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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

可哀想なベルローズ

 作品の世界観上、身分差別や選民思想に肯定的な記述があります。

 不快になる方は、危険ですので、どうぞお戻りください。

 最終的に地雷が爆発するかもしれません。


 前世の記憶が蘇った。

 理由は()には分からない。

 物事や経験の記憶は保持したままだけど、前世の記憶と置き換わるように、これまでの感情の記憶を失ってしまったから。

 ただ、頭を打ったとか転んだとか特定の人物に会ったというような衝撃を受けた記憶は無いので、一人自室で思考を巡らせていて、出した結論で精神的なショックでも受けたのかもしれない。


 私は、ベルローズ・ウィリアム。ウィリアム公爵家の娘で現在七歳だ。

 蘇った前世の記憶によれば、「ベルローズ・ウィリアム公爵令嬢」は悪役令嬢だ。

 王太子の婚約者であり、ベルローズの異母妹であるメルリーナと王太子の恋路を邪魔する悪辣な女である。この一文で既に心の奥からツッコミが湧いてくるが、取り敢えず先に状況整理をしたい。


 前世に存在する、この世界に酷似した作品の名称は『ラブスイーツ♡マジック〜愛して囚えて〜』だ。分類は女性向け恋愛シミュレーションゲーム、いわゆる乙女ゲームというやつだった。

 無料のゲームだったせいか、かなりのヌルゲーで、選択肢を間違って好感度が下がっても、手作りのスイーツを食べさせれば好感度はペナルティも無く再び上がる。

 課金が必要だが、ゲーム中には好感度を上げるアイテムが複数売られていて、何処で買ったかの描写は無いのに、課金するとヒロインの所持品の中にアイテムが発生していた。

 好感度を上げるアイテムは、香水、ハート型の砂糖、指輪の三種類。選択肢なんか何を選んでも、手作りスイーツを食べさせながら、これらのアイテムを購入して「使用する」を選択すれば、勝手に高感度マックスになって逆ハーレムでも容易にクリア出来てしまう、駆け引きの必要の無いゲームだった。


 ベルローズが置かれている現在の状況は、ゲーム開始時よりは大分マシだろうが、あまりよろしくはない。

 ベルローズの実の母親はベルローズを出産した時に亡くなっている。そして、「愛する妻を奪った」として父親である公爵家当主に憎まれている。

 父親は現在、妻を失った辛さから逃避するためと、憎い娘の顔を見たくないために、家にはほとんど帰って来ない。


 しかし、前世の記憶が蘇った私に言わせれば、「何ほざいてんだオッサン」である。


 なにしろ、ヒロインである父と愛人の間の娘、「メルリーナ」は、ベルローズと同い年で誕生日まで同じだ。

 せめてメルリーナの方が十ヶ月でもベルローズより遅く生まれていたら、まだ苦しくともギリギリ通ったかもしれない言い訳だが、()()()()()()()が本妻の娘と同い年で同じ誕生日なんだから、仕込んだのも同じ頃なのは間違い無い。「愛する妻」とやらが生きていた時分から、愛人と子作り行為を含む関係があった確固たる証拠だ。

 ゲームの記憶によれば、メルリーナは公爵家に引き取られた時、「間違いなく公爵の実子である」として、母親が平民でありながら、()()()()()()()()貴族籍を取得している。

 王国貴族が血統を偽って国に届け出たら極刑は免れない重罪なので、「本妻の娘と同い年で誕生日も同じ」な愛人の娘は、確実にベルローズの父親の子である。

 父公爵は正妻が出産した日、「仕事で立ち会えず死に目にも間に合わなかった」、と言っているらしいが、本当に仕事だったのか怪しいものだ。ゲーム中の、後妻に迎えた愛人への父公爵の溺愛ぶりから、愛人の出産に立ち会わなかったとは思えない。


 ゲームによれば、ベルローズは血筋と優秀さを買われ、九歳で王家から王太子である第一王子の婚約者として指名される。

 これは現実でも恐らく避けられないだろう。第一王子と釣り合う年齢の公爵家の令嬢が、九歳の時点ではベルローズしかいないからだ。

 その四年後にはメルリーナがウィリアム公爵家に入るので「公爵令嬢」は増えるが、いくら「本物の貴族籍」を父親の力で取得していても、母親が平民であることは覆せない事実。

 王家も貴族家も血統を重んじるものだ。平民の血が入った王や当主に頭を垂れることを許容出来る貴族は少ない。

 いくら王太子本人や王太子の側近の高位貴族の跡取り息子らがメルリーナに溺れ、正妃や正妻に望んだとしても周りが許さない。

 そこで、ゲームでは「攻略された攻略対象」達が、メルリーナを「同年代で唯一の公爵令嬢」にするために動くのだ。


 ゲームをプレイしてた前世でも思ったけど、この国終わってね?


 王太子と側近の高位貴族の跡取り息子らが、半分は平民の血の女に溺れて、正当な血筋の公爵令嬢の排除に動くんだよ?

 血統によって分けた身分制度がしっかり根付き、厳格な身分差がキッチリはっきり付いている国で、建国まで遡っても高位貴族と王族の血しか入っていない公爵令嬢(ベルローズ)の価値は、他国からも王妃や皇妃となるべく求婚されるほど高い。

 前世の倫理観が邪魔するけど、この国や周辺諸国では、「半分平民の公爵令嬢」は「半分()汚れた血で出来た女」と認識される。その女が産んだ子供は「四分の一()汚れた血が入った子供」だ。

 そんな常識の世界で、ヒロインが産んだ子供を王位や高位貴族の当主に据えることなど不可能だ。兄弟姉妹の子供か、たとえ爵位が下がっても、()()()()()()()()()()()()分家筋や寄り子の貴族家から養子を取って当主に据えるだろう。

 王位は継承権を持つ王弟か、それが居なければ、王家の血を濃く継いだ公爵家の子供に譲られる筈だ。

 譲らず平民の血の濃い「ヒロインの子」を王位に着けようとすればクーデターが起きかねない。表立ってクーデターが起きなくとも、暗殺はされるだろう。


 と、まぁ、現実でヒーロー達がヒロインに「攻略」されてしまえば待っているのは凋落に破滅でしかない。

 ゲームスタートは今から八年後のヒロインとヒーロー達が十五歳になり、魔法学園に入学してから。

 転生モノの定番として、攻略されたら破滅が待ってるヒーロー達をヒロインより先に籠絡して救う、という筋書きがあるだろうけど、私はそれを選ぶ気はしない。

 何故なら、幼い頃から王子教育や高位貴族の貴族教育を受けておいて「攻略」されるなら、自業自得以外の何ものでもなく、そのような為政者は破滅して退場した方が国の為だからだ。


