで、何で栄治たちに帰ってもらいたいんだい?」


 素朴な疑問だった。別に彼らがいてもいいじゃないか。


「え?それを女の子に言わせます?」


 愛美ちゃんは含んだ笑いをしながら、俺に近付いてきた。

 そして、顔を近づけてくる。


「声を聞かれたら、恥ずかしいじゃないですか」


 耳元で呟かれた。

 俺は今までの行為で麻痺をしていた。確かに、そういう行為の声を聞かれることは、恥ずかしいものだろう。

 美香ちゃんがその気とはいえ、この条件を拒んだら、退いて行ってしまう可能性は高い。ここは従うべきだろう。


「分かったよ、栄治たちには連絡するよ」


 その時、病院から車が去っていく音が聞こえた。タイミングも丁度良いようだ。

 これから美香ちゃんとセックスするため、栄治たちは直ぐに帰ること。そして、春花ちゃんの今後については、追って連絡することを、メッセージで伝える。


「これでいいかな?」

「ええ、ありがとうございます」


 愛美ちゃんが笑顔で応えた。


「やっとこの日が来ました~。私、ずっと待ち遠しくて、食べたくて食べたくて、しょうがなかったんですよ」


 美香ちゃんが、本当に嬉しそうに言う。


「女の子が、食べるって表現を使うなんて、なかなか荒々しいね」

「そうですか?」


 美香ちゃんは不思議そうに返すが、一般的にその言葉は、男が女を襲う時に使うものだ。女性が使うのは聞いたことがない。

 それとも、俺が知らないだけで、性欲の強い女性は使うのだろうか?


「隼人先輩、美香ちゃんは本当に今日までずっと我慢してたんですよ。褒めてあげてください。そして、逃げることなく、ちゃんと相手してあげてくださいね」

「何か、言い方が怖いなぁ」


 何という物々しい言い方だろう。男が逃げ出すほど、美香ちゃんの性欲は強いというのだろうか?相手にするのが大変そうだ。でも、そんな女性も臨むところだ。


「ありがとうね、愛美ちゃん。こんな舞台を設定してくれて」


 計画的に、俺に近付いてきたってことなのか?こんな美人に好かれていたなんて、嬉しいことじゃないか。


「やっぱり、僕は初めから美香ちゃんに狙われていたのかな?」

「ええ、そうです。一目見た時から、隼人先輩を狙っていました。部活動に参加したのも、そのためですよ」

「あははは、モテる男は辛いね」


 俺の冗談に、美香ちゃんがキョトンとする。あれ?スベったかな?


「美香ちゃんとの経験は、一生に一度のものだと思うので、しっかりと楽しんでくださいね」


 一生に一度?つまり俺は、美香ちゃんとのセックスは、一度しかできないってことなのか?

 そんな雑談を続けていたら、再び車が走り出す音が聞こえた。おそらく、栄治たちが帰って行ったのだろう。


「さて、人もいなくなったことですし、お邪魔になるので、私も出ますね」

「あ、ああ」

「じゃあね美香ちゃん。車で待ってるわね」

「うん、分かった」


 愛美ちゃんは美香ちゃんに手を振ると、静かに部屋を出て行った。

 さて、いよいよ二人きりだ。柄にもなく、ドキドキする。

 すると、後ろから衣擦れの音が聞こえてきた。もう脱いでいるのか、気が早いな。


「先輩も早く脱いでくださいよ~」


 振り向くと、既に美香ちゃんは全裸だった。


「ああ、ごめん。女性に先に脱いでもらうなんて、男性として良くなかったね」


 俺はそう言うと、直ぐに服を脱いだ。


「わぁ~」


 俺の裸を目の前にして、美香ちゃんが歓喜の声を上げる。


「隼人先輩、全身脱毛してるんですか?ツルツル~」


 飛び跳ねるんじゃないかと思うくらい、テンション高めに言ってきた。


「女性の相手をすることが多いからね、清潔のためにやってるんだよ」

「体毛がない人、初めて会いました~。食べ応えありそう!」

「君は本当に肉食系なんだね」


 美香ちゃんの視線が、俺の股間に向く。


「そこもツルツルなんですね」

「うん、珍しいだろうけどね」

「いいえ、嬉しいです。これは夢にまで見た、踊り食いが出来そう」

「踊り食い?」


 初めて聞く文言だ。今は、そういうものが流行っているのだろうか?


「待ちきれない!」


 美香ちゃんは、俺をベッドに押し倒した。華奢なくせに、結構力が強いな。


「面白いもの、み~っけ」


 言うなり、手錠でベッドに括りつけられた。

 これは、さっきの大輝が回収し忘れた手錠だ。


「これで逃げられませんよ、先輩」


 涎を垂らしながら、俺のことを見定めている。


「参ったな、こういう趣味はないんだけどな」


 優しく言ってあげるが、俺は責められるより、責める方が好きだ。油断したとはいえ、何という醜態か。


「明かりは消さなくていいのかい?」

「ええ、明るい方が、良く見えるじゃないですか」


 愛美ちゃんの置いて行ったランタン型ライトが、部屋を煌々と照らす。

 彼女は本当に肉食系なのだろう。全てを楽しみたいという感情が伝わってくる。

 美香ちゃんはしゃがみ、俺の股間に顔を近づける。


「じゃあ、いただきま~す」


 舌が睾丸に触れ、続けて唇が触れた。


「う…あぁ……ああ!」


 その意識の飛びそうな激しい刺激に、俺の体は跳ね上がった。

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