7月10日 深山隼人
過激な性的発言、表現があります。
苦手な方は、読まないことをお奨めします。
※この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。
目が覚めて、天井を見て、一瞬自分が入院したのかと錯覚した。
そうだ、昨日は女を廃病院に連れ込んで楽しんだんだった。
もう昼近くか。今日も暑いな。そろそろ起きないとな。
俺は、周りの連中に声を掛けた。
「朝だ。お前たち、起きろ」
俺の声に、大輝たちが目を覚ます。
「だらしないな。ちゃんと服着ろよ」
全員全裸だ。それは自分も同じで、人のことは言えなかった。
「あれ?史也は?」
「そういえば、いないな」
スマホを確認する。
史也からのメッセージが入っていた。
「ああ、史也のやつ、先に帰ったみたいだな」
「は?」
大輝が怒り気味に言った。グループ行動しないやつが気に食わないのか?
「朝から講義があるんだってよ」
「真面目だなあ、あいつは」
つまらなそうに、大輝はベッドに仰向けに寝た。
「まあ、いいや。あいつには、俺から指示を出しておく」
「指示って?」
栄治が訊いてきた。その質問に、俺はにやける。
「今日の夜、肝試しの下見を決行しようと考えてるんだ」
「へえ、そんなこと考えてたんだ」
「まあな」
「それで、誰が来るんだよ」
体を起こし、大輝が当然の疑問を口にする。
「今のところ、春花ちゃんを誘ってる。他にも人を連れてきていいって言ったから、おそらく、徹君と竜司君も来るだろう」
「はぁ?男ばっかりじゃないか」
大輝が不満げな声をあげた。
まあ、その不満はごもっともだ。
「昨日、四人食っちまったからな。残り四人だ。さすがに残り全員呼んだら、下見にならないだろ?」
「まあ、確かに」
「それにな、大輝。お前が一人潰したから、人数が減ってるんだからな」
大輝を睨みつける。後先考えてない、お前が原因だ。
「ご、ごめん」
本当に申し訳ないと思ったのか、大輝が静かになった。
「でもよ、そんな一人のために、わざわざ下見イベントを開く必要があるのか?昨日みたいに、潰して連れ込んじまえばいいじゃねえか」
「随分と乱暴な物言いだな」
「だって、そういうことをするために、ここを買ったんだろ?」
栄治が面倒そうに言う。
言いたいことは分かる。でも、それじゃあ、ただの強姦だ。全然スマートじゃない。
「俺らの目的は、セックスだけじゃない。そうだろ?」
「昨日、金になるとか言ってたな」
「そう。脅して金を取るだけじゃ、意味がない。それでは、ただの恐喝だ」
「でも、恐喝だろ?」
「そうだ。けど違う」
「どういうことだよ?」
栄治が、意味が分からないという顔をする。説明が必要だな。
「女と金だけ見れば、今回の下見は、実に無駄なことに見えるだろう。でも、俺は先を見ている」
「でたな、隼人の先読み!きっと、俺らの想像もしないことを考えてたんだろ?」
大輝が嬉々として叫んだ。煩いが、その称賛の声は、悪くはない。
「下見は、俺たちの信用を得るためにやる」
「信用も何も、既に悪い噂が立ってるんだぜ」
「あの頃の俺は、後先考えなかったからな。反省はしてる」
あの頃といっても、つい最近だがな。
今は親父の手を借りられない。当然、方針を変えていかなくては破滅してしまう。
「今回は、上手く勧誘できたけど、このまま悪い噂が立ちっぱなしだと、今後、女を捕まえるのが難しくなってくる」
「まあ、確かに」
「そこで、俺らのことを擁護してくれる存在を作ろうと考えた」
「なるほど、それが竜司君たちってことか」
栄治は察しがいいな。話の流れがスムーズで助かる。
「そう。無害だと思って、徹君を入部させた時に、訳あって竜司君もついてきてしまった。絡んでくるから、厄介な奴だと思ったけど、逆に、こいつに信用されたら、全ての噂が払拭できるんじゃないかと思ってな」