 さて、ここでゲームと現実のすり合わせを行おう。


 まず、王太子や王太子の側近の高位貴族令息が、「婚約者でもない半分平民の女」の「手作りスイーツ」を口に入れることが有り得ない。

 入学するのが()()学園ということから分かる通り、この世界には魔法が存在する。魔法の存在しない世界の常識から見れば、割と「何でも有り」な世界観でもある。

 なんと、魔法や魔法薬には「魅了」の効果を持つものが存在するのだ。そして、それらを回避及び防御することは、高貴な血を持つ人間として当然の()()ですらある。

 装飾品を身に着けることが当たり前とされる王族や高位貴族は、入浴や就寝時も、装飾品に加工された魅了魔法防御の魔導具を外さない。ハニートラップに掛かることが国難に繋がる階級にある軍人は、身分を問わず身体の目立たない場所に直接、魅了魔法防御の紋を刻まれる。

 更に、魅了の効果を持つ薬や、魅了魔法と併用される危険な魔導具の形状や見た目、匂いや味についても専門の教師を付けられて詳しく学ぶのだ。

 それだけ「高貴な血筋」は狙われることが多く、「魅了」は危険性が高い。

 それでも「魅了」を行う知識が世界から廃棄されないのは、前世で危険な兵器を人類が手放せなかったのと同じような理由だろう。


 ゲーム中で、ヒーロー達は、ヒロインから手作りスイーツを渡されて目の前で食べる。

 その迂闊行為の言い訳は、「婚約者の異母妹であり将来は自分も家族になるから」や、「公爵令嬢が罪に手を染める筈がない」や、「こんな純真な少女が大それた罪を犯すとは思えない」など、王族や高位貴族としてお粗末にも程がある内容。


 公爵家に後妻と養女が迎えられ、その養女は公爵の実子である。そんなセンセーショナルなニュースなど、瞬く間に社交界全域に拡散されるだろう。そして、どの家の当主も、その「後妻」と「養女」について全力で調べた筈だ。「公爵家に新しく人間が増える」というのは、それほどの大事となる。王国貴族の勢力図が書き換えられる可能性が高いからだ。


 だから、王太子やら高位貴族の跡取り息子であるヒーロー達は、「ヒロインが半分平民の血を引いた娘であり、公爵の後妻は平民で、恥知らずにも()()()()貴族令嬢が嫁いでなった正妻が存命の頃から、()()()()()男性に媚を売り、未婚でありながら身体を許して()()()()を設け、あまつさえ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()図々しい奸婦である」という、貴族の地雷を踏みまくっている事実を親から聞かされていなければおかしい。

 彼らは、それぞれ「後継者」なのだ。「聞いていなかった」や「知らなかった」や「意識していなかった」では済まされない。


 前世の倫理観では差別反対だの選民思想最低だの叫ばれそうだが、郷に入っては郷に従え。

 この世界の常識は、血統による身分差で秩序が保たれ、安寧と豊かさが維持されている。それらを乱す者は悪とされる。


 この世界の王族貴族にとって「正しい血統」は何より守らねばならない大切なものだ。

 また、王族や高位貴族の家では兄弟姉妹間、特に母親が異なれば尚更、後継争いで足を引っ張り合い、時には命も奪い合うことは珍しくもない。

 ヒーロー達だって、歴史でも学び、自身や身近な人物の経験上でも知っている筈だ。

 それなのに何故、「王太子の婚約者の異母妹」が差し出す「手作りスイーツ」を毒見もせずに口にする?

 しかも母親は「貴族の正妻が存命の頃から関係を持っている平民」で、「貴族の正妻が産んだ実子のいる家に平民の自分が産んだ娘を連れて乗り込んだ図々しい阿婆擦れ」だ。野心が無い訳がない。

 貴族教育を受けていなくとも、正しい血筋の本妻の娘を本来の地位から引きずり落とす目的で、「王族に素人の手作りを渡す」という不敬が突き抜けた非常識を働いたのではと疑わないか?


 疑わないから食べたのだろう。


 そんな()()()の存在は、国にとって害悪である。

 愚王は国を滅ぼす。

 税金を注ぎ込んで高度な教育を施されて、学園に通う年齢でその愚行ならば、もう自滅して退場した方がいい。

 学園に通う年齢になれば、王太子にはかなりの権限が与えられている。

 言うなれば、一個人のみならず一族の人生を歪めるほどの権力を振るえる存在なのだ。

 その立場にありながら、「正統な公爵令嬢の婚約者」を追い落とそうとしている可能性が否めない「半分平民の女」からの「手作りスイーツ」を「毒見もせずにその場で」食べる迂闊野郎。


 うん。臣民としては王位継承者から消えて欲しいな。


 ここまで、ヒロインがヒーロー達に配るのを単に「手料理」と表現せず「手作りスイーツ」と強調し続けたのには理由がある。

 何故なら、甘みを明確に感じさせる食べ物は、本当に信頼できる間柄でなければ受け取らないのが王族や高位貴族の常識だからだ。

 魅了の効果をもたらす魔法薬の色や形状は様々であるが、味は「強い甘み」に統一されているのだ。何に混ぜても、その甘みだけは消せない。匂いも花や菓子と系統こそ分かれても全て甘い匂いだ。


 また、経口摂取させるタイプの魅了の魔法薬は、魅了を企む側の者の体液を混入することで対象が設定される。

 初回は対象を視界に収めながら摂取させる必要があるが、一週間以内に再度摂取させることを繰り返せば効果は強まり、視界に入らずとも摂取だけで魅了効果は重なっていく。

 経口摂取の魅了の魔法薬は、体液混入という物凄く気持ち悪い工程を経ている危険物な訳だが、身体の内側から効果が侵食するため、身体の表面に刻んだ紋や身に着けた魔導具では防げない。

 各国で力を入れて研究はされているらしいが、今のところ、この手の魔法薬は体内に入れてしまえば防ぐ方法は無いと言われている。

 だ・か・ら、王族や高位貴族は口に入れるものに最大レベルの警戒を怠らないのが当たり前なのだ。

 それを怠るヒーロー達の未来が、お先真っ暗だろうが気にしてやる気も起きない。


 ゲームで課金すると買える「好感度を上げるアイテム」の内訳を思い出してみよう。


 香水、ハート型の砂糖、指輪、である。


 ハート型の砂糖は言わずもがな。魅了の効果を持った魔法薬だろう。

 ゲーム中では、ヒーロー達とのお茶会シーンで「アイテム使用」のアイコンからウィンドウを開いて「ハート型の砂糖」を選択すると、それをヒーロー達の飲み物に入れてヒロインがお茶を出していた。

 得体の知れない出処も分からない、片親が平民の「王太子の婚約者の異母妹」が()()()()()()を、勝手に入れられた飲み物を平気で飲む王太子や高位貴族令息。

 一遍死んでやり直した方がいい。


 香水も、魅了の魔法薬の形状の一種として存在が確認されている。香りは当然、甘い。これも対象を設定する工程は体液混入だ。

 香水の形状では、摂取させる難易度が経口摂取より低くなるが、鼻や口から吸入する程度なので経口摂取より効果も低くなる。

 だから効果を補うために、肌に直接触れる身体接触を併用する。体温を交換することで皮膚からも吸収させることが出来るのだ。

 婚約者でもない女と直肌に触れ合って体温を交換する男。

 無いわー。ただの浮気じゃなく、政略を軽視してるようにしか見えないところが貴族として無理。


 最後に指輪だけど、前世にも実在したし、様々な物語に小物として登場してた、「悪意に塗れた仕掛けのある指輪」は、この世界の貴族界でもポピュラーな代物だ。ただし、この場合は毒針が飛び出したり飾り石部分に薬を仕込んだものではない。指輪型の魔導具だ。

