お祝いの宴会
翌日、これからどう動くかエリナの店で朝ごはんを食べながら打ち合わせ。もう休みがなくなるかもしれないとの事で今日は打ち合わせのみで休みにすることにした。
朝からクロノは不機嫌だ。
「なんだよ?」
「別に」
昨晩、叶多か何かしてくるんじゃないかとドキドキして眠れなかったクロノ。
「こんなに気持いい天気の時にそんな顔をしてんなよ」
「そんな顔をってどんな顔よ?」
「ほら、もっとにこやかにしてくれよ」
と、クロノのほっぺをむにゅっと掴む。
「やめへよ〜」
叶多は迷う。クロノとずっとこうして暮らせていけたらどれだけ幸せなんだろうかと。
「ほら、行こう」
と、叶多はクロノと手を繋いだ。
「もうっ、なんなのっ?」
「いや、たまにはいいだろ?」
と手を繋いで歩いていると、リンダの父ちゃんと合った。
「久しぶりだね」
「全くだ。最近何やってんだ?」
「各地で討伐。賊とかやっつけてんだよ。俺、Aランクになったんだぜ」
「おー、そりゃすげぇな。じゃ、今夜は宴会だな。皆に声かけるわ。焼肉でいいな?」
しまったな。余計な事を言わなきゃ良かった。
「仲間も呼んでいい?」
「エリナちゃんとかだろ?」
「知ってんの?」
「当たり前だ。みな常連客だからな」
いつの間に・・・
またトーマスの所に戻って夜宴会になった事を伝える。
「フランク達も呼んでやるか?結局、ヘンリーと話してそのまま帰っちまったからな」
「そうだね。じゃあ、ゴーレンまで行ってくるよ」
と、ゴーレンに向かうも誰もいなかった。
「カナタ、昨日大活躍だったんだってな」
「そりゃあ、俺は魔王を倒す男だからね」
「ははっ。そうだな。今日は御用聞きか?」
「いや、昨日フランク達と何も言わずに分かれたんだよ。で、今日ベリーカで地元の人達と宴会することになってね、暇なら来るかなっと思ったんだよ」
「あいつら朝から来てねぇからな。今日は来ねえんじゃねぇか?」
「そうだよね。じゃ、また改めて来るわ」
「なんだよ、昼飯ぐらい食ってけよ。昨日の魔物肉が山程あるんだ」
「俺はいいけど、クロノが硬い肉ダメなんだね」
「ならハンバーグにしてやるからよ」
「なら食べてく」
と、今日は昨日の強制クエストのせいで人が少なくて暇みたいだ。暇つぶしに包丁で肉を叩いて作ったらしい。
クロノとカウンターで座って待ってるとリズがやって来た。
「あっ、カナタっ。なんだよ昨日のいきなり消えやがって」
「ゴメン、ゴメン。ギルマスに呼ばれて話し込んでたら誰もいなくてもなってたんだよ。気になってここに来たから勘弁してよ」
「そういうことなら許してやるよ。何頼んだんだ?」
「ハンバーグ」
「えっ、いつも面倒だからってやらないのに。私もそれっ!」
クロノとリズの両手に花でランチ。
「え?その宴会に行ってもいいのか?」
「いいよ。そのまま泊まる?」
「ど、どうしようっかなぁ。泊まって欲しい?」
「ほれ、焼けだそ。リズ何お前、そんな女の子みたいなセリフ?」
「うっ、うるせえっ」
真っ赤になるリズ。
そしてハンバーグを食べてるとチラホラとハンター達が飯を食いに来て、叶多達のハンバーグを見て注文していく。
「お、カナタ」
と、テトラとニックがやって来た。
「エルメスは?」
「知らん」
休みの日はお互い何をしているのか知らないらしい。
「ほらな、俺の言った通りだったろ?」
ニックは今日は暇だからハンバーグがあると読んで昼飯を食いに来たらしい。
「今日、ベリーカで宴会なんだけど来る?」
「おっ、いいのか?」
「知り合いにAに上がったと言ったらお祝いしてくれることになってさ」
「は?カナタがAランク?」
「昨日、ギルマスからそう言われたけど?」
「マジかよ・・・。こんなにあっさり抜かれるとは」
と愕然とするテトラとニック。
「ハンター登録してどれぐらいだ?」
「ん?登録から2年経ってないかな?ハンターやりだしてからは1年ちょっと」
「はぁ・・・リズの見る目が正しかったってこったな」
と、ニックが両手を上げて首を振った。
「まぁ、俺のはクロノの力だからね」
と、フランクが拗ねるぞとか言われながら飯を食う。クロノもリズの事は好きなようで、皆がリズがカナタに惚れてるとか言っても怒ったりはしない。
「ちょっと着替え取って来るよっ」
リズは泊まるつもりなので食べ終わった後で着替えを取りに帰った。
「アイツ、また泊まるのか?」
「ベリーカの人達も飲むからね。二人も泊まる事になると思うよ」
「そうだな。まぁ、俺達は着替えなんてどうでもいいわ」
結局来たのはこの3人だったのでベリーカに移動。宴会にはまだ早いのでエリナの店で遊ぶ。ダーツを作ったみたいなので勝負することに。
負けたら酒を飲む。
男は火酒をショットグラスで女性はワインをショットグラスで。
当然クロノの一人負け。もうキャハハハハッと笑い出すくらい飲んでる。