「まあ、アンチを味方にすることは、一番のプラスになることなのは確かだよな」
栄治は話に付いてきているが、大輝は全く分かっていない顔をしている。これだから、馬鹿は困る。
だが、詳しく説明したところで、結局理解しないだろう。ここは放置だ。
「彼氏との関係上、春花ちゃんと竜司君は仲がいい。つまり、春花ちゃんに誰か連れてきてもいいと伝えたら、必然的に竜司君が付いてくるわけだ」
「そこで、信用を得る行動をするって訳か」
「逆境もプラスに変える。これって、有能じゃなきゃできない所業だろ?」
俺は笑いながら言った。
「面白いな。経営学部の実践テストだな」
「いいね、その言い方。これが成功したら、俺の考えた運用は間違っていないことになる」
「より多くの女と金を生めるわけだ」
「そういうことだな」
「スゲーな、それ!」
結論だけ聞いて、大輝が大はしゃぎする。
結論じゃなくて、過程が面白いんだがな。大輝には、この楽しみ方は分からないか。
「そんな訳だから、肝試しの下見、賛成してくれるよな?」
「ああ、いいぜ。面白い」
栄治が納得してくれた。
「で、でもよ。その二人がそんなに仲がいいんだったら、春花ちゃんを頂くのは、難しいんじゃないか?」
大輝が遠慮がちに訊いてきた。結論に急ぎ過ぎるから、そういう疑問が出てくる。
「そうだな。今のままだったらな」
「今のまま?」
「ははん、なるほど」
大輝は理解が追い付かない。一方の栄治は、もう答えが出た様だ。
「春花ちゃんが竜司君を信用できなくなり、竜司君が春花ちゃんを信用できなくなる。そんな関係を作れたら、状況は大きく変わる」
「面白いこと考えるよな」
栄治が笑う。本当に楽しそうに笑う。
おそらく、栄治も俺と同じく、過程が楽しい人間なのだ。根っからの経営側だ。
「この世に親友なんて存在しないんだぜ。信用なんて、意外に脆い。簡単に壊せるもんだ」
「そんなもんなのかなぁ」
大輝は納得がいかないようだ。
「金、人、物、情報…信用関係を得るために提供するものってのは、数々ある。その提供関係がない状態の信用ってのは、見返りがないから、最も脆いと俺は考えるね」
「壊せない関係だってあるもんだろ?」
「ないね。断言できる。特に男女の信用関係なんて、見返りなしでは存在しない。大輝はわからないみたいだから、これから見せてやるよ」
親父の権力の一環として、俺に群がってきた奴らを思い出す。
あいつらは、利益がないとみると、簡単に見限り、裏切る。
俺は、他人を信用しない。今まで裏切られてきたからだ。勿論、栄治たちも例外じゃない。こいつらはただの利用できるコマでしかない。
他人の行動を信用しても、人間自体を信用することは、この先、絶対にないだろう。
俺は、俺だけのために生きる。それを証明してやる。
「話が反れたな。下見の集合は十七時に病院前だ。遅れるなよ」
「はいよ」
「了解ー」
二人の返事を聞き届け、スマホを見る。
川島は朝に講義があると言っていたからな。それが終わり、そろそろ、帰ってくる時間だろう。
「お前たち、ちゃんと女を家に帰しておけよ。無駄な騒ぎは起こしたくない」
「ああ、分かってるよ」
俺は自分が手にした女を抱き上げた。
「そろそろ川島が帰ってくる。ほら行くぞ。女を担げ」
「ああ」
俺の言葉を受けて、栄治も女を担いだ。
「大輝どうした?行くぞ」
大輝だけ、動こうとしない。
「いやぁ、何かさ、抵抗しない奴とヤっても、オナホみたいで自分でしてるのと変わらなくてさ」
「何だ?何が言いたい?」
要は、昨日のセックスは満足いかなかったと言いたいのか?それで、どうしたいんだ。別の女を提供しろとでも言いたいのか?