 「魅了魔法防御の魔導具を加工した装飾品」が存在するんだから、「魔法防御用魔導具の効果を打ち消す魔導具を加工した装飾品」も存在する。物凄く高価で使用回数制限もあるけれど。

 まぁ、桁外れに高度かつ複雑な魔法を込めるために、素材や形状や色合いが限定されるので、これに関しては全種類をまるっと暗記しておけば警戒して避けられる。

 ちなみに、形状はピンキーリングのみである。右手の小指に嵌めることが効果発動条件の一つなので、()()()()()()()()、右手の小指にだけは指輪を嵌めない。

 右手の小指に指輪を嵌めた女を近寄らせる王子と高位貴族令息。

 駄目だな、終わってる。


 それにしても、恐ろしくハイスペックな幼女だな、ベルローズ。

 ベルローズは現在、まだ七歳だ。

 感情の記憶を失ってしまったことで、今までのベルローズが何を考え、何を悩んでいたのか、今の私には分からない。

 でも、七歳でこれだけの知識と教養を持っていることは、この世界の高位貴族でも特異だという「知識」も私は持っている。

 ただ学ぶことが好きだったのかもしれないが、何か心配事があって、その対策のために、ここまで知識を身に付けたのかもしれない。

 まぁ、現状、当主に冷遇されているんだから、学ぶことで自分の価値を高めなければという強迫観念もあったのかもしれない。自分は王太子の婚約者に指名されるだろうという予想も、学んだ知識から導き出されただろうし。

 今後も精進していくけれど、この年齢で既に淑女のマナーや所作は身体が覚えているし、ダンスも同様。ある程度の護身術や体術も身に付いている。


 それと、魔法。


 どうやらベルローズの魔力量は無茶苦茶多い。

 教師の前では実力を小出しに隠して来たようだが、こっそり独学で高度な魔法概念を解読し、オリジナルの魔法も幾つか編み出している。

 何が目的でオリジナル魔法を研究していたのか、何故、感情や思考の記憶を失ってしまったのかは不明だが、このまま魔法の能力を鍛えて伸ばしていけば、ベルローズが「悪役令嬢」として断罪されても、処刑前に脱出は可能なんじゃないだろうか。


 ゲームのベルローズの未来は処刑による死亡一択だ。


 ヒロインがどのルートを選ぼうが、グッドエンドだろうがバッドエンドだろうが、ノーマルエンドでさえ、「悪役令嬢」ベルローズは処刑されて死ぬ。

 罪状は、グッドエンドとノーマルエンドでは「ヒロインを虐めたから」。ノーマルエンドでも、友情からヒーロー達が「悪役令嬢」を断罪する。

 虐めた罪って何だ? と思うよね。


『高貴な生まれでありながら、卑しくも虐めなどという所業に及んだベルローズは、王国貴族の名を汚した。その存在を許す訳にはいかない。よって恥ずべき存在である悪女に死という慈悲を与える』


 んですってよ、奥様。

 頭が湧いてるとしか思えない台詞ですよね。前世の一般人思考だけじゃなく、この世界の貴族の常識を身に付けている()()()でも、そう思いますわ。

 こんな罪状で処刑。他国の王妃や皇妃として望まれるほどの正統な血を持つ公爵令嬢を。まともな取り調べもせず、公的な調査もせず、裁判も無く、いきなり処刑だ。頭がおかしいとしか言いようが無い。

 もし本当にゲームのままの処刑が行われたら、周辺国の幾つかは攻め込んで来る可能性がある。「そんなくだらん殺し方するほど要らなかったなら、こっちの国にくれたら良かっただろ!」と絶対に言われる。

 血統重視のこの世界では、それほどベルローズの血の価値は高い。

 たしか、バッドエンドでのベルローズの処刑理由が他国の介入阻止を窺わせるものだった。

 バッドエンドでは、平民の愛人を後妻に迎えた父公爵が失脚したことで、ヒロインもヒーロー達から遠ざけられるが、ベルローズも婚約破棄される。

 その後で処刑になる理由が以下だ。


『ベルローズに婚約者がいなくなれば、他国に我が国の高貴な血が流出する懸念がある。国益を損なう事態を未然に防ぐため、他国の手が伸ばされる前に処刑とする』


 何でそうなる⁉

 罪人でもないのに処刑ってのが先ずおかしいし、絶対に国外にバレたら不味い醜聞を最前列で観察していた王太子の婚約者(ベルローズ)の口封じ目的でしょ!

 国内貴族と結婚させても、生かしておけば、ベルローズの血筋と「王太子の婚約者」として公務に随行していた知名度から、国外の要人と接触する機会は、いつか確実に来る。

 だから兎に角、「半分平民の女に王太子や側近が()()()()()()()()()()()()()()()()籠絡されかかった事実を知るベルローズ」を、今後の国家運営のために、生かしておきたくないんだろうな。


 ヒロインがバッドエンドだと、ヒーロー達は、隠蔽も出来ないくらいの暴走は一応未遂だ。

 更生の余地ありとなれば、王太子と複数名の高位貴族嫡男を公爵令嬢一人と秤にかけて、最高権力者を含む親達もベルローズを犠牲にする方を選ぶだろう。

 バッドエンドでは父親のウィリアム公爵が失脚しているから、その分ベルローズの価値も下がっている。産み腹としての価値に変わりは無いが、「権勢を誇る公爵家との繋がり」というオプションが無い。


 何れにせよ、どのルートのどんなエンディングでも、ベルローズの命を惜しむ者は登場しない。

 おかしな話だ。誰の視点なんだか。ああ、ヒロインか。そりゃあ「悪役令嬢」には死んで欲しいだろうし、全世界から死を願われていて欲しいだろうな。


 けど、私は無駄死にしてやる気は無い。


 とは言え、私には、感情の記憶を失っても、七年間、「公爵令嬢ベルローズ」として学びながら生きてきた経験の記憶は保たれているから、公爵家の令嬢としての義務を放棄するような逃亡は出来ない。

 ゲームと同じように、王太子の婚約者の指名はされるだろうし、それは貴族であり王国の臣民の務めとして受け入れるつもりだ。

 自業自得な道を進む阿呆どもを救ってやる気はさらさら無いが、その道を進む確率を多少でも減らすため、「魅了」への警戒を忘れないよう、婚約者や側近達へ伝え続けることを怠りはしない。

 ベルローズには魔力も才能も有り余っているようだから、魅了効果の魔法薬に対する解呪薬の研究も進めよう。

 誇り高き公爵家の令嬢として、王国を愛し、国王陛下に忠誠を誓う臣民として、能う限りの努力は尽くすつもりだ。






 ───そう思っていた時期が私にもありました。


 九歳、ゲームと同じようにベルローズは王家から王太子の婚約者に指名され、従った。この日から始まったアホほど過酷な王太子妃教育だって、血尿が出ても泣き言を溢さず食らいついて尽力した。

 十三歳、ゲームと同じように父公爵が平民の愛人を後妻に迎え、その愛人との間の娘メルリーナを「実子である」と届け出て養女にした。

 メルリーナとその母親の性格が余りにアレな感じなので、もしや母子共々「転生色情狂系ヒロイン」ではないかと疑ったが、ただただ己の欲望にのみ忠実で強欲かつ下品で非常識な人間というだけだった。


 十五歳、ベルローズ、メルリーナ、王太子他攻略対象の皆さんが魔法学園に入学。ゲームならばスタート画面が表示されるところだ。

 そしてスタート早々、あっという間にヒーロー達はヒロイン(メルリーナ)に攻略された。


 早過ぎでしょうが!


