なんで先に言ってくれないんだ
「まだ先の話しだから考えといて」
と、叶多はクロノの横に戻った。
皆を送り届けてから風呂に入って疲れを癒やす。明日ゴーレンに行って今日の報酬の受け取らないといけない。
「カッナタ♪」
「ご機嫌だな?」
「うん。やっぱり私が一緒だと怖いのすぐに収まるね」
そういや、あれからずっと血の匂いもしていない。クロノとずっと一緒にいるからだな。
「そうだね。俺、クロノがいないとダメみたいだな」
「うふふふふっ♪」
めちゃくちゃ機嫌の良いクロノはソファの隣に座ってぎゅうっと抱きついてきたので叶多もギュッと抱き締めてかえす。
「俺が全部ちゃんとしてやるからな」
「うん♪」
翌日ゴーレンに行くと、フランクがめっちゃ喜んでいた。
「どうしたの?」
「ありがとうっ!」
ガバっとフランクが叶多を抱きしめる。
「俺、Aになったぞ!」
昨日の魔族討伐でAランクになったらしい。ポイント的にはもうAだったのだが、Aに上がるには誰も受けられないような高難易度のクエストを達成しないといけないらしい。
「良かったね」
「お前のおかげだよ」
「ナタリーさんがおばさんになる前で良かったじゃない」
「ナタリー、俺の嫁にさんになってくれっ」
「あんた、さんざん待たせた挙げ句にもっとちゃんとプロポーズしておくれよ。やりなおしっ」
フランクは俺を抱き締めながらナタリーにプロポーズをしてやり直しを食らっていた。プロポーズのやり直しってw
で、俺もBに上がり、シンシアはCになった。他はBのままだ。
どうやら、クエストのポイントも山分けになるらしく、クエスト達成の人数が少ないほどポイントが貯まるようだ。フランクはポイントを稼ぐのにソロでクエストに出ていた事が多いらしい。トーマスは金を稼ぐのにソロでやってたから似たようなもんだと言っていた。
俺達は報奨金を受け取った。
「え?クロノの所に全部入れるの?」
「俺のはそこそこ入ってるからね」
と、入金先を分けておく。自分に万が一何かあってもクロノがお金に困らない様にしておかないといけない。
じゃまたね、と行ってベリーカに戻って訓練再開しようと思ったら、トーマスが
「色々な国でクエストを受けるぞ。実戦の中で鍛えていく」
と、言われてそれ以降世界の中を回って討伐依頼を受けて行くことになった。
魔物より賊討伐中心に受けていく。
魔物とは違って胸糞悪い奴らが多すぎる。叶多は殺気を纏う事が増えて行ったが、都度クロノにおさめて貰う。その度にぎゅうっと抱き締め合う二人。
そんな生活が続き、月に1日は商売、もう1日は休みを取る。
そして、トーマス達の家が完成したのでフランク達を呼んでパーティだ。
「わぁ、大きいねぇ」
リズは到着するなりそう言ってあちこちを見て回る。
「まぁ、飲み屋兼だからな。寝室もいくつか余分にあるから思う存分今日は飲め。泊まって行っていいぞ」
トーマスは客室をいくつも作っていた。気兼ねなく宴会をして泊まれる様にと。土地がタダだったので、その分建物に回したのだ。
「えっ?着替持って来てねーよ」
「なら先に買い物に行く?」
「連れてってくれんのか?」
「いつもクロノの服を買ってる所で良ければね」
と、エスタートにリズとエルメス、ナタリー、シンシアを連れて行く。
「うっわ、こんな服似合うのねーよ」
「大丈夫だって」
と、店員さんにお任せする。恐らくめちゃくちゃ時間かかるだろうな。
エスタートは安全だとはいえ、クロノから離れる訳にはいかないのでじーーーーーっと待つ。クロノとシンシアはこれどう?と何回も聞いてくる。正直違いがよくわからない。
リズは選び終えたようで先にこっちに来た。
「終わったの?」
「あぁ、なんかこいうの恥ずかしくてよ」
「いや、この前の服も似合ってたよ」
「ちゃ、茶化すなよ」
「いや、ホントホント」
「そんな事を言ってくれんのカナタだけだよ」
「確かに言動は男の子っぽいけど、リズは可愛いよ」
