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覚悟を決める

「カナタくん、殺気出してたのね」


「うん。リンダの涙を見て怒ってた」


「そっか」


「エリナ、お前はいつから知ってたんだ?」


「ん、最近よ」


「なぜ言わなかった?」


魅了チャームってね、多かれ少なかれ誰もが持ってるの」


「ん?」


「カナタくんも形は違うけど、魅了チャームを使ってるようなもんでしょ?クロノ、シンシア、リズ、リンダ。そして私にも効いてるわ」


「お前は違う意味だろうが?」


「同じよ。さっきのカナタくんにゾクゾクするもの」


「ちっ。で、その続きは?」


「トーマスはそんなカナタくんを討伐する?」


「するわけねーだろがっ」


「カナタくんが魔族だったとしても?」


「当たり前だ」


「ね、魅了チャームを使ってもそれがどういう目的かで判断が変わるのよ。それにクロノ、リズ、リンダはカナタくんに魅了チャーム掛けてるみたいなもの。皆、自分に振り向いて欲しいだけ」


「で?」


「あの二人もそうかもしれないから黙ってたの。でも昨日の宴会で違うと確信したわ。リンダを利用して、カナタくん達をどうにかしようとしてたのよ」


「何を見てそう思ったんだ?」


「リンダはカナタくんの近くに来ただけで奴の魅了チャームが解けかけたわ。それであいつは掛け直してた。まだ時期が早いと思ったんでしょうね。そのうちリンダにカナタくんを殺させるつもりだったんじゃない?」


「それをお前は追い払ったのか?」


「魔族のよしみでそのまま人間と暮らすか消えるか選ばせただけよ。先に言っちゃうと、カナタくんが困るでしょ?友達の彼氏や彼女を討伐する事になるんだから」


「そうか・・・」


「カナタくんは優しいからね。そんな事をさせたら可愛そうでしょ」




その頃、叶多は異様な光景を見ていた。


「なんだあれは・・・?」


前に見た魔王だろうか?ドス黒い紫の霧のような物に包まれている。


あれは・・・繭?


叶多は出口のゲートからそっと顔を出してそれを見ていた。


あの霧というか繭はヤバい気がする。人間が触れていいものでは無いかもしれない。


叶多の嫌な予感が近付くなと警告している。


しかし、アレを突破しないと神器は取り返せない。そしてあれが繭だとしたら覚醒は目前だろう。


叶多は一旦外に出てすぐにゲートを出して細かくワープしながら離れてトーマスの屋敷に戻る事に。



「どうだった?」


「寝てたよ。チャンスかと思ったけど、トーマスが怒るからちゃんと帰って来たよ」


「当たり前だ」


「ゴメン、ちょっと魔王の威圧で疲れちゃったからもう帰るよ。明日も休みにしていいかな?」


「そうか。ならしっかり休め」


「ありがとう」


と、叶多はトーマスに嘘を付いた。



家に帰った叶多はテンションが高かった。


「クロノ、飲もっか」


「疲れたんじゃないの?」


「疲れたから飲むんだよ」


と、叶多はおつまみを作って発泡ワインをあけ、クロノの肩を抱きながら飲んだ。


叶多は殺気が収まった後、完全に戻るまでクロノにベタベタしてくることがよくある。クロノはそう思って叶多がしたいようにしていた。


お風呂も一緒に入ろうと言われて入る。バスタオルを巻いてたのに叶多はそれを取って水着のクロノを抱き締めた。

 