 あ・れ・ほ・ど!

 不用意に他人から渡された物を口に入れるなって言って来たよね⁉

 口を酸っぱくして九歳から六年間ずーっと言って来たよね⁉

 帝王学でも社交術の勉強でも、側近達も一緒に、「政略によって結ばれた契約の軽視の危険性」や「御家騒動」や「高貴な身分の者の婚約者の座を巡る血腥い過去の事件」について、みっちり復習したよねぇ⁉

 ハニートラップの具体例や、魅了の魔法を受けないための防ぎ方と躱し方も、専門講師を招いて学園入学前に特別授業をしてもらったのにね!


 全部無駄だったみたいだね!


 魅了の効果をもたらす魔法薬の解呪薬は、残念ながら完成に至らなかった。

 何通りもの原材料で作り出され、日々種類が増え続ける魅了の魔法薬の効果は「魅了」一本だ。

 しかし、それを解呪しようとするならば、使用された魅了の魔法薬の原材料に対応する材料で作り出した魔法薬でなければならない。

 摂取したその都度、使われた魅了の魔法薬を特定し、それに対応した解呪薬を投与すれば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()解呪が可能だ。

 しかし、解呪薬と言っても魔法薬の一種である。用法用量が間違っていた場合は、最悪体内で魔力暴走が起こり身体が爆散する。

 とてもではないが、そんなリスクを冒して王太子や高位貴族の跡取り息子に解呪薬の投与など出来ない。

 魅了の魔法薬には必ず使われる共通原料に作用する、気休め程度に「魅了効果を下げる薬」は完成したが、既にメルリーナに魅了され始めていた男達はベルローズへの敵視が著しく、投与の隙は無かった。


 メルリーナが()()()()()()()を振り撒いて他人の婚約者にしなだれかかり、肌の露出している顔や首筋を舐めるように撫で回しているのを、婚約者として淑女として冷静に窘めたことも「虐め」にカウントされた。

 メルリーナが王太子や側近達を侍らせてイチャコラする破廉恥お茶会で、メルリーナが()()()()()()()()()()()からハート型の砂糖を取り出して男性陣の紅茶にボトボト落としている非常識も、事実のみを淡々と指摘したことを「虐め」と糾弾された。

 メルリーナの()()()()()に如何にも怪しげな指輪が光っていることも、魅了魔法の射程範囲内に近付かれる前に婚約者達に報告したが、「嫉妬か、みっともない」や、「宝石を強請るつもりか、浅ましい」などと見当違いの暴言を吐かれ、話にならなかった。


 早い時点からメルリーナの所持品から魅了に関する物を探し出し取り上げようとしていたが、父公爵とメルリーナに付けられた男性の護衛騎士達が初期から魅了済みで、「お義姉様が怖いの」と嘘泣きをするメルリーナにベルローズが近付くことは叶わなかった。

 メルリーナが引き取られた当初から、屋敷でメルリーナとベルローズの行動範囲は完全に分断されていた。

 メルリーナの居室の周辺にベルローズが踏み入れば、メルリーナの護衛騎士はベルローズを斬って良いと当主からの許可が出ていた。ベルローズがメルリーナに危害を加える恐れがあるという理由だった。

 それらは全て、メルリーナの言葉のままに、愛娘(メルリーナ)の望みを父公爵が叶えたからだ。


 斬り殺されるのは嫌なので、転移魔法や姿と気配を完全に消す魔法を編み出す研究もしたが、どちらも世界の理から許されない魔法だという結論に辿り着いた。

 理論上は可能で魔力量も十分なのに、転移はともかく魔法による隠密も決して作動しないことを不思議に思っていたら、ある古文書から「古く正しき血統を汚す、又は断つことが容易になる魔法は、正しい術式に魔力を込めても発動することがない」という研究結果を見つけた。

 たしかに転移も隠密も、暗殺や強姦し放題になる魔法ではあるけれど、この世界そのものが血統重視主義なんだな、と思った。


 結局、私が奮闘する意味などあったのかと虚しくなるほど、何もかもどうにもならなかった。


 王太子らの様子が異常であることは、彼らの親である国王陛下や王妃殿下、重臣達が把握していない筈は無いというのに、彼らは沈黙を守っている。

 王太子妃教育で城に上がった際に、何度も相談や報告をしていたが、「そうか、今後も励みなさい」としか言われなかった。

 被害が狭い範囲──王太子と側近達と婚約者達のみ──と判断され、為政者とその伴侶としての最終適性試験の場にでも使われているのだろうか。

 狭くとも甚大な被害だと思うが、陛下たちにとっては、それほどでもないのかもしれない。

 そう思えば諦念が浮かんで来る。


 ゲームのエンディングは十八歳の卒業パーティーだが、入学早々に逆ハーレムを完成させ、日々狂乱の痴態を公開しているヒーロー達を見れば、「エンディングの時期」など来なくとも、陛下と王妃様が国外に出られ、王太子が国内最高権力者となる日に「悪役令嬢」の断罪と処刑が執行されるのではないかと感じた。

 それほど、王太子達はメルリーナに既に溺れ狂っている。


 転移魔法も隠密魔法も、この世界では発動しない魔法だ。

 大量に魔力を込めた攻撃魔法をぶっ放せば逃亡は可能だろうが、そうなれば「無実の罪」ではなく「本物の凶悪犯罪者」として手配されての拘束・処刑待ちになってしまう。


 もう、どうしようもない。


 諦念に侵された私は、国のために最善とは言い難い奥の手を使うことにした。

 このまま、まるでシナリオに沿うように、頭のおかしな理由で処刑されるのは、あまりにも無念だった。

 感情と思考の記憶を失った七歳以前のベルローズの、幼い子供だというのに甘えの一切を排除した努力も、前世の記憶を蘇らせてからの、公爵令嬢の矜持を胸に、国のために血反吐を吐いて死力を尽くして来た私の生き様も、全てが無駄で無価値なものだと突き付けられることが、耐えられなかった。