で、男女ペアになっても結果は変わらず叶多とクロノはご機嫌でキャッキャウフフ状態になり離脱。変わりにトーマスエリナペアが入り、シンシアが笑い出した。
「やめだっ。ちっとも飲めねぇ」
とリズが言い出し、ダーツはやめになり、テトラと酒を飲みだした。
「騒いだら暑いわ」
と、酔ったリズがスカートをバッサバッサとする。
「おー、ピンクじゃん」
叶多がそういうと
「みっ、見んなよっ」
と、真っ赤になるリズ。
「何言ってやがる。お前が見せたんだろが?それにピンクのパンツとは随分と女の子らしい、ブッ」
テトラはリズにグーでいかれる。
「またリズのパンツ見たっ」
のクロノが怒る。
「見せられたんだよっ」
「見せてねえっ」
「カ、カナタさん。私のも見たいですか?」
「シアちゃんはそんな事したらダメです。くまちゃんパンツをニックに見られるぞ」
「くまちゃんパンツなんて履いてませんっ」
と子供扱いしたらシンシアは拗ねてしまった。
「じゃ、カナタくん、私の凄いの見る?」
「結構です。トーマスに見て貰って下さい」
「もうっ、どうしてみんなカナタにそんなにパンツ見せようとするのよっ」
「カナタくんの反応が面白いから」
俺はパンツを見たいと一言も言った事はない。それにここに来てからもう下着を見ても恥ずかしいとかなくなったのだ。
リズにはちゃんと言った方が恥じらいを覚えるだろうと思って言うようにしていた。
リズは俺に見られて恥ずかしかったのかガブガブ火酒を飲んでいる。シンシアは子供扱いされて飲んでいる。宴会前から飲み過ぎじゃないか?
ま、いいか。
そう思った叶多はまだプリプリしてるクロノのほっぺをむにゅむにゅして幸せだった。
ようやく宴会が始まるらしく外が騒がしくなって来たので移動すると、皆からおめでとうと言われた。
そしてかんぱーいだ。
そこへリンダが男とやって来た。
確かこいつ・・・
「カナタ、久しぶりだね」
「本当だね」
「その人、前にゴブリン騒動の」
「そう。今付き合ってんだ」
「そうだったんだ。良かったね」
「その説はありがとうございました」
と襲われた商人だった男が挨拶をする。
「もうここに定住することにしたの?」
「はい。商人は諦めて生産者になることにしました」
「リンダ、お父さんも跡継ぎが出来て良かったね」
「もうっ、まだそんなの早いわよっ」
と、リズ達にリンダを紹介する。
「でさー、初めてカナタがここで宴会したときに私を酔って女神さんと間違えてさぁ」
と、過去の事を暴露されていく。
クロノはそれを聞いて機嫌が良くなって行く。
「その時にカナタにキスでもされたのか?」
と、リズが聞く。
「なーんにも。ただ抱き締められたかも?」
「しっ、してないだろっ」
「本当かなぁ?記憶ないんでしょ?本当はキスされてても黙っててあげるね」
リンダにからかわれるけど本当にしてないと思う。
「カナタ、私ともしてないのにリンダにしたの?」
「してないっ・・・と思う」
「えっ?カナタって女神さんとあんなにイチャイチャしてんのにキスもしてないのかよ?」
「う、うるさいなっ」
「驚きだわ」
「リズはしたことあるの?」
「そっ、そりゃキスぐらいはあるさ」
「嘘つけっ、それとも相手はゴブリンか?」
ガスッ
いらん事を言ったテトラはまたグーでいかれてた。
シンシアは他の男に囲まれ出しているのをニックが牽制している。
そこへジョージがやって来た。前までクロノを見るだけでいいと言ってた少し年上の青年だ。
「クロノちゃん、ゴメンな。俺はジェーンと付き合う事になったんだ」
「あんた誰だっけ?」
クロノは全く覚えてないらしい。ジョージは少しも涙目なっていた。
そうか、二人ともここに馴染んだんだな。
「カナタ、そっちのかわい子ちゃんは誰だ?」
「時々パーティを組むリズ。こっちはテトラ。二人とも強いからジョージがしょうもないちょっかい掛けたら打ちのめされるからね」
「おい、リズ。かわい子ちゃんだってよ」
「い、いいだろっ。結構モテるって言ってるだろが」
「黙ってりゃな。みんな素のお前を知ってがっかりしてただろが」
ガスッ
テトラは何回グーでいかれたら気が済むのだろう?
思いっきり大男をグーでいったリズにジョージは青くなって退散していった。
「しかし、カナタって強くなったんだねぇ。Aランクだって?」
「たまたまね。強さで言えばリズとかの方が強いよ」
「やっぱり私がビビっと来たの間違ってなかったんだよなぁ」
「彼氏出来たのに他の男を褒めるなよ。マイクも気分悪いだろ?」
「ヘーキ、ヘーキ。こいつ怒らないから。だから私みたいのと付き合うって気になるんだよ」
「なんとなく、リズとリンダって感じが似てるな」
と、テトラがそういう。
二人ともかわいいのに男の子っポイのだ。だけど、ちゃんと女の子。
クロノは叶多の好きなタイプがこの二人だと気付いているので叶多の腕にぎゅうっとしがみついたのたであった。