「ばっか、やめろよっ」
「だから、あんなパンツ見えるような座り方しちゃダメだよ」
「お、お前が見なきゃいいんだろうがっ」
「いや、見せに来たのかなって?」
「そ、そ、そんな事があるかっ」
「だったら、せめてスカートの時はあんな座り方すんなよ」
「わかったよっ」
そう言って今も広げてた足を閉じるリズ。
「あのさ」
「なに?」
「もし、もしもだよ、もし女神さんがいなくて、私がカナタに付き合ってくれっていったらどうしてた?」
「喜んでOKしてたと思うよ」
「ほ、本当かっ?」
「うん」
「シンシアと両方から同時に言われたら?」
「リズを選んだと思う。シアちゃんは可愛いけど、妹って感じなんだよね。リズは同級生の女の子だな」
「女神さんは?」
「クロノは初めて会った時はクソ女だと思ってたからね。はっきり言って嫌いなタイプだったよ。今とは雰囲気が全然違うけどね」
「今は?」
「俺の命より大事かな」
「そっか・・・」
「リズにもそう思ってくれてる人がいると思うよ」
「どこに居んだよそんなやつ?」
「さぁね。どっかにいるんじゃない?」
「なんだよそれっ」
叶多は大事な人はすぐそばにいるよ、とは言わなかった。
ようやく皆買い終えたみたいでこっちにやって来た。
「カナタさん、買ってくれてありがとうございます」
とシンシアがお礼を言う。どうやらクロノに渡してあった俺のハンター証で全員分払ったらしい。
「気にしないで」
「え?カナタに払わせたのか?そんなっ自分で払うよっ」
「いいよ、別に。前のクエストでクロノまで報酬貰っちゃったしね」
と、言うとリズはゴメンと言っていた。
「遅っせぇぞカナタ」
「俺に言うなよトーマスっ。俺は店でじーーーーーっと待ってたんだぞ。お前らもう飲んでんじゃねーか」
飯食う前に風呂に入って、今買った服で宴会をしようとなり、風呂には一度に入れないから、叶多とクロノは家で入って着替えてから出直す。
「一緒に入る?」
「そんな時間もないだろ?早くシャワーだけしてこい」
と、クロノは着替える前にシャワーも浴びる必要もないのだが、さっさと風呂場に行かせた。
出て来たクロノの髪の毛を乾かして、プラプラ歩きもってトーマスの家に。
「早かったな」
「お腹空いたしね。今日はエリナが作ってくれてるの?」
「ああ」
運ぶのを手伝っていると女性陣が着替えて来た。
「おー、服が違うってだけで新鮮だな。女に見えるぞリズ」
「いちいちうるせぇぞテトラっ」
「リズ、足、足。またパンチラすんぞ」
リズはシンプルなワンピースを選んだようで、そこそこスカートが短い。
足を開くと見えそうなのだ。
「お前、俺達の前だと平気で着替えててんだろが?」
と、テトラがピラッとスカートを持ち上げた。パンツが見えて真っ赤になるリズ。その反応にスカートめくりをしたテトラが慌てて謝る。
「す、すまんっ。そんなつもりはなかったんだ」
テトラも真っ赤だ。
「また見たでしょっ」
「見えたの」
リズはよっぽど恥ずかしかったのか、テトラにぐーでいってた。
「ナタリーもそんな服を着てるの初めて見たな」
ヒラヒラワンピースのナタリー。
「そうよ、カナタが買ってくれたのよ」
「え?カナタがナタリーの分まで買ったのか?お前まさか・・・」
「全員の分だよ」
「はい、カナタさんに服を買ってもらいました」
「リズ、お前もか?」
「そうだよっ。私の下着から何から何まで買ってくれたんだよっ」
そんな言い方をしないで欲しい。
「カナタ、皆金持ってるだろが?」
と、トーマスは呆れる。
「成り行きでね。エリナの分はトーマスが買ってあげなよ」
「うっ、うるさいっ」
こんな一悶着があった所で宴会スタート。エリナも作り終えてるので一緒に食べて酒を飲む。
「女神さんの指輪可愛いわね」
「うふふふ、これはカナタがお揃いにしたいからって言って、こっちは可愛くて似合うからって買ってくれたの」
いや、あなた催促したよね?