 私は完成させたオリジナルの召喚魔法を発動させる。

 召喚魔法というものは既に存在するが、使えば厳罰に処せられる「悪魔」を召喚するものか、精霊に選ばれた血筋の者しか使えない「精霊獣」を召喚する二種類しか無い。

 私が編み出した召喚魔法は、「死霊」を召喚するものだ。

 召喚される「死霊」のランクは、込める魔力の量と質に拠る。


『これはこれは、可愛らしいお嬢さんが恐ろしい私に何用かな?』


 何も無かった空間に、ゾッとするほど美しい男が突如現れ、ゆるりと首を傾げる。

 声色は甘く、優しげな笑みまで浮かべているというのに、湧き上がる恐怖を抑え込み、震えを極力目立たぬようにするだけで体力をごっそり消耗する感覚がある。

 私はガクガクと大きく震えそうになる自分の身体を叱咤して、完璧なカーテシーの後に畏敬の念を乗せて声を発した。


「お初にお目にかかります。わたくしはウィリアム公爵家が長女ベルローズと申します。此度はわたくしの召喚に応じていただき、まずは御礼申し上げます」


『うん、ベルローズ。君のことは知っているよ。君ほどの血統の乙女は、この世界に他には居ないからね』


 ベルローズは死霊にまで名が知れる血統の持ち主だったのか。

 内心の驚きに気を逸らさぬよう気を引き締めて、私はこの後我が身に降りかかるだろう無惨な末路を口にする。


「光栄なことでございます。しかし、わたくしの血は、恐らく近い内に言いがかりのような罪状で婚約者に断罪され処刑となり、未来へ繋ぐことは叶いません」


『へぇ、それはまた物騒な。君ほどの血統であれば、婚約者は()()()()()()()()()でしょ? 血統重視の教育を叩き込まれた身分の男が、そんな愚かな真似をするのかい?』


 揶揄うような口調に、情けない思いが込み上げるが、召喚中に感情を揺らす訳にはいかない。相手の力に飲み込まれ、自我を失ってしまうかもしれない。


「わたくしの婚約者は、この国の王太子ですが、婚約者とその側近達は、わたくしの異母妹の魅了にかかっておりますので」


『うわぁ、王太子教育を受けておいて魅了にかかったって? 恥ずかしい男だねぇ。理性を母胎に忘れて来たケダモノかな? それとも脳味噌が頭蓋骨じゃなく下半身の海綿体に収納された変異体の人間? 何れにしても、随分な珍事だねぇ』


「・・・お恥ずかしい限りでございます」


 嗚呼、本当に、王国民として、婚約者として、恥ずかしくて堪らない。

 婚約者に指名される以前から、この国の王太子となるべく生まれた第一王子の()()()()は、私にとっても、多分、感情の記憶を失った七歳以前のベルローズにとっても、歓迎し難く、どうしても相容れないものだった。

 知能が低い訳では無いし、試験の成績だけなら優秀な部類であるのに、幼子のような性質が障害となり、学んだ筈の物事を実践することが出来ない御人なのだ。側近達は皆、王太子に追随するばかり。

 王太子の性質を変えることも、側近を入れ替えて環境を改善することも、私の力及ばずで現状に至らせてしまった。

 無力感と自責の念に揺れそうな感情を、目を伏せ呼吸を整えると同時に抑えようとした時、目の前の美しい男が手を伸ばし、私の顎に指先を掛けて上向けさせた。

 冷たい指先に、目線を上げさせられる。


『で? ベルローズ。悪魔ではなく()を喚び出したのだから、死にまつわる嘆願があるのだろう? 言ってみるといい。私は遍く()()を支配する者。君の願いを叶える力が有ると思うよ?』


 謳うように紡がれた言葉。三日月形に細められた眼差し。酷薄に吊り上がる真っ赤な唇の両端。

 私の喉が、はしたなくも、ゴクリと鳴る。

 この召喚魔法を完成させた時から、もしも使わなければならない時が来たならば、私の願いは決まっていた。


「わたくしの処刑は免れないでしょう。わたくしは近い内に、何も成せずに死んでしまいます。ですが、わたくしは命を奪われても、わたくしの、この手で、魅了によって国を(ほしいまま)にせんとする毒婦を断罪し、己が立場も覚えず易々と毒婦の手に落ちることを()()()者達の力と権利を排除することを望んでいるのです」


 じっと、深淵の闇のような双眸と視線を合わせ、逸らすこと無く訴える。

 男は、やや間を置いて、満足気に喉を鳴らすように笑った。

 そして、頷く。


『うん、良いよ。ベルローズ。君は、その血統に相応しく誇り高い。私には君の願いを叶える力が有る。君が処刑されて死んだら、君を私の眷属にしてあげよう。私の眷属になったことで()()()()()()()()()()()()()()。断罪も、力を取り上げることも、きっと上手くいくだろう。それで? 君は私に、どんな対価をくれるのかな? ベルローズ』


「わたくしの持つものでしたら、何でも差し上げます。わたくしに出来ることならば、如何様なことでもいたします」


 深々と頭を垂れると、その下げた頭を冷たい両手が耳を挟むようにして持ち上げる。

 至近距離に、ゾッとするほど美しい顔が迫った。


『そう、ベルローズ。君は私に()()()くれるし、()()()()()()()()してくれるんだね? じゃあ、私の眷属になった後は、私の花嫁になってもらおう。いいね?』


「・・・はい。仰せのままに」


 もう、処刑は免れない。この身を惜しんでも詮無いこと。

 恐ろしくない訳では無いが、私の優先順位は元より決まっている。

 この命が尽きようとも、この国に()()()を残しておくことは出来ない。

 私が黙って犬死にしようが、王太子に魅了を行った、半分平民であるメルリーナは王家によって抹殺されるだろう。だが、王太子や側近らは、親によっては甘い処分で更生を期待される可能性があるので看過せない。


 一通りの王太子教育や、ただの高位貴族令息以上になる王太子の側近としての教育を受け、その上で、前世の記憶を持つ私が組んだ特別授業を九歳から十五歳まで六年間受けておいて、この体たらくだ。

 更生も成長も望めない。馬鹿は死ななきゃ治らないという、前世の言葉を思い出す。

 たとえ今回メルリーナを彼らの前から排除しても、生きている限り同じ過ちを彼らは繰り返すだろう。そんな男達に地位や権力や力を持たせたまま生かしておけば、国が荒れる。

 どれだけ不用意に生き恥を晒す男達であっても、彼らは血統だけは高貴なのだ。どんな輩にウッカリ利用されるか知れたものではない。


『では、契約成立だね。ベルローズ、今から君は私の婚約者だ。君に私の印を付けるよ』


 やけに嬉しそうに笑みを深める目の前の男に、僅かばかり後悔が過るが、もう手遅れだ。

 男の顔が視認できないほど近付き、真っ赤な唇が私のものと重なった。

 王太子とは清い関係だったから、これがベルローズの初めての口付けとなる。

 そして、これが「印を付ける」行為だったらしい。私の舌が、何かしらの紋様のような形に沿って痺れるような熱さを感じ、それが収まった時、男はようやく唇を放した。


『君が死んだら迎えに行くよ、ベルローズ。我が花嫁。ああ、今はまだ、愛しい婚約者殿、かな』


 芝居じみた気障な仕草で私の手を取り、手の甲と手のひらに口付ける、()()()()()()()()()()()()()()()