そして、寝る時もぎゅうっとクロノを抱き締め続ける。


「カナタ・・・」


「ゴメン、痛かった?」


「ううん。大丈夫」


そう答えるとカナタはまたクロノを抱き締めて離さないまま朝を迎えた。



クロノが起きると、叶多はすでに起きていて朝ごはんを作っていた。


「ゆっくりするんじゃなかったの?」


「目が覚めちゃったんだよ」


と、朝ごはんを食べて、トーマス達の所に行こうとプラプラと歩いて行く。


そして店に入る寸前に



「あ、しまった。忘れ物した。すぐに戻るから先に中に入ってて」


と叶多は言って家に走って行ってしまった。


「あら、今日はゆっくりするんじゃなかったの?、それにカナタくんは?」


「忘れものだって」


「へぇ、片時もクロノから離れないのに珍しいわね」


「すぐに戻るって言ってたよ」



叶多は家の警報の魔道具を切り、ベリーカのギルドで上級ポーションを持てるだけ購入し、魔族領に向かっていた。



 「カナタ、遅いな・・・」


「女神さんよ、本当にカナタは忘れ物を取りに行ったのか?」


「そう言ってだけど。ちょっと見てくる」


「ん?ポケットから何か落ちたぞ」


「えっ?あ、本当だ。何これ?手紙?」


「貸せっ」


トーマスは嫌な予感がしてその手紙を引ったくって中身を読む。


「クソっ。カナタの奴、一人で魔王の所に行きやがった」


「嘘っ・・・」







〜トーマスへ〜


嘘ついてゴメン。魔王はもう覚醒しかけている。一刻の猶予もないかもしれないから神器を取り返しに行ってくる。


もし、何日も帰って来なかったら失敗したと思って欲しい。その場合、申し訳ないけど、クロノにワープのスキルを付けて貰って後を継いでくれないだろうか。それに俺が死んだら元の世界の時間が動き出すかもしれない。そうなればクロノは勇者スキルを取り戻せるかもしれないからクロノに試せと言ってくれ。


〜クロノへ〜 


お前は女神だ。まず自分の世界に帰れるようにすること。もし俺が死んでも本体は向こうにあるから寂しかったらもう一度召還しろ。今の俺とは違うだろうけど、俺は俺だ。初めはお前に怒るかもしれないけど、きっとまたお前を好きになるから心配すんな。




「な、何よコレ・・・」



叶多は魔王の近くに出た。幸いな事に他の魔族や魔物がいない。


というか何もいないのだ。


近くにある繭みたいなのはもしかしたら魔王じゃないのか?


そう思った叶多はマップを最大限拡大して確認する。間違いない。あれは魔王だ。



あの霧の繭を吸い込むとヤバいだろう。叶多は深呼吸してから息を止めて霧の中に入る。


ぐっ・・・・


ヤバいと感じた通り全身が焼ける様だ。が、動ける。行けっ。


叶多は自分の痛覚を断ち切る様にして魔王へ魔王へと近づいて行く。


ゾクッ


動かない魔王から漏れ出す殺気に足が止まる。クソっ


恐怖で息が続かない。思わず息をする叶多。



ガハッ ガハッ


喉や肺が焼ける。


ダメだっ・・・・・くそっ。叶多はその場で倒れ込み、這いつくばって尚進む。


クロノっ


叶多はここで死ぬ訳にいかない。ポケットからクロノが着ていたシャツを口に当て、ゆっくり息をする。


すると、焼ける様に痛い肺がマシになった。よし、俺はクロノに守らている。もう少しだ。神器だけでも持って帰るっ。



と、その時、魔王がピクッと動いたような気がした。


ヤバいっ。叶多はもう一度息を止め魔王に向けてダッシュ。


見えたっ!


魔王は宙に浮き、丸く膝をかかえるような姿勢を取っている。神器は首からぶら下げている。叶多はそこを目指してワープし、ゲートから手を伸ばして神器に手をやろうとした。


ギロっ


魔王が目を開けた。


その瞬間、恐怖で動けなくなる叶多。


ゲートから出した腕を掴まれ引っ張り出されてしまう。


しまった。


頭では固まるなとわかっていても身体が硬直した時に腕を掴まれたのだ。


ドゴンっ


ぐふっ


そのまま地面に叩き付けられた叶多は肋骨が折れたのか血を吹き出し息が出来ない。


魔王は覚醒途中で動きが鈍い。叶多を叩き付けた後は追撃をしてこない。その隙にポーションを飲んで回復。



「ぐおおおおぉっ!」


魔王が唸声をあげた。


叶多は神器まで沈まない程度に魔王をゲートに落としてキャンセル。


「ぐわぁぁぁっ」


よし、足を奪った。


ドドドドドっ


周りから激しい振動が伝わってくる。


さっきの魔王の唸声は仲間を呼ぶ声だったのだ。


紫の霧の繭が晴れると魔族の幹部、魔族、魔物に囲まれていた。


くそっ


叶多は片っ端からゲートに落としてキャンセルしていく。


テレレレッテッテッレー♪


レベルアップのファンファーレが頭になり響いていく。


早く魔王の所に神器を取りに行きたいのに、敵の数が多すぎる。


しかし、叶多は一人で来て良かったと思っていた。皆をこんなものに巻き込んだら確実に死ぬ奴が出てくる。ここはスキルを持たぬ者が来てはいけない所だ。


叶多は迫り来る敵をゲートで消したり攻撃を消したりたりしていく。攻撃を食らってはポーションを飲み戦い続けた。


そしてつい魔族の幹部の1体をゲートで消した。


レベルアップのファンファーレが連続で鳴り響く。そして叶多のスピードは上がっていく。


よしっ、今だ!神器を魔王からっ


嘘だろ・・・


魔王の足は再生され叶多に攻撃を食らわした。


ぐはっ



叶多は吹っ飛ばされる。


しかしチャンスっ


叶多は吹き飛ばすされた方向にゲートを開き神器目掛けてワープした。





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