「へぇ。いいわね。フランクなんてそんなの買ってくれたこと無いわよ」
「か、か、か、か、買ってやるよっ。ゴーレンにそんなの売ってねぇからだろっ」
「フランク、なら明日ハーテンに連れてってやるよ。そこなら店がたくさんあるし」
「お、いいのか?」
「いいよ」
それを聞いてトーマスがニヤニヤ笑ってた。シンシアの安めの髪飾りでも銀貨10枚。もっと高い店が山程あるしな。目が飛び出るような物を買わされるだろう。
「それはどこで買ったの?」
「ピンクの石のは南国だよ。たまたま通り掛かった店でね」
リズもシンシアもクロノの指輪を改めて見ていた。
俺が二人に買ってやることも出来んしな。見なかった事にしよう。
ワイワイと討伐やら、いつまでハンターするんだとか話ながら飲む。ニックは相変わらずシンシアに構いにいってる。だんだんとシンシアもまんざらではなくなって来てるような気がするな。
「なぁ、カナタ。ハーテンって国に行くのに付いて行っていいか?」
と、リズが聞いてくる。
「いいよ。いっその事みんなで行く?トーマスも何か買いたそうにしているし」
「カッ、カナタ。何を言ってるんだお前はっ」
「いやさ、ここで飲み屋始めたら女日照りの男が入り浸るかもしんないだろ?エリナは既婚者のフリしてた方がいいんじゃないかと思ってね」
「あら、いいわね。そうしましょ。あんまりお客が増えても面倒だし」
「ハーテンで無くてもいいだろうがっ」
「明日行くからついでだよ。あと、結界の魔道具も買いなよ。エリナ一人の時に危ないだろ?」
「ちっ、わかったよ」
「皆脱いだ服はウチで洗濯しておく?放り込んでおいたら朝には乾いてるから」
「そんなことできんのか?」
「毎日クタクタになってから洗濯して干してってするの面倒だから全自動の洗濯機買ったんだよ。カバンに入れといてくれたら持って帰って洗濯機に放り込んでおくけど?」
「ラッキー、洗濯って面倒なんだよな」
どうやらゴーレンでは手洗いが主流らしい。生活魔道具はアッキバじゃないとなかなか手に入らないからな。
さんざん飲み食いして、解散。皆はまだ飲むらしいので、叶多は洗濯物を預かって帰った。
叶多達が帰った後、エリナがニヤニヤしてリズに話し掛ける。
「リズ、下着もいれたの?あなたカナタくんに脱いだ下着とか見られても恥ずかしくない?」
「え?洗濯機に入れるだけって言ってたじゃんか?」
「入れる時と出す時どうすんのよ?」
「い、今更そんな事を言うなよっ」
「クロノはずっと風呂に入らなくても汚れないし、臭くもならないのよ。当然下着も汚れないわ。カナタくんは
それが普通だと思ってるみたいだしね」
「え?」
「だから、あなた達のもそう思ってるんじゃない?今頃マジマジとリズの下着見られてるわよ」
「嘘だっ」
「あー、カナタは女の事を全く知らないからな、女の基準が女神さんだ。エリナの言う通りかもしれん」
「クロノって、一ヶ月風呂にはいらなくても無臭だし、トイレにもいかないし不思議よねぇ」
「じゃ、じゃあ・・・」
「あなたの下着で女の子の事を知るかもね」
「いやぁぁぁぁぁっ」
「今更何いってんだ?俺達に脱いだパンツとか見られてんだろが」
「カナタには見られたくないんだっ」
「もう、今更しょうがないじゃない」
「なんで先に教えてくんなんいんだよぉ」
「え?面白いから」
エリナはそういう人だった。
叶多は叶多で下着が入っているのにぎょっとして、カバンの口を洗濯機に突っ込み、見ないように、触らない様に気をつけていた。