 私は、「公爵令嬢ベルローズ」に相応しい優雅な笑みを浮かべ、しっとりと頷いた。


「お待ちしております。未来の旦那様」


 一瞬、虚を突かれたように目を瞠り、益々笑みを深めた男は、獰猛な妖艶さを眼差しに乗せて私に流し目をくれると、現れた時と同じように、突如として姿を消した。


 もう、後戻りは出来ない。

 この道を選んだのは私。

 そして、彼ら。

 だから迷いも後悔も無い。


 さあ、最期の狂宴へ。


 ───時は来た。


 美しい死霊の男との契約から、ほんの十日足らず。

 国王夫妻が国外へ視察に出られると、待ち構えたように王太子らが動いた。

 全校生徒を講堂に呼び集めたのだ。

 ヒロイン(メルリーナ)の魅了が始まってから、まだ半年も経っていない。

 ゲームでは開始からエンディングまで三年間あった。その分、御乱行は大っぴらになっていたのだが、今はまだ公衆の面前での破廉恥行為は学園内に留まっている。だから陛下達も対応を決めかねていたのかもしれない。


 もう、遅いが。


 ゲームでは王城のホールで多くの貴族の目に晒されながらの断罪、婚約破棄、処刑だったが、()()までの時間が短縮されたせいか、場所は学園の講堂で、オーディエンスは当主ではない未成年の生徒ばかりというショボい舞台だ。

 それでも、することは変わらない。


 ───私には、変えられなかった。


「ベルローズ・ウィリアム公爵令嬢! 貴様との婚約を破棄する!」


 個性も捻りも無い在り来りな台詞が、高らかに王太子の口から放たれる。

 続くのは、「ベルローズがメルリーナを虐めた」という断罪。

 まさか現実で、「正統な公爵令嬢が半分平民の異母妹を虐めたこと」を、堂々と「処刑に相応しい凶悪犯罪」として、「自称次期宰相」が読み上げるとは思わなかった。まぁ、宰相の嫡男なだけで、実際は内定もしていない「自称」だから、有り得たのかな。


 この日まで、国外への視察予定が組まれていた陛下と王妃様にも、王太子達に不穏な動きが見られることはご報告させていただき、良くない事を決行するならば両陛下の国外視察中であろうという予想と不安も相談していた。

 死霊の男と契約はしていたが、それでも最後まで力を尽くしたかった。

 人の起こした問題を、人の手で裁き、始末をつけられるように。


 けれど、それは、もう叶わない。


 王太子による私の処刑宣言が成された。

 現在の国内最高権力者の発言だ。

 貴族の子供でしかない生徒達に、撤回の声を上げる者など居ない。

 その宣言が、どれほど馬鹿馬鹿しく理不尽であっても、逆らうことは出来ない。それが王族なのだ。

 その重さを、私の()婚約者は終ぞ覚えることが出来なかった。


 王太子の側近の「自称次期騎士団総長」が抜剣して迫って来る。

 私の身体を乱暴に床に引き倒して背中を踏みつけるのは、やはり側近の一人で「自称次期王宮執事長」。

 髪を掴んで強引に私の首をさらけ出す姿勢にさせたのは、「自称次期王宮の金庫番」。


 娯楽作品でしかないゲームの中でさえ、非現実的で頭の湧いた台詞だと思ったベルローズの断罪シーンは、実際に現実のものとして体験すると、ひょっとして頭がおかしいのは私の方だったのだろうかと錯覚をもたらすほどの悪夢で、二度としたくない経験だなと他人事のように感想を抱いた。


 そして、私の首が講堂の床に落ちる。


 快哉を叫び歓喜にはしゃぐ、ヒロイン(メルリーナ)ヒーロー達(王太子と側近達)

 心の底から喜びの熱が冷めやらぬ一角と、逆らえば()()()()()()()()()()という疑心と恐怖から自棄糞のように祝福の拍手を打ち鳴らす全校生徒。

 そんな狂気の絵面に、ホラーテイストを加味するように、私は床に落ちた自分の首を拾って抱え、立ち上がった。


「・・・え?」


 魅了に溺れていても、異質な気配を真っ先に察知したのは、流石自称でも次期騎士団総長。

 真っ青になって固まる、私の首を斬り落とした男の視線の先で、私は小脇に抱えていた自分の首を本来の位置に戻した。ついでに、乱れていた服と髪も簡単に直す。

 生前から使えた魔法で、血塗れになった自分の姿を綺麗にすることも出来るが、敢えて、それはそのままにした。


「な・・・な・・・・っ⁉」


 様子のおかしい「自称次期騎士団総長」に気付いた仲間達の視界にも私が映り込み、目を剥いた彼らから恐慌のざわめきが広がるのを、私は繁々と眺めていた。

 なるほど、死霊の男の言った通り、()()()()()()()()()


 メルリーナに魅了の魔法薬を最初に与えたのは、メルリーナの母親だった。

 嫁き遅れの花屋の娘だったメルリーナの母親は、妻へ贈る花束を度々買いに来ていた「どう見ても金持ち」なウィリアム公爵を手に入れるために、少女時代に下町の占い婆に教わった悪魔召喚を行っていた。

 召喚した悪魔がメルリーナの母親に、魅了の魔法薬を与えて()()()()()()を伝授した。

 メルリーナが学園入学前に、父公爵や男性護衛騎士や男性使用人に使っていた魅了の魔法薬の出処は、母親だ。


 学園入学後、メルリーナは母親から()()を教わって、自らも悪魔を召喚していた。

 メルリーナも母親も魔力の質も量も良くは無いので、どちらも低位の下級悪魔しか召喚出来ていない。

 自ら魔法薬や魔導具を作る力も持っていない悪魔だったが、他の人間が保管してた魔法薬や魔導具を盗んで彼女達に横流ししていた。

 ゲームで「課金アイテム」となっていた物たちの出処は、召喚した悪魔だったのだ。どうりで、いくら調べても後ろ暗い商人や裏稼業の人物との接点が出ない筈だ。

 魅了に必要なアイテムを彼女達に渡していたのは、そもそも人間ではなかった。店を開いているわけでもない。


 メルリーナと、おまけに母親の背後にも、召喚された悪魔が存在した。

 契約の時、「色々見えるようになる」と言っていたあの男は、最初から全て知っていたのだろう。


 メルリーナと母親が悪魔召喚を行っていた事実があれば、こうなる前に二人を拘束出来ていた。

 学園に通い始めた王太子と側近達が、婚約者でもない半分平民の女に魅了をかけられている、()()()()()事実では動かない陛下や宰相達も、「公爵家の簒奪を謀り悪魔召喚を行った平民と半分平民の女」の存在には、間を置かず兵を差し向けただろう。