「だからさ」
どこに持っていたのか、手錠を取り出し、ベッドのパイプと女を繋げた。
「抵抗されながらヤるのも、人間味があっていいと思ってよ」
「変態め」
悪趣味な奴だ。まあ、好きにしてくれ。
「そういうことで、俺はもう少し楽しんでくから、先に行ってくれよ」
「あまり騒ぎすぎるなよ。山の中とはいえ、周りに人が通らないとも限らないからな」
「ああ、そうか」
大輝が、いやらしい笑みを浮かべた。
そして、女の着ていた服をねじると、それを猿轡として、女の口に咥えさせ後頭部で縛った。
「こうすれば、大声は出せないよな」
ニヤニヤしながら言う。笑い顔が、本当に下衆で気持ち悪い。
「好きにしろ」
俺は吐き捨てて、部屋を出た。
これ以上、大輝の悪趣味を披露されては、気分が悪い。
「そういや、史也の女もいなかったってことは、もう史也は送り帰したってことなんかな?」
歩きながら、栄治が質問してきた。
「俺が知る筈ないだろう」
「まあ、そうなんだけどよ」
史也のことだ、大輝みたいに馬鹿じゃない。そこは俺の意を汲んで、上手くやってくれているだろう。
「まあ、史也のことだから、大丈夫だろうよ」
俺はそれだけ言って、先を歩いた。
病院を出ると、川島が車で待機していた。読んだ時間通りだ。
「俺は、自宅に送ってくれ。栄治はどうする?」
車に女を乗せ、俺も乗り込みながら、栄治に訊いた。
「俺も自宅でいいよ」
栄治も同じように女を乗せ、自分も乗り込む。
「先ずは、どちらに向かいますか?」
「隼人の家でいいよ。俺は後」
「それでいいですか?」
「ああ、構わない」
「かしこまりました」
川島は頷き、車を出した。
「深山様。一応報告をしておきます」
「何だ?」
バックミラー越しに、川島と目が合う。
「今朝、山本様を自宅に送りました。深山様が起きてからと思ったのですが、講義があるとのことでしたので、送ってしまいました。申し訳ありません」
「ああ、そうなのか。別に構わないぜ」
そうか、本当に史也は講義のために帰ったんだな。それなら、あのことも、川島が知っているか?
「川島。その時、史也は女を連れていたか?」
「ええ、女性の方と一緒に、自宅に送りました」
「女の意識は?」
「ありませんでした」
「そうか」
俺らと同じ行動をしたわけだな。
女を起こして、昨日の計画通り脅したのか、それとも、何事もなく帰したのか。
そこは指示を出していないから、史也次第だな。
「俺は早速、この女を脅して、金を納めさせるか」
「お?もう、やるのか?」
「まあな。言い出しっぺが尻込みしてたら、格好つないだろ?」
「さすがだな」
「栄治は好きにしてくれ。今回は強要しない」
「ああ。でも、隼人がやる気なんだから、俺もやるよ」
そう言って、栄治はスマホを操作し始めた。
「うん、ちゃんと動画も撮れているみたいだぜ」
スマホの画面を俺に見せてくる。暗い中で行為していたにも関わらず、きちんと暗視モードに切り替わり、見事に映像が撮れていた。
「カメラの解像度もいい感じだな」
「だな」
顔もはっきりと見て取れる。これなら、脅しの材料としては完璧だ。
「そういえば深山様。肝試しの見回りは、いつするのですか?」
「は?」
川島から話題を振ってきたのは初めてだった。見回りという言い回しをしたな。下見のことだよな。
「何でお前が、その話を知っている」
ミラー越しに、川島を睨みつける。川島は視線を前にしたまま、こちらを意識して見ようとしない。あくまで、運転している体だ。
「昨日、深山様自身が言っておりましたので」
「俺が?」
栄治に目を向ける。栄治は肩をすくめる。覚えがないようだ。
「二人とも、酔っぱらっておりましたので、覚えていないのも、無理はありません」
本当に言ったのか?
確かに、今朝、肝試しの下見の件の話をした時には、栄治も大輝も初耳という感じだった。
全員が、下見の話だけ抜けている。そんなこと有り得るのか?
