表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

#2【マグナス・プライムコロニー】

滑り込みセーフ

#2【マグナス・プライムコロニー】


オーケー、整理しよう。

昨日、帰り道にコンビニで酒を買ってボロボロに酔った。ここまではいい。

そのあとの記憶がない。これもまあ、潰れたんなら仕方ないだろう。

……なんでそれがこんな事になる?空に都市?どういう事だって。


「なぁ、これって夢?」


おもわず、目の前の女に聞く。

女は可哀想なものを見る目でため息をつく。


「アンタ、余程記憶をやられてるみたいね……」


そういえばこの女の格好も奇妙だ。美人だが、SFコスプレみたいなアーマーに、真っ青な髪の毛に白いメッシュ。映画に出てきたら惚れてた……じゃなくて!

どうしてコスプレみたいな恰好でここにいる?酔っぱらってるうちにコスプレアニクラにでも参加しちゃったか?田舎にそんなとこあったか?」


「途中から声出てるよ、火威クン。いい?落ち着いて聞いて」


考えを巡らせていたのが漏れていたらしい。


「まず、私はマグナス・プライムコロニー軍警察のマナ・シェメシ特務中尉。軍警察は解るよね?」


「いや、その前のコロニーからわからない」


「ウワァ……聴取が終わったら病院に連れてくから、アンタマジで全部わからないのね?」


「ごめんなさい」

癖で、つい謝ってしまう。だが本当にわからないのだ。今は何でも、状況を整理してほしい。


「アンタもしかしてすぐ謝るタイプでしょ。いいよ、私だってぶっ倒れてた人間に怒るほど人間小さくないよ」

マナと名乗る女はクスリと笑い、説明をしてくれた。

 ここは、マグナス・プライムコロニー。ベテルギウス星系に製造された最大の都市コロニーで、周辺の惑星/コロニー群を含めたベテルギウス人類繁栄圏の「首都」に当たるらしい。

彼女はコロニー自治のための軍警察の特務所属で、「火が降ってきた」との通報を受け、この所コロニーを騒がせているテロ集団を疑い調査をしたところ、俺を救助した……とのことだった。


「……突拍子もない話だ」


なんだそれ。映画か、やっぱ夢じゃねえかこれ?


「現実を受け入れてよ……はい、私の話おしまい。今度は火威クン、今度はあなたの認知上の、ここに至るまで訪れた場所、行動、それから身分を証明できるもの持ってたら、出してくれる?」


「わかった。俺の認識上の話だぞ?……まず、俺がいたはずの場所は地球、日本、東北。会社帰りに飲んで……気づいたらシェメシさんに起こされてた。正直、ここが宇宙コロニーだって言われても実感がないし、俺の知ってる限りじゃコロニーなんて映画の中の話だ。んで身分証明書だけど……ほら、免許証」


ポイントカードに紛れ、唯一財布に入れていた写真付きの免許証を渡す。


「あー……その財布、小銭入ってる?」


所持品の検査だろうか、おとなしく従い、財布ごと渡す。シェメシさんは暫くそれを、手持ちのスキャナで読み込み調査していた。そしてこちらをまた見て


「落ち着いて聞いてね?火威クン」


なんだろう、また突拍子も無い事を言わないでほしい。


「詳しくは科学捜査官の調査待ちになるけどアンタ、いたずらじゃなきゃかなり前に行方不明になってる。それも数年単位じゃない。ざっと――」


シェメシさんは拳をこめかみにあて、苦々しい顔で告げる。


「2000年くらい」


「は????」


#3【ま、いいや】

おいまて、もっと聞いてないぞ。

つまりこうか。


「酒によってタイムスリップしただぁ?」


「突拍子もない話、だよね」


なんで?誰の思惑で?どんな原理で?


「帰るすべは?」


「解明されてないし、タイムマシンなんて今でもない」


……マジか。

正直、動転している。身寄り無し、所持金は今入っているものと、存在してれば銀行?あるのか?住む場所無し。着るものなし。絶望的じゃん???あるかわからない社会福祉も期待できなければ、頼れる人もいない。詰んでいる。


「そっか……まぁ、でも」


いいや!


動転はしていたが、肩の荷も下りた気がしていた。

地方勤になったせいで彼女には浮気されたし、排他的な地方にはなじめなかったし、もうすぐ30。詰んだオワコン人生と、詰んだ衝撃展開。どっちがいいかと言われたら俺は――


「難しいこと考えないで、俺、ここで生きるよ。だから」


立ち上がった俺に不信感を抱いたか、シェメシさんが怪訝そうな顔をする

「だから?」


もう一度覚悟を決め、しっかりと前を見据え

「俺を保護して検査して身元確認と当面の間生きる保障を下さい」

土下座した。締まらないなぁ。


優の現在の所持品

■ハイブランドのスーツ

・イタリアの有名生地メーカーのスーツ。今も残っているかわからない。初ボーナスで無理して買った。

■財布

・オーダーメイドの革財布。初ボーナスで無理して買った。

・所持金は5万円と、メガバンクのカード(貯金はまだ残ってるんだろうか?)

■靴

・なんてことはない牛革の靴。本人基準で昨日手入れをした。

■???

・まだ、本人も気づいていない。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