 私は、あの死霊の男の手のひらの上で転がされたのだ。

 でも、それは私の力不足が招いたこと。

 だから、今は手に入れた()()()()で、私の望みを叶えるだけ。


 私は右手を持ち上げ、真っ直ぐにメルリーナとそれを囲む王太子らを指差した。今の私にはもう、人間の王族に対するマナー違反や無礼など気にかける必要も無い。


『王国の未来を憂い、死の淵より一時戻った。これより、其処な毒婦と己が立場も覚えず毒婦に溺れた愚か者共の断罪を行う』


 朗々と響いた私の声に、ざわめきが止み、言葉の内容を理解した生徒達の何割かが恐怖で気を失った。

 私に指を突き付けられた者達は、理解に至らないようで呆然としていたが、一番早く硬直から戻ったのは、一番図々しい毒婦だった。


「はぁ⁉ 何言ってんの⁉ 首斬り落とされて殺されたくせに何で動いてんのよ‼ アンタ邪魔なんだから、さっさと黙って死んでなさいよ‼」


 硬直からは戻ったが、男の前では常に被っていた猫を被り直す余裕は無かったようだ。

 この下品な本質も見抜かず、見た目だけで「健気でか弱い純真な少女」と思い込んだ男達の短絡さ、浅慮さが改めて情けない。

 唾を飛ばして喚き散らすメルリーナは、御自慢の「可愛らしい顔」もグシャリと歪み、大変に醜悪だ。


『其処な毒婦は母親と共謀し、公爵家の財を我が物とするため悪魔を召喚。更に、公爵家の正統な娘の婚約者である我が国の王太子を魅了に落とし、王妃となって国庫も私物化する未来をも企み、自ら召喚した悪魔の力を借りた。王国法に則り、悪魔召喚は拷問の後、火刑である』


 気を失っていない生徒達の間に、再びざわめきが広がる。

 既存の召喚魔法で、悪魔の召喚は確かに可能だ。選ばれた血筋も高価な魔法媒体も必要無い。

 ただし、行った場合の厳罰が、満足な教育を受けられない貧民であっても周知されているため、実際に行う者は余り聞かない。

 悪魔に願ったところで、召喚者の力が弱ければ、大それた望みを叶える力を持つ存在など召喚出来ないのだ。

 悪魔召喚は、高価な魔法媒体を必要としない代わりに、喚び出しただけで対価が発生する召喚魔法だ。対価以上の得を得られることは少ない。


 平民は魔法の行使に於いて血統的に劣る。魔力の質が決定的に違うからだ。

 ()()()()()、平民の血で召喚出来る程度の悪魔が、保管されているならば強力な盗難防止結界の中であろう、高価かつ危険性の高い物を盗み出すことなど出来ない。

 強力な盗難防止結界は、魔法による盗難も想定している。低位の下級悪魔では弾かれてしまう筈だ。

 それでも平民のメルリーナの母親が、効力の高い魅了の魔法薬を入手し、メルリーナが貴族の城が買えるほど高価な魔導具を入手出来ていたのは、彼女達が召喚した下級悪魔の背後に、強大な力を持つ高位の悪魔が存在し、()()()()()()力を貸していたから。

 その、理由は───。


『ベルローズ、迎えに来たよ。我が花嫁』


 思考を遮るように、私と契約した死霊の男が現れた。

 その存在だけで畏怖をもたらす男の出現に、未だ意識を保っていた生徒達の大半も気を失った。

 相も変わらずゾッとするほど美しい顔に愉悦の笑みを乗せ、男は背後から抱えるように私の血塗れの身体に腕を回す。


『毒婦達の処分は人間も真面目にやるだろうさ。下級悪魔の力を借りて魅了を使ったとしても、全ての兵や拷問官や処刑人を誑し込める力なんて無いよ。あの程度の雑魚の協力で平民に魅了されるのは、()()()()()()だけさ』


 突然現れた、明らかに人外の男に「余程の愚か者」扱いされたことで、怒りからようやく硬直が解けた王太子達が激高する前に、私は彼らの魅了効果を消した。

 何も難しいことは無い。彼らの身体の中の、何処で何が起こっているのか見えさえすれば、私が生前に開発していた、解呪薬に込める予定だった魔法で、どれも打ち消すことが出来た。

 随分と多岐に渡り、原材料の異なる複数の魅了の魔法薬を摂取していたようだから、一か八かで解呪薬を投与していたら彼らの身体は爆散していただろう。


「は? あ? ぅあぁあ?」


 魅了魔法を解かれても、魅了されていた間の記憶は残る。

 蹲って頭を抱え、意味を成さない彼らの声に含まれる感情は、困惑、混乱、恐怖、屈辱、憤怒。

 それと、深い後悔。


「え、何、どうしたのよ。あの女に何かされたの? さっさと立ってアタシを守ってよ! 何か、あの女、アタシを断罪とかオカシイこと言ってるし! ムカつくからもう一回アイツの首落として殺してよ!」


 本性を表しただけで、メルリーナは何も変わっていない。()()()()()()()()()()()なのに、彼らは化け物を見るような目で溺愛していた女(メルリーナ)を見て、尻で後退った。

 魅了を解いただけで()()()()()()()()()()、その様子を見て、私は確信した。

 メルリーナ達が召喚した下級悪魔の背後に高位の悪魔の存在を感じた時から育っている、子供時代から今までずっと感じていた、多くの違和感が、はっきりとした形となり、最悪の答えを導き出す。


 私が置かれていた苦境の、本当の黒幕()を。


 どうりで、どんな努力も意味を成さず、働きかけも誰にも響かない筈だ。

 そうか、そういうことだったのか。

 ならば、人の手で裁かせ、罪を償わせるのは、悪魔召喚の罪を犯した女達だけで良い。

 ()()は、もう、()()()()()()()()()()。自らの処遇は、己の頭で考えて、()()()()()()()()()()だろう。


『旦那様』


 背後から私を抱える男にかける声は、この男の召喚を決意した日以上の諦念が滲む。


『なんだい? ベルローズ。愛しい花嫁』


 血で汚れた私の髪を一房持ち上げて唇を落としながら、男は毒のように甘い声で応じる。


『もう、ここに用はありません。わたくしを、連れ去ってくださいませ』


『何処へ?』


 甚振るように愉しげに、男が問う。「君なら、もう正解に辿り着いたよね?」という確認が、言外に含まれているのを悟った。

 最初から、狙いは私だったのだ。()

 だから私は、男の確認を肯定する言葉を紡ぐ。


()()()()の手の届かない所へ』


『ああ、勿論だとも。愛しい花嫁の望みは叶えよう。私には、その力があるからね』


 嬉しそうに、愛しげに、男が囁く。

 私はもう、人間達に目を向けることは無かった。

 国を想う情熱も、高貴な血筋に生まれた矜持も、もう何も持ってはいない。

 初めから、持つ意味さえ無かったのだ。


 男が私を抱いたまま、王国から姿を消した後、全てを諦めた私は、目を閉じて深い眠りについた。









『可哀想なベルローズ』


 暗闇の中、眠る花嫁(ベルローズ)に愛おしげな眼差しを落として頬を撫でながら、答え合わせのように男の独白が流れる。


『この世界で、これほどまでに血統が重視される本当の理由に、君はもう気付いているね? だから絶望して永い眠りについてしまった』


 優しい、優しい声で紡がれるのは、残酷な真実。


『この世界の人間を創る時、力有る存在達は役割を分けた。神々と高位の精霊達は、己の血を基に、最初の王族と貴族達を創った。高位の悪魔は配下の下級悪魔らに命じて多くの体液を供出させ、それらを基に平民を創った。何しろ、平民は創らなければならない数が多かったからね。だから、そもそも人間の王族や貴族と平民は、元から本当に違う生き物なんだ』