川島が下見のことを知っている人間と関わりがあるのか?いや、それは有り得ない。第一、教授という立場の人間と、そんな話題をするはずがない。
そうなると、やっぱり、川島が下見の情報を仕入れる方法は俺以外にない。ということは、川島の言っていることは本当なのだろう。
どうも話が出来過ぎている。しかし、川島が俺以外の人間に付くとは思えない。
こいつは、深山家から追い出されたら、行く場所なんてないからな。
「そうか。で、何でそれを知りたい?」
「また、私を遣われると思いましたので、事前に聞いておきたいと思ったのです」
「いい心構えだな」
「恐れ入ります」
まあ、今日は女を運ぶわけじゃないから、特に川島の手は必要としていないんだが、何かしら雑用が必要になるかもしれないからな。
遣えるものは遣っておこう。
「下見は今日の十九時だ。川島の手は必要ないと思うが、病院から見えない所で待機していてくれ。俺ら以外には見つかるなよ」
「かしこまりました。十九時ですね」
一瞬、川島が笑った気がした。いや、笑う理由がない。気のせいか。
「深山様、着きました」
話しているうちに、俺の家に着いた。
栄治に手伝ってもらい、女を車から降ろし、おぶる。
「じゃあ、十九時に」
「ああ、また後でな」
川島の車が走り去っていく。それを見届け、家に入った。
そして、女をベッドに寝かせる。
確か、彼女の名前は紗耶と言ったか。
「紗耶ちゃん起きて」
「うぅ~ん…」
体を揺すり起こす。
「あれ?ここどこ?」
「僕の家だよ」
「え?何で?」
「寝ちゃってたから、連れてきたんだよ」
「え?ごめんなさい。迷惑かけちゃいました?」
紗耶ちゃんは体を起こし、俺に謝った。別に謝る必要はないんだよ。
「迷惑なんてかかってないよ~。楽しませてもらったからさ」
「楽しむ?え?何の話です?」
俺は、携帯画面を紗耶ちゃんに見せた。
「え?これって…」
「僕と紗耶ちゃんのセックスシーン」
俺は笑いながら言った。
紗耶ちゃんの顔が青ざめ、震え始める。
「先に言っておくけど、大声とか出さないでね。乱暴なことしなくちゃいけなくなっちゃうから」
紗耶ちゃんは何も言えず、ベッドの上で座りながら後ずさりをした。
限界まで下がり、背中が壁に当たる。
「別に訴えてもいいけど、そうすると、僕はこの動画を全世界に発信しないといけなくなっちゃう」
「え?」
紗耶ちゃんの顔が強張る。恐怖の目で俺を見据えて、動かなくなってしまう。
「でもね。僕の条件を飲んでくれたら、何もしないよ」
「な…何をさせる気ですか?」
今、紗耶ちゃんの頭の中では、さぞ卑猥な想像が巡っていることだろう。
でも、俺はもう、彼女の体に興味はない。
「そうだね…」
俺はベッドに寄りかかり、身体を乗り出した。
紗耶ちゃんは、怯えて逃げようと、体を壁に押し付けるが、当然それ以上行けない。
俺はそのまま、覆いかぶさるようにして、耳元に口を近づけた。
「毎月、金を献上しろ。手段は問わない。風俗だろうが、売りだろうが、好きにすればいい」
「え…あ……」
想像していたことよりも酷いことだったのだろうか、目から涙がこぼれ始める。
俺は紗耶ちゃんから体を離し、立ち上がった。
「そうだね、毎月二十万かな。良心的でしょ?」
俺は笑いながら言った。
「何で、こんなことするんですか…」
「何でって、金が欲しいからに決まってるじゃない。それ以外あるの?」
この女、理解できない質問をする。他に答えがあるのなら、教えて欲しいくらいだ。
「支払いは月末でいいよ。後二十日くらいあるから、一日一万円稼げばいい計算だね。楽勝楽勝」
「うううぅぅぅぅぅぅ」
紗耶ちゃんは、顔を伏せて泣き出した。俺に言われた通り、声を押し殺しているのが、何だか滑稽で笑える。
「払わなくてもいいけど、その瞬間、ばら撒くから」
泣いている紗耶ちゃんの肩に、そっと手を乗せる。その瞬間、びくりと体を震わせた。
「よろしくね」
イエスもノーも返ってこなかった。しかし、自分の状況を理解し、観念したのか、急に大人しくなった。
何も言わずに、顔を上げる。目には生気が感じられないが、笑みを浮かべている。上げられた顔は涙と鼻水と涎でぐしゃぐしゃで、汚い。
最悪だ、布団を汚さないでくれよ。
まあ、取り敢えずこれで、ATM一つゲットだ。
この調子でいこう。俺にとっての明るい未来を進もう。