 人間の社会に定着する身分差別も、平民の血を「汚れたもの」という認識を王族や貴族が持ち続けているのも、真実までは知らずとも血に受け継がれた記憶から、覆しようの無いものなのだと男は続ける。


『この世界では、神々にも精霊にも悪魔にも女性が存在しない。彼らが人間を創った目的は、彼らの花嫁を産み出すことだ。神々や高位の精霊の血を基に創られた人間のみで交配し、長い時間をかけて何代にも渡って醸成された()()()()()の乙女が、高潔な魂を維持したまま人間の手にかかって死ぬことで、乙女は花嫁たり得る存在となる』


 言っただろう。君の婚約者ならば、最低でも王族か皇族だと。それは、人間だったらの話。君は神々や高位の精霊や悪魔の花嫁になる存在だったんだ。

 だから、君の努力は報われず、救いが訪れることも無かったんだよ。

 男は憐れむように囁く。


『神々も、精霊も、悪魔も、皆が君の周囲の人間達から、正しいことを見る目を奪っていたんだ。嫁入りに相応しい年頃になった君が、人間達の手によって殺される為に』


 男の眷属になり、人間には見えないものが見えるようになったベルローズが、下級悪魔しか召喚出来なかったメルリーナと母親が入手して使用した品々の高価さから、上位の悪魔の存在を感じ取り、男の花嫁となったことで、()()花嫁候補だったベルローズの周囲の人間達への呪いも解けた時、聡明なベルローズは正解に辿り着いてしまった。


 どんな知識も努力も想いも、無駄でしかなかったという、絶望の真実に。


 ベルローズは、神々か高位の精霊か、はたまた高位の悪魔のいずれかの花嫁となるために、年頃になって人間に殺されるまで、高潔な魂と純潔を保ちながら、花婿候補の力有る存在達によって飼われていたに過ぎない。

 彼女の意思や感情など関係ない。いや、必要が無かったのだ。


『君が七歳の時に感情の記憶を失ったのはね、あの頃、君が初恋を覚えてしまったからだよ。堕落させない為に、純潔を保つ為に、君は神々により感情の記憶を奪われた。君の初恋相手だった、明るく優しい庭師の少年は、精霊の悪戯により泉に落ちて死んでしまった。感情の記憶を失うことで大きく空いてしまった君の魂の穴を埋める為に、前世の記憶を蘇らせたのは最上位の悪魔だよ』


 彼らにとって都合の良い記憶だけ。だけどね。と、男は付け足す。


『可哀想なベルローズ。君は元から強欲な本質を持った平民の女達に陥れられた。あの女達が悪魔を召喚したのは偶然だ。けれど、()()にとっては思わぬ好機だった。正しいことを見えないように、目を塞がれていた君の周囲の人間達は、正気を取り戻したことで、壊れて狂ってしまったよ』


 どうせなら最後まで目を塞いでおいてやればいいものを、彼らはいつでも残酷だ。

 そう嘯いて、男はベルローズに関わった人間達の末路を淡々と挙げる。


『悪魔を召喚した女達は王国法に則り拷問の後に火刑。魅了を行っていた存在が死亡したことで魅了の解けた公爵は、発狂して妻の墓の前で己の腹を裂き、自分の内臓を掻き出して死んだ。君の元婚約者は悔恨から君の異母妹に苛烈な拷問を執拗に行った後、元側近から引き取っていた君を殺した剣で自分の首を斬って自殺。王太子の元側近達も、それぞれ、怒りと後悔のあまり、血を吐き、血の涙を流し、己を恥じて、わざと苦痛を伴う方法を選んで自害した』


 君の報告や相談を聞き流して動かなかった王国の重鎮達は、自分達の判断ミスが引き起こした凄惨な結末に茫然自失で、後始末の後は隠居して出家したよ。そもそもの原因は、神々でもあるのにね。

 そう、皮肉げに呟いた男が、眠るベルローズの額に口付ける。


()()が、何故そうまでして花嫁を求めたのかまでは、君も答えを出せていないだろう。単純な話さ。人間の社会と同じように、伴侶を得ることが昇進の条件になるようなシステムが、()()()()にもあるんだ。君は、彼らの昇進なんかの為に、何もかもを無駄にされ、奪われて蹂躙された。可哀想なベルローズ』


 可哀想と口に出しながら、男の目の中にあるのは、昏い歓び。


『だからね、花嫁争奪戦に参加していなかった私が君を貰うことにした。君が、とっても可哀想だから』


 男の口付けは、額から瞼、鼻先から頬へと何度も繰り返される。


『君を娶った私は、君を()()から守れるほどの力を得たよ。今の私は、遍く()を支配する者だ』


 神々や高位の精霊や悪魔達の死をも、ね。

 男はベルローズの唇に口付けを落として、うっそりと嗤う。


『可哀想なベルローズ。こんな私に囚われて』


 けれど、昏い歓びを宿した眼差しは、何処までも愛おしげで。


『嗚呼、可哀想なベルローズ』


 暗闇の中、睦言のように響く男の声は、いつまでも止むことは無かった。




 ここまで読んでいただきまして、ありがとうございます。


 世界そのものが、身分差別と選民思想で創られた箱庭でした。

 平民をたくさん創ったのは、いずれ花嫁を産み出すことになる王族や貴族の生活を支える為の人員です。

 人間社会を花嫁牧場にしていた存在達は、花嫁牧場の運営に加担していなかった死霊の男にベルローズを掠め取られたわけですが、後味は悪いかもしれません。



 現在、諸事情により誤字脱字報告は閉じています。

 また、感想については、全てありがたく読ませていただいておりますが、返信は控えている状況です。

 申し訳ありません。


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うーんこれは救いのない胸糞 でも全ては死んでこれ以降の犠牲が出ないのが救いだけど本人にはもはや無意味と言う虚しさ 全てに死をという事だが神々は死ぬようだが人間も死ぬのか? 神々が死んで運営されなくな…
[良い点] 世界という舞台そのものがヤンデレ?という点は新しいのかも? [気になる点] 神々が死霊の男の行動に干渉しなかったこと。 [一言] ものすごく「異世界的」で「ファンタジック」で、読後の余韻ま…
[一言] 最初のベルローズがわざわざ死霊召喚の魔法を作ったのは、なぜだったのか。 たまたまか、初恋相手のためか、それともこの出来レースに関わってないのが死霊だったからか。 蚊帳の外から漁夫の利を獲…
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